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3章 ガルディア帝国 マルコ遺跡編
ゾンビハウス攻略-4 5人抜き
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視点が
ジン→フィン→イリス
と切り替わります。
○○○ ジン視点
ここが道場か。中に入ると、侍ゾンビ15人が目を瞑り、瞑想状態となっている。ここの主ともいうべきゾンビが、こちらにやって来た。
「あ~~、汝達、5人抜きに挑戦か?」
俺が殺気を込めて睨みつけると、主だけあって一応耐えている。足が震えているけどな。他の侍ゾンビ達も同じか。多少なりとも、感情は残っているのかもな。
「私、フィンが挑戦します。」
フィンが挑戦すると言ったら、明らかに全員がホッとしたな。やはり、こいつら自我が僅かながら残っている、つまり魂がゾンビの中に残っているのかもしれないな。
「あ~~、了解した!ルールは簡単。5人連続で勝ち抜けば、そなたの勝ち。アイテムの使用は禁止。途中邪魔が入った場合、この場にいる全員反則となり、地上に戻ってもらう。フィンとやら、中央に来い。」
いよいよ始まるか。フィンの現在の力量は6000程、初戦の相手の力量は5000程か。恐らく、フィンもわかっているはずだ。全力は出さないだろう。
「はじめ!」
相手から仕掛けてきたか。武器は刀1本のみ。刀、刀術というべきか、レベル的に大したことないな。思っ通り、相手の動きが読みやすい。フィンも軽々と避けている。
「遅い、は!」 《スパン》
「が!」
上段から斬り伏せられ浄化されたか。うん、なんだ?全員、僅かだが表情に驚きがある。浄化に驚いている?この道場のゾンビ、自我が僅かに残っているな。フィンは気付いていないか、知らせない方がいいな。
「あ~~、つ、次、2人目!」
2人目の力量は6000程か。『魔力纏い』がなければ、互角か。フィンも容赦せず、『魔力纏い』を使っているな。今度は、フィンから相手の目の動きを読み、死角から背後に周りこみ、胸を貫こうとしたがやめたか。おいおい、まさか卑怯だからとか言うなよ。
「あー~~!」
へえ、あのゾンビ、どうして殺さないと怒っているのか?フィンがゾンビの正面に移動して、自分の武器をゾンビに向けた。なるほど、フィンの奴、正面から堂々と止めを刺すといいたいのか。ゾンビもそれを理解したのか、再度刀をフィンに向けた。そして、お互い走り出し交差した。立っているのはフィンだ。相手は斬られ、浄化され消滅した。ここでも、ゾンビ共は僅かながら驚いている。だが、ここの主は、質問してこないな。いや出来ないのか?そう、設定されている?
「あ~~、つ、つ、次、3人目」
3人目の力量は7000程か。しかも僅かだが邪力を纏っている。フィンも気付いたか。3人目となると、刀術のレベルもまあまあの腕前か。フィンの爪の攻撃からの受け流し、体術を使っての攻撃、これもまずまずだが、フィンよりもレベルはやや低いな。僅かなスキをつき、フィンが右腕を斬り落とし、上段から斬り裂いた。ここまでは、予想通りだな。問題は、4人目と5人目だ。4人目の力量は8000程、5人目の力量は9000程だろう。邪力を纏っての強化を加えると、5人目のスキルレベルとフィンの持つスキルレベルとの差異によって、勝敗が大きく異なってくるな。さあ、フィン、ここからが正念場だ。
○○○ フィン視点
いよいよ4人目。人数が進むごとに、少しずつ強くなってきてる。3人目は、私より少し弱い感じだった。次の4人目は、多分、今の私と同じくらいだ。出てきた!やっぱり、強い。でも、やってやる。
「あ~、はじめ!じょ、じょう、ぐ、が、」
え、今、何か言おうとした?
「フィン!」
は!不味い、相手から目を離したスキを突かれた。今、相手は目の前だ。
「があ!」
鋭い突きだ。でも、これなら受け流せる。負けない!
