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第48話 鳥達が抱える難問-1

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前回のあらすじ
   擬人化した時の名前は、フィリカとなりました。何気に嬉しいです。でも、この姿で動き出すのは、あと1ヶ月先になりそうです。

☆☆☆

  俺は有希に遠方憑依して、有希が望む言霊をいくつか水晶玉に込めた。使いごごちも上々で、これなら霊具などにも組み込めそうだ。例え俺がいない時に依頼があっても、これで有希は最低限の言霊を使えるだろう。問題は数だな。ビー玉サイズの水晶玉でも、1個それなりにするから、現状大量に創れないな。少しずつ、水晶玉を集めていかないとな。また、みんなと相談した結果、言霊を込めた水晶玉は区別するため、念珠玉と名付けられた。水晶玉と比べると、うっすらと中が光っているので、区別も簡単だ。

夢中になっていたせいか、もう17時になっていた。そろそろ帰らないといけない。

「有希、もう17時になるから帰るよ。」
「そうね、そろそろラッキーを帰さないと、心配させてしまうわね。」

「あー、時間が経つのが早いよ。そうだ、フィリカ、帰る前に写真撮っていいかな?」
「依澄、別に撮っていいけど人に見せるなよ。」

結局、帰り際、ラッキーに戻る前に、依澄だけでなく有希や和葉も俺の写真を撮りまくっていた。文句を言ったら、1ヶ月もその姿を見れないのは寂しすぎると言ってた。そこまで、フィリカの姿を気に入ったのか?俺としては、なんか複雑だ。

まあ、今回生身の身体で、有希の家を訪問したわけだけど、小型犬にとって、この広さはいいね。気に入ったよ。精霊がくれた首輪の機能が擬人化の術ということも判明したし、今後上手く使っていこう。数時間いただけなのに、結構疲れたな。

--------家に帰ると、レオ・リルが戻っていたので、琴美ちゃんの家や家族の感想を聞いた。

『レオ、琴美ちゃんの家はどうだった、楽しかったか?』

『凄く楽しかったよ。みんな、僕達を見てびっくりしてた。何言ってるのか分からなかったけど、笑顔だったから褒めてくれたんだと思う。』

『リルは楽しめたか?』

『みんな優しかったね。お兄ちゃんが教えてくれたマットの上にオシッコしたら驚いてたよ。その後、お座り・お手・伏せ・待てを私達に同時にさせてた。お兄ちゃんが言ってたように、アリー母さん → レオ → 私の順で時間差でやったら、みんな固まってた。なんでかな?凄く褒めてはくれたんだけど。お兄ちゃんの方はどうだったの?』

うーん、やり過ぎたかな?まあ、気に入ってくれたらしいからよしとするか。

『楽しかったよ。有希ちゃんの友達も来ていて、いっぱい遊んだな。』

擬人化して遊んでたとは、絶対言えねー。

『兄ちゃん、いいなー。今度は有希ちゃんの家に行ってみたいな。』

『毎日てわけにはいかないけど、たまにはお互いの家に遊びに行けるんじゃないか。俺も行ってみたいしな。』

『もう少ししたら、お母さん・お兄ちゃんと離れ離れになるんだよね。そうだ、私達からも念話したいよ。念話出来たら、寂しくないし。』

『あー、それに関しては駄目なんだ。色々問題があってな、ごめんな。』

『そっかー、私達からは駄目なんだね、残念。』

一応、レオ・リル達でも念話可能な手段はあるけど、広まるとまずいから、却下だな。
いっぱい遊んだからか、夕食後はすぐに寝てしまった。まあ、楽しい1日だった。

☆☆☆

  3日後、俺はペットカートの中にいる。桜さんがレオ・リル、楓ちゃんが俺を散歩してくれている。ペットカートの中とはいえ、この解放感いいね。早く、普通に散歩したいところだ。

(レオ・リル気持ちいいな。)
(兄ちゃん、気持ちいいよね。今日はどこに行くのかな?)

