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波紋
#6
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「高校生?学校は?」
その質問に、ショウは半ばあきらめた様に「行ってない」と答えた。
家にも帰っていないことを話し、その間ずっと、知り合いの家を転々としていたと話す。
ノックがして、佐倉が顔を出した。名前から身元を割り出したようだった。
その結果が書かれたメモ用紙を見て、梶川は指を鳴らした。
「小林翔君……17歳!ビンゴだな」
嬉しそうに笑う梶川を見て、翔はチェッと口を尖らせた。
名前だけで、よく身元が割れたな……と思ったが、そこに書かれていた内容を見て梶川は黙り込んだ。
そして目の前にいる翔をじっと見る。
都立高校に在籍しているようだったが、店の従業員として、このひと月近く働いていることを考えたら、その間はずっと不登校の状態だったはず。その上、家出人として家族から捜索願も出されていない。
その事が何を意味しているのか、だいたい想像はつくが……
梶川は敢えて聞いた。
「家族との関係は良好?」
「――」
そう聞かれ、無言で俯く翔に「なわけないか……」と梶川は呟いた。
再びノックがして、姿を見せた捜査員に梶川は目配せすると、ゆっくりと立ち上がった。
「未成年って分かったから、こっからは少年課の刑事さんに代わるよ」
「え?」
「話してくれてありがとう、翔君」
そう言って出て行こうとする梶川に、翔は「エージ君」と声を掛けた。
梶川は一瞬振り向いたが――そのまま何も言わず、黙って部屋を出た。
隣室で様子を見ていた佐倉と矢島が、出て来て梶川の傍に寄った。
「あの子、捨てられた子犬みたいな目でお前を見てたぜ」
矢島がそう言った。
「懐かれても困る」
「エージ君、だってさ」
佐倉の台詞に梶川は苦笑した。
「俺はお友達かよ」
そう言って梶川は迷惑そうに顔をしかめたが、メモに書かれていた『児相への通報アリ』という言葉に引っかかった。
「あの子、虐待でもされてたの?」
「12,3年位前に数回、通報されてる。その時の情報でヒットした。詳しい内容までは分からないけど、家族に問題アリみたいだな」
佐倉がそう言って顔をしかめた。
「じゃなきゃ捜索願ぐらい出すだろう。心配してくれるような大人がいないのかもしれないな」
「……」
梶川は黙って取調室の方を振り返った。
去り際に呼び止められた。
何か言いかけた口元が小さく動くのが分かったが、そのまま出てきてしまった。
何を言おうとしたのだろう……
気にはなったが、今の自分には何もしてやれない。詳しい事情を知りたいが、担当部署が違うので迂闊に手も出せない。せめて誠意ある担当官が付くことを願うだけだった。
――ブーンという小さな振動がした。
尻に入れていた携帯電話のバイブに気づいて、梶川は立ち止まると手に取って確認した。
メッセージの着信。相手は剱崎隼人だった。
「どうした?」
「……いえ。別に」
梶川は内容をザっと確認すると、前を歩く佐倉と矢島の後を追いかけるように足早に歩いた。
その質問に、ショウは半ばあきらめた様に「行ってない」と答えた。
家にも帰っていないことを話し、その間ずっと、知り合いの家を転々としていたと話す。
ノックがして、佐倉が顔を出した。名前から身元を割り出したようだった。
その結果が書かれたメモ用紙を見て、梶川は指を鳴らした。
「小林翔君……17歳!ビンゴだな」
嬉しそうに笑う梶川を見て、翔はチェッと口を尖らせた。
名前だけで、よく身元が割れたな……と思ったが、そこに書かれていた内容を見て梶川は黙り込んだ。
そして目の前にいる翔をじっと見る。
都立高校に在籍しているようだったが、店の従業員として、このひと月近く働いていることを考えたら、その間はずっと不登校の状態だったはず。その上、家出人として家族から捜索願も出されていない。
その事が何を意味しているのか、だいたい想像はつくが……
梶川は敢えて聞いた。
「家族との関係は良好?」
「――」
そう聞かれ、無言で俯く翔に「なわけないか……」と梶川は呟いた。
再びノックがして、姿を見せた捜査員に梶川は目配せすると、ゆっくりと立ち上がった。
「未成年って分かったから、こっからは少年課の刑事さんに代わるよ」
「え?」
「話してくれてありがとう、翔君」
そう言って出て行こうとする梶川に、翔は「エージ君」と声を掛けた。
梶川は一瞬振り向いたが――そのまま何も言わず、黙って部屋を出た。
隣室で様子を見ていた佐倉と矢島が、出て来て梶川の傍に寄った。
「あの子、捨てられた子犬みたいな目でお前を見てたぜ」
矢島がそう言った。
「懐かれても困る」
「エージ君、だってさ」
佐倉の台詞に梶川は苦笑した。
「俺はお友達かよ」
そう言って梶川は迷惑そうに顔をしかめたが、メモに書かれていた『児相への通報アリ』という言葉に引っかかった。
「あの子、虐待でもされてたの?」
「12,3年位前に数回、通報されてる。その時の情報でヒットした。詳しい内容までは分からないけど、家族に問題アリみたいだな」
佐倉がそう言って顔をしかめた。
「じゃなきゃ捜索願ぐらい出すだろう。心配してくれるような大人がいないのかもしれないな」
「……」
梶川は黙って取調室の方を振り返った。
去り際に呼び止められた。
何か言いかけた口元が小さく動くのが分かったが、そのまま出てきてしまった。
何を言おうとしたのだろう……
気にはなったが、今の自分には何もしてやれない。詳しい事情を知りたいが、担当部署が違うので迂闊に手も出せない。せめて誠意ある担当官が付くことを願うだけだった。
――ブーンという小さな振動がした。
尻に入れていた携帯電話のバイブに気づいて、梶川は立ち止まると手に取って確認した。
メッセージの着信。相手は剱崎隼人だった。
「どうした?」
「……いえ。別に」
梶川は内容をザっと確認すると、前を歩く佐倉と矢島の後を追いかけるように足早に歩いた。
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