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受け入れるもの、変わるもの
トレーニングプレイの成果 13
しおりを挟む「厚木さんはひどい人です」
あれから吉継は、ドロドロになった体を洗うため浴室へ行った。ついてきた厚木をうまくあしらえず、あれよあれよという間に中を洗われ、また変な気分になってしまって、またまた厚木にいいように抱かれたのだ。
その間も吉継はさんざん喘がされたけれど、命令はくれなかった。急ぎパジャマを着て、厚木に文句を言うことにしたのだ。厚木は、吉継のためにベッドサイドの照明を落とし、自分の手元だけを少し明るくして、なにやら吉継には訳のわからない本を開きはじめたところだった。
厚木は、口を尖らせる吉継をちらりと横目で見てから素知らぬ顔で手元に視線を落とす。吉継の抗議など、どこ吹く風だ。
「裸は見せてやっただろう」
「でも、命令をくれないDomなんて…」
厚木なんか嫌いだと言おうとして、思いとどまる。別に嫌いではない。ただ命令してくれなかったことが不満だ。でも思い返せば、吉継は命令を出し惜しみするようなDomしか知らない。吉継が知る中では厚木が一番マシなだけで。以前の吉継ならともかく、今はもう吉継の自由を奪うDomはいない。厚木を”ご主人様”と定めてきたけれど、もしかしたらちょっと”ご主人様選び”を間違えたのかも知れない。
そうかも。
世の中は広い。
探せば、吉継を大事にしてくれる”ご主人様”がどこかにいるのかもしれない。
でも探し方はわからない。まずは押元に聞いてみようか。いや、山科に…。
「明日の朝してやる。もう遅い、早く寝ろ」
「もういいです。厚木さんの命令はいりません」
「あ?」
「厚木さんなんか”ご主人様”じゃないです。ただの嫌なDomです」
それだけ言って掛布を被る。
とにかく、吉継は悲しかったし、怒ってもいた。Subに生まれてきたのも、Domがいないと生きられないのも。吉継が思うより、DomはSubがいなくても生きていけるのかも知れない。厚木は吉継だけたと言ったけど、吉継ほどは飢えていないように思える。それとも厚木がよく言っているように、吉継だけが変なのか。なんにせよ理不尽だ。
つらつら考えているうちに眠くなってきた。
もう少しで寝られるといったところで、掛布を捲られる。
「わっ」
「お前は本当に命令優位のSubだな」
「厚木さん…」
「お前のいう都合のいい”ご主人様”になるつもりは無いが…」
厚木が吉継の額にキスをして、そのまま吉継の隣に寝そべる。
「違うと言われるのも気に入らないな」
吉継に厚木の機微などわかるわけがない。怒ってるのは吉継のほうなのに、どうして厚木のほうが機嫌が悪いのだとそっぽを向く。
「知りません…」
「人の腹に纏わりつくだけがケアか、これは気持ちよくなかったか」
そう言って、吉継の足の間に細い足が割って入ってくる。膝頭に股関を押し上げられ、息が詰まった。
「別に…」
怖いくらいだった。命令に助けてほしいと思うくらい気持ちよかったかもしれない。でも、素直に言えないし、なんと言えばいいのかもわからない。
吉継の答えを端から期待していないのか厚木は、すぐに足を引いた。
「もともとサブドロップしないくらい鈍いSubには関係のないことかもな」
もう寝ろ、と言って照明を落とした。
厚木の背中に張り付いたが、嫌がられなかったので、そのまま目を瞑った。
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