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17歳と18歳 お付き合いのはじまり
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しおりを挟むテスト明け。
ごはんをたらふく食べた斗樹は、今日ばかりはなにもしないとリビングのソファでゴロゴロしていた。
父は片付け終わったテーブルで、テレビのニュースを観ながら新聞をめくっている。
母は、夕食の片付けが終わっても、明日の仕込みやらなんやらとすることがあってキッチンから離れられない。
「あ、そういえば」
父がおもむろにそう言って、いつも足下に置いてある仕事の鞄を漁りだした。一枚のチラシを取り出す。
「斗樹」
「んーーー?」
「こんなものがあったからもらってきたよ。いるかい?」
「なにこれ……あ」
近くの博物館で昆虫の歴史が学べるイベントのチラシだった。
「試験は終わったんだろう? 気分転換にどうだ」
「……ん。もらっとく」
一番最初に浮かんだのは、昆虫と野鳥が好きな幼なじみ。
雲雀が日本に戻ってきて一番にしたことは、水槽に蟻を一匹だけ入れて、ストレスを与えて行動を観察することだった。ひとしきり斗樹に見せて自慢したあとは庭に放していたが、群れを離れた蟻がまた群れに戻れるのか斗樹にはわからない。
(ヒバリくん、知ってるかな)
チラシを見ながら、雲雀が好きそうなイベントだと思う。もう知っている可能性もある。
雲雀への長年の片想いがやっと想いが通じて、”おつきあい”をすることになった。何回振られても諦める選択肢はなかった。今も進行形で好きだし、多分この先も。
関係が変わったことで、今まで以上に雲雀の一挙手一投足に反応してしまう。斗樹は緊張でどうしようもないのに、反して雲雀は余裕だ。
でもこの緊張は、片想いしていたときのような悲しいとか仕方ないとか、まあいいかというものではない。
いつでも好きって言っていいんだ。
とか。
気が緩んだらニヤついてしまいそうだ。
とか。
ヒバリくんにどう思われてるのかな。変だって思われてないかな。
とか、そういう類いの緊張だ。
「困らせたいわけじゃない」と、言いながら、緊張して赤くなる斗樹を笑って見ている。
その目が、今までからかわれていたものとは違って、どこか甘くて雲雀の気持ちが伝わってくるように感じて。
むず痒い。
この博物館は、雲雀と何回か行ったことがある。
(今月のお小遣いはまだ残ってるし)
(お昼代は母さんにお願いして……弁当って言われるかもだけど……)
(誘ってみようか……)
部屋に戻って、スマホの通話ボタンを押す。
相手はもちろん雲雀だ。
着信が届いて程なく、『もしもし、トキくん』と返事がある。
「あ、ヒバリくん……今忙しくない?」
『大丈夫だよ、こんばんは』
「こんばんは」
『トキくんの声が聞きたいなって思っていたからうれしいな』
「えっ!」
急に雲雀がそんなことを言うから、びっくりして大きな声が出てしまった。
お、おかしい。前はそんなこと言われたら「俺も!」って素直に言えたのに。
「そ……そぉ?……」
『あはは、どうしたの?』
「う、うん。次の土曜とか空いてる?」
『なにかあるの?』
「昆虫の歴史見に行かないかなぁって」
『行きたい』
想像通り、食い気味だった。
「そ、そう? 博物館のイベントなんだけど」
『朝から行きたい』
「うん、行こう」
斗樹からすれば、雲雀は大抵の昆虫のことを知っているように思うのに、それでも見に行きたいと思うようだ。野鳥観察にはよく付き合う斗樹だが、昆虫の方は雲雀の代わりに放流することはあっても、昆虫の何を観察しているのかよくわかっていない。タイミングが合えば、羽化を見せてもらえるくらいだ。
昆虫への熱い気持ちが聞けるかも……、と思うと、斗樹もわくわくしてきた。
『デートだね』
「え……!」
『誘ってくれてありがとう、また明日。おやすみ、トキくん』
「おやすみ……」
ツーツー……。
雲雀の昆虫トークが聞けるかもとか、行く前から楽しくなっていた斗樹だったが、切り際に雲雀が言った言葉で、寝てないのに目が覚めた。
デデデデデート……………?!
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