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第二章 始めてのクエスト
6話 依頼
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村長さんたちが帰って行って、数十分後。
メモを忍ばせた一番話の分かりそうな男性と、あと二人の男性が改めて孤児院を訪ねてきた。
「あれ?話がある人は来てほしいと書いておいたはずですが、これだけですか?」
もしかして文字が読める人がいなくて、ちゃんと意味が伝わらなかっただろうか?
ここのような農村の識字率はかなり低い。
「あ、いえ、我々は代表です。
閣下とお話しさせていただきたいのは、村長の息子と親しい子供の親以外の全員になりますので我々が代表としてまいりました」
また閣下か、まあ説明するの面倒だから呼びたいように呼んでもらおう。
それはそれとして、村民の大部分はまともな人みたいで良かった。
「分かりました。
それで、皆さんの本当の要求はなんですか?」
「まず、私は村の木こりのまとめ役をしておりますホルツと申します。
こちらは鍛冶屋のクファーと、猟師のまとめ役のレー。
先程は失礼いたしました。非礼をお詫びいたします。
本題ですが、我々は、閣下にゴブリン討伐を依頼したいのです」
まあ、そういう話だよね。
「村長にはお話しましたが、あの巣の主力はもうすでに倒しているはずです。
この村の男全員でかかればそれほど問題なく討伐できると思いますが……」
チャンピオン一匹にシャーマン三匹、さらに、僕が加勢する前にアルバさんたちがナイト二匹にシャーマン一匹を倒している。
出来立ての巣であることを考えればやや多いとも思える特殊個体を倒している。
これだけ倒せばあとは雑魚ゴブリンだけしか巣にはいないはずだ。
雑魚ゴブリンだけであればこの程度の規模の巣、数の暴力で一般人でも押しつぶせる。
「それが……村長の息子たちはなんと申しますか……元気の良いことで有名でして」
ずいぶんと言葉を選んだな。
「それだけに腕っぷしの強さでも知られておりました。
その彼等が大怪我を負ったと聞き、多くのものが怖気づいてしまいまして……」
……なるほどねぇ。
確かに全員が最低でも骨折という大怪我をして帰ってきているし、村人たちはコブリン討伐ということの危険性をきちんと、あるいは過剰に認識してしまったのだろう。
間違いなく戦える村人全員でかかれば大きな犠牲無く巣の討伐は出来る。
実際、『前』は村人だけで結成した有志による討伐隊で巣の討伐に成功している。
とは言えある程度の犠牲が出てしまうのは仕方のないことだし、『前』も実際に数名の犠牲者が出ている。
それが自分かもしれないと思ってしまったら立ちすくむのも無理もない話だ。
レオンたちの暴走のせいでこの村はゴブリンたちを自力討伐する道を失ったのか。
本人たちはそこまで考えてなかっただろうけど、面倒なことをしてくれたものだ。
「こうなってしまっては、我々まとめ役が率先して討伐に向かうしか無いのですが……」
無理なのは目に見えているというところだろう。
「村長さんはどう考えているのですか?」
僕の問いかけに三人はあからさまに動揺し始める。
え?なにこの反応。
「村長は……先程も予定では閣下に討伐の依頼をするということで出向いたのですが、実際に着いたらあの調子でして……。
正直、もはやあの方がなにを考えているのか……」
……本当になにを考えているんだろう?
「………………考えようによっては、放置していてもまだしばらく……そうですね、今回与えた損害から考えて数ヶ月は危険はないと思うので、その間に対策を練るつもりでは?」
無理やり考えてみてこんなところだろうか?
今言った通り、数ヶ月間は実質的な危険性はほぼ無いと思う。
ただ、数ヶ月後には繁殖しまた勢力を整えるので、あまり放置もお薦めは出来ないけど……。
「いえ……今回の討伐失敗の影響で皆森に入るのを完全に嫌がってしまっていますので、そういうわけにも……」
むぅ……。
「…………分かりました。
とりあえず村長さんと話してみましょう。
村長さんが僕が討伐することに賛成してくれれば依頼を受けます」
村長さんが反対してる状況で討伐なんてしたら面倒なことにしかならないだろうから、やだ。
「ありがとうございますっ!
