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Side.B・テツとエージのにゃんこ★すたぁ【R-18】
#7
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Roostと書かれた小さな看板。
夜になると、その淡い光に誘われて、界隈にいる馴染みの客が集まってくる。
明るく会話を楽しむ者。深刻な顔で悩みを相談する者。
訪れる客の年齢層は様々だが、エージはいつも穏やかな顔をして、それらの客の相手をしていた。
同じ水の中を泳ぐ者同士。
テツは店の手伝いをしながら、訪れる客とはすぐに打ち解けた。
「てっちゃん可愛い~」
常連客のオネェ2人にそう言われて、カウンターにいたテツはウフフと笑った。
「歳幾つよ?」
「ヤダ、聞かないで」
すると横からエージが「29」と答える。
「ちょっとぉ~」とテツが睨みつけた。
「若いじゃな~い。お肌ツルツルぅ」
「大学生かと思ったわ」
「だろう?」
エージがそう言って嬉しそうにテツの肩を抱いた。テツは不貞腐れながらも、嬉しそうに照れて笑う。
「なぁに?2人そういう関係なの?」
「なんだぁ……あたし、エージさん狙ってたのにぃ」
口を尖らせながらも、嬉しそうにケラケラと笑っている。どこまでが本気で、どこまでが冗談か分からない。
本音を話していそうで、実は決して本音を明かさないのが彼女たちだ。
デリケートで傷つきやすい心を持っている――
エージもそれを知っているので、深く突っ込まずに一緒に笑っている。
テツはそんなエージをじっと見つめていた。
客たちが去り、店じまいの為の後片付けをしていると、フラッと入ってきた男がいた。
「あ、ごめんなさい。もう閉店で――」
すると、その言葉を遮るようにエージが言った。
「てっちゃん、その人はいいよ」
入ってきた男はテツを見ると、「新しいバイトの子?」と笑顔で聞いてきた。
スーツ姿で背の高い、がっちりとした体つきの男だった。歳はエージより上に見えたが、一瞬向けられた目つきの鋭さと、相反する穏やかな微笑みが、どこかエージと似ている。2人からは同じ匂いを感じた。
「今日はもう来ないかと思ってた」
そう言われて男はカウンターに座ると肩をすくめた。
「やいやい言う連中が大勢いるもんで」
なかなか帰れない……そう言いながら苦笑すると、背後にいるテツを振り返って聞いた。
「バイト入れたの?」
「住み込みのね」
そう答えて意味深に笑うエージに、男も笑った。
「てっちゃん、紹介するよ。この人はサク。俺の――昔の仕事仲間」
「昔の?」
首を傾げるテツを見て、男は静かに頭を下げた。
「佐倉といいます。よろしく」
「佐倉……サク……サッ君」
「―――」
戸惑う佐倉の顔を見て、エージは思わず笑った。
「そう。サッ君」
夜になると、その淡い光に誘われて、界隈にいる馴染みの客が集まってくる。
明るく会話を楽しむ者。深刻な顔で悩みを相談する者。
訪れる客の年齢層は様々だが、エージはいつも穏やかな顔をして、それらの客の相手をしていた。
同じ水の中を泳ぐ者同士。
テツは店の手伝いをしながら、訪れる客とはすぐに打ち解けた。
「てっちゃん可愛い~」
常連客のオネェ2人にそう言われて、カウンターにいたテツはウフフと笑った。
「歳幾つよ?」
「ヤダ、聞かないで」
すると横からエージが「29」と答える。
「ちょっとぉ~」とテツが睨みつけた。
「若いじゃな~い。お肌ツルツルぅ」
「大学生かと思ったわ」
「だろう?」
エージがそう言って嬉しそうにテツの肩を抱いた。テツは不貞腐れながらも、嬉しそうに照れて笑う。
「なぁに?2人そういう関係なの?」
「なんだぁ……あたし、エージさん狙ってたのにぃ」
口を尖らせながらも、嬉しそうにケラケラと笑っている。どこまでが本気で、どこまでが冗談か分からない。
本音を話していそうで、実は決して本音を明かさないのが彼女たちだ。
デリケートで傷つきやすい心を持っている――
エージもそれを知っているので、深く突っ込まずに一緒に笑っている。
テツはそんなエージをじっと見つめていた。
客たちが去り、店じまいの為の後片付けをしていると、フラッと入ってきた男がいた。
「あ、ごめんなさい。もう閉店で――」
すると、その言葉を遮るようにエージが言った。
「てっちゃん、その人はいいよ」
入ってきた男はテツを見ると、「新しいバイトの子?」と笑顔で聞いてきた。
スーツ姿で背の高い、がっちりとした体つきの男だった。歳はエージより上に見えたが、一瞬向けられた目つきの鋭さと、相反する穏やかな微笑みが、どこかエージと似ている。2人からは同じ匂いを感じた。
「今日はもう来ないかと思ってた」
そう言われて男はカウンターに座ると肩をすくめた。
「やいやい言う連中が大勢いるもんで」
なかなか帰れない……そう言いながら苦笑すると、背後にいるテツを振り返って聞いた。
「バイト入れたの?」
「住み込みのね」
そう答えて意味深に笑うエージに、男も笑った。
「てっちゃん、紹介するよ。この人はサク。俺の――昔の仕事仲間」
「昔の?」
首を傾げるテツを見て、男は静かに頭を下げた。
「佐倉といいます。よろしく」
「佐倉……サク……サッ君」
「―――」
戸惑う佐倉の顔を見て、エージは思わず笑った。
「そう。サッ君」
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