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第三章

12話 訳『死んじゃダメえええぇぇぇぇっ!!!』

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 ユーキくんを部屋に送った後、リンを迎えに行く。

 と言っても、どこに行ったのか……。

 広間には年少組とギルゥさんしかいなかったし、自分の部屋にもいなかった。

 もしかして外かな?と思いながら一応姿を見なかったシャルの部屋をノックしたら、シャルと一緒にリンが出てきた。

 リンとシャルは決して仲が悪いというわけではない……というか仲は良さそうなんだけど、リンが僕以外の部屋に行っているのを見るのは初めてだから驚いた。
 
「あ、リン、ここにいたんだ。
 次はリンの番だけど……大丈夫?」

 リンの顔がやたらと赤いけどどうしたんだろ?

「ハ、ハイデス、ダイジョブデス……」

 そう言う割には恥ずかしそうにして、僕を見ようとしないし……。

 なんだろう?今までさんざん恥ずかしいことやってるはずなのに、その中でも一、二を争うほど恥ずかしそう。
 
「えっと、シャル、リン借りて行っちゃって大丈夫?」

「は、はい……も、もちろんです。
 リンさん、また後でお話しようね」

「ハ、ハイデス。
 マタ、オシエル オネガイ デス」

 んー、どうやら二人で話をしていたらしいけど……。

 まあ、兄上からは「女の子同士の話には踏み込んじゃいけない」とキツく言われていたし、なにをそんなに恥ずかしがっているのか気になるけどここは気にしないでおこう。

「それじゃ、リンおいで。
 シャルはもうちょっとまっててね」

「は、はい……ご、ごゆっくりどうぞ」

 んー?今度はシャルまで赤くなってる。

 と言っても、シャルが恥ずかしがり屋なのは今更な話ではある。

 僕と話をする時はだいたい顔を赤くしているので、もう慣れた。

「リンさん、が、頑張ってねっ!」

「ハ、ハイデスっ!」

 恥ずかしそうにしているシャルが、さらに恥ずかしそうにしているリンを励ましている。

 よく分からないけど、仲良さそうで嬉しいです。



 シャルと別れてリンを連れて部屋に戻ってきたんだけど……。

 リンはベッドの上でガチガチに緊張している。

「…………リン、嫌なら無理につけなくていいんだからね?」

 シャルとユーキくんはアクセサリー店でそれぞれ納得して買っていたみたいだけど、リンはお土産としてもらった側だ。

 随分緊張している様子だし、本当は嫌なんじゃないかと思ったんだけど……。

「ダ、ダイジョブデス、カクゴ デキル デス」

 言葉通り完全に覚悟の決まった真剣な目で言われてしまった。

「い、いや、そんなに覚悟決めてつけるようなものでもないんじゃないかなー?」

 こう言ってはなんだけど、単なるアクセサリーだしそこまで覚悟を決めてやるようなことでもないと思う。

「ダイジョブデス、ソレ アカシ デス。
 ツケル カクゴ デキル デス」

 アカシ……証かな?

 んー?考えてみれば色違いのおそろいって感じだし、三人の仲良しの証とかそういうのかもしれない。

 それなら他の子のも……と一瞬思ったけど、年少組の耳に穴を開けるのは可哀想な気がするし、ギルゥさんと子供たちも仲はいいけどなんて言うか……ちょっと年上のお姉さん、下手するとお母さんって雰囲気があるからなぁ。

 なるほど、年の近い?年長組でつけようってことになったのかもしれない。

 あってるか分からないけど、ちょっと納得がいった気がした。

「それじゃ、最終確認。
 多分痛いけど、本当にいいんだね?」

「ハ、ハイデス、ハルト、オネガイ デス」

 頷いたリンは相変わらず緊張した様子だったけど、怖いとかではなくて恥ずかしいって感じだ。

 まあ、耳いじられることになるからなー。

 とは言え、もっとすごいことをしている気がするので、そこまで恥しがらなくてもとちょっと思った。

 それくらいリンは真っ赤になっていた。



 「それじゃ、早速始めるね」

 軽く声をかけてから、ベッドの上で固まっているリンににじり寄る。

 とりあえずは耳を見せてもらうつもりだったんだけど……。

 僕に近寄られたリンは、固く目を閉じてそっと顔を上にそらす。

 い、いや、そういう事するんじゃないんだけどなー?

