森に響け 〜隠居魔導師が恋人のプラントハンターを猫っ可愛がりする話

np03999

文字の大きさ
上 下
6 / 18
プラントハンター、通い妻する。

恋人が可愛くて、今日も人生が楽しい 4

しおりを挟む




 市場では収穫物の販売許可もらうため、先に受付をすませる。
 「手続きがあるのでリリは好きに見てきてください」
 「俺も手伝っていいですか」
 「もちろんです。ありがとう」


 市場は賑やかだ。
 リリが活動するのはいつも山奥や森の中なので、活気溢れる人の姿は新鮮だ。
 マワーがもらってきた許可証を販売スペースに置き、商品を並べる。
 マワーの商品は人気で、あっという間に売れてしまった。
 「さ、帰りましょう」
 「はい」
 「どこか寄りたいところはありますか」
 「あ、はい。研師のところへ」
 「わかりました」
 


 市場の外れに鍛冶屋がある。
 道中でふたりは、フルーツをたっぷり使ったパンと豆を挽いた飲み物を買った。
 洞窟の前に、木組みのこじんまりした建物があった。
 木組みのほうへ入っていく。
 
 「こんにちは」
 「らっしゃい、用件は」
 「はい、この鋏とナイフを研いで欲しくて」
 「どれどれ」
 研師の助手がリリの鋏とナイフを受け取り、師匠に渡す。
 「使い込んでるね」
 「商売道具だからね」
 「でもモノは良い。研ぎがいがあるよ」
 「ありがとう、頼むよ」


 外の木陰に座り、さっき買ったパンを食べながら研ぎ終わるのを待つ。
 「おいしい」
 甘すぎない果実を使っていて、リリの口に合った。
 「そうだね…あ、リリ」
 「はい」
 口の端に小さなパンくずが付いている。
 マワーは、ちょいと摘んで口に入れた。
 「あ…ありがとうございます…」
 みるみるうちにリリの頬が赤く染まる。
 かわいい。
 「いいえ、いつでもしてあげますよ」
 「いえ、き、気をつけます」
 つれないリリに気を悪くした風でもなく、マワーもパンを千切って口に運ぶ。

 空は雲ひとつない快晴だ。
 明後日には、リリはまた旅に出てしまう。
 「今度はどの辺りへ行く予定ですか」
 「ラフィーネクロの辺りを行こうかと」
 大陸の西の果てである。
 「そうですか、なるべく早く帰って来てくださいね」
 「はい」
 見つめ合って、ふたりの顔が近づいて…。

 
 「お客さん、できましたよ」
 「あ、はい」
 「ちっ」
 「ま、マワーさん…」
 「もう少しだったのに…、さあリリ続きはまた今度、行きましょう」
 「はい」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。 ※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

この恋は無双

ぽめた
BL
 タリュスティン・マクヴィス。愛称タリュス。十四歳の少年。とてつもない美貌の持ち主だが本人に自覚がなく、よく女の子に間違われて困るなぁ程度の認識で軽率に他人を魅了してしまう顔面兵器。  サークス・イグニシオン。愛称サーク(ただしタリュスにしか呼ばせない)。万年二十五歳の成人男性。世界に四人しかいない白金と呼ばれる称号を持つ優れた魔術師。身分に関係なく他人には態度が悪い。  とある平和な国に居を構え、相棒として共に暮らしていた二人が辿る、比類なき恋の行方は。 *←少し性的な表現を含みます。 苦手な方、15歳未満の方は閲覧を避けてくださいね。

処理中です...