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第二章 始めてのクエスト

4話 安心

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 孤児院に帰ってすぐにお風呂に向かう。

 そして、体も洗わずに水のままの湯船に潜った。

 子供たちに会わずに済んだのは幸いだ。

 こんな顔を子供たちに見せる訳にはいかない。

「ぷはあっ!!」

 気づいたら窒息寸前まで潜り続けていて、慌てて体を起こした。

 とりあえず体洗お……。

 一刻でも早く身体に残る感触を消し去りたくて力いっぱい洗い布でこする。

 怖かった……。

 『初めて』ではないのに、もう何度もしたことなのに身動き一つ出来ないくらい怖かった。

 『前』である程度慣れたはずの余裕が一切無くなっていた。

 なにも知らなかった『前』と違って、知識も経験もあるのになんの役にも立たなかった。

 身体にとっての初めてはそれほど衝撃的なもので、未だに震えが収まらないほど怖くて仕方なかった。

 僕に経験がないことを知った奥さんは、『前』のレイプとは天と地との差があるほど『優しく』してくれたけど、それでも行為中は涙が止まらなかった。

 そして…………。

 そんな恐怖の中でも気持ちよくなってしまう自分の体がなによりも気持ち悪かった。

 奥さん自身よりもおぞましいものに感じられた。

 …………こんな気持ち悪いもの切り落としちゃおうかなぁ……。

 『前』は考えるだけで結局出来なかったことも、今はできそうな気がする。

 回復魔法も使えるんだし、切り落としても傷をふさげば死ぬことはないだろう。

 じーっと自分のものを見つめ続けてた僕に、柔らかいものが抱きついてくる。

「だ、大丈夫ですか?先生」

「シャル……さん……?」

 気づいたら僕の目の前にはシャルさんがいた。

「な、何度も、こ、声をかけたんですが……」

 そう言えばぼーっと突っ立っている間に誰かに声をかけられたような気もする。

 あれシャルさんだったのか。

 そう思った瞬間、シャルさんが裸なことに気がついた。

「おえぇっ……」

 思わず吐いた。

 シャルさんの白く柔らかそうな肌を、胸の二つの膨らみを、可愛らしくくぼんだおヘソを、そしてその下の薄っすらと茂りだした茂みを……そして……。

「げえぇっ……」

 また吐いた。

 女を認識した瞬間、気持ち悪くて我慢できなかった。

 吐瀉物にまみれたまま弱々しくシャルさんを突き放そうとする僕を、自分も吐瀉物まみれになるのも構わずシャルさんが抱きしめる。

「大丈夫……大丈夫です……」

 シャルさんを振り払おうとする僕の背後から誰かが抱きついてくる。

「ご主人さま……大丈夫ですから……ここにはボクたちしかいませんから……落ち着いて……」

 後ろからユーキくんのゆっくりとした優しい声が聞こえる……。

 シャルさんの優しく頭を撫でてくれる感触と、ユーキくんのゆったりと落ち着いた声のおかげか、パニックになっていた頭が落ち着いていく。

 いや、でも、今僕ちょっと人肌が気持ち悪く思える状態でね?

