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蜜月かもしれません
構ってちゃんの人たち 8
しおりを挟む「もう、気分はよくなりましたか、まだ休んでいてもいいんですよ」
「はい、あの…棗さん…ごめんなさい…俺…」
「ちょっと待ってください、朋志さん」
「は、はい」
後ろを振り向くと、八個の目がじーっとこちらを見ていた。好奇心丸出しで。
「理人さん」
「理人」
「彼がそうか」
「あっトモくん!もう大丈夫?」
理生の言葉に、やっぱりというふうに頷く棗家の面々。そして。
「まあ、はじめましてトモくん。理生さんがいったとおりかわいいわあ。理人さんも隅に置けないわね」
「トモくん、廊下は寒いだろう、こっちに来なさい」
「…シマエナガ…」
「わかるー、トモくん理人なんか放っておいていいからこっちに来なよ」
「場所を変えましょう」
「え、いいんですか」
朋志が、好奇心旺盛な棗家の面々と棗を交互に見て、どっちのいうことを聞けばよいのかと気にしている。棗が最も恐れていた事態が現実になってしまった。
「いいんです」
「恵吾さん、あとはお願いします」
「うん、任せて」
「あ、ありがとうございました」
「気にしないで、仲直りできるといいね」
「はい」
「行きましょう」
恵吾に頭を下げて、朋志を連れて行く。
来たのは棗の部屋。
「どうぞ」
「はい…」
机にベッド、本棚くらいしかない殺風景な部屋だ。机の下にダンベルが転がっているくらい。
「ここは…」
「僕の部屋です」
「わあ」
「…」
控えめに周りを見渡している姿は、かわいい。
「朋志さん」
「あ、はい、棗さん…」
「先に言わせてください。恐い思いをさせてしまってすみませんでした」
「俺の方こそ…棗さんになにも言わず勝手に家にお邪魔してしまってすみませんでした」
「朋志さんは悪くありません。理生と理久兄さんの悪巧みです」
「いえ、あの俺…まさかそこまでとは思ってなくて…」
「朋志さん?」
朋志にぎゅうと音がしそうなくらい手を強く握られる。「さっきの話が聞こえてしまって…すみません」と真剣な顔。
「俺は、棗さんだけです」
「ええ、僕も朋志さんだけです」
棗の言葉に朋志は、はいと笑顔を見せる。
「俺…だから、もう棗さん以外のDomと会いません」
「は」
「棗さんだけいれば俺はそれでいいです」
棗は、自分に失望しながら、たまらなくなって朋志を抱きしめた。
「ごめんなさい」
「棗さん?」
朋志が、本当は家族と挨拶をして、仲良くなりたいと思っているのを知っている。
棗のためだ。棗のために、家族の事情には立ち入らないと言っているのだ。
パートナーにそこまで言わせてまで守りたいものだろうか。棗の過剰なDomの本能を、朋志の当たり前にしていいのか。
それは、棗の好きな朋志ではない気がする…。
「朋志さん、改めて家族に紹介させてください」
「えっ、…いいんですか」
「…う…嫌ですが…、良いのです」
棗の心情をほぼ正確に理解しているだろう朋志は、棗の葛藤をこれで良いのかと心配している。
心配されている時点で…。
ただ、Domの本能とは別に、朋志には好きなことをして、好きなことを言って笑っていてほしい。
できれば、ずっと隣で。
これが、棗個人の願いだ。
「でも、知っての通り、僕は心が狭くて嫉妬深いので…」
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