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5章 レーデンブルク 悪魔討伐編
スフィアタリアの歴史-2
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デモゴルゴンとスフィアの2人で、今のシステムの原案を作成し、それを自分達を含めた全員に導入した。大きな地殻変動が終了し落ち着いたところで、98名の人々をスフィアタリアに送り、しばらくの間は平和が続いた。デモゴルゴン、スフィア、サリアも管理世界からスフィアタリアを眺め、親子仲良く暮らしていた。でも、生体改造を施していない98名は、歳を取り亡くなっていく。生まれた子供達にこれまでの歴史を教え、伝承として残していくように伝える。でも、何世代何十世代と続いていくと、伝承は忘れられ、文明が発達していくと同時に人々から欲が生まれ争いも生まれていく----か。
「1つ聞きたいんだけど、スフィア達はスフィアタリアに下りて、人々に注意喚起しなかったの?」
「時折下りては、皆と話し合ったりはしましたが、身元は明かしませんでしたね。あくまで見守る事に徹したようです。サリア様も子供達と仲良く遊んでいましたよ。小さな争いはあったものの、約500年は平和な日々が続きました。しかし、移住を開始してから500年で伝承はほぼ忘れられ、人々の中に支配欲が生まれ始め、ついに国家間の大きな戦争が起こり始めました」
まあ、そうなるか。500年間も平和を保っただけでも良いんじゃないかしら?
「戦争で多くの人々が死に、多大な被害が生じました。これを見たスフィア様達は、いつか起こる事を考慮していたので、しばらくの間は静観する事を決めました」
まあ、スフィア達が人だった頃も、戦争があったでしょうから予期出来るでしょう。
「問題は、ここからです。戦争が、3年5年10年といつまで経っても終わらないのです。調査したところ、戦争に勝利し一部の領土を勝ち取った後、また次の領土を奪い取ろうとしているのです。結局、奪ったり奪われたりの繰り返しで、いつまで経っても終わらない事が判明しました」
「どうせ先に仕掛けたのは人間でしょう?国内の状況が悪くなっても、全て軍事費に回して戦争しているんでしょう?」
「----全くもって、その通りです。地球でも、似たような事が?」
「地球の場合は全員人間だから、多くの事が絡んできて、もっと複雑よ」
どこの世界でも同じね。
「スフィアタリアでも、先に仕掛けたのは確かに人間ですが、獣人・魔族・エルフ・ドワーフ全ての者達も似たような考えを持っていたので、戦争の規模はどんどん大きくなってきました。被害も大きくなり、多くの人々が死に、憎しみが人々の中にどんどん蓄積していき、泥沼状態に陥りました。このままだと、スフィアタリアが滅亡すると考えたデモゴルゴン様は、強行手段をとりました。その方法は、人々の中から憎しみや支配欲といった負の欲望を取り除くというものです」
また思い切った事をするわね。でも、取り除いた欲望はどうしたんだろう?
「取り除いた欲望は、スフィアタリアに撒き散らすと意味がないので、-----デモゴルゴン様が取り込みました」
「----ねえ、取り込む必要あるわけ?2人は神様で、地球よりも遥かに高い技術を持っている。欲望を魔素などに変換するとか方法はなかったわけ?」
「そんな都合の良いスキル・魔法・科学技術は存在しません。スキルや魔法を駆使して、なんとか負の感情のみを人々から取り出すのがやっとだったのです。そして、負の感情の取り込みは成功しました。しかし、その方法自体がデモゴルゴン様・スフィア様・サリア様にとって、破滅への序曲だったのです」
まあ、そうでしょうね。デモゴルゴンが行なった方法は、一時凌ぎでしかない。人々の中から欲は消えない。消える事は絶対にない!そこは、負の感情を取り込むとかではなく、スフィアタリアに降り立って、各国の首脳陣を互いに引き合わせ話し合いの場を設けて、互いの意見を言わせて和解させる手段もあったはずだ。それをせずに、負の感情だけを取り除いたら、いずれ不満が蓄積し、また戦争が起こってしまう。
うーん、この先は酷い展開になるんだろうな。
「人々の中から負の感情を取り出す事に成功しましたが、数十年経過すると、人はまた大きな戦争を起こすのです。世界全体を覆う戦争が起こる度に、デモゴルゴン様は自らの身体に負の感情を取り込みました。スフィア様に関しては、戦争が起こる度にシステムに大きな負荷が掛かってしまい、そちらに没頭する日々が続き、いつしかサリア様にあまり構わなくなってしまいました。サリア様もお2人が忙しい事を子供ながら理解していましたので、何も言いませんでした」
「ちょっと待って。サリアがずっと子供というのもおかしくない?」
「生体改造を施し、初めての子供がサリア様だったのですが、3人とも不老不死の身体となっていまして、サリア様は12歳くらいから身体が成長しなくなったのです。おそらく、生体改造の後遺症か副作用かが出てきたと思われます。精神年齢も12歳で止まったままです」
こらこら、つまり今この世界は、子供が管理しているという事か!