「はあ!」
相手の突きを左に受け流し、左胸に攻撃を加えたが、こちらも左腕で受け流された。相手の顔が目の前だ。意表を突く攻撃をしないと駄目だ。-------頭突きだ。
「はあ!」
「ギャ!」
よし、ここは一旦、距離をとる。さっきは危なかった。ジンさんが声ををかけてくれなかったら、大怪我を負うところだった。ふ~、よし!5人目が控えている以上、勝負を長引かせるわけにはいかない。あれを試してみよう。今、私は瞬動スキルを覚えているけど、まだレベル3と低い。でも、魔力の纏い方を足に集中させることで、『瞬動』を『縮地』に匹敵するぐらいまで引き上げれる。当然、魔力纏いの薄い部分を狙われる可能性が高いけど、その分、魔力操作で瞬時に元に戻す訓練もしてきた。更に強くなるためには、危険だけど、もう1歩前に進まないといけない。やってやる。怖がるな。やるんだ!
威嚇用に左腕を相手に真っすぐ伸ばし、右腕をバネを縮ませるように爪を相手に向けたまま後ろに限界まで引き、左足をやや前、右足をやや後ろに構え、魔力を足に集中させた。相手も、私が何か仕掛けてくると悟ったのだろう。無理にこちらに来ず、機を伺っている。行きます!
「『スラストファング』」 《ドン》
次の瞬間、私の右腕の爪は相手の胸を貫いていた。よし、成功だ!まず、足に魔力を集中させ相手の懐に飛び込む。その瞬間、左腕に魔力を集め、左腕を後ろに引く。同時に魔力を左腕から背中の筋肉を伝えて右腕に持っていく。右腕に魔力が伝わった瞬間、前方に突き出す。この工程を一瞬で行う突き技、それが爪術『スラストファング』だ。高度な魔力操作を必要とするから、これまで使えなかったけど、パワーレベリングのおかげか、初めて成功した。相手は、瞬時に浄化されたみたいだ。よし、力は充分に余ってる。さすがに、さっきの技で少し疲れたけど、これぐらいなら大丈夫だ。次は、最後の5人目。全力で立ち向かおう。
あれ、どうしたんだろう?5人目が出てこない。出てくるまで、休ませてもらおう。
-------5分後
「あ~~、5人目は私だ。これが最後の勝負だ。いざ、尋常に勝負!」
ふぇ、すぐ横にいたの!少し驚いたけど、これが最後の試合、頑張る。
---なんだろう?全身から汗が吹き出てる感じがする。このゾンビ、強い。全く隙がないし、凄い圧力だ。負けるな、呑まれるな。行くんだ!私から仕掛けていった。
「はあ~~」
この人、私が魔力操作で緩急をつけて攻撃しているのに、全く動じず最小限の動きで回避している。!くる!
「かあー!」
な!突きが速いし鋭い!避けきれない。負けない!
「ぐあ!はあ、はあ」
なんとか直撃は避けれたけど、左肩をかすった。このゾンビ、やっぱり強い。『スラストファング』は使えない。あれには、溜めが必要だから、構えた途端殺られる。どうする?今でも隙がない。なら隙が生じるまで、攻撃を続けるのみだ。
「はあ~~」
-------駄目だ。何度も何度も挑んでるけど、全く隙が出来ない。
「はあ、はあ、はあ」
「かあー!」
また、あの突きだ。しかも、今度は連撃だ。なんとか往なしてるけど、速いし重い。どうする?攻撃しても隙が生じないし、どうやったら勝てるの?師匠、師匠。
---あ!そうだ、思い出した。あの時、師匠が言ってくれた。
【はあ、はあ、はあ、師匠に1本なんて無理ですよ。攻撃しても、全然隙を見せてくれないし、隙があって攻撃しても、それは罠でお腹殴られたし。】
【あのね、格上の敵、特にAクラス以上は、百戦錬磨の強さがあり、皆経験も豊富よ。同格ならともかく、格下相手にそうそう隙が出来るわけないでしょ!】
【えー!それじゃ、格下は格上にどうやっても勝てないんですか?】
【そんなことはないわ。危険な手段だけど、隙がなければ、こちらからワザと隙を作り、相手を誘い込むのよ。その時に、必ず隙が生じるから、そこに全力の一撃を叩き込むの。ただし、さっき私がフィンに見せたようなバレバレの誘いは駄目だからね。相手に悟られないこと!これが、絶対条件よ。】
相手に悟られないこと。一か八かだけど、やるしかない。
「はあ!」
なんとか、距離をとれた。私が今持っている技の中で、あのゾンビに勝つには『スラストファング』しかない。危険だけど、やってやる!