我々もなんとしても村長を説得しますので、なにとぞお願いいたしますっ!!」
テーブルに手をつき頭をぶつける勢いで頭を下げる三人。
村民にとっては死活問題だからなぁ。
放置できる村長さんの感覚が理解できない。
レオンが怪我をした怒りと、この屋敷に目がくらんで忘れてるのかな?
「あ、ところで話は変わりますが、ホルツさんお子さんはいらっしゃいますか?」
「え、ええ、五つになる息子がおりますが……?」
「うちにも同い年の子がいまして。
いい子たちなので仲良くしてやってください」
それじゃ、クライブくんのお父さんのためにも頑張りますかねー。
ホルツさん達によると村長は今日は自宅にいるらしいので、善は急げと村長宅へ。
とりあえず、ホルツさんたちが僕に依頼に来たとなると村長がへそを曲げる可能性もあるので、僕一人で話をしてみることにした。
昨日の今日で奥さんとは顔を会わせたくないけど、村長さんもいるし大丈夫……だと思いたい。
ちょっと緊張しながら村長の家の前につくと……ドアから半裸の少年が転がるように出てきてそのままどこかに走って行っちゃった。
あれはレオンの取り巻きの一人だった気が……。
…………考えてみれば怪我したって言ってたし家にはレオンがいる可能性が高いか、やだなぁ。
めげそうになる心をなんとか持ち直して、軽くノックしたあとドアを開ける。
「失礼しまっ!?」
中からワインボトルが飛んできた。
「しばらく顔出すなって言ったでしょっ!!フニャチンっ!!」
同時に女の人の罵声も飛んでくるけど……。
「……あら、ハルトじゃない?どうしたの?」
極力こぼさないようにボトルを受け止めた僕を、奥さんはキョトンとした顔で見ていた。
「悪かったわね、てっきりあいつが戻ってきたのかと思って」
「いえ、どうかお気になさらずに」
奥さんに返事を返しながら、投げつけられたボトルをテーブルに置く。
奥さんはすぐにそれを手に取るとコップに注いで、ぐいっとあおった。
「酷いのよっ!?あのフニャチンったら自分から「ゴブリン殺って興奮して眠れないからヤらせてほしい」って言ってきたのに、ぜんっぜん勃たないのっ!!」
……いや、そういう話聞きたくないから。
そうは思っていても、話したがっている奥さんを止めるわけにもいかない。
「……大怪我をして帰ってきたと言う話ですから、実際には怖くて奥さんに甘えに来たのかもしれませんね」
「あら?そうだったのかしら?だとしたら悪い事したわね……」
僕の推測を聞いて少し申し訳無さそうにする奥さん。
…………この通り、性根の悪い人ではないのだ……ワガママで性に奔放すぎるだけで。
そう考えながら逃げ出しそうになる気持ちをなんとか落ち着ける。
「ところでその奥さんってのはなに?」
「え?……ああ、すみません、奥様」
「はあっ?なにそれっ!
ヤることヤッたんだからジーナでいいわよ」
楽しそうに笑いながら言う奥さん。
この人と馴れ合うつもりはないんだけどなぁ……呼ばないと不機嫌になるだろうから諦めよう。
「分かりました、ジーナさん。
ところでさっきの彼とは今までも?」
「ん?ああ。
ええ、もう結構経つわよ。
ああ、あの子もハルトと同じで童貞貰ってあげたわね」
その言葉を聞いて喉に苦いものが込み上げてくるけど、無理やり飲み込む。
「……そのことを息子さんは?」
「ん?知らないんじゃない?
