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極道さんと若旦那

『裏』の極道さんと若旦那 ※R-18

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「ぅ……っ……、……んんっ……っ……」
「気持ちよさそうだね」
「ちがっ……あっ……うぅ……っ!」
「あんまり大きな声を出すと、外に聞こえるよ?」
「……っ!」

 不自由な身を固くして、絶望しきった目で宗一郎を見上げる男。まるで障子越しに見える消えかけの火だ。
 
 この数年、大人の遊びといえば、芸妓を侍らせて盛大に騒ぐことが主流だ。それはこの『料亭 月舞楼げっぶろう』でも同じで、ただの成金から各界の要人に至るまで競って豪遊していく。大座敷は毎日予約で埋まっていた。少人数が使う小さな座敷部屋の仕切りを取り払って大部屋として使うこともある。この離れにある『紫紺の間』は、他の間よりも狭く、長らく使われていなかった。
 一人の男を引き取るまでは。
不知火 閑しらぬい しずか
 空手の有段者らしく、高い背に見合った、がっしりとした体つきをしている。本来は相当の強面だ。宗一郎が閑を初めて見たときは、まさしく”その筋の男”だと納得した。閑は、取り潰しになった極道の末裔で家族とは死別している。亡くなった組長と宗一郎の父は旧知の仲で、『用心棒にちょうどいい』と思ったのだが、話しをするとその見た目の印象とは大きく違った。
 争いごとが苦手で、とにかくおとなしい。見た目と性格がちぐはぐな、こちらの価値観を裏切るところに興味を惹かれた。宗一郎は、このおとなしい男を捕まえて、好きなようにしていた。争いごとが苦手な男は、宗一郎の手をうまく拒むことができなかった。閑にとって、それが運の尽きだった。 

「この部屋を使って。必要なものはおいおい揃えていくから」
「は、はい……あの、ありがとうございます」
「お礼を言われることなんてないよ。それより……」
「……?」
 着のみ着のまま、ここに来るまで緊張しっぱなしだったのだろう。広くない部屋でも、使っていいと言われて、閑はほっとしたようだった。宗一郎はその緩んだ表情を冷淡に見上げて言う。
「下だけで良いから脱いで」
「え」
「聞こえなかった? 脱いで、今すぐ」
「え、そ……そんな……どうして……」
 強面の大男が、困惑して顔をゆがめる。宗一郎に、どうしてなのかわからない、信じられない、と言葉にならない声をあげていた。その表情を見て、宗一郎の腹の奥底から湧き上がるのは愉悦だ。
「不知火くん……、いや閑。俺はね、お前に用心棒の役割は求めていない。お前も用心棒をしたかった訳じゃないだろ? 見ていればわかる」
「……っ!」
「おとなしく言うとおりにしていれば、悪いようにはならないよ……きっと……」
 言葉ではそう言いながら、これから目の前で目を開いて固まることしかできない強面の大男を好きにできる悦びを、宗一郎には隠すことが難しかった。極道の末裔でありながら、野心もなく、ただ強い者に喰われて逃げることを良しとすることしかできない男。そんな男が思いがけず宗一郎の手に入った。何をしてもいい、宗一郎の生きたおもちゃだ。
 すでに宗一郎のベニスは服の下で熱くなっていた。

 まず、宗一郎がしたことは、閑に貞操帯を嵌めることだった。
「服を脱いで」
「……そんな……どうして……」
「早く」
 未だに事態を理解できずに混乱している閑に、宗一郎がきつく言い放つ。閑はビクッと体を震わせたあと、宗一郎の無言の視線に負けて、おずおずとズボンの前たてを緩めはじめた。
「パンツも」
「……」
 言われるままズボンと下着を脱いだが、閑は恥ずかしそうにシャツの裾を引っ張って股間をなんとか隠そうとしていた。
 宗一郎は構わずに、器具を手のひらに乗せて、閑に見せつけるようにして目の前にかざした。
「え、なに……」
「貞操帯。聞いたことくらいはさすがに?」
 返事を待たずに宗一郎は、閑の手をのけて、陰茎を掴んだ。柔らかいが、体に見合った大きさと重さがあった
「しらな……っ! えっ……、そんな……っや、やめてください」
「逆らうのは身のためにはならないと思うけど」
「……!」
 鷹見組に見つかれば、閑がどうなるのか想像に難くない。閑も宗一郎が想像している通りのことを思い浮かべているのだろう。動かなくなった閑の陰茎を掴んで、宗一郎は手早く筒の中に納めた。
「いっ……っ!」
「大きいから入りにくいな、この毛も邪魔だ。剃ってしまおう」
 そう言いながら、宗一郎は、閑の苦悶の声を無視して陰茎を押し込み、鍵を回して貞操帯を施錠した。
「ああ……そんな……」
 陰毛を剃ると言われたことか、鍵がかかるカチリとした音にか、閑が泣きそうな声をあげた。
「これからは、”射精を管理される”ことを覚えようか……ほら、泣いてもなにも変わらないよ。排泄は自由にさせてあげるから……それも閑次第だけど……」
「うあっ……なにを……?!」
 貞操帯を嵌めた手が今度は後ろにまわった。双丘を割って奥のすぼまりを無遠慮に突いた。宗一路が閑を見上げる。
「ここに男のペニスを入れたことはある?」
「ない! そんなこと……っ!」
「よかった。じゃあ楽しめそうだ」
「ひ……っ、やめろっ……っ……う……うっ…………や、……やめて……」
 閑のアヌスを軽くタップしながら、宗一郎が閑に見せつけたのは、張形だった。小振りだが、閑にとっては未知で、グロテスクな凶器だ。何が起こるのか想像できるのにしたくない気持ちが勝っている閑は固まることしかできなかった。男性器を模したそれに宗一郎がローションを垂らす。先から液が垂れて、ぬらぬらと艶を帯びる。生々しさに、閑の目はみるみる生気を失っていった。閑のアヌスにもローションを塗りたくって張形を押し込むと、ぬるりと閑の中に入っていった。
「あああっ! ううっ……う……うっ……っ……」
「しばらく入れたままにしておこうか」
「そんな……っうぅっ……ああ……っ!」
「じゃあこっちに来て、足を開いて。剃ってあげる」
 
 宗一郎はそうして閑の陰毛を剃り、寝ているとき以外は張形を入れたまま、廊下や物置などの掃除をさせていたのだが。驚いたことに、閑は一週間ほどで、勃起せずに射精することを覚えたのだった。


「ぅ……っ……、……んんっ……っ……」
「気持ちよさそうだね」
「ちがっ……あっ……んぅ……っ!」
「あんまり大きな声を出すと、外に聞こえるよ?」
「……っ!」

 閑の絶望した顔は、宗一郎にとっては蜜の味だ。もっと味わっていたい。
 梁から垂らした縄で、閑の足にかかった縄を吊り上げている。ちょうど腰が浮くような高さで、手も縄でひとまとめにされていて、思うように動けない。閑は、アヌスに入り込んで縦横無尽に動き回る宗一郎の指から伝わる甘い痺れに泣かされるしかなかった。

「ここに挿れたら良さそうだなあ」
「……!」
 宗一郎の言葉に、閑が首を振って拒否をする。あまりにも強く否定するので、梁が軋む。そんな姿をもっとみたいと宗一郎が言う。
「大丈夫、まだしないよ。閑が気持ちよくなれるところはここだけじゃないからね」
「え……」
 まだなにかあるのかと閑が訝しむ。閑は、生まれこそ極道の家系だが、父は人道に反したことはしなかった。長男である兄は、家を継ぐために裏社会のことを幼いころから教え込まれていたが、次男である閑は極道のことなどほとんど何もわからない。もともと気が弱くて引っ込み思案の性格で、極道には向いていなかった。父の配慮で幼いころから領土シマの端に住まいを移され、一般人として育てられていた。なのに、”一般人”であるはずの宗一郎の言葉が全く理解できず、狂気すら感じていた。
「ここ」
「んっ」
 宗一郎が閑の鼻を軽くつまむ。指はすぐに離れ、そのまま耳、喉と流れていき、腋をくすぐる。こそばゆさに身を捻るにあわせて揺れる乳首に誘われて、宗一郎が笑みを深めながら舌を伸ばす。
「んあぁっ!」
「あれ、感じちゃった?」
「感じてない……んっ……」
「おかしいな、ここは手つかずのはずなのに……、こうしてる間も、ずっと乳首で気持ちよくなってたの?」
「ちが……っ…! うっ……うあっ……っ……ん……ああ……っ!」
「違う? こんなに固くして、説得力ないなあ」
「うう……っ……」 
宗一郎は、閑の乳首をつまんで転がしながら、アヌスに指を入れてかき回した。だらしなく口を開いて喘ぐ閑をじっと見つめながら。
「大丈夫、もっと気持ちよくなっていいよ。これからはここもたくさん弄ってあげるからね。いろんなところでいけるようになったら、俺のを挿れてあげる。その方が楽しめるよ」
 全く安心できないことを言う宗一郎を、閑は濁った目で見つめるしかなかった。
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