私がスラストファングの態勢に入ったと同時に、相手は刀を鞘に納めた。あれは抜刀術の構えだ。どのみち行くしかない。私の全てをこの一撃に賭ける。
「だあ~~~~~~!!」
私とゾンビが交差した瞬間、勝負は決した。
私の--------
○○○ イリス視点
フィン姉、凄いです。4人目も、新技で浄化させました。
「ジンさん、これなら大丈夫ですよね。」
「いや、どうだろうな?4人目でスラストファングを出したのは失敗かもしれない。」
え、なんで?フィン姉と同格の敵を必殺技で、一撃で倒したのに。うーわからないわ。
「あれ?5人目が出てきませんね?」
「あのジジイ、さっきのお返しのつもりか?フィンを少しの間、休ませているな。」
「え、どうして?」
「4人目の試合開始の時、奴は何か喋ろうとした。フィンはそれに気付いて、試合相手から目を離した。おそらく、あの行為は、あのジジイゾンビにとって不本意なことだったのだろう。そのお返しに、休ませているんだ。やはり、この道場の奴ら、自我が少し残っているな。」
「自我が残っているという事は、魂がゾンビの中にあるということですか?」
「ああ、そうだ。どうやって邪族共から逃れたのか知らんがな。」
「じゃあ、魂が残っている状態で、500年以上もゾンビハウスに囚われているんですか!-----そんなの、あまりにも可哀想です。」
「ジン、イリス、5人目のジジイゾンビが中央に出てきたよ。」
あ、あのゾンビが5人目なんだ。試合が始まった。どちらも動かない。いや、フィン姉が動けないんだ。あのゾンビ強い。私から見ても、邪力の纏い方といい、全然隙が見当たらない。フィン姉、どうやって攻撃するの?
フィン姉が動いた。でも、あれだけ縦横無尽に攻撃しているのに、全然当たらない。
「フィンの奴、上手く緩急をつけているな。初期の頃のような読みやすい攻撃がない。サーシャ様の訓練のおかげか。」
「ジンさん、相手のゾンビがその攻撃を軽く避けているんですけど。」
「それだけ相手が格上ということだ。」
え、今、ゾンビが突きを放ったの?速くて殆どわからなかった。フィン姉も、左肩をおさえてる。
「これは不味いな。このまま普通に戦っても、フィンに勝ち目はないな。だが、あのゾンビ、妙だな。今の突きなら、フィンを殺そうと思えば殺せたはずだ。」
「そんな!ゾンビが遊んでいるということですか?」
「いや、それも違うだろう。これは----誘っているのかもな。フィンが勝てる可能性があるとすれば、『スラストファング』しかない。だが、1度、奴に見せている。普通に技を放っても、まずカウンターをくらい殺されるだろう。フィンを信じてやれ。」
「そんな、うう、はい。」
ああ、フィン姉がスラストファングの態勢に入った。相手は抜刀術の構えだ。
「まあ、そうくるだろうな。高速のスラストファングに対応するなら、抜刀術が最適だ。」
「感心してる場合じゃないですよ。」
女神スフィア様、どうかフィン姉が勝ちますように!