 理性は……それどころか感情もそう言っているんだけど、感触的にも聴覚的にも精神的にすら柔らかく暖かいものに優しく包まれる感覚に身体が無理やり安心させられてしまう。

 そのまま吐瀉物まみれで泣き出した僕を二人は優しく包み込み続けてくれた。



 僕が泣き止んだところで、体についた汚れを落としてもらってお風呂から上がった。

 今は僕のベッドの上でシャルさんに抱きつきながら胸に顔を埋めてる。

 とんでもないことをしているのは自覚しているし、ついさっきまで恐怖の象徴でしかなかったものだけど、不思議とすごい安心する。

 シャルさんの甘い匂いと、ふよんとした柔らかさを感じながら、優しく頭を撫でられていると、頭が真っ白になってくるほど落ち着く。

 なんていうか……おっぱいって偉大だ……。

「アリスにお願いして夕ご飯時まではノゾミと外で遊んでもらってますから、ご主人さまは思う存分のんびりしてくださいね」

 そう言いながらユーキくんがベッドの上に飲み物とお菓子を持ってきてくれる。

 もうなにからなにまで至れり尽くせりだ。

 二人共だいたい事情は察していると思うんだけど、なにも聞かずにただただ甘やかしてくれる。

「はい、じゃ、次はボクの番です」

 水分と糖分を補給した僕の頭を今度はユーキくんが抱きしめてくれる。

 これはこれでいいものだ。

 こんな腑抜けた様子じゃダメだという自覚はあるんだけど、二人の誘惑に逆らうことが出来ない。

 これ……ダメ人間になる……。

 ユーキくんに抱きしめられる僕の背後から抱きついてきたシャルさんの柔らかい感触を感じながら、僕は目を閉じた。



「ただーいまーっ!」

 玄関でいつもより大きな声で、帰ってきたことをはっきりと告げてくれているアリスちゃんの声を聞いて我に返った。

 今の僕は真っ裸で同じく真っ裸のシャルさんとユーキくんに挟み込むように抱きしめられて寝ている状態だ。

 こんなところアリスちゃんとノゾミちゃんには見せられない。

 一応二人の名誉のために明言しておくと、決定的なことはやっていない。

 …………おっぱいは吸っちゃったけど、セーフだと信じる。

 と、とにかく、早く起きないと。
 
 そう思って身を起こす僕を二人が心配そうに見つめている。

「……大丈夫ですか?ご主人さま」

「ま、まだ……ね、寝てても大丈夫ですよ?」

 二人の眩しい裸が目に入って恥ずかしくて落ち着かない気分になるけど、気持ち悪いとか怖いとかってい感情はもうすっかり湧いてこない。

 ここで僕が「もう少し」と言ったら、ノゾミちゃんたちを引き止めてくれるんだろうけど……いい加減しっかり立ち直らないと。

「うん、二人のおかげでもうすっかり落ち着いたよ。
 ありがとう。
 そして、みっともないところ見せてごめんなさい」

 二人に向かって、深々と頭を下げる。

「……また、必要になったら遠慮なく言ってください」

「い、いつでも……だ、大丈夫です……」

「ありがとう。
 ……ほんとうにありがとう」

 まだ心配そうにしている二人に、もう一度心を込めて頭を下げた。



 帰ってきた二人にお風呂に入ってもらっている間にご飯を作って、夕ご飯タイム。

 今日は奥さんから色々と食材をもらえたので、少し豪華な晩餐だ。

 奥さんから「面倒を見てあげる」という言葉ももらってきたので、明日からは村人たちとも食材の購入やらなにやら色々と交流を始めていこう。

 それにしても……癒やされる……。

 美味しそうにご飯を食べているノゾミちゃんとアリスちゃんを見てると、すごい癒やされる。

「あ、あの……先生?」

「ん?なに?アリスちゃん」

 ご飯を食べるのも忘れて二人を眺めていたらアリスちゃんが恥ずかしそうに話しかけてきた。

「あの…………見すぎです……」

「えっ!?あっ!ごめんっ!!」

 いくら癒やされる光景とは言え見すぎた。

 あのノゾミちゃんですらアリスちゃんの隣で恥ずかしそうにモジモジしている。

「今の先生はちょっとやばい感じのオーラ出てますから気をつけてくださいね」

 ユーキくんによくわからない注意をされたけど、確かに見すぎだったのは間違いない。
 
 気をつけよう。



 食事の後、いつもどおりのちょっとした談笑の時間。

 明日、みんなで村を回ってみようって言ったらノゾミちゃんがすごい喜んでいた。

 ユーキくんとシャルさんは少し心配そうに僕を見てたけど、二人のおかげでもう大丈夫。

 『前』は何日間が塞ぎ込んでいた曖昧な記憶があるけど、今は本当に驚くほど立ち直ってる。

 寝る時間になってお休みの挨拶をしたあと、みんなそれぞれの部屋に入っていくけど、シャルさんは一緒に僕の部屋に入ってきた。

 これからしばらくはシャルさんとユーキくん(とノゾミちゃん)で交互に一緒に寝てくれるらしい。

 …………ちょっと断れなかった。
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