上 下
25 / 57

第25話 カイ・ランド・タロウの新たな飼い主決定

しおりを挟む
前回のあらすじ
   和葉ちゃん、依澄ちゃんが無事家に帰ってこれました。でも、俺の知らないところで、色々と動いているみたいです。

☆☆☆

  あー、よく寝た。昨日は朝から大変だったからな。あ、楓ちゃんも今起きたみたいだ。

「みんな、おはよう」
「「「ワンワン」」」    訳『楓ちゃん、おはよう』

『アリー母さん、レオ、リルも日本語、大分理解出来てるんじゃないか。』

レオ『兄ちゃんのおかげだよ。簡単な言葉なら分かるようになったんだ。』
リル『私もだよ。』

『ラッキーのおかげで、私も大分理解できるようになったわ。おかげで、散歩する時が楽しみなのよ。』

レオ『母さん、いいなー。僕も早く公園とかに行って走り回りたいよ。』
リル『うん、あと2ヶ月も待たないといけないんでしょ。長いよ~。』

2匹の気持ちもわかる。俺は遠方憑依のおかげで間接的に散歩しているけど、やっぱり自分の身体を動かしたいよ。

『レオ・リル、散歩は、必ずしも良いことばかりだとはいえないんだぞ。』

リル『どういうこと?』

『本に書いてあったんだが、散歩する時はいくつか注意点があるんだ。』

1) 飼い主より前に行ってはいけない。必ず少し後方にいて、飼い主のペースに合わせる。守らないと、自分が怪我をする可能性あり!

2) 道路に出る時は要注意。ペースを守らず、急に飛び出すと車に轢かれて死亡する。

3) 公園デビューの時は、色々な犬がいるから必ず挨拶をして接していくこと。無闇やたらに近づくと、引かれて友達になってくれない。

レオ・リル『えー、お母さん、本当?』

『本当よ。ペースを守らない犬は、他の犬達から行儀が悪いと判断されて敬遠されるかもしれない。』

レオ『わかった、気をつけるよ。色々あるんだね。』

なんか、このほのぼのとした会話、久しぶりな気がする。というか、一昨日と昨日が異常なんだよ。「殺す」とか「奪う」とか殺伐とした会話ばっかりだったからな。でも、今日の昼には和葉ちゃん達に連絡しないと、カイ・ランド・タロウのことがあるからね。昼までは、このほのぼのとした会話を楽しもう。

☆☆☆

  さて、お昼ご飯も食べたし一眠りしますか(見た目だけ)。まずは和葉ちゃんに念話だ。

(和葉ちゃん、聞こえますかラッキーです。応答をお願いします。)
(ラッキー、待ってたわ。隣に依澄もいるから繋いでくれない。)

(わかった、依澄ちゃん、聞こえますか。)
(えー、聞こえるよ、ラッキー、やっと普通に話せるね。)

(これまでが異常な雰囲気での話だったからね。せっかくだし、どちらかに遠方憑依していいかな?)

2人とも驚いてたけど、和葉ちゃんから許可を貰えた。

(和葉ちゃん、どうかな?もう、憑依してるんだけど?)
(なんかわかるわ。自分の中に、もう1人別の誰か、この場合ラッキーなのね。不思議な感覚だわ!)

(姉さん、いいなー。ラッキー、次は私にもやってみてね。)

(わかったよ。次、連絡する時は依澄ちゃんに遠方憑依するね。周りに誰も居ないみたいだし、普通に声を出しても大丈夫だよ。)

「あ、そうね。これまで周りが動物やら警察やら色々居たから、つい心の中で話してしまうわね。そういえば、依澄は怖くないの?幽霊苦手でしょ。」


「ラッキーは幽霊じゃないから大丈夫!」

なんだ、依澄ちゃん、幽霊苦手なんだ。話をする時は気をつけよう。それにしても、部屋が広い!ここが和葉ちゃんの部屋なのか、凄く豪華だ。なんか、西洋の人形も置いてあるし、見事な洋室だ。

(ここは和葉ちゃんの部屋なの?凄く広いんだけど。)

「ええ、そうよ。私達が住んでいる屋敷自体が凄く大きいから、カイ・ランド・タロウの3頭が来ても全く問題にならないわ。基本、犬達は防犯のため、外で放し飼いにしているわ。カイ達が来てくれたら、他の犬ともコミニュケーションがとれるし、ストレスも最小限に抑えれるでしょう。勿論、来てもらうからには、こちらの躾けに従ってもらいますけどね。」

(それが聞けて良かった。カイ達も喜ぶよ。いつ連れてきていいかな?)

「そうね、私達も学校があるから、2日後の夕方17時なら大丈夫よ。それまでに、準備を整えておくわ。」

(わかった、カイ達に伝えておくよ。)

よし、カイ達の飼い主決定だな。ふと、依澄ちゃんを見ると、何か考え込んでいるな。

(依澄ちゃん、どうしたの?)

「ねえ、ラッキーは生後1ヶ月なんだよね。新しい飼い主は見つかったの?」

あ、俺の心配をしてくれてるのか。ちゃんと言っておかないとな。

(大丈夫、見つかってるよ。今のご主人、楓ちゃんの友達で南条有希ちゃんていう子が、俺の新しい飼い主なんだ。2ヶ月後には、そっちに引っ越す予定だよ。)

あれ、どうしたんだ、依澄ちゃん?なんか凄い驚いてるんだけど?

「姉さん、南条有希ちゃんて、もしかして陰陽師の---。」

え、陰陽師!もしかして2人とも知ってるのか!

