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大魔導師、隠居する

不思議な森の家 3

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 「腫れていますね、熱感もあります」
 「うわぁ…」
 ブーツの紐を解き、ズボンを捲って改めて足首を見ると一回りか二回りくらい大きくなっていた。痛いのも納得の腫れだった。ずくずくと疼くような痛みがあった。男がリリの足首に手をあてた。
 「折れてはいないみたいなので、これで大丈夫でしょう」
 そう言って、カゴに入った薬草を数種類取り出した。薬草は瑞々しく、畑に植わっていたものと同じものがもあった。畑には、普通の野菜が少しあったがほとんどは魔導に使う薬草だった。
 男が手にしているものは魔導用の薬草だった。ということは…。
 「あなたは魔導師…ですか」
 「…ええ、痛みが少しマシになる程度だけどね」
 「はい、助かります。ありがとうございます」
 こんなところで憧れの魔導師に会えるなんて。
 さらに魔導の治癒を体感できるなんて。
 足の痛さも忘れそうなくらい、ワクワクしていた。リリは子どものころ魔導師になりたかったのだ。適性検査で魔力の欠片もないと判断されるまでは。胸が擽られる。
 男は腫れて熱を持った足首の上に薬草を置いた。その上に手が置かれたが、少し骨ばっていて、すんなり伸びた白く透明な手にリリは思わずドキドキしてしまった。
 仄かに優しい温かさを感じた。すーっと痛みが引いていく。
 「痛くないです…」
 すごい。
 「痛みを和らげましたが、完治したわけではありません。安静にしてください」
 男は、手早くリリの足を固定しながら言った。
 「これでゆっくりなら歩くくらいはできると思いますよ」
 「はい」
 立ってみる。痛くない。
 「すごいです…!」
 「痛みはほとんどないと思いますが無茶はしないでくださいね」
 「はい」
 頬を染めたリリの羨望の眼差しを笑顔で受け止め、男は立ち上がり、奥へと歩いて行った。
 「こちらへどうぞ」
 「はい。ありがとうございます」
 「いいえ、どういたしまして」

 たくさん扉があるうちの一室に案内された。
 その部屋の端には大きな器に土が入っていて、見たことがない植物が植えられていた。
 花は咲いていない。リリが探しているエイテルに似ているが、葉の形が微妙に違う。なんという植物だろう。魔導に使うのだろうか。
 男が疲労に良いと言われるお茶を淹れてくれた。
 「どうぞ」
 「ありがとうございます。あの、自己紹介が遅くなってしまいまさたが、俺はリリ・プッティといいます」
 「気にしなくていいですよ、私はマワー・カボットです」
 「よろしくおねがいします」
 


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