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1話 21世紀の精神異常者
鼻に近づけていた下着を奪われた
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そういえば火を起こすのは久しぶりだ。今日みたいな天気の良い日は火をおこして、そこでゆっくり読書をするのも良いかもしれない。
焚き火はとても良いものだ。非現実感から興奮することもあれば、心地よい乾いた木が燃焼する音と、とろとろとした光の揺らめきにはとても心が落ち着く。
また、病的放火といって火をつけたり、見ることに性的興奮を覚える事もあるらしい。近頃は何でも病名(りゆう)を付けたがるな。ならば火事で混乱しているなかで利益を得る行為、火事場泥棒にも病名はあるのだろうか。
――焚き火を通してどんな気分になりたいかは、火を灯した者の受け取り方次第である。
最初に面倒と思っていた気持ちも今は消えさった。私は誘ってくれた志帆に感謝しつつ、ワクワクする気持ちで鼻息が荒くなる。そうして火をおこすには丁度良い、人に見られない河原に到着した。
「えっ。志帆、火の起こし方知らなかったの? 何で誘った」
「てへぺろ!」舌を浅く噛んでウインクする彼女。
「はぁー。……萌えー」
もう締めたからご法度じゃなかったの?
いいからザックを置いて、椅子の近くに燃料集めるよ! おー!
次は落ちてる石と木でテーブル作るからね! サーイエッサー!
――パチッ。パチパチ。
火を灯す。乾いた草木のおかげで、やはりライターの小さな火だけでも事は足りた。
橙色の光は、湖畔に生じる優しいさざなみのように静かに揺蕩う。 私達は椅子に腰掛けて、ゆったりとしながらその火を見つめた。
この揺らめきから目が離せなくなるのはなぜなんだろう。それは志帆も同じみたいだった。
「めっちゃ簡単に火つけたな」
「ふふふ、やり方さえ知っていれば誰でも出来るお手軽アウトドア。それが焚き火」
火種が出来た時に仕込んでおいたアルミホイルの包みに火が通った頃だろう。
燃料にするために拾った枝で慎重に引っかき出す。それは軍手をはめた手で持ち上げても、長くは持っていられない程熱かった。
テーブルに置いたそれを、冷めるのを待たずして志帆は箸で器用に包みを開ける。
――ふわりとした食欲をそそる香り付きの湯気があがる。彼女は「いただきます」と言ってから、その中身を大きくあけた口で受け止めた。
「ホイルで焼いたベーコンとチーズめちゃウマ」志帆の顔がほころぶ。
はふはふと言いながら彼女は頬張る。よだれが出そうになるくらい美味しそうに食べるな……。そう思っていると、はい北原も。と言って渡してくれた。いただきます。
彼女の買った食材は肉類とチーズ。温めて美味しい物の定番ではあるが外せない食材だ。
「外で食べると何でも美味しく感じられるよね。私のおすすめ食え。アスパラと鮭のホイル包み焼き、マヨネーズもしくはバター乗せクエ」私も食べながら、他の調理した物をテーブルに乗せていく。
「…………。んほぉマヨシャケ最高。アスパラも旬で甘くてうっまい」口に合わなかったかな。間があったのは気のせいだろうか。
私も志帆も湯気をはき出しながら食べる。
あー分かる分かる。熱いまま口に運んだ方が美味しく感じるよね。その後口の中の皮がべろべろにはがれて後悔するのも分かるよ……。
「アスパラベーコンもいいよね。さぁクエ。オレはホタテとナスにバター乗せてクウ。ウマイ」
「……なんか参加人数増えてない!? カタコトのやつ!」志帆がテレビのひな壇芸人みたいに声を張る。
「そんなはずないよぉ! 志帆なに言ってんの。怖いこと言わないアア、やっとデラレたァ♪」
「ああーこないで! やばそうな第二の人格出てこないでー!!」
「「ぶふっwww」」
――ボウッ……パチッ。パチパチ。
新たに燃料を火にくべると、当たり前だと言うように熱く高い炎となった。
人は本能で火を怖がる。人類が初めて発火という自然現象に出会ったのは、木に落雷した時だと言われている。
遺伝子に刻まれた火災への恐怖。それなのになぜ、私達はそれに手を伸ばし熱を得て、ゆらめきを見て心を落ち着けるようになったんだろう。
「もし私がストーカー被害にあってるって言ったら、志帆はどうする?」
「一緒に警察に相談しに行こうって言う」即答される。真面目か。それも彼女の良いところだが。
「私、出来るなら世界を平和にしたいって思ってる。平和って言葉は人の幸せって意味でも使ってるけど」
「うん。ストーカーどこ行った」
「そんな考え方だから、ストーカーで被害を受ける人を助けたいし、加害してしまう人も助けたい」
「……うん?」
「どちらも苦しんでいるんじゃないかって。だから、どうしたら皆が幸せになれるのかなって、考えたんだ」