あの子からも言わないでって口止めされてたし」
……あの少年は身体も小さく取り巻きの中ではパッとしない下っ端だったはずだ。
レオンが彼を楽しげに小突いている姿を何度も見た記憶がある。
そんな下っ端が知らない間に母親ととか……。
初めてほんの少しだけレオンを憐れに思った。
メモを忍ばせた一番話の分かりそうな男性と、あと二人の男性が改めて孤児院を訪ねてきた。
「あれ?話がある人は来てほしいと書いておいたはずですが、これだけですか?」
もしかして文字が読める人がいなくて、ちゃんと意味が伝わらなかっただろうか?
ここのような農村の識字率はかなり低い。
「あ、いえ、我々は代表です。
閣下とお話しさせていただきたいのは、村長の息子と親しい子供の親以外の全員になりますので我々が代表としてまいりました」
また閣下か、まあ説明するの面倒だから呼びたいように呼んでもらおう。
それはそれとして、村民の大部分はまともな人みたいで良かった。
「分かりました。
それで、皆さんの本当の要求はなんですか?」
「まず、私は村の木こりのまとめ役をしておりますホルツと申します。
こちらは鍛冶屋のクファーと、猟師のまとめ役のレー。
先程は失礼いたしました。非礼をお詫びいたします。
本題ですが、我々は、閣下にゴブリン討伐を依頼したいのです」
まあ、そういう話だよね。
「村長にはお話しましたが、あの巣の主力はもうすでに倒しているはずです。
この村の男全員でかかればそれほど問題なく討伐できると思いますが……」
チャンピオン一匹にシャーマン三匹、さらに、僕が加勢する前にアルバさんたちがナイト二匹にシャーマン一匹を倒している。
出来立ての巣であることを考えればやや多いとも思える特殊個体を倒している。
これだけ倒せばあとは雑魚ゴブリンだけしか巣にはいないはずだ。
雑魚ゴブリンだけであればこの程度の規模の巣、数の暴力で一般人でも押しつぶせる。
「それが……村長の息子たちはなんと申しますか……元気の良いことで有名でして」
ずいぶんと言葉を選んだな。
「それだけに腕っぷしの強さでも知られておりました。
その彼等が大怪我を負ったと聞き、多くのものが怖気づいてしまいまして……」
……なるほどねぇ。
確かに全員が最低でも骨折という大怪我をして帰ってきているし、村人たちはコブリン討伐ということの危険性をきちんと、あるいは過剰に認識してしまったのだろう。
間違いなく戦える村人全員でかかれば大きな犠牲無く巣の討伐は出来る。
実際、『前』は村人だけで結成した有志による討伐隊で巣の討伐に成功している。
とは言えある程度の犠牲が出てしまうのは仕方のないことだし、『前』も実際に数名の犠牲者が出ている。
それが自分かもしれないと思ってしまったら立ちすくむのも無理もない話だ。
レオンたちの暴走のせいでこの村はゴブリンたちを自力討伐する道を失ったのか。
本人たちはそこまで考えてなかっただろうけど、面倒なことをしてくれたものだ。
「こうなってしまっては、我々まとめ役が率先して討伐に向かうしか無いのですが……」
無理なのは目に見えているというところだろう。
「村長さんはどう考えているのですか?」
僕の問いかけに三人はあからさまに動揺し始める。
え?なにこの反応。
「村長は……先程も予定では閣下に討伐の依頼をするということで出向いたのですが、実際に着いたらあの調子でして……。
正直、もはやあの方がなにを考えているのか……」
……本当になにを考えているんだろう?
「………………考えようによっては、放置していてもまだしばらく……そうですね、今回与えた損害から考えて数ヶ月は危険はないと思うので、その間に対策を練るつもりでは?」
無理やり考えてみてこんなところだろうか?
今言った通り、数ヶ月間は実質的な危険性はほぼ無いと思う。
ただ、数ヶ月後には繁殖しまた勢力を整えるので、あまり放置もお薦めは出来ないけど……。
「いえ……今回の討伐失敗の影響で皆森に入るのを完全に嫌がってしまっていますので、そういうわけにも……」
むぅ……。
「…………分かりました。
とりあえず村長さんと話してみましょう。
村長さんが僕が討伐することに賛成してくれれば依頼を受けます」
村長さんが反対してる状況で討伐なんてしたら面倒なことにしかならないだろうから、やだ。
「ありがとうございますっ!
