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第三章
14話 秘密
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耳飾り騒動の後、就寝の時間。
今日の添い寝係はシャルだったんだけど……流石に遠慮させてもらった。
最後の最後まで粘られたけど、今日だけは無理。
あの雰囲気のまま添い寝をして無事で済む自信がない。
なんとかシャルに納得してもらって、おやすみの挨拶をしようとしたところで……。
おやすみのキスを待つシャルの様子がいつもと違う……と思う。
僕と同じくらいの身長が有るシャルは、いつもはおでこへのキスを待つように少し膝をかがめてくれてるんだけど……。
おでこが遠い。
いつもの感覚でキスしようとすると、そこには……。
いや、シャルがなに言いたいかよく分かるし、僕も望むところではあるんだけどね。
そういうことはきちんと段階を踏まないとね?
基本的にシャルにしたことに後悔はないんだけど、段階を踏むのをすっ飛ばしたのだけは不味かった。
かと言って、ここらへんはきちんとリンとも話をしないといけないし……。
本当に不味かった。
背伸びをしてなんとかおでこにキスをする。
「お、おやすみなさい……」
「むー……」
シャルは不満そうに少しむくれてるけど……。
「…………お、おやすみなさい、ハルト様」
追加で頭を撫でていたらなんとか許してくれた。
………………むくれてたシャルが可愛かった。
……落ち着こう。
久しぶりに一人でベッドに横になって、ふと疑問が頭に浮かぶ。
思えばだいぶ『前』とは違う展開になっているけど、『ゲーム』として大丈夫なんだろうか?
これ本当に10年後の『オープニング』にたどり着くんだろうか?
このまま行くと10年後の勇者ユーキパーティーにはシャルとリンが混じってそうだし、その代わりにクライブくん他のこの村出身の仲間はいなくなりそうだ。
彼らのうちの何人かはイベント時の重要キャラとして途中離脱するし、僕も『不死騎士』になってしまう。
そこら辺はどういうことになるんだろう?
普通に考えればそういうイベントは消えることになるんだけど……『ゲーム』ってそういうの許されるんだろうか?
あまりにもシナリオが変わり過ぎたら、突然ブツンと『三週目』が始まったり、あるいは『二週目』のまま無理やり『修正』されたりするんだろうか?
色々警戒はしておくとしても、こればっかりは僕にはどうなるか分からない。
『シナリオ』を作っている『神』達次第だ。
「…………怖いけど、その時になってみないと分からないよなぁ」
「なぁにー?せんせえなんか怖いのー?」
無意識の独り言に返事が返ってきた。
気づけば左腕がプニっとしてスベっとして暖かくて気持ちいい。
「えっ!?ノゾミちゃん、どうしたのっ!?」
いつの間にやらベッドの中にノゾミちゃんがいて、僕の左腕に抱きついていた。
本当に僕は考え込んでいる時の子どもたちへの警戒心が死んでいる。
「シャルちゃんがね、今日代わってくれたの」
な、なるほど、そういうことか。
「え、えっと、ユーキくんは?」
「んー?お兄ちゃんは、今日は来ないよー」
「え?そうなの?」
ユーキくんとノゾミちゃんはセットってイメージがあったからちょっとびっくりした。
「うん。はじめは一緒に来るって言ってたんだけど、シャルちゃんとね、なんか『アカシ』?の話ししてたら急に「今日はノゾミ一人で行ってね」って言われちゃった」
「そ、そうなんだ……」
耳飾りの『意味』については本当は黙っているつもりだったのを、シャルがうっかり漏らしちゃったらしいからユーキくんも恥ずかしくなったのかな?
