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Side.B・テツとエージのにゃんこ★すたぁ【R-18】
#8
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時折、閉店間際にフラッとやってきてはカウンターで一杯飲んで帰っていく男。
佐倉というこの常連客に、テツは興味を持った。
というよりも、この男を通じて更にエージに興味を持つようになった――と言った方が正しいだろう。
エージと似た雰囲気を持っているが、佐倉はゲイではない。
左手の薬指に結婚指輪をしている。家庭を持っている普通の男だ。
その男と、かつて一緒に仕事をしていたという。
一体どんな仕事?
気になって聞いてみたが、エージは笑って「普通の仕事だよ」と曖昧に誤魔化した。
(普通って?)
2人の男から漂う雰囲気は、ありふれたサラリーマンのそれとは少し違う。
鍛えた体つきといい、鋭い目つきといい――
(まさか……暴〇団系の人じゃないよね?)
いかにもな見た目の2人に、テツはドキドキしながらソファで寛ぐエージを見た。
その気配を察知したのか、エージは振り向いて言った。
「てっちゃん、ちょっとこっちおいで」
「……」
テツが無言で近づくと、「ここ座って」とエージが自分の膝を叩いた。
テツが向かい合わせに跨いで座ると、両手でその腰を押さえて言った。
「何考えてるか、当ててやろうか?」
「……」
少し怯えた目で自分を見るテツに、エージは笑うと、わざと大袈裟に裏声を使って言った。
「ちょっと、この人……まさかヤクザじゃないでしょうね!?」
「……」
「絶対そうよ!だって目つき悪いし、態度デカいし」
テツは一瞬吹き出しそうになり、慌てて口を結んだ。
「あんなスーツ着て、見るからに人相の悪い友達までいるし」
「……」
「昔の仕事仲間って……絶対堅気じゃないわよ!こいつらヤクザだわ!うわもぉサイアク~!!」
「プッ―――」
テツは堪え切れずに吹き出すと、笑いながらエージの胸を叩いた。
「そこまで思ってない~」
「でも思ってたろう?」
「……」
テツは黙り込んで、小さく頷いた。
「だって……教えてくれないんだもん」
「いつかちゃんと話すよ。でもこれだけは信じて。サクと俺はヤクザじゃないよ」
「……」
俯いたまま、テツは何も言わずに手でエージの胸元をいじくっている。何か言いたいけど、言い出せない――そんな気配を感じて、エージは優しく声を掛けた。
「どうしたの?」
「……」
「いいよ。言いたいことあるなら言いな」
「――」
それでも黙っているテツの頬に両手を当てて、そのじっと目を覗き込んだ。
「てっちゃん?」
「――エージ君……」
テツはそう呟くと、泣きそうな目をしてエージを見た。
「エージ君……僕と一緒にいて楽しい?」
「え?」
驚いた顔をするエージに、縋りつくようにテツは言った。
「僕、エージ君の役に立ってる?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「だって……僕何もできないし、一緒にいて役に立ってるかどうかも分からないし。でももしここ追い出されたら、僕……他に行くところが――」
エージはテツを抱き寄せて言った。
「そんなことするわけねぇだろ。俺は部屋着とスリッパで追い出すような男じゃねぇよ」
「エージ君……」
「役に立つとか立たねぇとか、そんな理由で置いてるわけじゃない。俺が傍にいてほしいんだ」
エージはそう言うと、テツにキスをした。
「俺の傍にいて。てっちゃんが嫌じゃなければ――ずっとここにいてよ」
「エージ君」
テツは嬉しそうに笑うと、両手で顔を覆って泣き出した。
その頭を撫でながらエージは笑った。
「泣いたり笑ったり――忙しいにゃんこだな」
佐倉というこの常連客に、テツは興味を持った。
というよりも、この男を通じて更にエージに興味を持つようになった――と言った方が正しいだろう。
エージと似た雰囲気を持っているが、佐倉はゲイではない。
左手の薬指に結婚指輪をしている。家庭を持っている普通の男だ。
その男と、かつて一緒に仕事をしていたという。
一体どんな仕事?
気になって聞いてみたが、エージは笑って「普通の仕事だよ」と曖昧に誤魔化した。
(普通って?)
2人の男から漂う雰囲気は、ありふれたサラリーマンのそれとは少し違う。
鍛えた体つきといい、鋭い目つきといい――
(まさか……暴〇団系の人じゃないよね?)
いかにもな見た目の2人に、テツはドキドキしながらソファで寛ぐエージを見た。
その気配を察知したのか、エージは振り向いて言った。
「てっちゃん、ちょっとこっちおいで」
「……」
テツが無言で近づくと、「ここ座って」とエージが自分の膝を叩いた。
テツが向かい合わせに跨いで座ると、両手でその腰を押さえて言った。
「何考えてるか、当ててやろうか?」
「……」
少し怯えた目で自分を見るテツに、エージは笑うと、わざと大袈裟に裏声を使って言った。
「ちょっと、この人……まさかヤクザじゃないでしょうね!?」
「……」
「絶対そうよ!だって目つき悪いし、態度デカいし」
テツは一瞬吹き出しそうになり、慌てて口を結んだ。
「あんなスーツ着て、見るからに人相の悪い友達までいるし」
「……」
「昔の仕事仲間って……絶対堅気じゃないわよ!こいつらヤクザだわ!うわもぉサイアク~!!」
「プッ―――」
テツは堪え切れずに吹き出すと、笑いながらエージの胸を叩いた。
「そこまで思ってない~」
「でも思ってたろう?」
「……」
テツは黙り込んで、小さく頷いた。
「だって……教えてくれないんだもん」
「いつかちゃんと話すよ。でもこれだけは信じて。サクと俺はヤクザじゃないよ」
「……」
俯いたまま、テツは何も言わずに手でエージの胸元をいじくっている。何か言いたいけど、言い出せない――そんな気配を感じて、エージは優しく声を掛けた。
「どうしたの?」
「……」
「いいよ。言いたいことあるなら言いな」
「――」
それでも黙っているテツの頬に両手を当てて、そのじっと目を覗き込んだ。
「てっちゃん?」
「――エージ君……」
テツはそう呟くと、泣きそうな目をしてエージを見た。
「エージ君……僕と一緒にいて楽しい?」
「え?」
驚いた顔をするエージに、縋りつくようにテツは言った。
「僕、エージ君の役に立ってる?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「だって……僕何もできないし、一緒にいて役に立ってるかどうかも分からないし。でももしここ追い出されたら、僕……他に行くところが――」
エージはテツを抱き寄せて言った。
「そんなことするわけねぇだろ。俺は部屋着とスリッパで追い出すような男じゃねぇよ」
「エージ君……」
「役に立つとか立たねぇとか、そんな理由で置いてるわけじゃない。俺が傍にいてほしいんだ」
エージはそう言うと、テツにキスをした。
「俺の傍にいて。てっちゃんが嫌じゃなければ――ずっとここにいてよ」
「エージ君」
テツは嬉しそうに笑うと、両手で顔を覆って泣き出した。
その頭を撫でながらエージは笑った。
「泣いたり笑ったり――忙しいにゃんこだな」
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