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Side.B・テツとエージのにゃんこ★すたぁ【R-18】
#19
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「名前……何にする?」
「うーん……」
テツはエージに抱きついたまま目を閉じると、「あのお店の名前はどういう意味なの」と聞いた。
「Roost?」
「うん」
「止まり木とか寝ぐらとか……そういう意味だよ」
「止まり木……」
なんとなく分かるような気がしてテツは微笑んだ。
夜を飛ぶ鳥たちが、羽を休めにやってくる――束の間の休息と安息を求めて。
あの柔らかな光に誘われて扉を開けた。
あの日の自分のように……
「エージ君のイメージにピッタリ」
「てっちゃんが好きな名前を付けていいんだよ。哲弥の店!とか」
「イヤだ、そんなの」
テツは笑うと、「そぉね……」とぼんやり視線をテーブルの下に向けた。
ふと―――ひと組のスリッパが目に留まる。
(あのスリッパ……)
テツは思わず苦笑した。
「あれ……まだ捨ててなかったんだ」
「え?」
エージはテーブルの下に目をやって笑った。
「あぁ……なんか捨てらんなくて」
「あれ、外歩いてたヤツだよ。汚いじゃん」
「でもなんかアレ見ると、てっちゃんって感じがするんだよな」
なにそれぇ、とテツは笑うと、そこに描かれていたネコと星のイラストを見て呟いた。
「ネコと星――キャットスター……」
テツは不意に身を起こすと、エージの顔をじっと覗き込んで言った。
「ねぇ。お店の名前、キャットスターは?」
「え?」
「キャットスター。僕、にゃんこの星になる!」
「……」
驚いて目を丸くするエージを見て楽しそうに笑うと、「僕、にゃんこ界の星になる!」と言って嬉しそうに抱きついた。
「にゃんこのアイドル?」
「そう!キャットスター。ねぇどう?」
「……三十路のアイドルねぇ……」
ボソッと呟いたエージの台詞に、「エージ君、キライ!!」と叩いてテツは膨れた。
怒ってそっぽを向くテツに、エージが慌てて謝る。
「ウソウソ、ゴメン。全然良いよ!」
「もうキライ!」
「本当だって。絶対なれるよ。だって、てっちゃん可愛いもん」
だから機嫌直してよ――とエージはテツの頭を撫でた。
「もう知らない」
「てっちゃんは最強のネコちゃんだぜ」
「イヤ!」
「ほんと、30には見えないって」
「歳言わないで!」
すっかり機嫌を損ねたテツに、エージは苦笑したが、それでも楽しそうに「許して」「ごめんなさい」と繰り返しながらちょっかいを出す。
「もう知らない!」
と、嫌がりながらも嬉しそうに笑うテツと向かい合いながら……2人はしばらくじっと見つめ合うと――次の瞬間、笑って服を脱いだ。
キスをして抱き合う。
少し汗ばんだ肌が、吸い付くように互いの体を密着させてゆく。
「ん……ん……」
キスをしたまま、テツは両腕をエージの首に絡ませると自分の方へ引き寄せた。その力に身を預けるように、エージはテツの上に覆いかぶさると、激しく舌を絡ませながら強く抱きしめる。
ソファから投げ出されたテツの足が、テーブルに当たった。
その振動で、置いてあったバースデーケーキが揺れる。
3と0のロウソクに挟まれていた。
真っ赤なイチゴが一つ、生クリームの斜面を滑り落ちた―――
「うーん……」
テツはエージに抱きついたまま目を閉じると、「あのお店の名前はどういう意味なの」と聞いた。
「Roost?」
「うん」
「止まり木とか寝ぐらとか……そういう意味だよ」
「止まり木……」
なんとなく分かるような気がしてテツは微笑んだ。
夜を飛ぶ鳥たちが、羽を休めにやってくる――束の間の休息と安息を求めて。
あの柔らかな光に誘われて扉を開けた。
あの日の自分のように……
「エージ君のイメージにピッタリ」
「てっちゃんが好きな名前を付けていいんだよ。哲弥の店!とか」
「イヤだ、そんなの」
テツは笑うと、「そぉね……」とぼんやり視線をテーブルの下に向けた。
ふと―――ひと組のスリッパが目に留まる。
(あのスリッパ……)
テツは思わず苦笑した。
「あれ……まだ捨ててなかったんだ」
「え?」
エージはテーブルの下に目をやって笑った。
「あぁ……なんか捨てらんなくて」
「あれ、外歩いてたヤツだよ。汚いじゃん」
「でもなんかアレ見ると、てっちゃんって感じがするんだよな」
なにそれぇ、とテツは笑うと、そこに描かれていたネコと星のイラストを見て呟いた。
「ネコと星――キャットスター……」
テツは不意に身を起こすと、エージの顔をじっと覗き込んで言った。
「ねぇ。お店の名前、キャットスターは?」
「え?」
「キャットスター。僕、にゃんこの星になる!」
「……」
驚いて目を丸くするエージを見て楽しそうに笑うと、「僕、にゃんこ界の星になる!」と言って嬉しそうに抱きついた。
「にゃんこのアイドル?」
「そう!キャットスター。ねぇどう?」
「……三十路のアイドルねぇ……」
ボソッと呟いたエージの台詞に、「エージ君、キライ!!」と叩いてテツは膨れた。
怒ってそっぽを向くテツに、エージが慌てて謝る。
「ウソウソ、ゴメン。全然良いよ!」
「もうキライ!」
「本当だって。絶対なれるよ。だって、てっちゃん可愛いもん」
だから機嫌直してよ――とエージはテツの頭を撫でた。
「もう知らない」
「てっちゃんは最強のネコちゃんだぜ」
「イヤ!」
「ほんと、30には見えないって」
「歳言わないで!」
すっかり機嫌を損ねたテツに、エージは苦笑したが、それでも楽しそうに「許して」「ごめんなさい」と繰り返しながらちょっかいを出す。
「もう知らない!」
と、嫌がりながらも嬉しそうに笑うテツと向かい合いながら……2人はしばらくじっと見つめ合うと――次の瞬間、笑って服を脱いだ。
キスをして抱き合う。
少し汗ばんだ肌が、吸い付くように互いの体を密着させてゆく。
「ん……ん……」
キスをしたまま、テツは両腕をエージの首に絡ませると自分の方へ引き寄せた。その力に身を預けるように、エージはテツの上に覆いかぶさると、激しく舌を絡ませながら強く抱きしめる。
ソファから投げ出されたテツの足が、テーブルに当たった。
その振動で、置いてあったバースデーケーキが揺れる。
3と0のロウソクに挟まれていた。
真っ赤なイチゴが一つ、生クリームの斜面を滑り落ちた―――
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