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4章 ガルディア帝国 闘技会編

リッチとの定期連絡

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ビルブレム入口に到着すると、外は真っ暗だった。慌てて時計を確認すると、夜20時となっていた。あちゃー、時間を全然見てなかった。

「うーん、宿屋は無理そうだし、私の空間で休みますか。」
「やった~。サーシャ様の部屋、凄く居心地が良いから好きなんだ。」

「リッカさん、わかります。お姉様の空間は不思議と和みます。お姉様、夕食はどうするんですか?」

「時間も遅いから、適当に何か作るわ。」
「師匠、私も手伝いますので、中華料理というものを是非お願いします。」
「お姉様、私も手伝います。中華料理というものを教えて下さい。」

うーん、余程気に入ったのね。結局、フィンとイリスに中華料理を教え、夕飯を一緒に作った。フィンとイリスも真剣だったため、味は中々だった。2人とも、料理のセンスはあるわね。


---翌朝、ビルブレムに入ると、初めて来た時より盛況になっていた。

「うわ~、凄い賑やかだ。これって闘技会があるからかな?」
「おい、リッカ、あまり動き過ぎるな。逸れるぞ!」

本当に賑やかだわ。闘技会は4日後、周りを見ると屈強な冒険者達がわんさかいる。

「とりあえず、冒険者ギルドに行きましょう。」

冒険者ギルドに到着すると、こちらは閑散としていた。受付には、イルマさんがいた。

「あれサーシャさん、マルコ遺跡に向かわれたのでは?」
「ええ、召喚獣に乗ってマルコ遺跡に行きましたよ。ただ、私達がゾンビハウスの第2任務を遂行中、突然入口へ強制送還されました。それで、次はゾンビハウスに行かずに、地下8階層に行ったところで、また入口へ強制送還されました。入口を見ると、ダンジョン改装中のため、しばらく立ち入り禁止になってしまったんです。仕方ないので、一旦ビルブレムに戻ってきました。」

《ダン》

「ええ、ダンジョン改装中!そんなの初めて聞きましたよ!」

「そう言われても本当のことです。それが起こり始めたのは昨日の昼頃からだったと思います。」

この時間は、覚えてないから適当でいいだろう。

「わ、わかりました。ギルド長に伝えて来ます。少し待っていて下さい。」

一応報告はしておこう。私がダンジョンマスターになりましたとは、絶対に言わないけどね。

「師匠、乗っ取ったことは言わないんですか?」

「私が乗っ取ってダンジョンマスターになったわけだけど、もちろん言うつもりはないわ。」

《ドン》

突然、2階からドアを開く大きな音がした。駆け下りてきた人がギルド長かな。40代のおば、お姉さんがこちらに来た。鋭い目、鋭い眉、どこか中性的な感じがする。この人も冒険者で強くSクラスね。

「イルマ、近距離遠距離において、最高点を叩き出したのは、この人だな。」
「はい、そうです。」

「突然悪いな。私はエスティ・ロンド、冒険者ギルドのギルド長だ。まずはマルコ遺跡に起こったことを聞こうか?」

「サーシャ・フォーリングといいます。ここで、言ってもいいんですか?」
「どうせ広まるから構わん。」

さっき、イルマさんに言った同じ内容をエスティさんに伝えた。

「まさか、誰かがダンジョンコアに辿り着き、新たなダンジョンマスターになったとでも言うのか?信じられん。」

「詳しい事は、私にもわかりません。昨日起こった出来事ですから、今頃違った変化が現れているかもしれませんね。私以外にも冒険者はいましたから、数日中には新たな情報が入ってきますよ。」

「そうか、サーシャ、報告してくれて感謝する。あとは、闘技会に参加するのはリッカという女の子だけなんだな?君は参加しないんだな?」

「はい、参加するのはリッカだけです。本来は、リッカも参加するつもりはなかったんですけどね。」

「ああ、あの貴族夫人のことか。あの人には困ったものだ。あと2日もすれば、皇帝も到着するだろう。場合によっては、君も皇帝と謁見するかもしれん。」

げ!

「それは最高点を出したからですか?」

「ああ、それもある。サーシャは、スフィアートの戦争経験者で、しかもSランクだ。恐らく、勧誘されるだろう。」

嫌だな~。出来れば、皇帝とは会いたくない。

「勧誘されたら断ります。それに、ガルディア帝国にも有名なSランクの方がいたはずですが。」

「戦死したよ。リッチに殺されたそうだ。」

ダンテとかいう名前だったよね。

「リッチにですか?それで、Sランクの私を勧誘ですか。」

「そういうことだ。まあ、君にも事情があるのだから断ってくれても問題ないよ。ただ、気をつけて行動するように。話は、これで終わりだ。私は、至急皇帝にマルコ遺跡の件を連絡しないといけない。」

そう言って、エスティさんは自分の部屋へ戻った。これから大変だろうけど、頑張って下さい。勧誘を断ったら、フィンかイリスに何かするつもりだろう。そんなことしたら、容赦しないからね。

「イルマさん、討伐した際、アイテムをドロップしたので、換金をお願いします。」

アイテムを換金すると、結構な額になった。生活には全く困らない金額があるが、ここ最近、みんな良く食べるからお金は多くあった方がいい。あ、あの貴族関連で何か変化があったかな?

