上 下
27 / 28
第2話 ゲームセンター山田 (コメディ回)

待たせてごめん、

しおりを挟む
 いつの間にか、バトルエリアにいた強敵とも達も立ち上がり彼女達を見ていた。その数は三十人を軽く超える大人数だ。

 店員は混乱が起きないようにと囲いの最前列に立って、インカムを口に近づけるようにして喋っている。先程から小声ではあるが何かを感情的に話しているようだ。
 山田ですらその異様な雰囲気に気圧される。

「ぐっ……!」

 いつもクールな村井が苦い顔をした。ギャラリーの感情が彼女にも重くのしかかる。

「片側すら、上がらない……か。どうする……」村井は北原の顔を見て、気弱に尋ねる。「どうしたらいい?」

 北原は辛そうな顔をして彼女と目を合わせない。やがて下を向いて目を閉じた。

「うぐっ……!」

 村井は先程よりも一層濃い絶望の色を見せる。精神的は支柱はしらが沈黙してしまったことで、彼女は辛そうな声をあげた。
 次に後ろに振り向いて、観客に問いかける。

「どうしたらいい、この状況を打破する方法が分かる奴がいたら教えてくれ!」

 彼女の取り乱すような悲痛な叫びから、想像以上にプレッシャーがかかっていることが伺える。
 しかし誰もが口をつぐんで応えられない。なぜなら、『答え』がないからだ。

「いないのなら……。」

 山田には、村井が次に吐き出す言葉が想像できてしまった。
 『見てないで、消えてくれ』だ。
 やめてくれ、それを言ったら勝負が終わる。僕たちはそれから起こる混乱を産んだ悪客として店を追い出されるだろう。

 今はゲームセンターに憎悪ヘイトが向いている。その全ての憎悪ヘイトが彼女達に向いた時、感情的になった集団が何をするかは簡単に想像出来た。
 まず僕らはボコボコにされる。そこでガイアとクロウは死に、僕は左腕と右目を失う。
 そして彼女達は服を剥かれ欲望のままに蹂躙されるだろう。僕は泣きながらそれを目に焼き付けるように見ているはずだ。

 頼む、お願いだ。……やめてくれ。山田の心が押しつぶさそうになる。あ……。うつむいていた村井が顔を上げた。そして……口が、動く。




「……見てないで、消えt 「待たせてごめん、もう大丈夫。」 ……!?」




 ありがとう北原。……本当にっ……ありがとう……!

 ――――間に合ったっ!! 北原はまだ“折れて”いなかった!

 北原が彼女を落ち着かせるために肩を寄せた。

「私に任せて」



 ここから物語は、加速する――。



 ――残り回数「3」



続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

マクデブルクの半球

ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。 高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。 電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう─── 「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」 自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。

PetrichoR

鏡 みら
ミステリー
雨が降るたびに、きっとまた思い出す 君の好きなぺトリコール ▼あらすじ▼ しがない会社員の吉本弥一は彼女である花木奏美との幸せな生活を送っていたがプロポーズ当日 奏美は書き置きを置いて失踪してしまう 弥一は事態を受け入れられず探偵を雇い彼女を探すが…… 3人の視点により繰り広げられる 恋愛サスペンス群像劇

【改稿版】 凛と嵐 【完結済】

みやこ嬢
ミステリー
【2023年3月完結、2024年2月大幅改稿】 心を読む少女、凛。 霊が視える男、嵐。 2人は駅前の雑居ビル内にある小さな貸事務所で依頼者から相談を受けている。稼ぐためではなく、自分たちの居場所を作るために。 交通事故で我が子を失った母親。 事故物件を借りてしまった大学生。 周囲の人間が次々に死んでゆく青年。 別々の依頼のはずが、どこかで絡み合っていく。2人は能力を駆使して依頼者の悩みを解消できるのか。 ☆☆☆ 改稿前 全34話→大幅改稿後 全43話 登場人物&エピソードをプラスしました! 投稿漫画にて『りんとあらし 4コマ版』公開中! 第6回ホラー・ミステリー小説大賞では最終順位10位でした泣

拝啓、隣の作者さま

枢 呂紅
ライト文芸
成績No. 1、完璧超人美形サラリーマンの唯一の楽しみはWeb小説巡り。その推し作者がまさか同じ部署の後輩だった! 偶然、推し作家の正体が会社の後輩だと知ったが、ファンとしての矜持から自分が以前から後輩の小説を追いかけてきたことを秘密にしたい。けれども、なぜだか後輩にはどんどん懐かれて? こっそり読みたい先輩とがっつり読まれたい後輩。切っても切れないふたりの熱意が重なって『物語』は加速する。 サラリーマンが夢見て何が悪い。推し作家を影から応援したい完璧美形サラリーマン×ひょんなことから先輩に懐いたわんこ系後輩。そんなふたりが紡ぐちょっぴりBLなオフィス青春ストーリーです。 ※ほんのりBL風(?)です。苦手な方はご注意ください。

粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる

春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。 幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……? 幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。 2024.03.06 イラスト:雪緒さま

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

カジノ

しまおか
ミステリー
介護福祉士の資格を持つ立川翔は特殊な家庭事情により介護施設を辞め、O県に設立された日本初のカジノにおける高齢者専用VIPルームで働くことになる。一方、深野亜美は同じ施設の介護士として翔に助けられた過去があり、その頃から好意を持っていた為後を追ってカジノに転職した。しかし隔離された環境で別のVIPルームにおける客の接待係を与えられ悩む。そこで翔の伯母を担当する精神科医の日下部が、翔を取り巻く環境の変化に疑問を持ち、カジノについて調査をし始める。その結果は?

処理中です...