大神 狼のペット

気遣い

「ご、ごめん…」 
狼は少年の瞳からこぼれ落ちそうな涙を拭った。
「っ…」
「えっと…」
「……」
「お、お腹減ってないか？」
「…」

狼は、話すのに困りとっさに思いついた言葉が、それだった。
少年は、左右に首を降ったが狼は、あまりの細い身体を心配してご飯を持ってくることにした。

「そ、そうか…でも一応栄養のあるものを食べた方がいい！」
「…」
狼は、少年を置いて部屋を出る。向かうのは調理場
さっきの無駄に長い廊下を抜け1階にある調理場へ向かう。

「根須さん。」
「あっ。狼さんどうも。」
「根須さん。ちょっと頼みたいことが…」
狼が根須さんという相手は、調理場の調理長を務める腕利きの料理番
そして、狼が1番信頼している相手

「頼みとは？」
「父さんには、内緒で。」
「はい。」
「今回、人間を飼うことになって…その…その子に何か食べさせたいんだ。特に栄養のあるようなもの。」
「なるほど…わかりました。何か作ります。」
狼が根須に頼むと二つ返事で了承してくれた。そして根須は、調理場に入り作業に取り掛かる。

狼は、料理を根須に任せ少年の元へ戻る。
ガチャり
「っ…」
ドアを開けると少年は、肩を震わせた
「ごめん…料理はもう少しかかりそうだから少し待ってて欲しい…」
「……」

少年は、頷いた。
それから、狼は少年と話した。話したと言っても狼が一方的に話しかけているだけだ。少年は、言葉を発することは無かったが頷く回数が増えた気がした。

何分たったか分からない。狼にとってはあっという間の時間だった。
コンコン
ドアのノックの音がする。狼は、ドアの方へ行き
ゆっくり開ける。

「狼さん。料理を持ってきました。」
「ありがとう。根須さん。」
狼は、根須を部屋には入れずその場で料理を受けった。 

料理には、銀色の蓋を被せカートに載せられている。よく外国映画で見るようなもの

狼は、受けった料理を少年の前まで運び蓋を取る
料理の内容はハンバーグ
「食べれるか？」
狼は、聞くが少年は頷かなかったが少年の表情は、今まで以上に動いた。

その表情とは、まるで見てはいけないものを見てしまったようなけげんそうな顔
「ど、どうした？」
狼は、聞く
少年は、口を開いた
「…これは…お、お…にく…です…か？」
「そ…っ…」
狼は、そうだと言おうとしたがやめた。

少年にとってはお肉とは自身の仲間いわゆる共食いと一緒…
少年の体は震え出した。
「っ…ま、待ってろ！」  
狼は、部屋を飛び出る。そして向かった先は、根須のいる調理場

「根須さん！さっきの！」
「狼さん。料理気にって頂けましたか？」  
「気にって…根須さんもっと人間に食べてもいいものを！」
「人間の…狼さん何か勘違いをされています。あのハンバーグは、豆腐や野菜をねったものでお肉は少しを入っていませんよ。」
「は、入ってない…」
「えぇ。私とて、与えていいものをわかっていますよ。」
「そ、そうか…ご、ごめん…」
狼は、根須に謝ると自室に戻って行った。