 とは思うけど、ガチガチに緊張したままのリンを見ていると、少しリラックスしてもらったほうがいいかもなと思った。

 リンの頬にそっと手を置くと、ガチガチに固くなって震えてすらいる唇に優しくそっと唇を重ねる。

 リンの唇は初めてのときでもこんなに緊張してなかったってくらい硬く閉じられていたけど、怖いからとかでは無いせいか妙に熱い気がした。

 そのままベロは入れずに、硬く閉じられている唇を唇で揉みほぐすように合わせる。

 それでも緊張したままなようだったので、キスをしたまま頭と……リンの短い尻尾の付け根あたりを撫でる。

 ちょっと際どいところにあるので恥ずかしくて滅多に撫でないけど、リンはここを撫でられるのが大好きで。

「……ふぁ………………はぅぅ……はふぅ……」

 ちょっと撫でるだけでこの通りすぐにクタッと力が抜けてしまう。

「……んっ……んちゅっ…………ふぁっ……んっ……んんっ……はぁ……」

 そのまま柔らかくなった唇の間からベロをリンの中に忍び込ませて隠れてたベロに絡みつかせる。

 ちょっとピクピクと震えているしっぽを撫でながらベロを優しく絡めていると、キツく閉じられていたリンのまぶたがトロンとした感じで薄く開かれてきた。

「…………もう大丈夫?」

「…………モウ チョト デス」

 どう見てももう緊張は解けたように見えるんだけど、お姫様がそう言うんじゃ仕方ない。

「それじゃ、もうちょっとだけね」

 力が抜けてきているリンを、いっそのこととベッドに横たえて改めてキスをし始める。

 キスをしながら尻尾も撫でてるから上から覆いかぶさって抱きしめてるみたいな感じになっちゃったけど……リンは嫌がってる様子はないし、僕も幸せな気分だからこのままでいいか。

 そのまま、当初の目的も忘れて二人で好きをあふれさせた。



 …………反省。

 目的と違うことに時間使いすぎました。

 と、とは言えリンの緊張は抜けて……というか抜けすぎてぐったりしているぐらいだから、やりやすくなったと思おう。

 とりあえずリンは半分寝かけている感じなので、このまま耳を観察させてもらおう。

 リンの耳は人間の耳と全然違って長く鋭く尖っている。

 ここまで細かく見させてもらったことはないけどギルゥさんの耳も似た感じなので、耳に関してはほとんどゴブリン寄りなんだと思う。

「……んっ…………んんっ……んっ……」

 とは言えくすぐったい部分なのは人間と変わらないらしい。

 僕が耳の形状確認のために指で撫でるたびに、リンの口からは甘い吐息が漏れて体もピクピク震えている。

 でも、ユーキくんのときと同じく、できるだけ痛くない位置に付けるためなのでこればっかりは耐えてもらうしか無い。

 しかも、リンの……ゴブリンの耳は本当に人間と違って、いわゆる耳たぶに当たる部分がほとんどない。

 人間よりかなり長く尖っているせいかほとんど軟骨みたいになってて、余った肉の部分がかなり細い。

「んっ……んんっ……んぁっ…………んんっ……んっ……」

 くすぐったそうにしているリンに申し訳なく思いながら、耳の周りだけじゃなくって中まで弄り回してみたけど、結局は耳の付け根に有る小さな耳たぶに付けるしか無さそうだ。

「ここ、痛かったりしない?」

 大きさが違うせいか、それとも肌質が違うからか、ユーキくんとはだいぶ感触の違う耳たぶをプニプニと揉むように押す。

 人間と違って痛かったりする場所だと大変だ。

「ふぁ……ダ、ダイジョブデス。
 ハルト、キモチイ デス」

 気持ちいいって言う割にはくすぐったそうだけど、まあ痛くは無さそうだから良かった。

 それじゃここに付けることに決めて、とりあえずは《消毒》を、と。

 《消毒》の魔法を励起させた指先でリンの小さな耳たぶをつまむように優しく撫でる。

 消毒している間、ずっとくすぐったそうにリンの体が震えているし、声も必死でこらえているみたいだけどもう少しだけ辛抱してほしい。

 小さくとは言え傷をつけるんだから悪い汚れが入らないように念入りに消毒しないと。

「ん~~~~~~っ!!」

 消毒が終わりかけた時、リンが体を跳ね上げるように大きく震わせた。

 び、びっくりした。

「リ、リン大丈夫?」

 くすぐったさが極限に達しちゃったらしいリンが心配になるけど……。

「…………ぎゃうぎぅぎゃうぎゃるぅぎゃ……」

 なにかゴブリン語で言ってプイっとそっぽを向いてしまった。

 え?え?お、怒らせちゃった?

