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第2話 ゲームセンター山田 (コメディ回)

チェックパターンのシャツを憎悪すらしていた

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 北原の服装のテーマは《ゲーセンに居そうなキモオタ風お洒落アメカジ》だ。彼女はそういうダークな皮肉を混じえる雑味のある人だという事は知っていた。
 ある意味では恐ろしさを知らない子供っぽい雰囲気も魅力的だった。
 緑色で薄手のチェックシャツにベージュのチノパン、そしてスニーカーは緑色のダンロップという徹底ぶりだった。

 村井の服装にテーマをつけるとすれば、《シティガールの彼氏と過ごす休日ストリート系》だろうか。
 まばゆい白色のビッグシルエットパーカーをワンピースのように着こなしている。
 下方に見える青色のスニーカーまでは、肋骨を粉砕する力強さを感じる見事なおみ足があった。

 ……村井さんはズボンを穿いていないのだろうか、いやまさか……。山田は、ミニスカートにも見える女子の膝上までのパーカーワンピースのボトムスは何を合わせているのか、前々から気になっていた。

 シルエットで言えば北原は男性らしい逆三角形、村井は女性らしいひし形というコーディネートで、二人並んでも非常にバランスが良かった。

 そんな彼女達に比べ、クロウは白い顔がくっきりと浮き上がるほど全身黒ずくめ――あだ名の元ネタ――だし、ガイアは背景と同化しようとしているのかと思うほどの全身アースカラー――あだ名の元ネタ――の服装で顔だけはくっきりと浮き出ていた。

 そして山田は白いTシャツに黒に見えるほど濃いジーンズとシンプルに決めてはいるが、伸ばしっぱなしの強い癖っ毛のせいで、チェックシャツを着ていると気の弱いオタクに見られることが多かった。
 そのため彼はチェックパターンのシャツを憎悪すらしていた。……北原さんのは別だと心の中で弁明する。

 クロウとガイアが話す北原の後ろで、つまらなさそうにしていた村井は、彼女の袖をくいっと引っ張る。
 もう行こ、と聞こえそうな山田内萌え仕草ランキング上位の行い。北原はそんな村井を輪の中に引っ張りこんだ。

 「カードゲームはね、すごいんだよ」北原が得意げに村井に説明しだす。「このゲームはろうにゃくにゃん……? ろうりゃくにゃん……。」

 村井がゆっくり「老、若、男、女」と言うと、北原が恥ずかしそうに笑いながら「知ってる! 言えなかっただけ!」と言った。
 山田はこのやりとりを見ているだけで浄化されそうだった。

「……このゲームは老若、男女がお互いのプライドをかけて同じ条件で戦えるんだ。それだけじゃなくて、常に誰かの発想で新しい戦術が産まれる。だからこそ誰もが本気で遊べる楽しいものなんだ」

「ふーん」村井はふんわりと微笑み、優しい相づちを打つ。

 山田は北原の言った説明に感動していた。それは、自分がこのゲームの楽しさを聞かれた時の、クサいかなと思いながら言った言葉だった。
 一語一句変わらずに覚えていてくれたんだ。彼女のファンでいて良かったと彼は思った。


続く
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