我々もなんとしても村長を説得しますので、なにとぞお願いいたしますっ!!」
テーブルに手をつき頭をぶつける勢いで頭を下げる三人。
村民にとっては死活問題だからなぁ。
放置できる村長さんの感覚が理解できない。
レオンが怪我をした怒りと、この屋敷に目がくらんで忘れてるのかな?
「あ、ところで話は変わりますが、ホルツさんお子さんはいらっしゃいますか?」
「え、ええ、五つになる息子がおりますが……?」
「うちにも同い年の子がいまして。
いい子たちなので仲良くしてやってください」
それじゃ、クライブくんのお父さんのためにも頑張りますかねー。
ホルツさん達によると村長は今日は自宅にいるらしいので、善は急げと村長宅へ。
とりあえず、ホルツさんたちが僕に依頼に来たとなると村長がへそを曲げる可能性もあるので、僕一人で話をしてみることにした。
昨日の今日で奥さんとは顔を会わせたくないけど、村長さんもいるし大丈夫……だと思いたい。
ちょっと緊張しながら村長の家の前につくと……ドアから半裸の少年が転がるように出てきてそのままどこかに走って行っちゃった。
あれはレオンの取り巻きの一人だった気が……。
…………考えてみれば怪我したって言ってたし家にはレオンがいる可能性が高いか、やだなぁ。
めげそうになる心をなんとか持ち直して、軽くノックしたあとドアを開ける。
「失礼しまっ!?」
中からワインボトルが飛んできた。
「しばらく顔出すなって言ったでしょっ!!フニャチンっ!!」
同時に女の人の罵声も飛んでくるけど……。
「……あら、ハルトじゃない?どうしたの?」
極力こぼさないようにボトルを受け止めた僕を、奥さんはキョトンとした顔で見ていた。
「悪かったわね、てっきりあいつが戻ってきたのかと思って」
「いえ、どうかお気になさらずに」
奥さんに返事を返しながら、投げつけられたボトルをテーブルに置く。
奥さんはすぐにそれを手に取るとコップに注いで、ぐいっとあおった。
「酷いのよっ!?あのフニャチンったら自分から「ゴブリン殺って興奮して眠れないからヤらせてほしい」って言ってきたのに、ぜんっぜん勃たないのっ!!」
……いや、そういう話聞きたくないから。
そうは思っていても、話したがっている奥さんを止めるわけにもいかない。
「……大怪我をして帰ってきたと言う話ですから、実際には怖くて奥さんに甘えに来たのかもしれませんね」
「あら?そうだったのかしら?だとしたら悪い事したわね……」
僕の推測を聞いて少し申し訳無さそうにする奥さん。
…………この通り、性根の悪い人ではないのだ……ワガママで性に奔放すぎるだけで。
そう考えながら逃げ出しそうになる気持ちをなんとか落ち着ける。
「ところでその奥さんってのはなに?」
「え?……ああ、すみません、奥様」
「はあっ?なにそれっ!
ヤることヤッたんだからジーナでいいわよ」
楽しそうに笑いながら言う奥さん。
この人と馴れ合うつもりはないんだけどなぁ……呼ばないと不機嫌になるだろうから諦めよう。
「分かりました、ジーナさん。
ところでさっきの彼とは今までも?」
「ん?ああ。
ええ、もう結構経つわよ。
ああ、あの子もハルトと同じで童貞貰ってあげたわね」
その言葉を聞いて喉に苦いものが込み上げてくるけど、無理やり飲み込む。
「……そのことを息子さんは?」
「ん?知らないんじゃない?
あの子からも言わないでって口止めされてたし」
……あの少年は身体も小さく取り巻きの中ではパッとしない下っ端だったはずだ。
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