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sorarion914

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#7

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 ぼんやりと、綾瀬は布団の中でまどろんでいた。
 休みの日なのに、スマホのアラームを解除するのを忘れていて、いつも通りの時間に目覚めてしまった。
 せっかく惰眠を貪るチャンスを……
 ふいにしてしまったことに腹が立って、綾瀬は寝返りを打った。
 一度目が覚めてしまうと、とりとめもないことが頭に浮かんで、眠気がどんどん遠のいていく。
「……」
 それでも、少し前までなら、このまどろむ時間も幸せだと感じていた。
 でも今は――
 寝ている自分の隣に手を伸ばすが、誰もいない。
 このスペースは、こんなに広かっただろうか?
 冷たいシーツの感触に綾瀬はため息をつくと、たまらず身を起こした。
 枕元に置かれていたクマのぬいぐるみが目に留まる。それに向かって綾瀬は「おはよう」と言った。
 もちろん、返事が返ってくるわけでもなく、余計な虚しさを感じて綾瀬はベッドから出ると、テーブルの上にあったタバコを掴んで一本くわえた。
「――」
 火をつけようとして手を止める。
 倉見に、自分は吸わないのかと問われた時、思わず頷いてしまった。
 (なんであの時、自分は吸わないみたいな態度をとったんだろう……)
 咥えタバコのまま、しばらくじっと思案していたが。
 綾瀬はライターとタバコをテーブルに放ると、窓の外を見た。僅かに開いた窓の隙間から、朝の冷えた空気が流れ込んでくる。やわらかい陽ざしが目にまぶしかった。

 寂しいな……

 強がってはみたものの、想像以上に感じる孤独感に早くも打ちのめされそうだ。
 ふと、ベッドの上に脱ぎ捨てた作業着のズボンに気づいて、そのポケットから綾瀬は一枚の名刺を取り出した。
 倉見諒太。
 営業マンらしい、爽やかな笑顔と穏やかな話し方をする男だった。
 短髪の黒髪をスッキリと整え、姿勢も良く、スーツの着こなし方も年相応で清潔感があった。
 引き締まった体形からは、何かスポーツをやっていたのだろうと推測できる。
 背は自分の方が高いが、立場と歳は彼の方が上だ。
 (素敵な人だったな…)
 幾度か来社していて、社長と話しているのは知っていたが、あんな風に話しかけたのは昨日が初めてだった。
「……」
 車内でのやり取りを反芻していると、なぜだか心が和らいでくる。さっきまでは寂しくて泣きそうだったのに――
 (近日中に来るって言ってた。また会えるかな?)
 あれは自分に対しての約束ではないが、会えると思うと胸が弾む。
 携帯番号が記載された倉見の名刺が、まるで約束手形のような気がして、綾瀬は目を閉じると名刺を胸に抱いたままベッドに寝そべった。
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