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秘密
#3
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――年が明けて2011年、1月。
繁華街の路上で職質拒否の男がいる、という要請を受けて、佐倉と梶川は現場に向かった。
職質を拒否しているその男は、自分を厳武会の構成員だと名乗り、これから一闘会の組長を殺りにいく――と豪語しているらしい。
「酒に酔ってるのか?それともクスリでハイになってるのか?」
佐倉は警察官に取り囲まれている男を見ながら聞いた。
「所持品検査も拒否してて、見たけりゃ令状持ってこいの一点張りです」
自ら隊の警察官が腰に手を当て苦い顔をした。
「ほんとに厳武の組員なのか?」
梶川の言葉に、「さぁ……」と警察官は笑った。
「本人がそう言ってるだけで、確証がないです。とにかくひたすら拒否ですよ」
佐倉はジッと男を見ている。
「見覚えありますか?」
梶川が聞いた。佐倉は首を振ると、「見た事はないな……新入りか……もしくはただの鉄砲玉か」と呟く。
すると、そこへ同じように要請を受けて駆けつけた内田と巡査の2人が、佐倉達に気付いて近づいてきた。
「進展なしか?」
「俺達も今さっき来たばかりだ」
ふぅん……と内田は鼻を鳴らして梶川を見た。鬱陶しいものでも見るようなその目に、梶川は苦笑する。
「おい……何笑ってんだよ」
「別に……笑ってませんよ」
「今笑ったろうが」
絡む内田に佐倉は顔を顰めた。
「よせ。こんな所で身内が揉めるな」
「躾がなってねぇぞ、サク」
その台詞に梶川は「俺は犬かよ……」と呟いた。
内田がイラついたように梶川を睨みつけた。そして、職質を拒む男を見て「サッサと令状請求しちまえよ」と舌打ちした。
「それも手間だから粘ってるんだろう」
「時間の無駄だ」
内田はそう言って腕時計を見た。ひと目で高額と分かる時計だった。薄給ではないが、一警察官が気軽に買える物でもない。
「お前ら、もう引いていいぞ。ここは俺たちが片付けるから」
「指示もないのに、そうはいくか」
内田の言葉に佐倉は呆れて言った。
「4課の人間、こんなにいらねぇだろう」
「それを判断するのはアンタじゃないだろう」
「あ?」
梶川の台詞に、内田は眉間を寄せると詰め寄った。
「お前、今なんつった?」
「判断するのはアンタじゃないだろう――って言いました」
佐倉は思わず目を見開いて梶川を見た。
目の前では職質拒否男と警察官の攻防。
そして横では梶川と内田が火花を散らしている。
(おい……勘弁してくれ)
佐倉は内田の肩を抑えて言った。
「やめろ。こんな所で喧嘩するな」
「先輩に向かって『アンタ』だ?」
「やるなら署に戻ってからにしろ」
必死になだめるが、内田の興奮が収まらない。その火に油を注ぐように、梶川が言った。
「犬はアンタだな。偉いさんにシッポ振るのが得意だ」
「なんだと――!」
(あぁ……)
佐倉は天を仰いだ。
梶川へ殴り掛かる内田を、佐倉は全身で押さえ込んだ。一緒にいた巡査も慌てて止めに入る。
突如始まった刑事同士の争いに、現場にいた所轄や応援で駆けつけた警察官が驚いて止めに入る。
これは一体なんの騒ぎだ――?と。
現場は違う意味で騒然となり、事態を収集する為の更なる増援が呼ばれ、結局――
佐倉達4課の人間は全員本部に戻され、厳しく叱責される事となった。
繁華街の路上で職質拒否の男がいる、という要請を受けて、佐倉と梶川は現場に向かった。
職質を拒否しているその男は、自分を厳武会の構成員だと名乗り、これから一闘会の組長を殺りにいく――と豪語しているらしい。
「酒に酔ってるのか?それともクスリでハイになってるのか?」
佐倉は警察官に取り囲まれている男を見ながら聞いた。
「所持品検査も拒否してて、見たけりゃ令状持ってこいの一点張りです」
自ら隊の警察官が腰に手を当て苦い顔をした。
「ほんとに厳武の組員なのか?」
梶川の言葉に、「さぁ……」と警察官は笑った。
「本人がそう言ってるだけで、確証がないです。とにかくひたすら拒否ですよ」
佐倉はジッと男を見ている。
「見覚えありますか?」
梶川が聞いた。佐倉は首を振ると、「見た事はないな……新入りか……もしくはただの鉄砲玉か」と呟く。
すると、そこへ同じように要請を受けて駆けつけた内田と巡査の2人が、佐倉達に気付いて近づいてきた。
「進展なしか?」
「俺達も今さっき来たばかりだ」
ふぅん……と内田は鼻を鳴らして梶川を見た。鬱陶しいものでも見るようなその目に、梶川は苦笑する。
「おい……何笑ってんだよ」
「別に……笑ってませんよ」
「今笑ったろうが」
絡む内田に佐倉は顔を顰めた。
「よせ。こんな所で身内が揉めるな」
「躾がなってねぇぞ、サク」
その台詞に梶川は「俺は犬かよ……」と呟いた。
内田がイラついたように梶川を睨みつけた。そして、職質を拒む男を見て「サッサと令状請求しちまえよ」と舌打ちした。
「それも手間だから粘ってるんだろう」
「時間の無駄だ」
内田はそう言って腕時計を見た。ひと目で高額と分かる時計だった。薄給ではないが、一警察官が気軽に買える物でもない。
「お前ら、もう引いていいぞ。ここは俺たちが片付けるから」
「指示もないのに、そうはいくか」
内田の言葉に佐倉は呆れて言った。
「4課の人間、こんなにいらねぇだろう」
「それを判断するのはアンタじゃないだろう」
「あ?」
梶川の台詞に、内田は眉間を寄せると詰め寄った。
「お前、今なんつった?」
「判断するのはアンタじゃないだろう――って言いました」
佐倉は思わず目を見開いて梶川を見た。
目の前では職質拒否男と警察官の攻防。
そして横では梶川と内田が火花を散らしている。
(おい……勘弁してくれ)
佐倉は内田の肩を抑えて言った。
「やめろ。こんな所で喧嘩するな」
「先輩に向かって『アンタ』だ?」
「やるなら署に戻ってからにしろ」
必死になだめるが、内田の興奮が収まらない。その火に油を注ぐように、梶川が言った。
「犬はアンタだな。偉いさんにシッポ振るのが得意だ」
「なんだと――!」
(あぁ……)
佐倉は天を仰いだ。
梶川へ殴り掛かる内田を、佐倉は全身で押さえ込んだ。一緒にいた巡査も慌てて止めに入る。
突如始まった刑事同士の争いに、現場にいた所轄や応援で駆けつけた警察官が驚いて止めに入る。
これは一体なんの騒ぎだ――?と。
現場は違う意味で騒然となり、事態を収集する為の更なる増援が呼ばれ、結局――
佐倉達4課の人間は全員本部に戻され、厳しく叱責される事となった。
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