無属性魔法を極めた俺は異世界最強!?

ないと

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Bランク試験

31話

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扉を開け、店内に入る。

 途端、正面のカウンターから話し声が聞こえてきた。

 こちら側、つまり買い手側にいる金髪の女性が何かを話すたびに、店員が紙に文字を記入して行く。

「ーー中級回復ポーションを100個、上級回復ポーションを40個、スタミナ回復ポーションを100個・・・」

 その会話の内容に、ユウはギョッと驚いた。

(な、なんて量の買い物なんだ・・・ポーションってそんなに大切なものなのか?)

 しかし、ユウのその疑問は、次の瞬間、耳に入ってきた言葉によって打ち砕かれた。

「送り先は、イムアラ神国城でお願いします」

「っ!!」

 イムアラ神国城。その名に聞き覚えのなかったユウにも、それが何を示すのか容易に想像することが出来た。

(イムアラ神国城。国の名前+城、と来れば、もちろんこの国の中心に位置するあの城しか無いだろう。そう、勇者たちが居座ってるあの城だ)

 俺は大量の買い物を目の当たりにしたことさえ忘れて、女性を見つめた。

 別に特別恨みがあるわけじゃないけど、どうしても勇者関係となると、気になってしまうものだ。

 眼を更に凝らして、彼女が振り返る瞬間、金髪の奥に覗く相貌を確認したーー

 その時、ユウの顔は驚愕の色に染められた。

「あっ・・・!!」

 思わず口から漏れたユウの声に、女性、ユナ・エイミスは、つられて声の出処であるユウの方に視線を向ける。

 そして絡まる視線。

 それと同時にーー

「あっ・・・!!」

 視線の先に居る人物に見覚えのあったユナもまた、驚きの声を上げた。



 場所は変わってポーション屋から少し離れたところにある喫茶店になる。

 人々が行き交う大通りを窓越しにちらっと視線を向けてから、ユウは机を挟んで向かい側の席に座る女性に目を向ける。

 腰まで伸びた金髪に、整った顔立ち。何か儚さを感じさせられるような黄金の瞳に、今は普段着だけど、体つきは以前、俺たちが城から追放されるときに金を渡してくれた女騎士に酷似していた。

(取り敢えずゆっくりできる場所に行きましょうって言っちゃたけど、我ながら良く女性を誘えたものだ)

「あぁ、俺、ユウって言います」

 場を支配する沈黙に耐えきれず、口から出てきた俺の苦し紛れの自己紹介に、彼女はやっと口を開いて、話を切り出した。

「私の名前は、ユナ・エイミス。ユナって呼んで」

 そうしてユナさんは続ける。

「まず、一つ謝りたいことがあるの」

 次の瞬間、彼女の口から述べられた言葉に、俺は困惑した。

「ごめんなさい。あの時、何も出来なかった」

 あの時、とはやはり俺たちが追放された時のことなのだろう。

「あ、あの時は、誰にだってどうすることも出来ませんでしたよ。ユナさんは悪くありません」

 俺の言葉に、ユナさんは安心したかのように、「良かった・・・」と呟いた。

 そして再び訪れる沈黙。

 その間に割って入るように、さっき頼んだ飲み物がユウとユナの間に一つづつ置かれる。

 飲み物を配置し終えた店員は、一礼して戻っていった。

 取り敢えず下手に話しかけることも出来なかった俺は、その場のノリで頼んだ得体の知れない飲み物を一口口に含み、一服する。

 ふぅ、と以外にも美味しかった飲み物に満足のため息を一つ、無言っていうのも何だと思った俺は、新たに話しを切り出してみた。

「あ、あの、こんなこと聞くものでもないと思うんですけど、ユナさんは何でさっきあんなにポーションを買っていたんですか?」

 俺の唐突な質問に、ユナさんは少し驚きの表情を見せたものの、ゆっくりと返答した。

「実は、私、勇者達の指導者をやってるんだけど、明日勇者達をダンジョンに送り込むことになって、後一週間は訓練を積んだほうが良かったんだけど、緊急でそのことが取り決められて、ポーションはもしものときのために予定より多めに買ったの」

 なるほど、ダンジョンっていうのが良くわからないけど、かなり強い魔物がうじゃうじゃ居るところなのだろう。そしてもっと訓練の時間が欲しかったけど、急遽勇者達がダンジョンに送り込まれることになって、その時のためにポーションを多めに買ったと。

(勇者達も苦労してるってことか)

 勇者に同情しながら、俺はまた飲み物を啜った。


 その後、ユウとユナはしばしの会話の時を楽しみ、喫茶店を出た。もちろん飲み物の代金は俺が払った。



 宿に帰ると、すでに部屋には真一と玄太が居た。

「どうだった?」

 帰宅早々の俺の質問に、真一はニヤッとしながら応えた。

「合格だ。無事、Bランク試験を受けられることになった」

「そうか、それは良かった」

(これから大変になるな)

 そんな思いを胸の内に浮かべながら、俺はずっと気にしていたことを訪ねた。

「そういえば、試験会場はどこなんだ?」

「ああ、それはーー」

 次の瞬間、続く真一の言葉に、俺は運命というやつの存在を確信した。

「ダンジョンだよ」
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