邪神を喰った少女は異世界を救済します

犬社護

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5章 レーデンブルク 悪魔討伐編

システムの応急処置を行いましょう

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物語に登場する【管理システム】はデスクトップパソコン、システムOSはWin○ows10のようなものだと思って下さい。


○○○


管理世界に来て、システムエラーを修復し、サリアとも和解出来たのは良いけど、スフィアの事を詳しく聞いていないのよね。一応聞いてみるか?

「ねえ、サリア」
「何よ」

「スフィアをどうして追い出したの?」
「ふん、ここまでの事をドミトリアスから聞いているんでしょう?」
「あなたから直接聞いておきたいわ」

そう、確かにドミトリアスから聞いてはいる。でも、見ているだけのものは、間接的に考えて答えを出している。それが正しいとは限らない。こういう場合、実際に経験した者に直接聞くのが確実だ。

「---スフィアもデモゴルゴンも、始めは良い両親だったわ。私も、こんな2人の子供で良かったと思った。でも、スフィアタリアで起こった戦争で狂い始めたのよ。戦争の起こる兆しはわかっていた。私は神託などで事前に止めることを何度も進言したけど、2人は頑なに私の意見を全て否定した。何が起ころうとも、見守るの1択よ。はっきり言って馬鹿じゃないかと思ったわ。取り敢えずは、何も言わずフォローに徹することにした」

ふーん、サリアは当初から意見を言っていたのね。

「は、そうしたら戦争が始まり、収まる気配を見せなかった。そして、我慢の限界が来た。私とスフィアの意見を無視して、デモゴルゴンが負の感情を吸収していったのよ。その方法は一時凌ぎだと言っているにも関わらず、また私の意見を無視しやがった。結局、負の感情を取り込み過ぎたデモゴルゴンが限界に来た。あの時が1番最悪だった。あいつ、意見を言う私やスフィアを殴りまくったのよ。結局、スフィアに封印されたけどね。は、いい気味よ。デモゴルゴンがいなくなって、私とスフィアでシステムエラーを修復していったんだけど、所々まどろっこしい箇所があった。システムのエラー修復は出来るけど、システムOSの内部を弄ることが出来ないから、システムOS設計図を見て非効率な箇所を探し出し、それを再設計してスフィアに見せたのよ。そのやり方なら、確実に何か言ってくるからね。でも、スフィアは軽く見て、『これじゃあダメよ』の一言で終わった。秒寺達が召喚されるまで、再三システムの非効率な部分を指摘しまくったわ。けど、あいつは1度として、私の指摘部分を軽く見ただけだった。デモゴルゴンが封印されて以降、殆ど遊ばなくなったし、意見を言っても無駄、私は何のために存在しているのか疑問に思ったわ。そして、邪王が復活して、またシステムエラーが発生した時に思ったのよ。こいつは、私をただの助手としか見ていない。子供と思っていたのなら、普通、話を聞いて協力していくでしょう。邪王が封印されて、秒寺達4人がここを訪れスフィアの仕事を手伝うことになった時、あいつは-----スフィアは私に言ったのよ。

『これでサリアちゃんは仕事しなくて良いわ。公園とかで遊んでて良いのよ』

スフィアは、私を完全に除け者にしやがった。1人で何して遊べというのよ。今まで、私は散々フォローに回ってきたから、システムのことを完全に熟知しているわ。それなのに追い出しやがった。その出来事がキッカケで、スフィアをこの世界から追い出したいと思ったわ。ただ、誤算だったのは、システムのマニュアルスキルが管理世界のどこかにあると思っていたから、あいつを追い出してから探したのよね。でも、どこにもなかった。さすがに焦ったわ。サーシャに関しては私より可愛いというのもあったけど、その時の腹いせで適当なスキルを入れてスフィアタリアに送って、その後の邪心薬も同じ腹いせで飲ませたのよ」

えー、腹いせで『フリードリーム』を貰い、『邪心薬』を飲まされたの!
まあいいわ。サリアも苦労したのね。誰が悪いのかは一目瞭然ね。


「ねえサーシャ、私は何か間違ったことを言ってると思う?あの2人は、私の意見を1度も聞いたことがない。私の意見が間違っているなら、そこで諭せばいい。なのに、それをせず、頑なに否定するだげ。システムの修正案も軽く見て否定するだけで、私に何も言ってこない。私は、何のためにいるんだと思ったわ。挙げ句の果てに、人数が補充出来たからといって、私を捨てる必要はないでしょう!」

うーん、スフィアの気持ちもわかるし、サリアの言いたい事もわかるわ。これは言い方を間違えないようにして、サリアに伝えないといけないわね。

「なるほどね。ドミトリアスの内容と重なっているところはあるけど、あなたの内容と合わせると、悪いのはスフィアとデモゴルゴンね」

「でしょう!サーシャもそう思うでしょ!」

「なんでですか!私はスフィア様達の方が正しいと思います。サリア様に迷惑を掛けたくなかっただけなんですよ」

テイルも、スフィアとデモゴルゴンと同じ考えか。言いたい事はわかるわ。

「悪い点を指摘していきましょう。まずテイル、サリアを子供扱いしすぎ!あんたは、スフィアに『サリアは12歳以上成長しない子供なの。あなたがフォローしてあげてね』とかなんとか言われたんでしょう」

「う、はい、その通りです。実際サリア様は、見た目も精神年齢も12歳くらいですよ」

《ゴン》

「痛い!」
「あんた、人が気にしている事をハッキリ言ってくれるわね」
「えー、だって私は答えただけですよ」

この2人の息は、ぴったり合うわね。

「まず、その考えを改めなさい。確かにテイルの言う通り、精神年齢も12歳くらいかもしれない。でも、知力と精神年齢は関係ないわ。サリアはスフィアやデモゴルゴンよりも遥かに優秀よ。たった1人で膨大な数のシステムエラーを着実に減らしていっているのが良い証拠ね」

「う、言われてみれば」
「ふん、褒めても何も出ないからね!」

まず、テイルの考えを改めさせよう。

「サリア、私も管理システムのマニュアルを見て感じた事があるわ。致命的な欠点として、管理システムの要である情報処理装置CPUが非力である事、システムOSの非効率的な箇所が20数箇所ある事ね」

「へえ~私と同じ考えじゃない。CPUというのがよくわからないけど、非効率的な部分については私と同じよ。これが私の修正案よ」


サリアから修正案を見させてもらった。-------思った通りだ。私が思った箇所と殆ど同じだ。スフィアとデモゴルゴンが頑なにサリアの意見を拒否する理由がわかったわ。


「やっぱりね。サリアの修正案、全て正しいわ。私が思った箇所とほぼ一致している」

「え!?----サーシャ、今、私の案を認めてくれたの?」

「ええ、認めたわ。この修正案以外にも、非効率的な部分はある。例えば-----ここ」

私はシステムOS設計図をテーブルに広げ、一部を指差した。

「ええ!ここは左程問題じゃないわよ」

「甘い!こういう部分が6箇所あるわ。1つ1つは微々たるものだけど、この6箇所を修正する事で、処理速度が若干向上するの。今、私達がやるべき事は、こういった非効率的な部分を全て修繕すること。それをするだけで、システムの処理速度が数倍速くなって、エラーが起こりにくくなるはずよ」

「ええ!それじゃあ、サリア様の修正案が正しいのに、どうしてスフィア様は何もしなかったんですか?」

それは簡単な理由ね。

「簡単な事よ。サリアの修正案が正しいことは、スフィア自身もわかっていたのよ。でも、スフィアも研究者の端くれ。自分が散々悩んでも解決しない問題を、サリアが瞬時に解決案を導き出してしまった。システムを開発したプライドもあったんでしょうね。サリアの案を認めたくなかったのよ。だから、サリアの案を見つつ、自分でそれ以上の案を作りたかったんでしょう。結局、出来なかったわけだけどね」


「はあ!?なにそれ!そんなちっぽけなプライドのために、私の修正案を採用しなかったの!採用していれば、システム負荷もかなり軽減したはずよ。スフィア自身への負荷も減ったはずなのに、なんで?」