「うん……」
「だったらまずは加害者を、ストーカーの気持ちを理解してあげればいいんじゃないかなって。怖がらずに頑張れば、何か変わるんじゃないかなって、そう思ったんだ」
「……。」黙ってしまった志帆の表情は、すごく悲しそうだった。だから、
「だから、さ。 げ……げへへ、これ、すごくイイ匂いだね……♪ ネッ?」
私のヤバそうな第二人格を出す。
「なにそれ……布? ……――っ!!?」
志帆の二重の大きな目が、更に大きくなり手の平を口に当てる。信じられないという表情をした彼女は、私の部屋とは違って女性らしかった。
「気付いちゃった? そうだよ、これは志帆にゃんが持ってきてた替えの下着」
「きも! きもいから!」私の鼻に近づけていた下着を奪われた。「……んで、ストーカーの気持ちは理解できた?」 彼女は呼吸音に混じる恥じらいを隠すように、冷たい目で私を睨んだ。
「わからない。志帆の反応じゃ心の****が****しない」
「されても困る。北原はストーカーする奴よりも先に、性的いやがらせをされる人の気持ちを分かったほうがいいな」
「あ、ごめん……(ガチで怒ってるこれ)」
やはり志帆は表情での感情表現が乏しいのではない。ただ、表に出さないだけだった。それだけなのに、こんなに明るい彼女は学校で一人ぼっちだ。
そうなってしまう様々な環境が、私には忍び難い。しかし私にはどうすることも出来なかった。
――パチッ。パチパチ。
火を囲むと、なぜだかそこは、私達だけの空間になった気がした。
ここは屋外の河原で、近くでさらさらと川も流れていて、少ないけれど虫だって飛んでいるのに。
私達は周りのほとんどを受け入れながら、“そういう空間なんだ”と、リラックスすることが出来ている。
あははは。
「はーほんと面白い。ちきしょう、志帆のお笑いの才能は底がしれねぇな!」
「だろ? 今のは自信あった。あっ、そうだ」彼女は火種を見つめた。「北原、私さ、東京行こうと思ってる」
「へっ?」
「東京で、作家になろうと思う」
私が自分でも驚くくらい気の抜けた返事をすると、志帆はしっかりと私の目を見て伝えてきた。
「――――それ、健太には言ったのか?」私は真面目な顔で言う。
「いや、言ってないけど……」
「……ふざけんなっ! あいつはずっと、お前の事が好きだったんだぞ!」
「えっ!? そう……だったんだ……」
「あいつの気持ちも考えてやれよ! 健太は、あいつはずっと……待ってんだぞ……」
「そ、そんな、困るよ」
「……行けよ」
「え?」
「あいつに会いに行ってやれって言ってんだよ!!」
「いや、健太って誰だよ」
「草」
――シュゥー……。
拾ってきた燃料を全て燃やし尽くした。
あんなに沢山の枯れ木があったのに、火に焚くべたらすぐに無くなってしまう。時間にしたら長いのに、体感で言えばほんのちょっとだ。
既に太陽はてっぺんを過ぎていて、目に映る景色が少しづつ黄色に見える。私は小さい頃から、夕日よりもいまの時間帯のほうが物悲しく感じた。
「燃えきったね」
私の言葉に、彼女は寂しそうにうなずく。 今の志帆の気持ちは分かる気がする。
なんでだろうね。火はいつだって灯せるのに、消えちゃう時はいつだって名残惜しい。
「志帆、片付けて帰ろっか」
「うん」
焚き火を囲むと暖かさにあてられて、素直に気持ちを話せる素敵な雰囲気になる。
私はその、人と心を通わせる感覚に癒しを感じているんだ。……心が通うとかそんなことは、ただの私の思い込みかもしれないけどね。そう付け加える。
それでも私は明日からまた頑張ろうとしている。
今日の青空みたいに、たしかに晴れやかな気持ちになっていた。
――――――――――――――――――――
「北原に一つ伝えなきゃいけないことがある」
「うん? なに?」
帰り道では、理由は無いけど二人で自転車を押して帰った。日は傾いていて、そのうち赤くなるのだろう。
「旅を楽しむのに重要なのは、どこに行くかじゃない」志帆が私の目を見る。「――誰と行くか、なんだ」
「??? …………あぁー。」
はいはい。わかりましたよ。
志帆から話題を振ったのに恥ずかしいのか、言い終えた彼女の顔は真っ直ぐ前を向いていた。しかし私が何を言うか期待して待っている。そんな雰囲気だったから、私も真っ直ぐに伝える。
「今日のご飯は外で食べるからじゃなくて、志帆と一緒だから美味しかったよ」
「ふーん」日の光のせいかもしれない、彼女の顔が少し赤らんで見えた。「……あーもーうっとおしいからニヤニヤすんなー」
どうやら当たりだったみたいだ。煙くさい志帆のポニーテールが、歩調に呼応したように嬉しそうに揺れる。
私達は肩を並べて、ゆっくり帰っていく。
志帆、来月のお祭り一緒にいこーよ。
人がたくさんいるからやだ。
えぇー陰の者かよー。
は!? 別に陰キャラとかじゃないから! クラスで浮いてるとかねーから!!