「ラッキー確認だけど、陰陽師の南条有希ちゃんで間違いないわよね?」

(うん、そうだけど、2人とも有希ちゃんのこと、知ってるの?)

「知ってるわよ。初めて会ったのは5年前のパーティーなんだけど、南条家は陰陽師として、とても格式の高い家なのよ。私達、財閥関係でも、とてもお世話になっているわ。昨日、話していた時に有希ちゃんて言葉を聞いたから、もしかしてとは思ったけど。」

なにー、マジか!そんなに有名だったのか。

(あ、あの、ひょっとして、今回のこと、もう話してたりするのかな?)

や、やばい。目立つようなことはするなて言われてるんだよな。
ドキドキしながら、和葉ちゃんの返事を待った。

「私からは話していないわ。これから話すところだったんだけど、まずいの?」

なんか微妙な言い方だな。

(あまり目立つようなことをしては駄目て言われてるんだ。出来れば、内緒にしてほしいんだけど無理だよね。)

すると、依澄ちゃんが手を合わせて俺に謝った。

「ごめんなさい。もう、両親に誘拐事件の?莖末を全部話したから、昨日のうちに電話で伝わってるんじゃないかな。」

なにー、最悪だ!

「ラッキーごめんね。南条家は山路財閥と懇意の関係にあるから、確実に伝わってると思う。」

(うおー、最悪だ。有希ちゃんに、また叱られる。)

「これは興味本位での質問だけど、これまでに何やったの?」

依澄ちゃん、顔が凄いウキウキしてるんだけど、面白がってるよね。

(今のご主人の楓ちゃんに各科目の勉強を教えたり、新人の獣医の先生が霊力に目覚めてたから念話を教えた。)

2人とも絶句した。
和葉ちゃんがなんとか立ち直り、俺に質問してきた。

「ちょっと待って。後半はまだいいとして、前半はおかしいよね!算数とかできるの?あと、あまりに自然で気づくの遅れたけど、なんで日本語理解できるの?」

(あ、そういえば言ってなかったね。和葉と依澄は信用出来るから話すよ。驚くと思うけど、俺、前世の記憶があるんだ。当時、大学2年だったから、小学校の算数なんて余裕だよ。と言っても、念話で話すのはまずいかなと思ったから、計算間違いしてたら足を噛んだり、寝そうになったらくすぐったりした程度だよ。この程度なら大丈夫だよね、ね、依澄ちゃん。)

あれ、依澄ちゃんが溜息をついてるぞ。

「ラッキー、十分駄目だよ。まだ、頻繁にやってないから大丈夫だろうけど、いくらなんでも目立つよ。ていうか前世の記憶があるの!」

「そうよ、ラッキー、前世の記憶を全部覚えてるの?」

(うん、ばっちり覚えてるよ。これは、有希ちゃんも知ってるよ。)

依澄ちゃん、和葉ちゃんが納得してくれたようだ。

「なるほど、納得したわ、ラッキー。記憶があるから、日本語を理解できるのね。姉さんはどう?」

「ええ、これで色々と納得できたわ。でも、私達にそんな大事な事、話していいの?話した途端、嫌われる可能性もあるのよ。」

(言ったろ。君達は信用出来ると思ったから話した。もし、それで嫌われたら、それは仕方ない事さ。こんな特殊な犬、普通いないからね。依澄ちゃんはどう思った?)

「そうだね、もし普通に出会っていたら、気持ち悪いて言うかもしれない。でも、誘拐事件もあって、ラッキーを信用しているから絶対に嫌ったりしないわ。」

「私も同じ気持ちね。普通に出会っていたら、まず間違いなく嫌悪感を出して軽くあしらったでしょうね。そもそも、前世の記憶に関係なく、得体が知れなかったわ。でも、依澄同様、誘拐事件の事を機に信用出来ると思ったからこそ、遠方憑依を許可したんだしね。」

(そう言ってくれると嬉しいよ。)

「でも、ラッキー、警察から犯人達の末路を聞いたけど、やりすぎなのでは?」

(何を言ってるんだ、和葉ちゃん!あいつらは自業自得だよ。)

「でも、有希ちゃんからは、間違いなくお叱りがくるわね。」

(う、仕方ない、覚悟を決めるよ。)

「姉さん、さすがに可哀想だよ。」

「ふふ、そうね、ラッキー達は私達の命の恩人なんだから。私と依澄でフォローしてあげるわ。」

(ありがとう!和葉ちゃん、依澄ちゃん~~~!)

この際、有希ちゃんにばれるのは、仕方ないか。
まあ、カイ・ランド・タロウの新たな飼い主が決まったから、良しとしよう。
会話を楽しんでいる時に、ドアのノックが聞こえた。

「失礼します。和葉お嬢様、依澄お嬢様、南条家の方々が来られ、今、リビングでお待ち頂いています。」

え、今なんて言った?
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

Sランク冒険者の受付嬢

おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。 だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。 そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。 「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」 その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。 これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。 ※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。 ※前のやつの改訂版です ※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。

転生令嬢はやんちゃする

ナギ
恋愛
【完結しました!】 猫を助けてぐしゃっといって。 そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。 木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。 でも私は私、まいぺぇす。 2017年5月18日 完結しました。 わぁいながい! お付き合いいただきありがとうございました! でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。 いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。 【感謝】 感想ありがとうございます! 楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。 完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。 与太話、中身なくて、楽しい。 最近息子ちゃんをいじってます。 息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。 が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。 ひとくぎりがつくまでは。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...