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第2話 ゲームセンター山田 (コメディ回)
待たせてごめん、
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いつの間にか、バトルエリアにいた強敵達も立ち上がり彼女達を見ていた。その数は三十人を軽く超える大人数だ。
店員は混乱が起きないようにと囲いの最前列に立って、インカムを口に近づけるようにして喋っている。先程から小声ではあるが何かを感情的に話しているようだ。
山田ですらその異様な雰囲気に気圧される。
「ぐっ……!」
いつもクールな村井が苦い顔をした。ギャラリーの感情が彼女にも重くのしかかる。
「片側すら、上がらない……か。どうする……」村井は北原の顔を見て、気弱に尋ねる。「どうしたらいい?」
北原は辛そうな顔をして彼女と目を合わせない。やがて下を向いて目を閉じた。
「うぐっ……!」
村井は先程よりも一層濃い絶望の色を見せる。精神的は支柱が沈黙してしまったことで、彼女は辛そうな声をあげた。
次に後ろに振り向いて、観客に問いかける。
「どうしたらいい、この状況を打破する方法が分かる奴がいたら教えてくれ!」
彼女の取り乱すような悲痛な叫びから、想像以上にプレッシャーがかかっていることが伺える。
しかし誰もが口をつぐんで応えられない。なぜなら、『答え』がないからだ。
「いないのなら……。」
山田には、村井が次に吐き出す言葉が想像できてしまった。
『見てないで、消えてくれ』だ。
やめてくれ、それを言ったら勝負が終わる。僕たちはそれから起こる混乱を産んだ悪客として店を追い出されるだろう。
今はゲームセンターに憎悪が向いている。その全ての憎悪が彼女達に向いた時、感情的になった集団が何をするかは簡単に想像出来た。
まず僕らはボコボコにされる。そこでガイアとクロウは死に、僕は左腕と右目を失う。
そして彼女達は服を剥かれ欲望のままに蹂躙されるだろう。僕は泣きながらそれを目に焼き付けるように見ているはずだ。
頼む、お願いだ。……やめてくれ。山田の心が押しつぶさそうになる。あ……。うつむいていた村井が顔を上げた。そして……口が、動く。
「……見てないで、消えt 「待たせてごめん、もう大丈夫。」 ……!?」
ありがとう北原。……本当にっ……ありがとう……!
――――間に合ったっ!! 北原はまだ“折れて”いなかった!
北原が彼女を落ち着かせるために肩を寄せた。
「私に任せて」
ここから物語は、加速する――。
――残り回数「3」
続く
店員は混乱が起きないようにと囲いの最前列に立って、インカムを口に近づけるようにして喋っている。先程から小声ではあるが何かを感情的に話しているようだ。
山田ですらその異様な雰囲気に気圧される。
「ぐっ……!」
いつもクールな村井が苦い顔をした。ギャラリーの感情が彼女にも重くのしかかる。
「片側すら、上がらない……か。どうする……」村井は北原の顔を見て、気弱に尋ねる。「どうしたらいい?」
北原は辛そうな顔をして彼女と目を合わせない。やがて下を向いて目を閉じた。
「うぐっ……!」
村井は先程よりも一層濃い絶望の色を見せる。精神的は支柱が沈黙してしまったことで、彼女は辛そうな声をあげた。
次に後ろに振り向いて、観客に問いかける。
「どうしたらいい、この状況を打破する方法が分かる奴がいたら教えてくれ!」
彼女の取り乱すような悲痛な叫びから、想像以上にプレッシャーがかかっていることが伺える。
しかし誰もが口をつぐんで応えられない。なぜなら、『答え』がないからだ。
「いないのなら……。」
山田には、村井が次に吐き出す言葉が想像できてしまった。
『見てないで、消えてくれ』だ。
やめてくれ、それを言ったら勝負が終わる。僕たちはそれから起こる混乱を産んだ悪客として店を追い出されるだろう。
今はゲームセンターに憎悪が向いている。その全ての憎悪が彼女達に向いた時、感情的になった集団が何をするかは簡単に想像出来た。
まず僕らはボコボコにされる。そこでガイアとクロウは死に、僕は左腕と右目を失う。
そして彼女達は服を剥かれ欲望のままに蹂躙されるだろう。僕は泣きながらそれを目に焼き付けるように見ているはずだ。
頼む、お願いだ。……やめてくれ。山田の心が押しつぶさそうになる。あ……。うつむいていた村井が顔を上げた。そして……口が、動く。
「……見てないで、消えt 「待たせてごめん、もう大丈夫。」 ……!?」
ありがとう北原。……本当にっ……ありがとう……!
――――間に合ったっ!! 北原はまだ“折れて”いなかった!
北原が彼女を落ち着かせるために肩を寄せた。
「私に任せて」
ここから物語は、加速する――。
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