「負の感情を取り込んだデモゴルゴン様にも変化が起こってきました。何度も何度も取り込んでいくうちに、スフィアタリアの人達を憎むようになっていきました。自分が世界の崩壊を抑えているのに、誰1人スフィア様にもデモゴルゴン様にも感謝しないからです。自分はなんのために、こいつらを守っているのだろうかと思うようになりました。疑問には思いつつも、なんとか我慢し様子を見る事にしました。そして、そこから3回大きな戦争が起こり、その都度、負の感情を取り込んだ時に事件が起こりました」
我慢の限界が来たか!生体改造を施し、神になったとしても負の感情を取り込んでいけば、いつか精神と身体に限界が来るはずだ。
「デモゴルゴン様がスフィアタリアの人々を滅ぼして、この世界を一から作り直すと言ったのです。当然、スフィア様とサリア様は反対しました。しかし、デモゴルゴン様の考えは変わらなかった。スフィア様とサリア様に暴力を振るうようにもなり、3人の関係はズタズタとなりました。スフィア様はデモゴルゴン様を止める事に精一杯となり、その間サリア様がシステムの修復を1人でずっと行なっていました。そのせいで、サリア様自身も精神的に少しずつおかしくなっていきました」
うーん、どんどん鬱展開になっていくわね。
「デモゴルゴンは戦争を止める方法を間違えたわね」
「と言いますと、サーシャ様ならどうしましたか?」
「そんなの決まってるわ。そこまで見守るという選択を取っていたのなら、私だったら最後まで人々を信頼し見届ける選択を取るわね。!地球でも、国家間を揺るがす大きな戦争が2度あったわ。大きな被害はあったものの、結局戦争は止まり、皆戦争を起こさないように国家間で同盟を結んだりして、現在では地球規模の戦争は起こっていない。早い話、デモゴルゴンもスフィアも、スフィアタリアの人々を見守るとか言いながら信用しきれなかったのが敗因ね。それに、そんなに戦争して欲しくなかったのなら、各種族の首脳陣を集めさせて、話し合わせたりする方法もあった。戦争を起こそうとしている種族に前もって天罰を与えることも出来た。でも、それらをしなかった。見守る選択をした。そして、大きな戦争が起こってしまった。ずっと見守っていれば、大きな被害は出ただろうけど、人々はわかり合って、それ以降の戦争の回数を大幅に減らせたかもしれない」
「なるほど、見守る一択ですか。もしかしたら、わかり合う未来もあったのかもしれませんね」
まあ、わかり合える可能性はあったかもしれない。当然、そのまま戦争を続けて滅亡する未来もあったのかもしれない。どっちにしろ、現状のことを考えると、戦争を止める為の手段として、負の感情を取り込むという方法自体がおかしいのは間違いない。
「デモゴルゴン様は自分を抑えこめなくなり、ついに自らがスフィアタリアに下りて、人々を殺めていきました。その頃には人格も崩壊し、負の感情をどんどん取り込んでいき、もはや誰にも手がつけられなくなっていました。このままだと、本当に世界が崩壊すると思われた時にスフィア様が降り立ったのです。サリア様はシステムを管理するため、管理世界に留まりました。デモゴルゴン様とスフィア様の戦いは壮絶を極めました。スフィア様は、デモゴルゴン様を殺す事も出来ましたが、異空間へ封印する選択肢を取りました。管理世界以外に、予備として保管してあった空間ですね。その異空間への封印に成功し、スフィア様は人々から祀られるようになりました」
皮肉な話ね。もっと早い段階で、2人が降り立ち戦争を止めていたら、2人とも祀られていたかもしれないのにね。
「スフィア様とデモゴルゴン様が戦っている間に、各国の首脳陣が集まり、戦争は終わりを告げました。これで、スフィアタリアは平和を取り戻しました」
あの2人が戦った事で、全員我に帰ったのかもね。