なんにしても助かった。
今日はシャルともユーキくんともリンとも一緒に寝られる気がしない。
「せんせえ、怖い時はこうするといいんだよー」
また考え込んでしまった僕にノゾミちゃんがそう言うと、僕の頭を全身で包み込むように抱きしめてくれる。
むぅ……なるほど、顔中暖かくて柔らかくていい匂いですごい落ち着く。
ノゾミちゃんの暖かさに包まれて急速に意識が暗闇に飲み……こまれ切る前に気づけた。
これ、多分ノゾミちゃんもやって欲しいことなんだろうな。
怖がってると思った僕にやってくれたということは、ノゾミちゃんにとって一番安心する寝方なんだろう。
その割には今までこういう寝方はしたことなかったけど、いつもは僕の左右にユーキくんと並んで寝てるからなー。
完全に独り占め状態専用の寝方なので、我慢しちゃう子のノゾミちゃんは言い出さなかったんだろう。
「ありがとう、ノゾミちゃん。
それじゃ、次は僕の番ね」
「ふぇ……?」
ノゾミちゃんも寝かけてたみたいて申し訳なかったけど、今度は逆に僕がノゾミちゃんを抱きかかえた。
まだまだ小さなノゾミちゃんは、頭だけじゃなくって全身すっぽり僕の中に収まってしまう。
「うへへー……せんせえあったかぁい……」
寝ぼけてるような怪しい声でそういったノゾミちゃんはひとしきり僕に体をこすりつけると、やがて安らかな寝息を立て始める。
規則的で可愛らしい寝息といい、腕の中の暖かさといい…………これ僕もダメだ。
急速に頭を支配する眠気に今度こそ耐えることなく、ノゾミちゃんと一緒に眠りについた。
目が覚めると目の前にノゾミちゃんの顔があった。
しかも、その可愛らしいまつげを一本一本数えられそうなくらい近い。
このまま可愛い寝顔を眺め続けていたいけど……僕はいい加減起きる時間だ。
窓から差し込み始めている朝の光を見ながら起きようとして、この寝方唯一の欠点に気づいた。
ノゾミちゃんを抱え込んでるから僕が起きたらまず間違いなくノゾミちゃんも起きる。
ど、どうしよう?
リンは僕が起きてくるのをもう待っているだろうし、それがなくても日課はできるだけ続けておきたい。
かと言って、ここまで気持ちよさそうに寝ているノゾミちゃんを起こすのは非常に忍びない……。
ノゾミちゃんは寝てると言うのに満面の笑顔で、涎まで垂らして大変幸せそうな寝顔で熟睡してる。
いっそのこと今日はサボるか、それともノゾミちゃんを魔法で眠らせるか。
そんなことを考えている僕の前で、ノゾミちゃんのまぶたがピクピクと震えだした。
どうやら悩んでいる僕の身じろぎかなんかで起こしてしまったようだ。
「…………おはよーごじゃーましゅ」
「おはようノゾミちゃん。
起こしちゃってごめんね」
起こしちゃったんなら仕方ないと、体を起こすとノゾミちゃんも起き上がってベッドの上にペタンと座る。
だけど、まだ完全に寝ぼけている様子で半分以上夢の中にいるみたいだ。
「僕はこれからちょっと運動してくるから、ノゾミちゃんはもうちょっと寝ててね」
「ふぁい……」
寝言に近い声で返事をしたノゾミちゃんだけど、横にならずに座ったままなにかを探すようにキョロキョロしている。
「えっと……ユーキくんなら部屋だよ?
部屋帰る?」
いつも一緒に寝ているユーキくんを探しているのかと思ったんだけど……半分あたりで半分外れだったみたいだ。
「……そだぁ……せんせえとだけだったんだぁ……」
ノゾミちゃんはまだ溶けたままの声でそうつぶやくと、ニコーって嬉しそうに笑って顔を近づけてくる。
え?
「ちゅっ」
どこまで近づけてくんの?と思ったときには唇と唇が触れ合っていた。
「ノ、ノゾミちゃん?」
「うへへー」
とんでもないことをしでかしたノゾミちゃんは、呆然としている僕を放って嬉しそうに笑いながら横になって頭までシーツに包まっている。
こ、子供のすることなんだしあまり深く考える必要はない。
キスは初めてだったけど、まあこれもいつものスキンシップの延長線上だ。
それは分かっているんだけど、ちょっと……いや、かなりドキドキしてる。
落ち着こう。
一度深呼吸だ。
深呼吸は全てを解決してくれる。
「えっと、それじゃ、僕は外に行ってくるね?」
「はーい」
シーツに包まったまま動かなくなっていたので寝直したのかと思っていたけど、思ったよりしっかりした返事が返ってきた。
そして、部屋から出ていこうとドアを開けたところで……。
「みんなには内緒ね?」
ノゾミちゃんが小さな声で恥ずかしそうにそう言った。
…………まさか最初に誰にも言えない秘密が出来てしまうのがノゾミちゃんだったとは……。
今日の添い寝係はシャルだったんだけど……流石に遠慮させてもらった。
最後の最後まで粘られたけど、今日だけは無理。
あの雰囲気のまま添い寝をして無事で済む自信がない。
なんとかシャルに納得してもらって、おやすみの挨拶をしようとしたところで……。
おやすみのキスを待つシャルの様子がいつもと違う……と思う。
僕と同じくらいの身長が有るシャルは、いつもはおでこへのキスを待つように少し膝をかがめてくれてるんだけど……。
おでこが遠い。
いつもの感覚でキスしようとすると、そこには……。
いや、シャルがなに言いたいかよく分かるし、僕も望むところではあるんだけどね。
そういうことはきちんと段階を踏まないとね?
