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✧*。 66─海翔─ 回想6※
しおりを挟むこの体を、あの無神経な月光も味わっているのかと思うと腹が立ってしょうがない。
後ろを解そうとすると、「自分でやりましょうか」と慌て始めた乃蒼を制するのも心が痛んだ。
始めに海翔が「俺がやりたい」と言った事も忘れて、急に申し訳無さを覚えたらしい乃蒼の健気さに切なくなる。
いつもの月光の解しが足りないのか、自分で解すよう強要されるのか知らないが、海翔は一度たりとも行為の相手にそんな事を要求した事はない。
『俺が今から愛してあげるね』と思いを込めてトロトロに解してやって、挿入前から前立腺を刺激して乃蒼を啼かせる事こそが、愛する側の役目であると思っている。
たっぷり時間を掛けて解している間中、全身をピンクに染めて恥ずかしがっている姿は、興奮するなという方が無理だった。
「……もう大丈夫かな。 痛かったらすぐに教えて」
「…………っはい、……ん、んん……っ!」
「痛い? 抜こうか?」
「ううん……っ……大丈夫、痛くない……」
「……時間掛けてゆっくり入れるからね、心配しないで」
頷く乃蒼の頬にキスを落として、性急に求めたくなる欲望を押し殺し、誰に対してよりも長い時間を掛けて挿入していく。
月光にどれほどのスパンで抱かれているのか分からないけれど、昨日今日は無さそうだ。
中の具合と、乃蒼の性器の興奮度合いが海翔を安心させた。
「……っ、お兄さん。 我慢しなくて、いいよ……っ? ヒドくして、も……」
「やめてよ。 俺はそんな事しない。 ……俺だけが気持ち良くなるなんて、そんなのセックスじゃない」
「……んっ……」
海翔の背中を抱きながら、乃蒼が甘い吐息を漏らした。
きっと、いつも強引にされているのだ。 もういいだろ、と月光はロクに慣らしもしないで、乃蒼の快感を置き去りにして。
「綺麗だ、本当に綺麗。 ……すべて。 のあのすべてが美しいよ」
月光との行為の記憶が、この一度のセックスで消えてなくなればいい。
気持ちのこもった愛のあるセックスは、こんなにも気持ちいいんだよと海翔は教えてあげたかった。
泣きながら後始末をする乃蒼を、もう悲しませたくない。
乃蒼自身が、月光とするのをやめなきゃと言っていた。
もっと前からそう思っていたはずだが、快感を覚えてしまった体は月光からなかなか離れられずにいるのだ。
気持ちが伴わなくてもいいと、そこまで月光に入れあげている乃蒼の恋心を知ると胸が締め付けられそうだった。
「あっ……そ、そこ……っ、……んんっ……っ」
敏感な乃蒼は中を少し強めに擦り上げるだけで高く啼いた。
「……んやっ、……それ、……あっ……」
教室で聞いた、押し殺したそれとは違う。
この嬌声は、海翔が上げさせているのだ。
そう思うと無性に嬉しくて、ほぼ未開発だった乳首を行為の間中、ひたすら舐めて吸ってを繰り返して乃蒼を赤面させた。
「乃蒼、可愛い……」
「んんっ、……も、また……っ、出る、出るってばぁ……っ!」
「いいよ。 気持ちいいなら、出さないと」
「……やっ、こわい、……っんんん───っ!」
「……乃蒼可愛い。 綺麗だよ」
二度目の絶頂を迎えた乃蒼は、海翔にしがみついたまま中を収縮させて腹を汚した。
高く啼く乃蒼の姿に煽られ、かつ中も、海翔の精液を搾り取ろうとするかの如く蠢いて腰が止まらなかった。
脱力した乃蒼の体を抱き起こし、座位でも貫いた。
「んんっ! ……ま、待って、これ、はじめてする……っ」
「はじめて多いなぁ。 嬉しい。 俺が奪っちゃっていいのかな」
「……っ……あっ、やば、い、やばい……っ」
「なに? 何がやばいの?」
「気持ちいい、気持ちい、いっ、これ……っ……あ、んんっ、……んっ」
二人は経験豊富そうなのに、それこそ思春期の若者のように一辺倒なセックスしかしていないのか。
それならば、海翔が知っている限りのすべての快感を引き出してやる。
休憩で足りるかな、とほくそ笑んだ海翔の熱は、一度や二度では治まらなかった。
三度目の絶頂間際、うつ伏せにした乃蒼の背中の至るところにある噛み跡を見て眉を顰める。
……痛そうだ。
キスマークも転々とはあるが、主に噛み跡である。
乃蒼は痛い方が興奮するのかと一瞬よぎったが、この二時間ほどは痛い事をしなくても充分啼いてくれていた。
これは恐らく奴の癖なのだ。
「あっ、……痕は、残さないで……、ください……っ」
「……どうしようかな」
「お、お願いっ……っそれはやめて……っ!」
「……分かったよ」
この期に及んでまだ月光の影がチラついているらしい。
激しい嫉妬に駆られ、海翔は激しく腰を打ち付けて乃蒼の意識を奪うと、右の肩甲骨辺りにあった噛み跡の隣に強く吸い付いた。
乃蒼が別の男に愛された証を見て、月光がどう出るか。
そして乃蒼は、キスマークを発見した月光の態度を見てどんな決断を下すのか、海翔はその痕に己の想い諸とも何もかもを託した。
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