二周目貴族の奮闘記 ~シナリオスタート前にハーレム展開になっているんだけどなぜだろう?~

日々熟々

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第一章 ゲームの世界

32話 別れ

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 朝食を食べ終わったあと、また子供たちの練習を兼ねて護衛さんたちの傷を魔法で癒やさせてもらった。

 村人たちから買い直した品物の中に、練習用に使えそうな触媒がいつくかあったので今日は三人まとめて練習している。

 シャルさんが手持ち無沙汰にしているけど……。

【職業:魔術師
 筋力: 2 魔力: 5 体力: 2 精神:8 技術: 3 敏捷: 2 幸運:20
 魔法適性 火:- 水:C 土:C 風:C 聖:- 邪:-】

 シャルさんのステータスはこんな感じで、回復魔法の神聖系統に適正がないため、練習はしないことにした。

 魔力もあるし、他の系統なら適性もなにもしなくてもCある系統があるのでそのうちなにか他の魔法を教えようと思う。

 シャルさんレベルの美少女になると、なにか自衛手段は持たせておきたい。



 護衛さんたちの治療の後、またアルバさんたちと訓練をした。

 昨日と同じ多対一の集団戦。
 
 ただし、今回はテンションが上りすぎないように人数を剣だけでさばききれるくらいに加減してもらっている。

 楽しくなっちゃうのを我慢しながら訓練をしている僕の横で、ユーキくんたちが余った護衛の人たちの指導の元、遊びのような運動をしている。

 はじめはユーキくんが剣の訓練をしたいといい出したんだけど、僕とアルバさんで早すぎる本格的な訓練はむしろ体に悪いと反対した。

 かわりに全身を動かす運動を護衛さんたちが教えてくれた。

 健康体操に近いものなので、半ば遊び感覚でユーキくん以外も参加している。

 今はそれも終わって、鬼ごっこのような遊びで走り回っている。

「きゃははははっ♪おじさんまてー♪」

 笑いながら走り回るノゾミちゃんがとても楽しそうだ。

 ユーキくんたちもみんな笑顔で走り回ってる。

 人相の悪いゴツいおっさんたちを可愛い子供たちが追いかけるという、ほのぼのしているのか悩む光景を微笑ましく見ていた僕に、アルバさんの声がかかる。

「すみませんでした。
 もう休憩は十分でさあ」

 子供たちから視線を戻して、アルバさんに続いて立ち上がる護衛さん達に剣を向ける。

「ところで閣下……もうちょい人数増やしてもいいですかね?」

「ぜひともっ!!」

 ……やばい、またムズムズしてきちゃった。

 落ち着こう。



「…………学習できなくてすみません……」

 子供たちが用意してくれた昼食を囲みながら、また傷だらけになっている護衛さん達に頭を下げる。

「いやぁ、楽しかったから問題ないですよ」

 そういうアルバさんと一緒に護衛さんたちも笑ってくれてる。

 いやはや、本当に申し訳ない。

 訓練とはいえ、全力で体を動かしていると楽しくなってきちゃうのは直さないと……。

「ところで、閣下」

 反省しながら昼食を摂っていた僕にミハイルさんが真面目な顔で話しかけてくる。

「はい、どうしましたか?」

 雰囲気的に真面目な話ではあっても、悪い話ではないみたいだけど……。

「閣下には本当にお世話になりましたが、我々は明日この村を発とうと思います」

「えっ!?明日ですかっ!?」

 突然の話に驚いて思わずシャルさんの顔を見るけど、シャルさんは少し寂しそうにしているだけで驚いたりはしていない。

 もうすでに話は済んでいるのだろう。

 アルバさんたちも当然知っていたようで平静としたものだ。

「荷物の積み直しも終わりましたからな、そろそろ商会の方に戻らないといけません」

 確かに大商会の当主であるミハイルさんがいつまでも商会から離れているわけにはいかないのだろう。

 と言うよりも、今回直々に出てきた事自体シャルロッテさんのためにだいぶ無理をしていたはずだ。

「寂しくなります……」

 帰らなくてはならないのは確定事項。

 それが理解できたので、別れを惜しむだけにする。

「我々はひとまずこれでお別れとなりますが、出来ますれば閣下とはこれからもお付き合いを続けていただければと思います。
 何卒よろしくお願いいたします」

 シャルさんのこともあるし、なによりミハイルさんは嫌いになるのは難しい人なので、こちらこそお願いしたい。

 深々と頭を下げるミハイルさんに、僕も頭を下げ返す。

「こちらこそ、末永くのお付き合いをお願いします。
 そうですね、取り急ぎは前も少しいいましたけど、子供たちの服がほしいです」

 没落貴族の身としてはミハイルさんのような商人との縁は得難いものだ。

 色んな意味で大事にしないと。

「ええ、ええ。すぐにご用意いたしますとも。
 他にも入り用なものがありましたら、いくらでも御用命ください」

 相変わらず態度が演技くさいミハイルさんはもう泣き笑いの表情だ。

 短い付き合いだけどなんとなく分かってきた。

 多分この人、恥ずかしがり屋だからわざと大げさに表現してるんだと思う。

 ミハイルさんの今までの演技くさい仕草が思い起こされて……僕もちょっと涙目になってしまった。



 その後は特になにもせずにみんなで輪になって別れを惜しみながら談笑をして一日を過ごした。

 特にシャルさんとミハイルさんは長い別れとなるので、せっかくなので今のシャルさんの部屋で一緒に泊まってもらった。

 深夜、トイレに起きたとき、まだドアの隙間から明かりが漏れていた。



 開けて翌日。

 また子供たちと一緒に護衛さんたちの傷を直して。

 今度は僕とミハイルさんも一緒に子供たちと護衛さんたちのおいかけっこに参加して……。

 お昼前には出発の準備が終わっていた。

「もっとゆっくりしていってくださればいいのに……」

「私としてもそうしたいのは山々ですが、念の為明るいうちにこの間の襲撃地点は越えておきたいですからな」

 あー、たしかにそうか。

 もう、再びの襲撃が出来るような余裕はゴブリンたちには無いと思うけど、暗くなってからあそこを通るのは気分が良くないのは分かる。

「私も遅くともまた来年には顔を出させていただこうと思っています。
 閣下も、機会がありましたら商都にお越しください」

「はい、お待ちしています。
 あと、どうかこの度の寄付のお礼としてこちらをお受け取りください」

 そう言って小さな箱をミハイルさんに渡す。

 中には母上が持っていた首飾りが入っている。

 それなりの価値があるものなので、今回ミハイルさんが被った損失の補填と言う意味と、いやらしい話、いわゆる大商人に対する付け届けだ。

「ありがとうございます。
 閣下から受けたご厚情、このミハイル・ハルツヴァー決して忘れません」

 こんなもの受け取り慣れているミハイルさんは相変わらずの大げさな仕草でシレッと受け取るけど、その言葉には偽りのない気持ちが籠もっている気がした。

 僕と別れの挨拶を済ませたミハイルさんは最後にシャルさんの前に行くと、別れを惜しむように強く抱きしめた。

「シャルロッテ、閣下にご迷惑をおかけするんじゃないよ」

「はい……お父様……」

 ミハイルさんはシャルさんと短くそれだけ言葉をかわすと、荷馬車にのり、最後にまた大げさに芝居がかったお辞儀をした。

「では皆々様、また会える日を心待ちにいたしております」

「坊っちゃんっ!また遊びましょーねーっ!!」

「はいっ!またっ!!」

「じゃあーーーねーーーーーーーっ!!」

 ミハイルさんたちも僕たちも、お互い相手が見えなくなるまで手を振り合っていた。
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