あっ(察し)
続く
焚き火はとても良いものだ。非現実感から興奮することもあれば、心地よい乾いた木が燃焼する音と、とろとろとした光の揺らめきにはとても心が落ち着く。
また、病的放火といって火をつけたり、見ることに性的興奮を覚える事もあるらしい。近頃は何でも病名(りゆう)を付けたがるな。ならば火事で混乱しているなかで利益を得る行為、火事場泥棒にも病名はあるのだろうか。
――焚き火を通してどんな気分になりたいかは、火を灯した者の受け取り方次第である。
最初に面倒と思っていた気持ちも今は消えさった。私は誘ってくれた志帆に感謝しつつ、ワクワクする気持ちで鼻息が荒くなる。そうして火をおこすには丁度良い、人に見られない河原に到着した。
「えっ。志帆、火の起こし方知らなかったの? 何で誘った」
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「はぁー。……萌えー」
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いいからザックを置いて、椅子の近くに燃料集めるよ! おー!
次は落ちてる石と木でテーブル作るからね! サーイエッサー!
――パチッ。パチパチ。
火を灯す。乾いた草木のおかげで、やはりライターの小さな火だけでも事は足りた。
橙色の光は、湖畔に生じる優しいさざなみのように静かに揺蕩う。 私達は椅子に腰掛けて、ゆったりとしながらその火を見つめた。
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「めっちゃ簡単に火つけたな」
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火種が出来た時に仕込んでおいたアルミホイルの包みに火が通った頃だろう。
燃料にするために拾った枝で慎重に引っかき出す。それは軍手をはめた手で持ち上げても、長くは持っていられない程熱かった。
テーブルに置いたそれを、冷めるのを待たずして志帆は箸で器用に包みを開ける。
――ふわりとした食欲をそそる香り付きの湯気があがる。彼女は「いただきます」と言ってから、その中身を大きくあけた口で受け止めた。
「ホイルで焼いたベーコンとチーズめちゃウマ」志帆の顔がほころぶ。
はふはふと言いながら彼女は頬張る。よだれが出そうになるくらい美味しそうに食べるな……。そう思っていると、はい北原も。と言って渡してくれた。いただきます。
彼女の買った食材は肉類とチーズ。温めて美味しい物の定番ではあるが外せない食材だ。
「外で食べると何でも美味しく感じられるよね。私のおすすめ食え。アスパラと鮭のホイル包み焼き、マヨネーズもしくはバター乗せクエ」私も食べながら、他の調理した物をテーブルに乗せていく。
「…………。んほぉマヨシャケ最高。アスパラも旬で甘くてうっまい」口に合わなかったかな。間があったのは気のせいだろうか。
私も志帆も湯気をはき出しながら食べる。
あー分かる分かる。熱いまま口に運んだ方が美味しく感じるよね。その後口の中の皮がべろべろにはがれて後悔するのも分かるよ……。
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「……なんか参加人数増えてない!? カタコトのやつ!」志帆がテレビのひな壇芸人みたいに声を張る。
「そんなはずないよぉ! 志帆なに言ってんの。怖いこと言わないアア、やっとデラレたァ♪」
「ああーこないで! やばそうな第二の人格出てこないでー!!」
「「ぶふっwww」」
――ボウッ……パチッ。パチパチ。
新たに燃料を火にくべると、当たり前だと言うように熱く高い炎となった。
人は本能で火を怖がる。人類が初めて発火という自然現象に出会ったのは、木に落雷した時だと言われている。
遺伝子に刻まれた火災への恐怖。それなのになぜ、私達はそれに手を伸ばし熱を得て、ゆらめきを見て心を落ち着けるようになったんだろう。
「もし私がストーカー被害にあってるって言ったら、志帆はどうする?」
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「私、出来るなら世界を平和にしたいって思ってる。平和って言葉は人の幸せって意味でも使ってるけど」
「うん。ストーカーどこ行った」
「そんな考え方だから、ストーカーで被害を受ける人を助けたいし、加害してしまう人も助けたい」
「……うん?」
「どちらも苦しんでいるんじゃないかって。だから、どうしたら皆が幸せになれるのかなって、考えたんだ」
「うん……」