フィン姉とゾンビが交差した。
-----そして、フィン姉から血しぶきが上がって倒れた。
「嘘、いや~~~~!フィン姉~~~!ジンさん、なんで助けなかったんですか!」
「決まっている。------フィンが勝ったからだ。」
え、あ、フィン姉が立った。なんで、あれだけの血が出たのに。
「フィンの奴、この土壇場で一段階強くなったな。」
「どういうことですか?居合で斬られたはず。」
「あー、イリスには、その先が見えなかったか。簡単に言うと、フィンは先を読んだんだ。このまま行っても、確実に斬られるのはわかっていた。だから交差する寸前、魔力を刀で斬られる部分に集中させた。だが、魔力操作が甘かったんだろう。刀の一撃を完全には防げず、皮膚の表面部を斬られた。派手に血しぶきが上がったが、大した傷じゃない。斬られた後は、左腕にあるミスリルの爪に全魔力を集中させて、相手を斬り裂いたんだ。結果、勝った。」
「よかった~~。フィン姉が死んだと思っちゃいました。」
よかった、本当によかったよ~。
これで、試合終了だよね?
まさか6人目の登場はないよね?
《ド~~~~~~~~ン》
誰か、玄関のドアを蹴破ってきた。
嘘~~~~~~、本当に6人目が出てきた~~~~~~!
ジン→フィン→イリス
と切り替わります。
○○○ ジン視点
ここが道場か。中に入ると、侍ゾンビ15人が目を瞑り、瞑想状態となっている。ここの主ともいうべきゾンビが、こちらにやって来た。
「あ~~、汝達、5人抜きに挑戦か?」
俺が殺気を込めて睨みつけると、主だけあって一応耐えている。足が震えているけどな。他の侍ゾンビ達も同じか。多少なりとも、感情は残っているのかもな。
「私、フィンが挑戦します。」
フィンが挑戦すると言ったら、明らかに全員がホッとしたな。やはり、こいつら自我が僅かながら残っている、つまり魂がゾンビの中に残っているのかもしれないな。
「あ~~、了解した!ルールは簡単。5人連続で勝ち抜けば、そなたの勝ち。アイテムの使用は禁止。途中邪魔が入った場合、この場にいる全員反則となり、地上に戻ってもらう。フィンとやら、中央に来い。」
いよいよ始まるか。フィンの現在の力量は6000程、初戦の相手の力量は5000程か。恐らく、フィンもわかっているはずだ。全力は出さないだろう。
「はじめ!」
相手から仕掛けてきたか。武器は刀1本のみ。刀、刀術というべきか、レベル的に大したことないな。思っ通り、相手の動きが読みやすい。フィンも軽々と避けている。
「遅い、は!」 《スパン》
「が!」
上段から斬り伏せられ浄化されたか。うん、なんだ?全員、僅かだが表情に驚きがある。浄化に驚いている?この道場のゾンビ、自我が僅かに残っているな。フィンは気付いていないか、知らせない方がいいな。
「あ~~、つ、次、2人目!」
2人目の力量は6000程か。『魔力纏い』がなければ、互角か。フィンも容赦せず、『魔力纏い』を使っているな。今度は、フィンから相手の目の動きを読み、死角から背後に周りこみ、胸を貫こうとしたがやめたか。おいおい、まさか卑怯だからとか言うなよ。
「あー~~!」
へえ、あのゾンビ、どうして殺さないと怒っているのか?フィンがゾンビの正面に移動して、自分の武器をゾンビに向けた。なるほど、フィンの奴、正面から堂々と止めを刺すといいたいのか。ゾンビもそれを理解したのか、再度刀をフィンに向けた。そして、お互い走り出し交差した。立っているのはフィンだ。相手は斬られ、浄化され消滅した。ここでも、ゾンビ共は僅かながら驚いている。だが、ここの主は、質問してこないな。いや出来ないのか?そう、設定されている?
「あ~~、つ、つ、次、3人目」
3人目の力量は7000程か。しかも僅かだが邪力を纏っている。フィンも気付いたか。3人目となると、刀術のレベルもまあまあの腕前か。フィンの爪の攻撃からの受け流し、体術を使っての攻撃、これもまずまずだが、フィンよりもレベルはやや低いな。僅かなスキをつき、フィンが右腕を斬り落とし、上段から斬り裂いた。ここまでは、予想通りだな。問題は、4人目と5人目だ。4人目の力量は8000程、5人目の力量は9000程だろう。邪力を纏っての強化を加えると、5人目のスキルレベルとフィンの持つスキルレベルとの差異によって、勝敗が大きく異なってくるな。さあ、フィン、ここからが正念場だ。
○○○ フィン視点
いよいよ4人目。人数が進むごとに、少しずつ強くなってきてる。3人目は、私より少し弱い感じだった。次の4人目は、多分、今の私と同じくらいだ。出てきた!やっぱり、強い。でも、やってやる。
「あ~、はじめ!じょ、じょう、ぐ、が、」
え、今、何か言おうとした?
