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しおりを挟む一途な愛に気付くのがこんなにも遅くなってしまった、囚われていたこれまでの自分が許せない。
好き。
好きだよ。
愛してる。
ずっと、愛してる。
海翔はセックスの間中、巧みに腰を動かしながら乃蒼に愛を囁き続けてくれた。
綺麗で整った容姿を僅かに歪めて射精する瞬間など、悶絶してしまいそうなほど興奮した。
海翔が激しく動く事によって、ベッドがギシギシと軋む生々しい情事の音も乃蒼の興奮を増長させた。
「───乃蒼、……大丈夫?」
頬を撫でる海翔の声が、殊更に甘いような気がする。
その手に自身の手のひらを重ねて、「大丈夫」と薄く微笑んだ。
笑えているかは分からなかったけれど、乃蒼は照れつつ笑んでみたつもりだ。
「そう。 ……乃蒼、好きだよ」
「ん……俺も、好き。 海翔、……好き」
貫かれたままの乃蒼は、ベタつく肌も厭わず海翔の体にしがみついた。
それと同時に海翔もしっかりと抱き締めてくれ、乃蒼の肩口に唇を押し付けてささやかな痕を残す。
想いが次から次へと溢れてきて、少しでも気を緩めると涙が零れそうになる。
己の青春の後悔など、砂時計のように難なくサラサラと流れていった。
何に囚われ、何に怯えていたのか分からなくなるほど、心が海翔への愛に溢れている。
八年も前から、海翔もその愛に溢れているという。
乃蒼への唯一の愛に、───溢れている。
「甘えん坊だね」
擦り寄る乃蒼の髪を撫でる海翔の手のひらから、温かくまろやかな愛が体に染み込んでくるようだった。
穏やかでいて、有無を言わさない長男気質なところが好き。
悠々とした野生の虎を思わせる海翔の気高い雰囲気と、それとは逆に甘やかすような優しい喋り方が好き。
自らの弱さを自覚して口に出せる秘めた強さも好き。
───ひたすら乃蒼だけを想い続けてくれた一途さが、何より、大好き。
強度が衰えない海翔の性器が、乃蒼の内壁をジンジンと疼かせているけれど、今は欲望を満たすセックスよりもこの腕に浸っていたかった。
海翔の胸に頭を寄せて肌を舐めると、互いの汗でしょっぱくて……美味しい。
「こら、くすぐったいよ。 ……心を許すと、乃蒼は甘えっ子になるんだ」
「言うなそれ……恥ずかしいから……」
「誰も知らない乃蒼を知ってるなんて……俺の優越感は半端じゃないよ」
甘える乃蒼の肌にいくつもキスを落とす海翔が、とても嬉しそうだった。
海翔ならば受け止めてくれるからと、あんなに言い渋った告白と甘えた台詞を、自ら進んで言ってしまった。
欲情した最中の時ならいざ知らず、素面になってもまだ海翔にくっついて離れない乃蒼は、愛されたい欲求の塊だ。
恥ずかしくてたまらないが、それを分かっているのにやめられない。
海翔の腕も、体も、美しい顔立ちも、乃蒼には彼のすべてが眩しくて、一途な想いを肌で痛感した今は、その輝きの中に自分が居ると思うと幸せでいっぱいだった。
好きなだけ甘えられる相手が居る。
乃蒼を大好きで居てくれる海翔にドキドキしてたまらない自身の胸が、自らの恋心を急速に育てている事も何やら甘酸っぱくてしょうがない。
耳元で海翔が囁く度に、トクン、と心臓が跳ねる。
「乃蒼、寝ちゃいそう?」
「ん……? 寝ないよ。 ……寝たくない」
「あ、ご飯まだだっけ? お腹空いたよね? シャワー済ませてから何か食べに……」
「違う。 ……まだこうしてたい」
「……乃蒼……」
空腹なんて感じないと言えば嘘になるが、海翔と少しも離れていたくなかった。
孔に入ったままの性器が、海翔が喋ると中で微かに振動する。
下腹部が疼いてムズムズし、たまらず腰をモゾっと動かしてみると、余計に内壁を刺激する事になった。
セックスの続きもしたいけれど、海翔と離れたくもない。
目の前にあった海翔の乳首をチロチロと猫のように舐めて戯れていると、また「こら」と怒られた。
「イタズラしないの。 乃蒼、抜くから腰抱かせて」
「……え……い、嫌だ……!」
こんなに全身で離れたくないと訴えているのに、どうしてそんなに非情な事が言えるのか。
瞬間的に乃蒼の頭に血が上り、ギッと海翔を見上げると、甘やかしのキスをされて一瞬で頬を染めた。
海翔はすでに、乃蒼をあやす術を覚えたらしい。
「ふふ……っ、まだしたい?」
「…………したい」
「そっか。 じゃあ抜くね」
「なっ……なんで……! 嫌だって言っただろ……っ、抜かないでよ……!」
「そんなに悲しい顔しないで? ゴム変えるだけだよ」
「……ん、……んぁぁ───っ」
それなら仕方ないと、海翔に押し倒された乃蒼はジッとしておく。
引き抜かれる性器が少しも衰えていないせいで、ずるずると襞を擦られた拍子に甘い嬌声を上げてしまった。
「可愛い。 ……乃蒼、顔だけじゃなく声も可愛いよね」
「そんなの、言われた事ない」
「それが正解。 誰に言われたの?って俺からの追及を受ける事にならなくて良かったね」
「…………っっ」
そう言ってクスクス笑う海翔は、コンドームを処理する手付きが慣れていて手早く、細く長い指先が妙にいやらしく見えた。
ジッと綺麗な手を見ていた乃蒼の目が、ふと一度射精したとは思えない反り勃った性器に釘付けになる。
そういえば乃蒼は、他人のものをまじまじと見た事が無かった。
対象のそれが自分のそれとは比べものにならなくて愕然となるからだ。
見ようによってはグロテスクにも映る海翔の凶器だが、何故か乃蒼にはそれがとても美味しそうに見えて、生唾をゴクリと飲む。
「……ねぇ海翔。 ……ゴム付ける前に、海翔の……舐めてもいい?」
「え、……!? ……い、いいけど……」
「やった……っ」
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