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師走の街は、どこか気忙しい――
人も車も、落ち着きなく動き回っている感じがした。
綾瀬は助手席の窓枠に頬杖をつき、じっと倉見の横顔を見つめていた。その視線を感じて倉見が笑う。
「なに?」
「別に……良い男だなぁって思ってるだけ」
そう言って、照れて笑う倉見の膝に手を置いた。そのままゆっくりと、股の方へ滑らせて来る。
倉見は「こらこら」と手を叩いた。
「運転中だぞ」
「分かってるよ。運転に集中して」
それでも止めずに手を動かす綾瀬に、「危ないってば」と窘めたが、自分をじっとみる綾瀬の顔を見て「昼、何時までなの?」と聞いた。
「1時」
「なんだよ……1時間もないじゃん」
「過ぎてもいいよ。倉見さんと一緒に挨拶回りしてましたって言うから」
「あはは」
信号待ちで車が止まる。
その隙をついて、倉見は綾瀬の方へ身を乗り出すと、肩を抱き寄せキスをした。
一瞬驚いた綾瀬も、嬉しそうに倉見の首筋に手を回し、自分の方へ引き寄せる。
道行く人が、驚いた顔をして通り過ぎていくのを窓越しに見て、倉見は軽く手を振ってみせた。
自分は今、幸せか―――?
そう聞かれたら、倉見はたぶん「幸せだ」と答えるだろう。
まだ明白な答えは出せないが、でも、ふと思ったのだ。
こういう形の幸せがあってもいいんじゃないか?
――と。
未来がないとか。
救いがないとか。
そういうことを言う者もいるだろう。でも、だからなんだ?別にそれでもいいじゃないか。
男女の関係だって、100%の幸せな未来が約束されてるわけじゃないんだから……
(そうさ……こういう幸せがあってもいい)
再び走り出した車を運転しながら、倉見はそっと綾瀬の手を繋ぎ握りしめた。
綾瀬がそれに応えるように、優しく握り返してくる。
ラジオから流れるクリスマスソングが、2人の世界を静かに彩っていった――
END――――――――――――――――――――――― or……to be continues?
人も車も、落ち着きなく動き回っている感じがした。
綾瀬は助手席の窓枠に頬杖をつき、じっと倉見の横顔を見つめていた。その視線を感じて倉見が笑う。
「なに?」
「別に……良い男だなぁって思ってるだけ」
そう言って、照れて笑う倉見の膝に手を置いた。そのままゆっくりと、股の方へ滑らせて来る。
倉見は「こらこら」と手を叩いた。
「運転中だぞ」
「分かってるよ。運転に集中して」
それでも止めずに手を動かす綾瀬に、「危ないってば」と窘めたが、自分をじっとみる綾瀬の顔を見て「昼、何時までなの?」と聞いた。
「1時」
「なんだよ……1時間もないじゃん」
「過ぎてもいいよ。倉見さんと一緒に挨拶回りしてましたって言うから」
「あはは」
信号待ちで車が止まる。
その隙をついて、倉見は綾瀬の方へ身を乗り出すと、肩を抱き寄せキスをした。
一瞬驚いた綾瀬も、嬉しそうに倉見の首筋に手を回し、自分の方へ引き寄せる。
道行く人が、驚いた顔をして通り過ぎていくのを窓越しに見て、倉見は軽く手を振ってみせた。
自分は今、幸せか―――?
そう聞かれたら、倉見はたぶん「幸せだ」と答えるだろう。
まだ明白な答えは出せないが、でも、ふと思ったのだ。
こういう形の幸せがあってもいいんじゃないか?
――と。
未来がないとか。
救いがないとか。
そういうことを言う者もいるだろう。でも、だからなんだ?別にそれでもいいじゃないか。
男女の関係だって、100%の幸せな未来が約束されてるわけじゃないんだから……
(そうさ……こういう幸せがあってもいい)
再び走り出した車を運転しながら、倉見はそっと綾瀬の手を繋ぎ握りしめた。
綾瀬がそれに応えるように、優しく握り返してくる。
ラジオから流れるクリスマスソングが、2人の世界を静かに彩っていった――
END――――――――――――――――――――――― or……to be continues?
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