哀歌ーelegy－

波紋

インターバル【現在】

「今は昔に比べて性差別は少なくなったが、それでもやっぱり公にはし辛い。そういう職場も、まだまだたくさんある」
　佐倉はそう言うと、カウンターに頬杖をついてスーちゃんや綾瀬を見た。
「特に警察組織は根っからの男社会だ。それも、昔ながらの古い体質が染みついたままの、な。性的マイノリティを持ってることがバレたら、出世に響くとか……からかわれたり、パワハラ、セクハラの対象にされる可能性が大きい。だから誰にも言えないし、絶対に知られたくない」
　そう言って、佐倉はサチ姐を見て頷いた。
「そうだな……エージは上手に隠していたよ。だから誰も気づかなかった」
　氷が溶けてグラスの底に沈んでいくのを見て、佐倉は言った。




「あんなことがあるまではな――」