「だったらまずは加害者を、ストーカーの気持ちを理解してあげればいいんじゃないかなって。怖がらずに頑張れば、何か変わるんじゃないかなって、そう思ったんだ」
「……。」黙ってしまった志帆の表情は、すごく悲しそうだった。だから、
「だから、さ。 げ……げへへ、これ、すごくイイ匂いだね……♪ ネッ?」
私のヤバそうな第二人格を出す。
「なにそれ……布? ……――っ!!?」
志帆の二重の大きな目が、更に大きくなり手の平を口に当てる。信じられないという表情をした彼女は、私の部屋とは違って女性らしかった。
「気付いちゃった? そうだよ、これは志帆にゃんが持ってきてた替えの下着」
「きも! きもいから!」私の鼻に近づけていた下着を奪われた。「……んで、ストーカーの気持ちは理解できた?」 彼女は呼吸音に混じる恥じらいを隠すように、冷たい目で私を睨んだ。
「わからない。志帆の反応じゃ心の****が****しない」
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そうなってしまう様々な環境が、私には忍び難い。しかし私にはどうすることも出来なかった。
――パチッ。パチパチ。
火を囲むと、なぜだかそこは、私達だけの空間になった気がした。
ここは屋外の河原で、近くでさらさらと川も流れていて、少ないけれど虫だって飛んでいるのに。
私達は周りのほとんどを受け入れながら、“そういう空間なんだ”と、リラックスすることが出来ている。
あははは。
「はーほんと面白い。ちきしょう、志帆のお笑いの才能は底がしれねぇな!」
「だろ? 今のは自信あった。あっ、そうだ」彼女は火種を見つめた。「北原、私さ、東京行こうと思ってる」
「へっ?」
「東京で、作家になろうと思う」
私が自分でも驚くくらい気の抜けた返事をすると、志帆はしっかりと私の目を見て伝えてきた。
「――――それ、健太には言ったのか?」私は真面目な顔で言う。
「いや、言ってないけど……」
「……ふざけんなっ! あいつはずっと、お前の事が好きだったんだぞ!」
「えっ!? そう……だったんだ……」
「あいつの気持ちも考えてやれよ! 健太は、あいつはずっと……待ってんだぞ……」
「そ、そんな、困るよ」
「……行けよ」
「え?」
「あいつに会いに行ってやれって言ってんだよ!!」
「いや、健太って誰だよ」
「草」
――シュゥー……。
拾ってきた燃料を全て燃やし尽くした。
あんなに沢山の枯れ木があったのに、火に焚くべたらすぐに無くなってしまう。時間にしたら長いのに、体感で言えばほんのちょっとだ。
既に太陽はてっぺんを過ぎていて、目に映る景色が少しづつ黄色に見える。私は小さい頃から、夕日よりもいまの時間帯のほうが物悲しく感じた。
「燃えきったね」
私の言葉に、彼女は寂しそうにうなずく。 今の志帆の気持ちは分かる気がする。
なんでだろうね。火はいつだって灯せるのに、消えちゃう時はいつだって名残惜しい。
「志帆、片付けて帰ろっか」
「うん」
焚き火を囲むと暖かさにあてられて、素直に気持ちを話せる素敵な雰囲気になる。
私はその、人と心を通わせる感覚に癒しを感じているんだ。……心が通うとかそんなことは、ただの私の思い込みかもしれないけどね。そう付け加える。
それでも私は明日からまた頑張ろうとしている。
今日の青空みたいに、たしかに晴れやかな気持ちになっていた。
――――――――――――――――――――
「北原に一つ伝えなきゃいけないことがある」
「うん? なに?」
帰り道では、理由は無いけど二人で自転車を押して帰った。日は傾いていて、そのうち赤くなるのだろう。
「旅を楽しむのに重要なのは、どこに行くかじゃない」志帆が私の目を見る。「――誰と行くか、なんだ」
「??? …………あぁー。」
はいはい。わかりましたよ。
志帆から話題を振ったのに恥ずかしいのか、言い終えた彼女の顔は真っ直ぐ前を向いていた。しかし私が何を言うか期待して待っている。そんな雰囲気だったから、私も真っ直ぐに伝える。
「今日のご飯は外で食べるからじゃなくて、志帆と一緒だから美味しかったよ」
「ふーん」日の光のせいかもしれない、彼女の顔が少し赤らんで見えた。「……あーもーうっとおしいからニヤニヤすんなー」
どうやら当たりだったみたいだ。煙くさい志帆のポニーテールが、歩調に呼応したように嬉しそうに揺れる。
私達は肩を並べて、ゆっくり帰っていく。
志帆、来月のお祭り一緒にいこーよ。
人がたくさんいるからやだ。
えぇー陰の者かよー。
は!? 別に陰キャラとかじゃないから! クラスで浮いてるとかねーから!!
あっ(察し)
続く
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