「管理システムを一から開発した人だからこそ、システムへのプライドも人一倍高かった。同時に、サリアが自分より優秀であると認めていたからこそ、サリアに嫉妬していたのよ。研究者の立場として、あなたよりも自分の方が優秀である事を証明したかったんでしょうね。だから、頑なにあなたの意見を否定していたのよ。デモゴルゴンも同じね。戦争回避手段をスフィアと考えてはいたけど、サリアの方がいち早く優秀な解決案を出してしまった。この案の通りに行えば、戦争回避出来る可能性が高いと思ってはいたんでしょう。でも、認めたくなかった。スフィア同様、それ以上の解決案が必ずあると思って、あなたの意見を取り入れなかったのよ。早い話、2人とも、研究者としてのプライドが高かったせいで、頑なにサリアの意見や修正案を認めたくなかった。サリアの親としての立場を考えて、きちんと取り入れていれば悲惨な末路を辿らなかったでしょう」

そう、2人とも研究者の立場でしか、物事を考えていなかった。それが根本的な原因ね。

「--------」

「なんですか、それ!サリア様が可哀想ですよ。お二人とも、親としてサリア様のことを考えていれば----」

「スフィアは、一応考えていたはずよ。おそらく、サリアへの負担を少しでも減らすために秒寺達を加えたのよ。だから、

『これでサリアちゃんは仕事しなくて良いわ。公園とかで遊んでて良いのよ』

とか言ったんでしょうね。まあ、逆効果だったけどね」

スフィアに関していえば、研究者と親としての立場、両方を考えていた。でも、両立出来なかった。自分が抱えている事をサリアに全て伝えていれば、こんな悲惨な結末にならなかったでしょうに。

「サーシャ様、3人が幸せなになる方法はなかったんでしょうか?」

「うーん、私もドミトリアスとサリア意見の両方を聞いた事で、こうやって指摘出来るけど、実際のサリアの立場になって考えると、------幸せなになる方法は1つだけあったわ」


「え、それはなんですか!」


「3人とも、自分達が抱えている問題を全て吐き出すのよ。そうすれば、互いに抱えている問題を理解しあい、協力出来たかもしれない。でも、それは客観的な人から見た理想論ね。当人達からすれば、研究者として1人の親としての立場があるからこそ、そんな簡単に抱えている問題を自分の子供に言うはずないからね。そういった様々な要因が重なって、今に到ったんでしょう」


「あはははは、要は私達が素直に抱えている問題を話し合っていれば、こんな事にはならなかったって事でしょう。ふん、今さらわかったって遅いわよ!所詮、サーシャが言った事は理想論、物事がそんな簡単に収まるはずがない!私は、あいつらのように逃げるつもりはない。私だって、スフィアタリアは好きだからね。今は、抱えている問題を解決する事が先決よ!」

へえ、わかっているじゃない。邪心薬を飲まされた後、私以外の人達が全員無事だったのも、案外サリアが守ってくれたのかもね。

「そうね。まずはサリアの修正案をシステムに導入しましょう」

「サーシャ様、サリア様、どうやって導入するんですか?システム稼働時は、システムOSの改良は出来ませんよ」

「サーシャ、考えがあるんでしょう?」

「もちろんよ。まず、システムOSの改良すべき箇所を1つずつ私に繋ぐのよ。私自身、小型の管理システムみたいなものだから、その程度なら問題ないはずよ」

「-----考えたわね。サーシャに繋げた後、サーシャ自身がその部分を担当し、システム部分は私が改良していくのね?」

サリアは賢いわね。頭の回転も早い。私も頑張らないとね。

「そうよ。サリアの修正案を見た限り問題ないわ。これを実行すれば、当面は大丈夫でしょう。そうそう、サリアにもシステムマニュアルスキルを入れるわよ」

「な!システムマニュアルスキルは、1つしかないはずよ!」


「新たなスキルを2つ作ったわ。【コピー】と【ペースト】よ。システムマニュアルも所詮はスキルだから、それを完全コピーし、相手にペーストする。つまりは導入ね。危険なスキルだから私専用にしてあるわ」


「あはははは、なるほどね。1つしかないのならコピーすれば良いだけか!一から作るより、遥かに楽ね。わかったわ、それでやっていきましょう」


「おお~、姉妹が協力して行動する。良いですね!」
「だから、姉妹じゃないっての!」



漫才を見ているかのようなツッコミね。

さあ、システムOSを修正して、それが終了次第、佐江と努に会って討伐するか和解するかして、レーデンブルクにいるみんなと合流ね。
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