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Side.A・八木輝之の告白
#2
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それからは、たまに休憩室で会ったり、喫煙室で会ったり……と、顔を合わせることが多くなった。
所属している部署は違うが、同じフロアにいるので意外と互いの動向が見える。
オフィスのパソコンで、ひたすらデスクワークをする八木と違い、倉見は外回りに出ることが多い。出先で買ったという土産物を手に、時々八木の元を訪れてはくだらない話で盛り上がることもあった。
同期の中でも、2人はいつしか一番気心の知れた友人同士となっていた。
20代の頃の話題と言えば、ほぼ女の事だった。
入社の時点では彼女がいた倉見だったが、別れてしまったという話を聞いて、八木は肩をすくめた。
「向こうから?それともお前から?」
「向こうから……かな」
会社の近くにある飲み屋で、差し向かいで飲みながら倉見は苦笑した。
「他に好きな人が出来たって……」
「そうなんだ……」
「俺、大体このパターン」
そう言って倉見は笑うと、「何がいけないのかなぁ……」と項垂れた。
「高校の時に付き合ってた子にも同じこと言われて別れたし……大学ん時も」
「ちゃんとかまってあげてる?」
「もちろん。俺、自分で言うのもなんだけど、結構マメな方だと思うぜ?」
そう言うと、倉見はコップのビールを飲み干して手酌で注ぎ足した。
「向こうから付き合ってくれって言っといてさ。他に好きな人できたからって――」
「……」
どういうことだよ?と、ボヤく倉見に八木は笑った。
「脇が甘いんだよ」
「バカにされてるってこと?」
「そうじゃなくてさ」
八木はそう言うと、倉見の手から瓶を取ってコップに注いでやった。
「お前は優しくて、何しても許してくれそうだから相手が甘えるんだよ」
「……」
「別れ話されても、怒って怒鳴って責めたりしたことないだろう?」
「それは――」
そうかも……と、倉見は呟いた。
「優しいだけでも女は浮気するんだぜ」
八木はそう言うと、「今度、開発の連中で合コン企画するんだけど、倉見も来いよ」と誘った。
「え?部署違いの人間が参加してもいいの?」
「もちろん。独身なら誰でもオッケー」
それを聞いて倉見はしばらく考えていたが、「分かった。いいよ」と笑って頷いた。
仕事と酒と女。
あの頃は毎日がそれで回っていた。
守りになんて入らない。常に攻めの姿勢。
でも――
その姿勢に変化が訪れたのは、倉見に新しい恋人が出来た時だった。
所属している部署は違うが、同じフロアにいるので意外と互いの動向が見える。
オフィスのパソコンで、ひたすらデスクワークをする八木と違い、倉見は外回りに出ることが多い。出先で買ったという土産物を手に、時々八木の元を訪れてはくだらない話で盛り上がることもあった。
同期の中でも、2人はいつしか一番気心の知れた友人同士となっていた。
20代の頃の話題と言えば、ほぼ女の事だった。
入社の時点では彼女がいた倉見だったが、別れてしまったという話を聞いて、八木は肩をすくめた。
「向こうから?それともお前から?」
「向こうから……かな」
会社の近くにある飲み屋で、差し向かいで飲みながら倉見は苦笑した。
「他に好きな人が出来たって……」
「そうなんだ……」
「俺、大体このパターン」
そう言って倉見は笑うと、「何がいけないのかなぁ……」と項垂れた。
「高校の時に付き合ってた子にも同じこと言われて別れたし……大学ん時も」
「ちゃんとかまってあげてる?」
「もちろん。俺、自分で言うのもなんだけど、結構マメな方だと思うぜ?」
そう言うと、倉見はコップのビールを飲み干して手酌で注ぎ足した。
「向こうから付き合ってくれって言っといてさ。他に好きな人できたからって――」
「……」
どういうことだよ?と、ボヤく倉見に八木は笑った。
「脇が甘いんだよ」
「バカにされてるってこと?」
「そうじゃなくてさ」
八木はそう言うと、倉見の手から瓶を取ってコップに注いでやった。
「お前は優しくて、何しても許してくれそうだから相手が甘えるんだよ」
「……」
「別れ話されても、怒って怒鳴って責めたりしたことないだろう?」
「それは――」
そうかも……と、倉見は呟いた。
「優しいだけでも女は浮気するんだぜ」
八木はそう言うと、「今度、開発の連中で合コン企画するんだけど、倉見も来いよ」と誘った。
「え?部署違いの人間が参加してもいいの?」
「もちろん。独身なら誰でもオッケー」
それを聞いて倉見はしばらく考えていたが、「分かった。いいよ」と笑って頷いた。
仕事と酒と女。
あの頃は毎日がそれで回っていた。
守りになんて入らない。常に攻めの姿勢。
でも――
その姿勢に変化が訪れたのは、倉見に新しい恋人が出来た時だった。
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