9 / 9
9
しおりを挟む「…」
「なんだよ?」
「お前って、俺のこと好きなの?」
これは、あくまで確認だ。『おもちゃ的な』『都合良い』ってことかと思ったからだ。想像したのは、そういうことを居丈高に言い放つペルシアンヌスだった。しかし、あろうことかそうはならなかった。
大男がしまったという顔をする。迂闊なコイツを初めて見た気がする。
「…ああ、まあ…」
めんどくさいと言葉以外の全部が言っている。変だ。心臓が耳元に移動したみたいだ。
「いつから?」
「はぁ?それいるか?」
「大事なんだよ!言えよ!」
ペルシアンヌスがわざと盛大にため息をつく。失礼なやつだ。
「顔はまあ、もともと…」
福笑いがどーとか言っていたやつか。ふーん、それ褒め言葉じゃねーけどな。まあいいや、次。
「それで?」
「あぁ?まだいんのかよ……まあ、頑丈だな。次の日ピンピンしてるのみたら安心してヤれる」
「いや、死にそうだったろ…」
「あとは、まあ、罠じゃねぇとわかったからな」
「罠…?」
「ああ、お前、戦士のくせにノーテンキなところがあるよな?」
「はあっ?!俺のどこが?」
俺は町一番の戦士だぞ?亡くなった母からしか聞いたことはないが。
「どー見てもだろ。最初は首都で噂んなってる美人戦士がイチャモンつけてきたから、なにか罠でもあんのかと思ったが…。もう淫蟲が無くてもセックスできるヤツはお前くらいだ」
「あ…」
イチャモンじゃないけどな。そーゆーこと。あんなトリッキーな動きをするエロ蟲を腹に入れたまま寝首なんかかけるわけがない。返り討ちにされるのがオチだ。ハニー・トラップの域を越えている。なんとも邪悪な蟲だ。ただ強いだけの性欲バカだと思っていたけど、強いなりの悩みがあるのかもしれない。あとなにその噂、キモい。
「お前、性欲で苦労してたんだな」
「そっちじゃねぇ」
「わかってるけど…」
「どーだかな」
強すぎるペルシアンヌスを目の上の瘤としてる輩がいるということだ。性格悪いもんなコイツ。なにが首都にはプライドの高い戦士しかいない、だ。自分の呑気さ加減に呆れる。ペルシアンヌスは、俺のことを刺客かなにかだと思ってたってことか。
「俺はお前のことを何も知らなかったんだな…」
「あー…まぁ、なぁ…」
ペルシアンヌスは言葉を濁し、こっちを見てなにか言いたげな顔をする。鬱陶しいな早く言え。
「なんだよ」
「そんなの、お前が不思議ちゃんだからだろ」
「はぁ…っ?!」
巷では常識だみたいな言い方をするな。ペルシアンヌスが次々と初耳の大きな発言をしていく。これからよく話し合っていく必要がある。
「もういいだろ」
「あ…っ」
性欲バカは待てができない。
無骨な指が後孔に伸びてきて、驚くほど抵抗なく入ってきた。ぬるりと中で動いて、いたずらにしこりを押す。
「…あっ、…ペルシアンヌス…」
「挿れるぞ」
指が抜ける。かわりにペルシアンヌスの太いものがあてがわれて、ゆっくりと拓かれて声が勝手に出てしまう。
「はぁ…っ…、ぁ…あっ…あっ」
「…ふっ」
この行為はペルシアンヌスの性欲解消や、娯楽的なものだと思っていた。そういうものは最初から見ないようにしていたけど、違う可能性もあるかもしれない。
「…」
ペルシアンヌスがこちらの視線を感じて動きを止める。
「なんだよ?」
「お、お前さ…その…」
「まだるっこしいな、早く言えよ」
「お前ってさ、…し、娼館でもそんななわけ…?」
「はぁ?」
何か言いたげながら、全く要領が得ない言葉に、最初は聞いてやるかの姿勢があったペルシアンヌスも、まぁいいかに変わり、腰を揺すり出した。
「あぁっ!…くそっ…!もうばかっ!ニブ野郎っ!キスの一つくらいしろよ!朴念仁っ!!」
「はぁ?」
「…っ!…やっぱいらねえ!二度とすんな!」
怪訝そうな顔をするペルシアンヌスに、頬を叩かれたような気分だ。やっぱムカつく奴。
「…っつーかよ…」
「んっ…っ…」
唇が重なるだけでなく舌もがっつり絡まって、繋がっているところを意識してしまった。
「この天邪鬼…っ」
「やっぱりお前、ノーテンキだな」
「はぁ?…っ、あっあっ…!」
ふっと笑われた気がしたが、気のせいかもしれない。ペルシアンヌスの大きなものが動き始めるとそんな余裕はなくなった。
「…あっあっ…やっ…そこ…」
「っ…ここかよ?」
「ちが…っ…やっああぁぁ!」
「天邪鬼はどっちだよっ、…おらっ…!」
「…っああぁぁあああ…………っっ!!」
人のコンプレックスを踏み荒らして好きにしているこの大男を嫌いになれないのが、なによりも一番悔しいところだ。
強い人間は必要だ。戦う理由も、故郷のような場所を増やしたくないだけだ。多分、俺は強いヤツとそんな青臭い話をしたかったんだ。ただ、この先コイツとそんな話ができるかはわからない。
「まだ勝負するのか?俺は大歓迎だぜ?」
「だれがするか!ばかっ!!」
ほらな。
33
お気に入りに追加
43
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます




飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる