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23話 [根暗女]と[行き遅れ女]に目を付けられてしまった
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帰還パレードでは、黒い霧の発生だけで、それ以外は何も起こらなかった。僕としては少し拍子抜けなのだけど、騒ぎに発展する事なく終えたのだから良しとしよう。ここで気にかかるのが、ミズセの力だ。聖女候補にも見えないものを、魔力のない彼女だけが視認している。一つ言えることは、本人も初めての経験だと断言していたので、多分魔力球を吸った影響が目に現れたのかもしれない。これが副作用なのか、彼女の力の一端なのかは不明だけど、吸引試験に関しては今後も続行していこうと思う。結局、パレードのこともあり、かなり警戒したけど、この日は何も起こらなかった。
翌朝、僕はミズセへの下級ポーションによる魔力球吸引を実施してから、冒険者ギルドを訪れると、さっきまで賑やかな声が響いていたはずのフロア全体が、急に静かとなる。しかも、皆の視線が僕へと集まり、男女関係なく、同情めいたもので、少し悲しげなものへと変化している。僕と結構話し合っている先輩冒険者方もいるけど、いつもと違い、僕と視線が合っても、右手を軽くあげるだけだ。
これは、僕関連のことで何か起きたな。
「クロード」
僕に呼びかけているのは、いつもお世話になっている受付嬢のミレーユさんだ。僕が振り向くと、ミレーユさんも何か悲しげな目をしている。
「あなたに、教会への招集命令が下されたわ。しかも、命令者は聖女候補フランソワ・トパーズ様と、ソフィア・アイルイズ様よ」
あの[根暗女]と[行き遅れ女]か!?
僕がローラの魔力を活性化させたから、[次は自分を!!]てことだろうな。
ローラは、このことを知っているのか?
なんにせよ、いよいよ不幸へのカウントダウンが始まった。ローラの件に関しては、ミズセと出会って以降、ミレーユさんにだけ事情を話している。まだ、その件で誰にも話しかけられたことがないから、ここからは皆を巻き込まないよう、注意して会話しよう。
「司祭様の件ですね」
「そうね。戒律を破っている以上、何らかの罰則を受けているはずよ。今回は、その謝罪の件だと思うけど、気をつけなさい」
あの司祭様のその後については、既に家族の手紙で知っている。僕が家を出た後、教会関係者と司祭様が入れ違いでやって来て、父と母に祝福の儀で起きた失態を謝罪した。僕の状況を全て伝えると、彼らは絶句したらしい。別段、恨んでもいないので、謝罪の品だけを受け取り、そのまま帰ってもらった。父さんからの手紙には、『司祭様はあの失態で、ただの神父に格下げとなった。教会は、戒律に厳しい。恐らく、一生窓際生活の日々を続ける事になるだろう。一応、和解という形で落ち着いたが、絶対に油断するな。司祭とは違った形で、クロード自身が教会の事件に巻き込まれる可能性がある』と書かれていた。ローラとの一件に関しては、既に手紙で報告しているけど、まだ返事がこない。聖女関連だから、様子を見ているのかもしれない。
「いよいよ、不幸到来ですか。どうせ逃げられないのだから、敵の本拠地へ堂々と行ってきますよ」
「クロード、あなたは貴族なのに、ここにいる平民の人たちと対等に接してくれている。性格、冒険者としての資質、どれも素晴らしいわ。だから、絶対に諦めないで。まだ、これが不幸と限らないから、細心の注意を払いなさい」
周囲の人たちは、誰も僕に声をかけてこない。本格的な不幸が到来する予兆でもあるから、皆巻き込まれたくないと思い、口をつぐんでいる。
正直、その行動は今の僕にとってありがたい。
余計なことを考えずに、次の行動に移せるからね。
「はい、行ってきます。僕が戻って来るまで、ミズセは宿屋で待機ね」
「…わかった」
ミズセはほおを膨らませながら、渋々頷いた。
○○○
冒険者ギルド内では、彼女とは表向き別れる形をとったけど、ギルドから50メートルほど離れたところで、僕たちはすぐに合流した。
「ミズセ、本当にいいのかい?」
僕と行動を共にすると、確実に不幸が待っている。正直、一緒に行動したくないのだけど、彼女の考えは変わらない。
「あなたの死は、私の死に直結するの。あなたがどこへ連れて行かれようが、私はあなたについて行くわ」
出会ったその日に、僕は宿屋の部屋で、自分に起こりうることを彼女に話しているけど、どんな場所であろうともついていくと言い、頑なにその意見を変えなかったので、僕が折れてしまった。ミズセには、終始監視がついている。それが誰なのか不明だけど、彼女が王都から逃げようとしたその時点で、監視者によって殺されてしまうけど、半年間王都に滞在している限り、彼女は殺されない。でも、僕が死んでしまえば、希望も潰えたということで、結局殺されてしまうんだ。意見を変えない理由もわかるよ。
「わかったよ」
30分ほど歩いたところで、僕たちは教会本部へ到着した。この国のお城と違い、独特な建築様式で、その存在感は王城と同等に近いものがある。ここに、ローラが住んでいるのか。祝福の儀では普通に通り過ぎたけど、今度はこの中に入るんだな。正面入口の聖銀(ミスリル)の鎧を纏う騎士に話しかければいいと、ミレーユさんは言っていた。
「すいません、聖女候補様に招集命令を受けたクロード・フィルドリアと言います」
教会本部の正面玄関を守る騎士だからなのか、容姿の整った20歳くらいの男性だ。僕の声を聞くと、僕らに爽やかな笑顔を向けてくれた。
「ああ、君がそうか。仲間も一緒のようだね。彼女も、会談に参加させていいか聞いてこよう。ここで待っていなさい」
「はい、気を配って頂きありがとうございます」
さすが、教会本部正面入口を守護する騎士様だ。その察しの良さを僕も見習おう。騎士様は15分程で戻ってきて、ミズセの会談参加の有無を僕たちに伝えてくる。
「許可が下りたよ。私が聖女候補様のもとへ案内しよう。ついて来なさい」
「「はい」」
この中には、ローラもいるはずだ。彼女の立場上、すぐには会えないと思うけど、きちんと事情を説明すれば、教会関係者の方々なら僕と彼女の関係をわかってくれるはずだ。もしもの時は、彼女を頼ろう。
さ~て、何が待ち受けるのかな。
翌朝、僕はミズセへの下級ポーションによる魔力球吸引を実施してから、冒険者ギルドを訪れると、さっきまで賑やかな声が響いていたはずのフロア全体が、急に静かとなる。しかも、皆の視線が僕へと集まり、男女関係なく、同情めいたもので、少し悲しげなものへと変化している。僕と結構話し合っている先輩冒険者方もいるけど、いつもと違い、僕と視線が合っても、右手を軽くあげるだけだ。
これは、僕関連のことで何か起きたな。
「クロード」
僕に呼びかけているのは、いつもお世話になっている受付嬢のミレーユさんだ。僕が振り向くと、ミレーユさんも何か悲しげな目をしている。
「あなたに、教会への招集命令が下されたわ。しかも、命令者は聖女候補フランソワ・トパーズ様と、ソフィア・アイルイズ様よ」
あの[根暗女]と[行き遅れ女]か!?
僕がローラの魔力を活性化させたから、[次は自分を!!]てことだろうな。
ローラは、このことを知っているのか?
