上 下
5 / 5

話し合い

しおりを挟む
あの後、庭で3時間にも及ぶ宴が開催された。その間、私たちは貴族への挨拶があり休憩する暇すらなく、ただただ顔に愛想のいい笑顔を貼り付けていた。挨拶が終わったのは宴が残りわずかになってからだった。
「アーク、レーナ嬢ずっと立ちっぱなしで疲れただろう?食堂で休んでなさい。」
「いいのですか!レーナ行こう?」
確かにもう限界かもしれない。ここは休んでおいた方が良さそうだ。
「そうですわね。では行きましょう」
「あとで、食堂に迎えに行くからなー」
お父様のそんな声が聞こえた。
「レーナ、疲れた?」
「疲れました。」
「そりゃ、疲れないわけないか。」
「3時間近く、ずっと立っていたんですもの。」
アークは、私と2人きりになると堅苦しい貴族同士の会話ではなく、平民同士の会話のようになる。
理由は、分からないけど、いつか教えてもらう。アークは私に隠し事はしない。隠し事はするけど、話してもいいとアークが思ったら、話してくれる。私もだ。転生者だってことは言ってない。
「レーナ、入って」
「ありがとう」
食堂の椅子に向かい合って座る。
「アーク、国王が来るまで何かする?」
「話し合いが必要だ。」
「そうですね。」
「レーナ、サフィア王国の問題点を上げて。」
「うーん、この3年間色々な本読んでメイドさんとか近衛兵さんとかに聞いて、わかったことはこのまま行くと、財政難になる。」
「そうだね。財政難になったら、飢饉が起きた時にも対応できない可能性がある。それに、そうやって民の不満を募らせると…」
「革命が起きる。でしょ?」
「そうだ。このままでは、結構まずい。」
「まず、支出を減らして、収入を増やさなければいけない。」
「そうなんだが、今の俺たちじゃ国王に説明することも難しい。」
「そうね。私もアークも3歳の頭してないもの。」
アークが肩を小刻みに揺らし始めた。
「ねぇー」
「ごめん、ごめん。なにかのお遊びだと思われて終わるな。」
ごめん、ごめんって言ってるくせにまだ笑ってる。
「そうだね。」
「やっぱり、誰か大人を味方につけないとダメか。」
「でも、誰を…」
ノック音が響いた。
「入るぞ」
「どうぞ」
「ゆっくり休めたか?」
「えぇ。ゆっくり休めましたわ。」
「そうか。では、話したいことがある。皆座っておくれ。」
お父様とお母様は、私を挟むように座り、国王とその奥様もアークを挟むように座った。
「それで、お話とは?」
「まだまだ、先のことだが話しておきたいことがある。」
「アークとレーナ嬢が行く、学校についてなのだ。」
「学校ですか…」
「あぁ、レーナ嬢の許可を貰ってからなのだが、ぜひともフェリルラ学園に行ってもらいたいと思っている。」
「フェリルラ学園ですか。フェリルラ学園は、サフィア王国にある貴族たちが集まる学園。各国の主要貴族が集まる学園。」
「そうだ。」
フェリルラ学園は、サフィア王国が各国に誇れるものの1つ。この世界にはサフィア王国、エメラルダ王国、ルミナス王国の3つの国がある。全部宝石の名前が由来だ。まぁ、この3つの国の貴族が集まるのがフェリルラ学園である。
「私は、アークと同じ学校に行く。」
「レーナ!?」
「そうか。アークはフェリルラ学園に行くことになっている。」
「では、私もフェリルラ学園に行きますわ。」
「レーナ、ありがとう。とても心強いよ」
「お父様いいですわよね?」
「レーナが決めたことならばいいが…」
「国王陛下、ということでお願いいたしますわ。」
「了解した。あと、レーナ嬢が魔法の才能を開花させた時には、こちらでレーナ嬢を預かりたいと思っている。」
「なぜ?」
「アークと同じ環境で学ばせれば2人はいいライバルになるだろう。1週間に1回はレーナ嬢には、アーリン公爵領に帰らせよう。」
「国王陛下、それはいい考えですわ!」
「確かに、そうかもしれないな。」
「了承ということでよろしいか?アーリン公爵家」
「いいよな、ローゼ。」
「えぇ、レーナが決めたことですもの。」
「国王陛下、レーナをお願いします。」
「親友よ、なにかがあってもレーナ嬢は必ず守る。」
「親友ですか。親友の言葉を信じない訳にはいきませんからね。お願いしますよ。」
えっと、お父様と国王陛下って親友だったの!?
確かに仲いいなとは、思ってたけど…
「レーナ頑張るんですよ。」
「しっかり、学ぶんだぞ。」
「お母様お父様まだまだ、先のことですよ。」
「今から、気を引き締めとけ。」
「期待に応えられるように頑張りますね。」
「これで、話は終わりだ。魔法の才能の開花楽しみにしてるぞ。」
「では、帰らせてもらいますわね。」
「国王陛下、ありがたいお話ありがとうございました。」
「どちらにも利益のある話、気にする事はない。」
「レーナ、次に会えるのは、魔法の才能を開花させてからだな。」
「そうですわね。アーク、お体に気をつけて。」
「あぁ、レーナも」
誰もこの時、この話が運命を変える分岐点ということを知らなかった…
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

処理中です...