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散華
インターバル【現在】
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「エージが、自分の生い立ちを話してくれたことがある。深酒させても、簡単に口を割る様な男じゃなかったが、何かの弾みで話してくれた」
佐倉はそう言って、三杯目の水割りに口を付けた。
「アイツの両親も再婚同士で、エージは母親の連れ子だったそうだ。父親は2人の男の子を連れて……エージは中学生の時に三人兄弟の真ん中になったと……そう言ってた」
佐倉はカウンターに片ひじをついて、じっとグラスの中の氷を見つめる。
「兄弟仲は悪くなかったが、父親は自分の連れ子には目をかけるが、エージには無関心だったそうだ。事ある毎に兄弟と比較され、努力しても認めてもらえない。その理不尽さから、一時悪い連中と付き合って、素行不良でグレた時期もあったそうだが……母親に泣きつかれて改心したと。けどその母親が他に男を作って家を出て行った」
「イヤだ、サイテー」
と、スーちゃんが顔をしかめる。
「血の繋がらない父親と兄弟の中に取り残されて――エージは『身の置き場がなかった』と笑ってた。男癖の悪い母親を見て育ったんだ。女に嫌気さすのも無理ないな」
佐倉の言葉に、サチ姐は笑った。
「だから、少年の気持ちが分かったんだろう。居場所のない家にいるより、居心地のいい場所があれば、まともに生きられると」
「エージさんは、どうして警察官になったの?」
ふいに、綾瀬がそう聞いた。
「元警察官に勧められたと言ってたが……俺が思うに、奴は誰かに必要とされたかったんじゃないかな」
佐倉はそう言って、カウンターに集う人の顔を見た。
そして最後にテツの顔をじっと見ると、その目に語り掛けるように言う。
「評価もされず、認められず――自分は不必要な存在だと……思われることが怖かったんだろう。だから、頼ってくる者を拒まない。余程の事がなければ、手を貸してやる。もともとの性格もあるんだろうが、アイツ自身、相手を支えながら自分もその存在に支えられていたんじゃないか?そんな気がするよ」
テツは黙って目を伏せた。
「警察組織は実力社会だ。能力があれば認められて評価を受けて這い上がれる。エージに出世欲はなかったが、自分の実力が認められて評価されるのが嬉しそうだった」
そう言った後、佐倉はふいに眉を寄せて険しい顔をする。
「だがそれは、ヤクザの世界も同じだ」
佐倉はそう言って、三杯目の水割りに口を付けた。
「アイツの両親も再婚同士で、エージは母親の連れ子だったそうだ。父親は2人の男の子を連れて……エージは中学生の時に三人兄弟の真ん中になったと……そう言ってた」
佐倉はカウンターに片ひじをついて、じっとグラスの中の氷を見つめる。
「兄弟仲は悪くなかったが、父親は自分の連れ子には目をかけるが、エージには無関心だったそうだ。事ある毎に兄弟と比較され、努力しても認めてもらえない。その理不尽さから、一時悪い連中と付き合って、素行不良でグレた時期もあったそうだが……母親に泣きつかれて改心したと。けどその母親が他に男を作って家を出て行った」
「イヤだ、サイテー」
と、スーちゃんが顔をしかめる。
「血の繋がらない父親と兄弟の中に取り残されて――エージは『身の置き場がなかった』と笑ってた。男癖の悪い母親を見て育ったんだ。女に嫌気さすのも無理ないな」
佐倉の言葉に、サチ姐は笑った。
「だから、少年の気持ちが分かったんだろう。居場所のない家にいるより、居心地のいい場所があれば、まともに生きられると」
「エージさんは、どうして警察官になったの?」
ふいに、綾瀬がそう聞いた。
「元警察官に勧められたと言ってたが……俺が思うに、奴は誰かに必要とされたかったんじゃないかな」
佐倉はそう言って、カウンターに集う人の顔を見た。
そして最後にテツの顔をじっと見ると、その目に語り掛けるように言う。
「評価もされず、認められず――自分は不必要な存在だと……思われることが怖かったんだろう。だから、頼ってくる者を拒まない。余程の事がなければ、手を貸してやる。もともとの性格もあるんだろうが、アイツ自身、相手を支えながら自分もその存在に支えられていたんじゃないか?そんな気がするよ」
テツは黙って目を伏せた。
「警察組織は実力社会だ。能力があれば認められて評価を受けて這い上がれる。エージに出世欲はなかったが、自分の実力が認められて評価されるのが嬉しそうだった」
そう言った後、佐倉はふいに眉を寄せて険しい顔をする。
「だがそれは、ヤクザの世界も同じだ」
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