「ですが、管理世界では大変な事になっていました。スフィア様が戻ると、システムにエラーが数多く発生し、サリア様だけでは対処しきれなくなったのです」
そりゃあ神同士が戦えば、エラーも起こるでしょうね。
「スフィア様とサリア様2人で、急場は凌いだものの、当面はシステムの完全復旧がメインとなり、スフィア様はそれにかかりきりとなりました。サリア様もデモゴルゴン様の暴力から解放されたため、精神的に落ち着き、スフィア様の助手として頑張るようになりました」
ここから邪王関連が来そうね。
「長い歳月をかけて、ようやく完全復旧したところに、新たな問題が発生しました。邪王と邪族の出現です」
「ここで登場か」
「はい、デモゴルゴン様はおかしくなる前に、1つの考えに辿り着いていました。それは、文明がある一定以上進化すると、大きな戦争が起こりやすくなるというものです。そこで、デモゴルゴン様はスフィア様とサリア様に見つからないように、邪王と邪族のシステムを作り出し、管理システムに導入しました。人々の憎しみといった負の感情から邪族が生まれ、負の感情を持った人々の魂を邪王の卵に取り込ませていく。負の感情で孵化した邪王は大勢の邪族を率いて多くの人々を殺していきます。そして、スフィアタリアの全人口の半分が死んだ時、邪王は自然消滅し50年後に転生する仕組みになっています」
「なるほど、その方法なら確かに発展した文明を一時的に後退させる事は可能ね。50年経てば、国々も国力を取り戻し文明も発展しているでしょう。そこに邪王を投入して、また文明を後退させるわけか」
「スフィア様はシステムの内容を見て驚きはしたものの、大きな戦争を回避できるのならと考え黙認しました」
今度、そんな戦争が起こったら間違いなく滅亡すると思ったからの黙認か。
「当初は上手くいっていたのですが、邪王自身が徐々に知能を身につけ、転生の間隔を200年に延長したんです。復活を先延ばしにするのは、邪王でも簡単なのです。スフィア様も不審に思いましたが、様子を見る事にしました。そして、200年が経過し復活すると、邪王の力は想定以上に上がっていて、誰も討伐出来なくなっていました。そこで、考えたのが異世界召喚です。別の異世界からここスフィアタリアに召喚する際、一度だけスフィア様と接触する機会があります。その時に邪王を討伐出来るステータスを与えるんです。スフィア様が考えた魔法を神託として伝え、それは実行されました」
ふむふむ、それが500年前の出来事か。
「邪王を討伐するには到りませんでしたが、封印する事には成功しました。その時の異世界召喚者は10名、うち4名、涼見凌一・秒寺伸太郎・東吾佐江・森本努はスフィア様の味方となりました」
「秒寺伸太郎も、500年前のメンバーだったの?涼見の記憶にはないわよ」
「なくて当然です。当時の彼は存在感が薄く、召喚当初は勇者達の存在もあったのでわかってもらえましたが、元々臆病な性格でもあったので、邪王討伐メンバーに入らず、城の警護へ配属されました。しかし、存在感の薄さ・配属の際の手続きミスも重なって、1ヶ月後には不法侵入者として追い出されてしまったのです」
なんか気の毒な人ね。それなら涼見自身の記憶に残らないわけだ。
「追い出された後、彼は冒険者となり、1人で実力をSクラス以上に伸ばしました。邪王封印後、召喚者メンバー達も彼の事を完全に忘れていたため、6名が地球へ戻ったのです」
召喚者メンバーからも忘れられているなんて、秒寺は本当に気の毒な奴ね。
「彼自身も地球へは帰りたくなかったので、別に恨んでもいないようです。スフィア様が神託として、教会に涼見凌一・秒寺伸太郎・東吾佐江・森本努を呼び出した時にも、彼は現れませんでした。理由は面倒くさい仕事を押し付けられると思ったからですね」
秒寺は、とことん召喚者メンバーとの接触を避けているわね。