「あの貴族、何か言ってきませんでしたか?」

「あ~、今のところ本人は何も言ってきませんが、どうも周辺で怪しい奴らがリッカさんを探してましたよ。」

「予想通りの行動ですね。何か仕掛けてきても、遠慮なく倒しますね。怪しい連中なんですから。」

「あはは、あまり騒ぎを起こさないようにして下さいね。」

冒険者ギルドを出て、広場に行ったところで休憩を取った。


「私は今からリッチと連絡を取るから、みんなは遊んででいいわよ。そうね、お昼12時になったら、ここに集合してね。それと、あの貴族関連で、4人に言い掛り付けてくる奴がいるはずだから、遠慮なく倒していいわよ。ただし、殺しちゃ駄目よ。4人とも基礎能力値が大幅に上がっているから手加減しなさい。」

「そうだった。私もイリスも10000以上あるから気をつけないと。」

「う~、フィンもイリスも、まだ良い方だよ。私達なんか20万超えてるから、加減が難しいな~。」

「3人とも、大丈夫だ。襲ってくる連中で、手加減を覚えれば良い。」

「「「なるほど!」」」

あの3人を襲う連中が気の毒ね。

さて、私の方はリッチとの定期連絡をしましょう。そういえば、リッチも人型になっているんだけど、名前はリッチのままなのよね。本人がこのままでお願いしますと言っていたからいいけどさ。

【リッチ、今大丈夫かしら?】
【お~、サーシャ様、5日ぶりですな。】

【随分ご機嫌ね。何か良いことあったの?】

【はい、皇都に到着すると、キースの反対勢力となる奴らが罠を張っておりました。皇帝のいる皇宮に入った途端、キース共々Sランク遺跡の21階層に転移されました。】

おいおい、何嬉しそうに言ってるのよ。

【キースの反対勢力に邪族が手を貸しているわけか。リッチ、あなたわかってて、罠に嵌ったでしょ。もしかして、キースを鍛えるため?】

【はい、その通りです。あいつは、余りに軟弱ですからな。Sランク遺跡にある女神像は、10階層おきにしか置かれていないので、4日間みっちりと鍛えましたよ。私自身も最下層まで行き、かなりの数のSランクを討伐しましたね。そのおかげで私のレベルも50となり、基礎能力値も30万程となりました。あと、-----なんだキース、今サーシャ様とお話ししているのだ。------サーシャ様、キースがどうしてもお話ししたいと言っているのですが?】

【別に構わないわ。---これで話せるはず。キース皇子聞こえてますか?】
【ああ、聞こえてる。あの時、盗賊から助けてくれてありがとう。】
【一応、盗賊扱いなんですね。Sクラスのダンテもいたのに。】

【そのダンテは、別任務で戦死した事になっているよ。ところでリッチのことなんだが、あの時助けてくれたリッチで間違いないんだよな。そのリッチが人化して、今も俺を守ってくれているでいいのかな?】

随分、話の通じやすい人だな。

【ええ、そうです。私の命令で守っていますよ。】

しばらく沈黙が続いた。

【リッチの強さは、完全に人や邪族を逸脱している。Sランク遺跡に行ったことで、それがよくわかった。そして、君がそのリッチを従えている。実はリッチに聞く前から、君の正体はわかっていたんだ。Sランク遺跡でリッチに鍛えられ、俺の現在のレベルは50、基礎能力値は3万なんだ。】

嘘でしょ!あ、もしかして!

【ひょっとして、称号に邪神の加護というのがありますか?】
【あるね。】

あちゃー、まさか加護が発動していたとは。確かにキース皇子を守るとは思ったけど、それだけで加護が発動するとは予想外だ。

【そうですか、私が邪神ですね。ただし、あなた方が知っている邪神とは大きく異なります。】

【1度直接会いたいんだけど、構わないかな?事情を聞きたいんだ。明日の朝、ビルブレムに到着するから、10時に冒険者ギルドで待ち合わせでいいかな?】

加護が付いているなら、誤魔化しは効かないわね。

【ええ、いいですよ。詳しい事情は、そこでお話しします。】

【よかった。君達と出会えたおかげで、俺も強くなれた。明日、会えるのを楽しみにしているよ。】

キース皇子との通信が切れ、リッチが出てきた。

【サーシャ様、ジンやリッカから中華料理というものを作られたと聞きました。明日頂いてもいいでしょうか?】

【ええ、キース皇子も来るし、ご馳走を作っておくわ。】

リッチとの通信も終わり、今日の夜にでも、私の専用部屋で料理を作っておこう。せっかくだから、餃子を作ろう。ふと、周りから視線を感じたため、目を開けてみると、なぜか5人の男共が寝転んでいた。

「あなた達、そんなところで何をしているの?」
「はあ、はあ、お前のせいで、こうなったんだろうが!」

大方、私が寝ていると思って、襲うか拐うつもりだったのかな?『ディストーションフィールド』が発動して、何も出来なかったと。

「おい女、この落とし前をどうしてくれる?」

「知らないわよ。あなた達が、勝手に私の前で暴れただけでしょ?私は何も悪くないわ。それじゃ、そういうことで。」

「このまま帰す-----」

鬱陶しいから、少しばかり威圧してやった。

「このまま何?」

私が柔かな笑顔で続きを聞こうとした。

「---いえ、なんでもないです。」

男達は真っ青になっていた。うーん、少し威圧が強かったかな?私も強くなったから、気をつけて行動しないとね。

ゾンビハウスで亡くなった人達から得た経験値だ。無駄にしたくない。私自身も慢心せず、この力を十全に扱えるようにしていこう。
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