(さあな、行き先は言ってなかったから楽しみだな。)
(お兄ちゃん、なんか凄く広い場所に来たよ。)

おーなんか広いな、ここは公園か!こんなところがあったんだな。

(ここは公園だ。車は来れないから、比較的安全な場所だ。ほら、向こうを見てみろ。色々な犬達がいるぞ。)

(兄ちゃん、あの細長い犬はライムさんと似てるね。)

(ああ、前に教えたろ。犬にも色々な種類がいて、人間は犬種と呼んで区別しているんだ。俺達はパピヨン、あの細長いのはミニチュアダックスフンドというんだ。ライムさんと同じタイプだな。)

(へー、ライムさんとは違うんだね。)
(お兄ちゃんは、あれは何て犬種なの?凄く大きいよ。)

リルの言われた方向を見ると、大型犬がいた。珍しいな。何て名前だったかなー?
そうだ、グレイハウンドだ。

(あれは、グレイハウンドだ。とても走るのが速い犬なんだよ。)


話が盛り上がっている最中、1羽の雀が俺のペットカートの上に乗った。

(雀さん、こんにちは)
(え、誰、どこにいるの?)

(あなたの下の箱の中にいます。俺、犬のパピヨンのラッキーと言います。)
(君がラッキーか!仲間から話を聞いてるよ。食料や人間の常識のこと教えてくれてありがとう。)

なんだろう?何か覇気がない感じがする。

(あの何かあったんですか?元気がないんですけど。)

(君なら信頼出来るか。実はね、ここ最近、東の山がおかしいんだ。この時期、あの山は食料が豊富になる。多くの鳥達が行って、羽を休めているんだ。でも、僕の友達が2日前に行ったきり帰ってこないんだよ。ほかの鳥達にも相談したんだけど、帰ってこないのは比較的小さい鳥ばかりなんだ。気になってね。僕も今から向かうところなんだ。)

鳥が行方不明!そんな事があるのか!
比較的小さい鳥ばかりというところが気になるな。東の山か、よし行ってみるか。

(雀さん、俺の事を知っているということは、遠方憑依を知っていますか?)
(仲間から聞いてるよ。僕に遠方憑依していいよ。)

(ありがとうございます。ただ、ちょっと待って下さい。飼い主と散歩中なんで、あと20分程で終わると思います。)

☆☆☆

   雀さんに遠方憑依し、俺達は東の山に向かった。行く途中、カラスや土鳩と遭遇したため、事情を話した。どうやら2羽とも、仲間内で行方不明者は出ていないらしい。小さい鳥ばかりが行方不明という事か。そろそろ山に到着か。

(雀さん、その辺の木の枝に止まってくれませんか。)
(ああ、わかった。何かあったのかい?)

(小さい鳥たちばかりが行方不明というのが気になっていたんです。このまま進むと雀さん自身も何か起こるかもしれない。少し待って下さいね。【索敵】という術を使ってみます。簡単に言うと、この術は生きている者を探すことが出来ます。)

(便利な術を使えるんだね。話は聞いていたけど、君は不思議な子だね。)

さあ、やってみますか。ふむ、なんだ?奥の方から妙な思念を感じる。これは人間か?それに周りに鳥達の反応がある。おかしいな、なんで鳥達は動かないんだ?いや、ひょっとして動けないのか!

(雀さん、奥の方に反応がありました。ただ、様子がおかしいです。とりあえず、そこまで行ってみましょう。)

(うん、わかった。)

------いやな予感がする。近づいてきたな、む!!!、

(雀さん、止まって!それ以上、行っちゃ駄目だ。俺達が捕まる。)
(え、わ、わかった。)

ギリギリだったな。こんな物を用意して、鳥達を捕まえていたのかよ!
考えてみれば、人間は食用として雀やツグミなど、観賞用としてメジロなどを捕まえたりしていると本を見て知っていたけど、実際見たのは初めてだ。みんな、かなり衰弱してるな。設置されたのは最近か。

まずは、設置された物、張り網を除去しよう。
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