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哀歌
インターバル【現在】
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「エージが警察を辞めたのは、そのすぐ後だ」
佐倉はそう言って、グラスに残ったブランデーを一気に飲み干した。
サチ姐は黙って煙草をふかし、スーちゃんと綾瀬はじっと俯いていた。
テツだけは佐倉を見つめたまま、次にくる言葉を待っているように見えた。
「アイツは何も言わず去っていった。しばらくは連絡もつかず、住んでいたアパートも引き払って姿を消した。闇落ちしちまったんじゃないかと心配していたが――ある日、急に連絡を寄越してきた」
『店を始めた。気が向いたら来いよ』
「人の心配をよそに、何を言ってるんだと思ったが、いつの間にかバーのマスターになってて驚いたよ」
佐倉の言葉に、スーちゃんと綾瀬は笑った。
テツもクスっと肩を震わせる。
「けど、久々に会ったエージの顔は、憑き物が落ちた様に穏やかだった。ようやく、自分の場所を見つけた――そんな風に見えたよ」
サチ姐が黙って空になった佐倉のグラスに、バーボンを注ぐ。
「これはアタシからの奢りよ」
そう言って、自分のグラスと軽く合わせる。
佐倉は礼を言ってグラスをかざすと、「あとは君らが知ってる、優しいエージさん、だ」と言って笑った。
その台詞に、綾瀬がボソッと呟いた。
「たまに怖ぇけどな……」
スーちゃんが頷き、テツは苦笑した。
「アイツがどんな理由で退職を受理させたのか気になったが、元マル暴の刑事があの界隈で店を持ったんだ。『自分の背後にはヤクザがいる』とでも言ったんだろう。奴は岡嵜組の剱崎に目をかけられていた。組入りしかねない警察官は、さすがの刑事部長も無視できなかったんだろうな」
「でも、エージさんはヤクザじゃないでしょう?」
スーちゃんがそう言って首を傾げる。
「その辺に関しては恐らく……」
バーボンのストレートに顔を顰めながら、佐倉は言った。
「剱崎の方が1枚上手だったんだろうな」
佐倉はそう言って、グラスに残ったブランデーを一気に飲み干した。
サチ姐は黙って煙草をふかし、スーちゃんと綾瀬はじっと俯いていた。
テツだけは佐倉を見つめたまま、次にくる言葉を待っているように見えた。
「アイツは何も言わず去っていった。しばらくは連絡もつかず、住んでいたアパートも引き払って姿を消した。闇落ちしちまったんじゃないかと心配していたが――ある日、急に連絡を寄越してきた」
『店を始めた。気が向いたら来いよ』
「人の心配をよそに、何を言ってるんだと思ったが、いつの間にかバーのマスターになってて驚いたよ」
佐倉の言葉に、スーちゃんと綾瀬は笑った。
テツもクスっと肩を震わせる。
「けど、久々に会ったエージの顔は、憑き物が落ちた様に穏やかだった。ようやく、自分の場所を見つけた――そんな風に見えたよ」
サチ姐が黙って空になった佐倉のグラスに、バーボンを注ぐ。
「これはアタシからの奢りよ」
そう言って、自分のグラスと軽く合わせる。
佐倉は礼を言ってグラスをかざすと、「あとは君らが知ってる、優しいエージさん、だ」と言って笑った。
その台詞に、綾瀬がボソッと呟いた。
「たまに怖ぇけどな……」
スーちゃんが頷き、テツは苦笑した。
「アイツがどんな理由で退職を受理させたのか気になったが、元マル暴の刑事があの界隈で店を持ったんだ。『自分の背後にはヤクザがいる』とでも言ったんだろう。奴は岡嵜組の剱崎に目をかけられていた。組入りしかねない警察官は、さすがの刑事部長も無視できなかったんだろうな」
「でも、エージさんはヤクザじゃないでしょう?」
スーちゃんがそう言って首を傾げる。
「その辺に関しては恐らく……」
バーボンのストレートに顔を顰めながら、佐倉は言った。
「剱崎の方が1枚上手だったんだろうな」
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