基本的にシャルにしたことに後悔はないんだけど、段階を踏むのをすっ飛ばしたのだけは不味かった。
かと言って、ここらへんはきちんとリンとも話をしないといけないし……。
本当に不味かった。
背伸びをしてなんとかおでこにキスをする。
「お、おやすみなさい……」
「むー……」
シャルは不満そうに少しむくれてるけど……。
「…………お、おやすみなさい、ハルト様」
追加で頭を撫でていたらなんとか許してくれた。
………………むくれてたシャルが可愛かった。
……落ち着こう。
久しぶりに一人でベッドに横になって、ふと疑問が頭に浮かぶ。
思えばだいぶ『前』とは違う展開になっているけど、『ゲーム』として大丈夫なんだろうか?
これ本当に10年後の『オープニング』にたどり着くんだろうか?
このまま行くと10年後の勇者ユーキパーティーにはシャルとリンが混じってそうだし、その代わりにクライブくん他のこの村出身の仲間はいなくなりそうだ。
彼らのうちの何人かはイベント時の重要キャラとして途中離脱するし、僕も『不死騎士』になってしまう。
そこら辺はどういうことになるんだろう?
普通に考えればそういうイベントは消えることになるんだけど……『ゲーム』ってそういうの許されるんだろうか?
あまりにもシナリオが変わり過ぎたら、突然ブツンと『三週目』が始まったり、あるいは『二週目』のまま無理やり『修正』されたりするんだろうか?
色々警戒はしておくとしても、こればっかりは僕にはどうなるか分からない。
『シナリオ』を作っている『神』達次第だ。
「…………怖いけど、その時になってみないと分からないよなぁ」
「なぁにー?せんせえなんか怖いのー?」
無意識の独り言に返事が返ってきた。
気づけば左腕がプニっとしてスベっとして暖かくて気持ちいい。
「えっ!?ノゾミちゃん、どうしたのっ!?」
いつの間にやらベッドの中にノゾミちゃんがいて、僕の左腕に抱きついていた。
本当に僕は考え込んでいる時の子どもたちへの警戒心が死んでいる。
「シャルちゃんがね、今日代わってくれたの」
な、なるほど、そういうことか。
「え、えっと、ユーキくんは?」
「んー?お兄ちゃんは、今日は来ないよー」
「え?そうなの?」
ユーキくんとノゾミちゃんはセットってイメージがあったからちょっとびっくりした。
「うん。はじめは一緒に来るって言ってたんだけど、シャルちゃんとね、なんか『アカシ』?の話ししてたら急に「今日はノゾミ一人で行ってね」って言われちゃった」
「そ、そうなんだ……」
耳飾りの『意味』については本当は黙っているつもりだったのを、シャルがうっかり漏らしちゃったらしいからユーキくんも恥ずかしくなったのかな?