 くすぐったそうにしているのをあまりにも無視していたから怒らせてしまったんだろうか?

 で、でも、怒ってる割にはまとってる雰囲気は甘ったるいし、手はじゃれつくように僕の体を這い回っている。

「あ、あの……つ、続けるね?」

 恐る恐るそう言って、もう一度そっと耳たぶに触れると……リンはそっぽを向いたままだけど、されるがままになってくれている。

 嫌がっているわけではないことに安心して消毒と冷却をすませた。

「そ、それじゃ、入れるからね?」

 リンに覆いかぶさるようにして耳たぶに針を当てる。

「ハルト……ハルトォ……」

 いよいよとなって少し怖くなったのか、リンが切なさそうな声を出しながら潤んだ目で僕を見つめてくる。

 言いたいことは分かるけど……。

 少し考えてみて、あとは入れるだけだから大丈夫かと思う。

「リン……好きだよ……」

 リンを安心させるために優しく笑いかけてから少し開いていた唇に唇を合わせる。

 …………なんだろう、キスし慣れてきたからだろうか?

 最近はリンと唇を触れ合わせているとすごいしっくり来る気がして落ち着く。

 リンもそうなのか少し緊張していたからだからスウッと力が抜けるのが分かった。

「……んっ…………んちゅっ……ちゅっ……ハルトォ……んんっ……」

 そのままリンとベロを絡め合いながら、横目でリンの耳たぶを確認して……。

「んんっ!…………アァ…………」

 ゆっくりと針を押し込んでいく。

 ユーキくんのときにも一気に押し込んであげたほうが楽なんじゃないかって思ったけど、どうも勇気が出ない。

「っ!?」

 痛いのを長引かせてごめん、と思っていたら痛みを堪えきれなかったのかベロをリンに噛まれた。

 ちょっと痛いし血の味がするけど、リンも痛いのを我慢しているんだから、僕も一緒に我慢しないと。

 血が垂れてきている耳たぶを見て申し訳なく思いながら、せめてできるだけ痛くないようにゆっくりゆっくりと押し入れていく。

 針が奥に入っていくたびにリンの歯にも力がこもってリンの感じている痛みが伝わってくる気がする。

 ベロの痛みを我慢しながら奥まで入れきると、終わったよという合図のつもりで優しくリンの頭を撫でる。

 ホッとした様子になったリンが、噛んでいた僕のベロを開放してゆっくりとベロを絡めてくる。

 「噛んでごめんなさい」と言っているような、おずおずとしたベロの動きが可愛くて、思わずしっぽを撫でながら思いっきりベロを絡めてしまう。

 リンは一度驚いたように大きく目を見開くと、嬉しそうに微笑みながら自分でも積極的にベロを絡めだした。

 リンとこうしていることが嬉しくって幸せで……気持ちよくって、また二人で夢中になって好きをあふれさせた。



 思う存分好きをぶつけ合って満足した僕らは、ゆっくりと合わせ続けていた唇を離す。

 恥ずかしそうに、でもとても幸せそうに微笑んでいたリンの顔が……唇を離した途端に青ざめる。

「ハ、ハルト……?ド、ドシタデス?」

 へ?なんだろう?

 なんかリンは僕の口元を見て青ざめてるけど……。

 夢中になったあとは口元が…………まあなんかベタベタになってて恥ずかしいことはあっても、そんな怖がるようなことではないと思うんだけど?

 そう思いながら手で口元を拭ったら……。

 血まみれだった。

 おびただしい量の血で手が真っ赤に染まっていた。

 え、なにこれ?

 戦闘中でもないと見ることのない血の量にフラッと血の気が引いた。

「ハルトっ?ぎゃうぎゃぎゃきゃああぁぁぁっ!!!」

 意識を失いかけた僕をリンの叫び声が引き戻してくれた。

 と、とにかく治療を……。



 落ち着いてみれば、ベロから出た血が二人のよだれに混ざって、しかも激しく絡めあったベロで撹拌されて広がっただけだった。

 今はまだ少し血の出ているベロをリンが安堵の涙を流しながら優しく舐めてくれている。

 気持ちいいけど、すごい恥ずかしい……。

 リンの耳に光るリンの瞳と同じ色の耳飾りを見ながら止めさせるべきか迷い続けていた。



 さて、最後はシャルだな。
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