「まあ、結局、後になって教会に行き、スフィア様から話を聞いて面白そうだから快諾しました。これによって4名が生体改造を施され神族となりました。能力は、全員1000~1500万くらいですね。スフィア様は1700万、デモゴルゴン様は1700万、サリア様は1500万です」
ふーん、それなら今すぐ討伐する事も可能ね。
「ねえ、秒寺はどうして悪魔召喚なんかしたの?」
「自分を見つけて殺して欲しいからです。彼は今の生に飽きたのです。邪族に同情したというのも本当ですが、一番の理由は悪魔を大量に召喚すれば、いずれ自分より強い奴が現れ、殺しに来るだろうと考えたのです。予想外なのは、自分の魔力が大き過ぎせいで、大量に召喚し過ぎた事ですね。当初は面白がっていましたよ。秒寺と悪魔達は召喚契約で繋がっていますから、スフィアタリア全域に散ったトイフェルベリーに宿る悪魔を1体ずつ調査したようですね。その結果、トイフェルベリーとなった悪魔達の中に4体、自分やサリア様より強い力量を持っている奴がいることが判明したのです。これは不味いと思ったんでしょう。急いで召喚契約を解除し、悪魔達を次元の狭間へ送還しようとしたところで、悪魔王ベリアルに捕まったんです。現在はアルテハイムの王城にいますが、スキルと魔法を封印された状態で牢獄に閉じ込められています」
はあ~、どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。スフィアタリアの住民達の事を何1つ考えていない。
「さて、ここからはサリア様の現状と、スフィア様を追い出すまでの経緯を説明しましょう」
聞いてて、どんどん不愉快になっていくんですけど。
まあ、ここが一番重要な箇所だから、真剣に聞いておこう。
「1つ聞きたいんだけど、スフィア達はスフィアタリアに下りて、人々に注意喚起しなかったの?」
「時折下りては、皆と話し合ったりはしましたが、身元は明かしませんでしたね。あくまで見守る事に徹したようです。サリア様も子供達と仲良く遊んでいましたよ。小さな争いはあったものの、約500年は平和な日々が続きました。しかし、移住を開始してから500年で伝承はほぼ忘れられ、人々の中に支配欲が生まれ始め、ついに国家間の大きな戦争が起こり始めました」
まあ、そうなるか。500年間も平和を保っただけでも良いんじゃないかしら?
「戦争で多くの人々が死に、多大な被害が生じました。これを見たスフィア様達は、いつか起こる事を考慮していたので、しばらくの間は静観する事を決めました」
まあ、スフィア達が人だった頃も、戦争があったでしょうから予期出来るでしょう。
「問題は、ここからです。戦争が、3年5年10年といつまで経っても終わらないのです。調査したところ、戦争に勝利し一部の領土を勝ち取った後、また次の領土を奪い取ろうとしているのです。結局、奪ったり奪われたりの繰り返しで、いつまで経っても終わらない事が判明しました」
「どうせ先に仕掛けたのは人間でしょう?国内の状況が悪くなっても、全て軍事費に回して戦争しているんでしょう?」
「----全くもって、その通りです。地球でも、似たような事が?」
「地球の場合は全員人間だから、多くの事が絡んできて、もっと複雑よ」
どこの世界でも同じね。
「スフィアタリアでも、先に仕掛けたのは確かに人間ですが、獣人・魔族・エルフ・ドワーフ全ての者達も似たような考えを持っていたので、戦争の規模はどんどん大きくなってきました。被害も大きくなり、多くの人々が死に、憎しみが人々の中にどんどん蓄積していき、泥沼状態に陥りました。このままだと、スフィアタリアが滅亡すると考えたデモゴルゴン様は、強行手段をとりました。その方法は、人々の中から憎しみや支配欲といった負の欲望を取り除くというものです」
また思い切った事をするわね。でも、取り除いた欲望はどうしたんだろう?
「取り除いた欲望は、スフィアタリアに撒き散らすと意味がないので、-----デモゴルゴン様が取り込みました」
「----ねえ、取り込む必要あるわけ?2人は神様で、地球よりも遥かに高い技術を持っている。欲望を魔素などに変換するとか方法はなかったわけ?」
「そんな都合の良いスキル・魔法・科学技術は存在しません。スキルや魔法を駆使して、なんとか負の感情のみを人々から取り出すのがやっとだったのです。そして、負の感情の取り込みは成功しました。しかし、その方法自体がデモゴルゴン様・スフィア様・サリア様にとって、破滅への序曲だったのです」
まあ、そうでしょうね。デモゴルゴンが行なった方法は、一時凌ぎでしかない。人々の中から欲は消えない。消える事は絶対にない!そこは、負の感情を取り込むとかではなく、スフィアタリアに降り立って、各国の首脳陣を互いに引き合わせ話し合いの場を設けて、互いの意見を言わせて和解させる手段もあったはずだ。それをせずに、負の感情だけを取り除いたら、いずれ不満が蓄積し、また戦争が起こってしまう。
うーん、この先は酷い展開になるんだろうな。
「人々の中から負の感情を取り出す事に成功しましたが、数十年経過すると、人はまた大きな戦争を起こすのです。世界全体を覆う戦争が起こる度に、デモゴルゴン様は自らの身体に負の感情を取り込みました。スフィア様に関しては、戦争が起こる度にシステムに大きな負荷が掛かってしまい、そちらに没頭する日々が続き、いつしかサリア様にあまり構わなくなってしまいました。サリア様もお2人が忙しい事を子供ながら理解していましたので、何も言いませんでした」
「ちょっと待って。サリアがずっと子供というのもおかしくない?」
「生体改造を施し、初めての子供がサリア様だったのですが、3人とも不老不死の身体となっていまして、サリア様は12歳くらいから身体が成長しなくなったのです。おそらく、生体改造の後遺症か副作用かが出てきたと思われます。精神年齢も12歳で止まったままです」
こらこら、つまり今この世界は、子供が管理しているという事か!
「負の感情を取り込んだデモゴルゴン様にも変化が起こってきました。何度も何度も取り込んでいくうちに、スフィアタリアの人達を憎むようになっていきました。自分が世界の崩壊を抑えているのに、誰1人スフィア様にもデモゴルゴン様にも感謝しないからです。自分はなんのために、こいつらを守っているのだろうかと思うようになりました。疑問には思いつつも、なんとか我慢し様子を見る事にしました。そして、そこから3回大きな戦争が起こり、その都度、負の感情を取り込んだ時に事件が起こりました」
我慢の限界が来たか!生体改造を施し、神になったとしても負の感情を取り込んでいけば、いつか精神と身体に限界が来るはずだ。
「デモゴルゴン様がスフィアタリアの人々を滅ぼして、この世界を一から作り直すと言ったのです。当然、スフィア様とサリア様は反対しました。しかし、デモゴルゴン様の考えは変わらなかった。スフィア様とサリア様に暴力を振るうようにもなり、3人の関係はズタズタとなりました。スフィア様はデモゴルゴン様を止める事に精一杯となり、その間サリア様がシステムの修復を1人でずっと行なっていました。そのせいで、サリア様自身も精神的に少しずつおかしくなっていきました」
うーん、どんどん鬱展開になっていくわね。
「デモゴルゴンは戦争を止める方法を間違えたわね」
「と言いますと、サーシャ様ならどうしましたか?」
「そんなの決まってるわ。そこまで見守るという選択を取っていたのなら、私だったら最後まで人々を信頼し見届ける選択を取るわね。!地球でも、国家間を揺るがす大きな戦争が2度あったわ。大きな被害はあったものの、結局戦争は止まり、皆戦争を起こさないように国家間で同盟を結んだりして、現在では地球規模の戦争は起こっていない。早い話、デモゴルゴンもスフィアも、スフィアタリアの人々を見守るとか言いながら信用しきれなかったのが敗因ね。それに、そんなに戦争して欲しくなかったのなら、各種族の首脳陣を集めさせて、話し合わせたりする方法もあった。戦争を起こそうとしている種族に前もって天罰を与えることも出来た。でも、それらをしなかった。見守る選択をした。そして、大きな戦争が起こってしまった。ずっと見守っていれば、大きな被害は出ただろうけど、人々はわかり合って、それ以降の戦争の回数を大幅に減らせたかもしれない」
「なるほど、見守る一択ですか。もしかしたら、わかり合う未来もあったのかもしれませんね」
まあ、わかり合える可能性はあったかもしれない。当然、そのまま戦争を続けて滅亡する未来もあったのかもしれない。どっちにしろ、現状のことを考えると、戦争を止める為の手段として、負の感情を取り込むという方法自体がおかしいのは間違いない。
「デモゴルゴン様は自分を抑えこめなくなり、ついに自らがスフィアタリアに下りて、人々を殺めていきました。その頃には人格も崩壊し、負の感情をどんどん取り込んでいき、もはや誰にも手がつけられなくなっていました。このままだと、本当に世界が崩壊すると思われた時にスフィア様が降り立ったのです。サリア様はシステムを管理するため、管理世界に留まりました。デモゴルゴン様とスフィア様の戦いは壮絶を極めました。スフィア様は、デモゴルゴン様を殺す事も出来ましたが、異空間へ封印する選択肢を取りました。管理世界以外に、予備として保管してあった空間ですね。その異空間への封印に成功し、スフィア様は人々から祀られるようになりました」
皮肉な話ね。もっと早い段階で、2人が降り立ち戦争を止めていたら、2人とも祀られていたかもしれないのにね。
「スフィア様とデモゴルゴン様が戦っている間に、各国の首脳陣が集まり、戦争は終わりを告げました。これで、スフィアタリアは平和を取り戻しました」
あの2人が戦った事で、全員我に帰ったのかもね。
「ですが、管理世界では大変な事になっていました。スフィア様が戻ると、システムにエラーが数多く発生し、サリア様だけでは対処しきれなくなったのです」
そりゃあ神同士が戦えば、エラーも起こるでしょうね。
「スフィア様とサリア様2人で、急場は凌いだものの、当面はシステムの完全復旧がメインとなり、スフィア様はそれにかかりきりとなりました。サリア様もデモゴルゴン様の暴力から解放されたため、精神的に落ち着き、スフィア様の助手として頑張るようになりました」
ここから邪王関連が来そうね。
「長い歳月をかけて、ようやく完全復旧したところに、新たな問題が発生しました。邪王と邪族の出現です」
「ここで登場か」
「はい、デモゴルゴン様はおかしくなる前に、1つの考えに辿り着いていました。それは、文明がある一定以上進化すると、大きな戦争が起こりやすくなるというものです。そこで、デモゴルゴン様はスフィア様とサリア様に見つからないように、邪王と邪族のシステムを作り出し、管理システムに導入しました。人々の憎しみといった負の感情から邪族が生まれ、負の感情を持った人々の魂を邪王の卵に取り込ませていく。負の感情で孵化した邪王は大勢の邪族を率いて多くの人々を殺していきます。そして、スフィアタリアの全人口の半分が死んだ時、邪王は自然消滅し50年後に転生する仕組みになっています」
「なるほど、その方法なら確かに発展した文明を一時的に後退させる事は可能ね。50年経てば、国々も国力を取り戻し文明も発展しているでしょう。そこに邪王を投入して、また文明を後退させるわけか」
「スフィア様はシステムの内容を見て驚きはしたものの、大きな戦争を回避できるのならと考え黙認しました」
今度、そんな戦争が起こったら間違いなく滅亡すると思ったからの黙認か。