「フィン!」
は!不味い、相手から目を離したスキを突かれた。今、相手は目の前だ。
「があ!」
鋭い突きだ。でも、これなら受け流せる。負けない!
「はあ!」
相手の突きを左に受け流し、左胸に攻撃を加えたが、こちらも左腕で受け流された。相手の顔が目の前だ。意表を突く攻撃をしないと駄目だ。-------頭突きだ。
「はあ!」
「ギャ!」
よし、ここは一旦、距離をとる。さっきは危なかった。ジンさんが声ををかけてくれなかったら、大怪我を負うところだった。ふ~、よし!5人目が控えている以上、勝負を長引かせるわけにはいかない。あれを試してみよう。今、私は瞬動スキルを覚えているけど、まだレベル3と低い。でも、魔力の纏い方を足に集中させることで、『瞬動』を『縮地』に匹敵するぐらいまで引き上げれる。当然、魔力纏いの薄い部分を狙われる可能性が高いけど、その分、魔力操作で瞬時に元に戻す訓練もしてきた。更に強くなるためには、危険だけど、もう1歩前に進まないといけない。やってやる。怖がるな。やるんだ!
威嚇用に左腕を相手に真っすぐ伸ばし、右腕をバネを縮ませるように爪を相手に向けたまま後ろに限界まで引き、左足をやや前、右足をやや後ろに構え、魔力を足に集中させた。相手も、私が何か仕掛けてくると悟ったのだろう。無理にこちらに来ず、機を伺っている。行きます!
「『スラストファング』」 《ドン》
次の瞬間、私の右腕の爪は相手の胸を貫いていた。よし、成功だ!まず、足に魔力を集中させ相手の懐に飛び込む。その瞬間、左腕に魔力を集め、左腕を後ろに引く。同時に魔力を左腕から背中の筋肉を伝えて右腕に持っていく。右腕に魔力が伝わった瞬間、前方に突き出す。この工程を一瞬で行う突き技、それが爪術『スラストファング』だ。高度な魔力操作を必要とするから、これまで使えなかったけど、パワーレベリングのおかげか、初めて成功した。相手は、瞬時に浄化されたみたいだ。よし、力は充分に余ってる。さすがに、さっきの技で少し疲れたけど、これぐらいなら大丈夫だ。次は、最後の5人目。全力で立ち向かおう。
あれ、どうしたんだろう?5人目が出てこない。出てくるまで、休ませてもらおう。
-------5分後
「あ~~、5人目は私だ。これが最後の勝負だ。いざ、尋常に勝負!」
ふぇ、すぐ横にいたの!少し驚いたけど、これが最後の試合、頑張る。
---なんだろう?全身から汗が吹き出てる感じがする。このゾンビ、強い。全く隙がないし、凄い圧力だ。負けるな、呑まれるな。行くんだ!私から仕掛けていった。
「はあ~~」
この人、私が魔力操作で緩急をつけて攻撃しているのに、全く動じず最小限の動きで回避している。!くる!
「かあー!」
な!突きが速いし鋭い!避けきれない。負けない!