なんにしても助かった。
今日はシャルともユーキくんともリンとも一緒に寝られる気がしない。
「せんせえ、怖い時はこうするといいんだよー」
また考え込んでしまった僕にノゾミちゃんがそう言うと、僕の頭を全身で包み込むように抱きしめてくれる。
むぅ……なるほど、顔中暖かくて柔らかくていい匂いですごい落ち着く。
ノゾミちゃんの暖かさに包まれて急速に意識が暗闇に飲み……こまれ切る前に気づけた。
これ、多分ノゾミちゃんもやって欲しいことなんだろうな。
怖がってると思った僕にやってくれたということは、ノゾミちゃんにとって一番安心する寝方なんだろう。
その割には今までこういう寝方はしたことなかったけど、いつもは僕の左右にユーキくんと並んで寝てるからなー。
完全に独り占め状態専用の寝方なので、我慢しちゃう子のノゾミちゃんは言い出さなかったんだろう。
「ありがとう、ノゾミちゃん。
それじゃ、次は僕の番ね」
「ふぇ……?」
ノゾミちゃんも寝かけてたみたいて申し訳なかったけど、今度は逆に僕がノゾミちゃんを抱きかかえた。
まだまだ小さなノゾミちゃんは、頭だけじゃなくって全身すっぽり僕の中に収まってしまう。
「うへへー……せんせえあったかぁい……」
寝ぼけてるような怪しい声でそういったノゾミちゃんはひとしきり僕に体をこすりつけると、やがて安らかな寝息を立て始める。
規則的で可愛らしい寝息といい、腕の中の暖かさといい…………これ僕もダメだ。
急速に頭を支配する眠気に今度こそ耐えることなく、ノゾミちゃんと一緒に眠りについた。
目が覚めると目の前にノゾミちゃんの顔があった。
しかも、その可愛らしいまつげを一本一本数えられそうなくらい近い。
このまま可愛い寝顔を眺め続けていたいけど……僕はいい加減起きる時間だ。
窓から差し込み始めている朝の光を見ながら起きようとして、この寝方唯一の欠点に気づいた。
ノゾミちゃんを抱え込んでるから僕が起きたらまず間違いなくノゾミちゃんも起きる。
ど、どうしよう?
リンは僕が起きてくるのをもう待っているだろうし、それがなくても日課はできるだけ続けておきたい。
かと言って、ここまで気持ちよさそうに寝ているノゾミちゃんを起こすのは非常に忍びない……。
ノゾミちゃんは寝てると言うのに満面の笑顔で、涎まで垂らして大変幸せそうな寝顔で熟睡してる。
いっそのこと今日はサボるか、それともノゾミちゃんを魔法で眠らせるか。
そんなことを考えている僕の前で、ノゾミちゃんのまぶたがピクピクと震えだした。
どうやら悩んでいる僕の身じろぎかなんかで起こしてしまったようだ。
「…………おはよーごじゃーましゅ」
「おはようノゾミちゃん。
起こしちゃってごめんね」
起こしちゃったんなら仕方ないと、体を起こすとノゾミちゃんも起き上がってベッドの上にペタンと座る。
だけど、まだ完全に寝ぼけている様子で半分以上夢の中にいるみたいだ。
「僕はこれからちょっと運動してくるから、ノゾミちゃんはもうちょっと寝ててね」
「ふぁい……」
寝言に近い声で返事をしたノゾミちゃんだけど、横にならずに座ったままなにかを探すようにキョロキョロしている。
「えっと……ユーキくんなら部屋だよ?
部屋帰る?」
いつも一緒に寝ているユーキくんを探しているのかと思ったんだけど……半分あたりで半分外れだったみたいだ。
「……そだぁ……せんせえとだけだったんだぁ……」
ノゾミちゃんはまだ溶けたままの声でそうつぶやくと、ニコーって嬉しそうに笑って顔を近づけてくる。
え?
「ちゅっ」
どこまで近づけてくんの?と思ったときには唇と唇が触れ合っていた。
「ノ、ノゾミちゃん?」
「うへへー」
とんでもないことをしでかしたノゾミちゃんは、呆然としている僕を放って嬉しそうに笑いながら横になって頭までシーツに包まっている。
こ、子供のすることなんだしあまり深く考える必要はない。
キスは初めてだったけど、まあこれもいつものスキンシップの延長線上だ。
それは分かっているんだけど、ちょっと……いや、かなりドキドキしてる。
落ち着こう。
一度深呼吸だ。
深呼吸は全てを解決してくれる。
「えっと、それじゃ、僕は外に行ってくるね?」
「はーい」
シーツに包まったまま動かなくなっていたので寝直したのかと思っていたけど、思ったよりしっかりした返事が返ってきた。
そして、部屋から出ていこうとドアを開けたところで……。
「みんなには内緒ね?」
ノゾミちゃんが小さな声で恥ずかしそうにそう言った。
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