なんにせよ、いよいよ不幸へのカウントダウンが始まった。ローラの件に関しては、ミズセと出会って以降、ミレーユさんにだけ事情を話している。まだ、その件で誰にも話しかけられたことがないから、ここからは皆を巻き込まないよう、注意して会話しよう。
「司祭様の件ですね」
「そうね。戒律を破っている以上、何らかの罰則を受けているはずよ。今回は、その謝罪の件だと思うけど、気をつけなさい」
あの司祭様のその後については、既に家族の手紙で知っている。僕が家を出た後、教会関係者と司祭様が入れ違いでやって来て、父と母に祝福の儀で起きた失態を謝罪した。僕の状況を全て伝えると、彼らは絶句したらしい。別段、恨んでもいないので、謝罪の品だけを受け取り、そのまま帰ってもらった。父さんからの手紙には、『司祭様はあの失態で、ただの神父に格下げとなった。教会は、戒律に厳しい。恐らく、一生窓際生活の日々を続ける事になるだろう。一応、和解という形で落ち着いたが、絶対に油断するな。司祭とは違った形で、クロード自身が教会の事件に巻き込まれる可能性がある』と書かれていた。ローラとの一件に関しては、既に手紙で報告しているけど、まだ返事がこない。聖女関連だから、様子を見ているのかもしれない。
「いよいよ、不幸到来ですか。どうせ逃げられないのだから、敵の本拠地へ堂々と行ってきますよ」
「クロード、あなたは貴族なのに、ここにいる平民の人たちと対等に接してくれている。性格、冒険者としての資質、どれも素晴らしいわ。だから、絶対に諦めないで。まだ、これが不幸と限らないから、細心の注意を払いなさい」
周囲の人たちは、誰も僕に声をかけてこない。本格的な不幸が到来する予兆でもあるから、皆巻き込まれたくないと思い、口をつぐんでいる。
正直、その行動は今の僕にとってありがたい。
余計なことを考えずに、次の行動に移せるからね。
「はい、行ってきます。僕が戻って来るまで、ミズセは宿屋で待機ね」
「…わかった」
ミズセはほおを膨らませながら、渋々頷いた。
○○○
冒険者ギルド内では、彼女とは表向き別れる形をとったけど、ギルドから50メートルほど離れたところで、僕たちはすぐに合流した。
「ミズセ、本当にいいのかい?」
僕と行動を共にすると、確実に不幸が待っている。正直、一緒に行動したくないのだけど、彼女の考えは変わらない。
「あなたの死は、私の死に直結するの。あなたがどこへ連れて行かれようが、私はあなたについて行くわ」
出会ったその日に、僕は宿屋の部屋で、自分に起こりうることを彼女に話しているけど、どんな場所であろうともついていくと言い、頑なにその意見を変えなかったので、僕が折れてしまった。ミズセには、終始監視がついている。それが誰なのか不明だけど、彼女が王都から逃げようとしたその時点で、監視者によって殺されてしまうけど、半年間王都に滞在している限り、彼女は殺されない。でも、僕が死んでしまえば、希望も潰えたということで、結局殺されてしまうんだ。意見を変えない理由もわかるよ。
「わかったよ」
30分ほど歩いたところで、僕たちは教会本部へ到着した。この国のお城と違い、独特な建築様式で、その存在感は王城と同等に近いものがある。ここに、ローラが住んでいるのか。祝福の儀では普通に通り過ぎたけど、今度はこの中に入るんだな。正面入口の聖銀(ミスリル)の鎧を纏う騎士に話しかければいいと、ミレーユさんは言っていた。
「すいません、聖女候補様に招集命令を受けたクロード・フィルドリアと言います」
教会本部の正面玄関を守る騎士だからなのか、容姿の整った20歳くらいの男性だ。僕の声を聞くと、僕らに爽やかな笑顔を向けてくれた。
「ああ、君がそうか。仲間も一緒のようだね。彼女も、会談に参加させていいか聞いてこよう。ここで待っていなさい」
「はい、気を配って頂きありがとうございます」
さすが、教会本部正面入口を守護する騎士様だ。その察しの良さを僕も見習おう。騎士様は15分程で戻ってきて、ミズセの会談参加の有無を僕たちに伝えてくる。
「許可が下りたよ。私が聖女候補様のもとへ案内しよう。ついて来なさい」
「「はい」」
この中には、ローラもいるはずだ。彼女の立場上、すぐには会えないと思うけど、きちんと事情を説明すれば、教会関係者の方々なら僕と彼女の関係をわかってくれるはずだ。もしもの時は、彼女を頼ろう。
さ~て、何が待ち受けるのかな。
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