「当初は上手くいっていたのですが、邪王自身が徐々に知能を身につけ、転生の間隔を200年に延長したんです。復活を先延ばしにするのは、邪王でも簡単なのです。スフィア様も不審に思いましたが、様子を見る事にしました。そして、200年が経過し復活すると、邪王の力は想定以上に上がっていて、誰も討伐出来なくなっていました。そこで、考えたのが異世界召喚です。別の異世界からここスフィアタリアに召喚する際、一度だけスフィア様と接触する機会があります。その時に邪王を討伐出来るステータスを与えるんです。スフィア様が考えた魔法を神託として伝え、それは実行されました」
ふむふむ、それが500年前の出来事か。
「邪王を討伐するには到りませんでしたが、封印する事には成功しました。その時の異世界召喚者は10名、うち4名、涼見凌一・秒寺伸太郎・東吾佐江・森本努はスフィア様の味方となりました」
「秒寺伸太郎も、500年前のメンバーだったの?涼見の記憶にはないわよ」
「なくて当然です。当時の彼は存在感が薄く、召喚当初は勇者達の存在もあったのでわかってもらえましたが、元々臆病な性格でもあったので、邪王討伐メンバーに入らず、城の警護へ配属されました。しかし、存在感の薄さ・配属の際の手続きミスも重なって、1ヶ月後には不法侵入者として追い出されてしまったのです」
なんか気の毒な人ね。それなら涼見自身の記憶に残らないわけだ。
「追い出された後、彼は冒険者となり、1人で実力をSクラス以上に伸ばしました。邪王封印後、召喚者メンバー達も彼の事を完全に忘れていたため、6名が地球へ戻ったのです」
召喚者メンバーからも忘れられているなんて、秒寺は本当に気の毒な奴ね。
「彼自身も地球へは帰りたくなかったので、別に恨んでもいないようです。スフィア様が神託として、教会に涼見凌一・秒寺伸太郎・東吾佐江・森本努を呼び出した時にも、彼は現れませんでした。理由は面倒くさい仕事を押し付けられると思ったからですね」
秒寺は、とことん召喚者メンバーとの接触を避けているわね。
「まあ、結局、後になって教会に行き、スフィア様から話を聞いて面白そうだから快諾しました。これによって4名が生体改造を施され神族となりました。能力は、全員1000~1500万くらいですね。スフィア様は1700万、デモゴルゴン様は1700万、サリア様は1500万です」
ふーん、それなら今すぐ討伐する事も可能ね。
「ねえ、秒寺はどうして悪魔召喚なんかしたの?」
「自分を見つけて殺して欲しいからです。彼は今の生に飽きたのです。邪族に同情したというのも本当ですが、一番の理由は悪魔を大量に召喚すれば、いずれ自分より強い奴が現れ、殺しに来るだろうと考えたのです。予想外なのは、自分の魔力が大き過ぎせいで、大量に召喚し過ぎた事ですね。当初は面白がっていましたよ。秒寺と悪魔達は召喚契約で繋がっていますから、スフィアタリア全域に散ったトイフェルベリーに宿る悪魔を1体ずつ調査したようですね。その結果、トイフェルベリーとなった悪魔達の中に4体、自分やサリア様より強い力量を持っている奴がいることが判明したのです。これは不味いと思ったんでしょう。急いで召喚契約を解除し、悪魔達を次元の狭間へ送還しようとしたところで、悪魔王ベリアルに捕まったんです。現在はアルテハイムの王城にいますが、スキルと魔法を封印された状態で牢獄に閉じ込められています」
はあ~、どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。スフィアタリアの住民達の事を何1つ考えていない。
「さて、ここからはサリア様の現状と、スフィア様を追い出すまでの経緯を説明しましょう」
聞いてて、どんどん不愉快になっていくんですけど。
まあ、ここが一番重要な箇所だから、真剣に聞いておこう。
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