神様はいない Dom/Subユニバース

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受け入れるもの、変わるもの

トレーニングプレイの成果 1

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 「あ」
 ビリっとも、ブツっとも聞こえる音がして、布とゴムが分離した。

 厚木から、「仕事が終わったら来い」と言われた朝のことである。吉継が電話に出たのがそんなに意外だったのか、一瞬の間があった。その後、横柄に来いと言われた訳だが。

 吉継は約束通り、あの変な下着を履くために足を通した…つもりだったが変なところに足を入れてしまい、軟な下着は風によく靡くただの布切れとなった。
 「…」
 どうしよう。
 今から厚木に電話して破れましたと言おうか。でも、替わりの下着は、あのどこも隠せないシースルーなのでは…。
 次のプレイでは変な下着を履くと約束したが、全面シースルーを受け入れるには吉継はまともすぎる。あれは変態用の下着だ。とかなんとかぐるぐる考えること数分。仕事に行く時間になってしまい、慌てて出社した。カバンに一枚の下着を忍ばせて。





 仕事が終わり、厚木の会社へ。
 裏口から厚木の仮眠室を通って社長室へ行くのだが、駐車場で笠井と会った。
「こんばんは」
 「あっ…」
 ピッっと居住まいを正して挨拶する。条件反射である。
 「こんばんは」
 「蘭さん、もう社に残っているのは社長だけですよ」
 「はい」
 「仮眠室の方にお弁当が置いてありますので、よろしければどうぞ」
 「ありがとうございます」
 「こちらで勝手に決めさせていただきましたがよろしかったでしょうか」
 「はい」
 「社長はまだしばらくかかりそうです。すみませんがお先に」
 「わかりました。お疲れさまです」

 
 仮眠室に入ると、言われた通り机にお弁当が二つ置いてあった。箸袋に印字されている店の名前は見たことがない。どうせ高いやつだ。お弁当の他にポットやティーバッグ、ペットボトルのお茶にお菓子まで置いてある。至れり尽くせりである。

 社長室をノックして顔を出す。
 「厚木さん」
 「ああ」
 「来ました」
 「ああ」
 「お弁当があります」
 「先に食べておけ」
 厚木はパソコンから目を離さない。
 「わかりました」
 相手にしてもらえなさそうだと諦め、吉継は一人お弁当を食べ、お菓子もいただいた。そこで下着のことを思い出し、社長室に行こうとしたが、止まった。
 厚木は忙しそうだった。
 仕事に集中しているときに下着の話をしても相手にされない可能性がある。
 朝、慌ててカバンに潜ませた下着を取り出す。
 仮眠室の周りを見渡し、見えるところにあのシースルーの下着はない。
 厚木と下着を履くことは約束している。
 吉継の理解では、いつもの下着でなければいいはずだ、ならこの下着で充分だ。というところである。

 そうと決まれば、行動は早い。
 厚木がいない間に履き替える。
 しかし下着姿で待つのは嫌なので、ズボンを履こうとしたところでよく知った声がした。 

 「なぜズボンを履く」
 「あっ、厚木さん…」
 
 厚木がドアを開けて立っていた。
 
 「いつからいましたか」
 「いつからだろうな…」
 適当に返事をする厚木にムッとするが、もう遅い。
 「仕事は終わりましたか」
 「いや、夕食を食べにきたが…、ズボンを脱いでみせろ」
 「う…」
 「なぜ隠す、…その下着はなんだ」

 約束の下着ではないことに気づいた厚木が眉をひそめた。

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