51 / 151
トラウマSubは溺愛Domに縛られたい
トラウマSubは溺愛Domに縛られたい 1
しおりを挟む棗のプレイは甘くて、優しかった。
お互いの好みをすり合わせるため、簡単なプレイを重ねていた。
「丸目さん、Come」
棗の声は柔らかい。しかし、朋志にとっては支配者の声。
リビングで雑誌を読んでいた手が止まる。声がした方を見ると、ドアの前で棗が立っていた。
ハグをする。
「おかえりなさい」
「Goodboy. ただいま」
棗の髪は少し濡れていた。
いい匂いもする。シャワーを浴びてきたようだ。
週に二回、夕方のジョギングをしているようで、朋志も誘われたが、今の体力では棗の足を引っ張るだけだと思って断り、部屋で待たせてもらった。
「いつの間に帰って来たんですか」
「驚かせましたか」
緩んだ頬。わざと音を立てずに帰って来たとわかり、呆れる。
「ふてくされないでください。夕食は丸目さんの好きなものにしましょう」
駐車場で、棗が車のキーを仕事用のかばんに入れたままにしていたことに気がついた。
「すみません、ちょっと取ってきます」
「はい」
「丸目さん、Stay. ここで待っていてください」
わかったと頷いて、エレベーターに向かう棗の姿を目で追う。でも、棗の後ろ姿が見えなくなると不安だった。
早く帰ってきて欲しい。
ここで待っていたら褒めてくれる。
車のキーを取りに行く間くらい、待てる。
「丸目さん…」
戻ってきた棗がハグをしてくれる。
「Goodboy. お待たせしました」
「うん…」
「寂しかったですか」
「うん」
「すみません」
「平気です」
抱きしめられながら、
「一人で待ってくれてありがとうございます」
「僕のコマンドを聞いてくれて嬉しかったです」
と言われ、背中や頭を撫でてもらっているうちに、不安もなくなる。
なぜあんなに不安だったのかもわからず、棗に撫でてもらっているうちに忘れていった。
通院日。主治医は、顔色がよくなった朋志を見て、「あの丸目さんが…」と驚きを隠せないようすだったが、パートナーができたことを祝ってくれた。
二週間毎の通院が、次は一ヶ月後となり、療法士とのプレイをせずに帰してもらえた。
そのことを話すと、棗も喜んでくれた。
「抑制剤も、段階的にですが弱いものに変えていくことになりました」
「よかったですね。僕も嬉しいです」
「はい。副作用を抑える薬が減らせたのも嬉しくて」
「僕以外のDomとプレイせずに済んで」
「え」
「?」
棗がニコリと笑う。綺麗な笑顔。
朋志は、ぼうっと棗に見惚れてしまい、突っ込むタイミングを逃してしまった。
--- 俺が棗さんの顔に弱いこと、絶対伝わってる…
プレイをするなかで、棗のこともわかってきた。
好きなのは、Subを甘やかすこと。
”命令”より”お願い”のニュアンスでコマンドを出している。
リワードを与える事や、スキンシップでケアをすることも好んでしている。
プレイで、コマンドを受け入れてくれる姿を見ていると満たされる。
コマンドやグレアでサブスペースに入ってくれたらいいと思っている。
お仕置きが好きだったり、刺激を求めるタイプのSubに、"物足りない"と言われてきたらしい。
棗の周りには、そのようなタイプが多く、今までパートナーを得ることができなかったようだ。
朋志はDomといえば顕しか知らないが、同じDomでもタイプが違うため、最初は、Subだけが気持ちいいプレイだったらどうしよう…と、思っていたが。
何度もプレイをしているうちに、棗も自分の欲求を満たせているとわかり、身を委ねられるようになっていった。
22
お気に入りに追加
313
あなたにおすすめの小説
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる