短編集

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悪い人にはわからない 〜『ドS彼氏に淫乱ドM調教されたあげく捨てられて、毎日身体を疼かせてる淫乱ドMだけど、実は結構純情。』

① ドS彼氏に淫乱ドM調教されたあげく捨てられて、毎日身体を疼かせてる淫乱ドMだけど、実は結構純情。

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 「ショー…ですか?」
 「そう。陽ちゃん今はフリーでしょ?」
 「はぁ…まぁ」
 「堅苦しく考えないで、ちょっとしたお小遣い稼ぎだとでも思って…ね?」
 いつもお世話になっている智哉に言われては断わりづらく、陽一は「わかりました…」と承諾していた。

 そして。金曜日の夜。
 陽一は、この日ばかりは残業を断って、最寄りではない駅のトイレで着替えをした。帽子を目深に被って、マスクをして咳払いを一つ。あまりにも怪しい風貌だったので、風邪を装おうとして失敗したのだった。

 「いらっしゃい」
 「…こんばんは」
 「来てくれて嬉しい、ありがとう」
 「いえ」
 控え室として使っていいと智哉に案内された部屋は、小さいが、一人で使うなら充分な広さだった。
 「部屋はここを使っていいから、衣装はこっち。サイズが合わなかったら言ってね。…あっと、待って、紹介するから」
 そう言って智哉が部屋を出ていき、少ししてからまた入ってきた。男を連れて。

 「…!」
 「紹介するわね、今夜のショーで共演する”ナオ”よ、こちらが”ヨウ”さん」
 「よろしくお願いします」
 「よ、よろしくお願いします…」
 ナオは、智哉とそう体格も年齢も変わらない、大人しそうな雰囲気の、一見”普通”の青年だった。
 しかし、SMショーの舞台に上がろうと言うのだから、それなりの”へき”を隠し持っているのだろう。
 
 「ナオが今回のショーの攻め手を務めます。”素人代表”だから、別にショーリーダーがいるけれど、ナオがメイン。あとは観客から一人」
 「はい」
 ナオはペコリと頭を下げて、智哉と部屋から出ていった。

 もう、胸が高鳴っている。
 期待にだ。
 「ナオ…」
 服の上からでもわかる均整の取れた体と、あの目…。深い海の様に、なにも感情らしいものが感じられなかった。
 これから観客の前で、ナオにされることを思うと、後ろがきゅうっと締まった。
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