「ぐあ!はあ、はあ」
なんとか直撃は避けれたけど、左肩をかすった。このゾンビ、やっぱり強い。『スラストファング』は使えない。あれには、溜めが必要だから、構えた途端殺られる。どうする?今でも隙がない。なら隙が生じるまで、攻撃を続けるのみだ。
「はあ~~」
-------駄目だ。何度も何度も挑んでるけど、全く隙が出来ない。
「はあ、はあ、はあ」
「かあー!」
また、あの突きだ。しかも、今度は連撃だ。なんとか往なしてるけど、速いし重い。どうする?攻撃しても隙が生じないし、どうやったら勝てるの?師匠、師匠。
---あ!そうだ、思い出した。あの時、師匠が言ってくれた。
【はあ、はあ、はあ、師匠に1本なんて無理ですよ。攻撃しても、全然隙を見せてくれないし、隙があって攻撃しても、それは罠でお腹殴られたし。】
【あのね、格上の敵、特にAクラス以上は、百戦錬磨の強さがあり、皆経験も豊富よ。同格ならともかく、格下相手にそうそう隙が出来るわけないでしょ!】
【えー!それじゃ、格下は格上にどうやっても勝てないんですか?】
【そんなことはないわ。危険な手段だけど、隙がなければ、こちらからワザと隙を作り、相手を誘い込むのよ。その時に、必ず隙が生じるから、そこに全力の一撃を叩き込むの。ただし、さっき私がフィンに見せたようなバレバレの誘いは駄目だからね。相手に悟られないこと!これが、絶対条件よ。】
相手に悟られないこと。一か八かだけど、やるしかない。
「はあ!」
なんとか、距離をとれた。私が今持っている技の中で、あのゾンビに勝つには『スラストファング』しかない。危険だけど、やってやる!
私がスラストファングの態勢に入ったと同時に、相手は刀を鞘に納めた。あれは抜刀術の構えだ。どのみち行くしかない。私の全てをこの一撃に賭ける。
「だあ~~~~~~!!」
私とゾンビが交差した瞬間、勝負は決した。
私の--------
○○○ イリス視点
フィン姉、凄いです。4人目も、新技で浄化させました。
「ジンさん、これなら大丈夫ですよね。」
「いや、どうだろうな?4人目でスラストファングを出したのは失敗かもしれない。」
え、なんで?フィン姉と同格の敵を必殺技で、一撃で倒したのに。うーわからないわ。
「あれ?5人目が出てきませんね?」
「あのジジイ、さっきのお返しのつもりか?フィンを少しの間、休ませているな。」
「え、どうして?」
「4人目の試合開始の時、奴は何か喋ろうとした。フィンはそれに気付いて、試合相手から目を離した。おそらく、あの行為は、あのジジイゾンビにとって不本意なことだったのだろう。そのお返しに、休ませているんだ。やはり、この道場の奴ら、自我が少し残っているな。」
「自我が残っているという事は、魂がゾンビの中にあるということですか?」
「ああ、そうだ。どうやって邪族共から逃れたのか知らんがな。」
「じゃあ、魂が残っている状態で、500年以上もゾンビハウスに囚われているんですか!-----そんなの、あまりにも可哀想です。」
「ジン、イリス、5人目のジジイゾンビが中央に出てきたよ。」
あ、あのゾンビが5人目なんだ。試合が始まった。どちらも動かない。いや、フィン姉が動けないんだ。あのゾンビ強い。私から見ても、邪力の纏い方といい、全然隙が見当たらない。フィン姉、どうやって攻撃するの?
フィン姉が動いた。でも、あれだけ縦横無尽に攻撃しているのに、全然当たらない。
「フィンの奴、上手く緩急をつけているな。初期の頃のような読みやすい攻撃がない。サーシャ様の訓練のおかげか。」
「ジンさん、相手のゾンビがその攻撃を軽く避けているんですけど。」
「それだけ相手が格上ということだ。」
え、今、ゾンビが突きを放ったの?速くて殆どわからなかった。フィン姉も、左肩をおさえてる。
「これは不味いな。このまま普通に戦っても、フィンに勝ち目はないな。だが、あのゾンビ、妙だな。今の突きなら、フィンを殺そうと思えば殺せたはずだ。」
「そんな!ゾンビが遊んでいるということですか?」
「いや、それも違うだろう。これは----誘っているのかもな。フィンが勝てる可能性があるとすれば、『スラストファング』しかない。だが、1度、奴に見せている。普通に技を放っても、まずカウンターをくらい殺されるだろう。フィンを信じてやれ。」
「そんな、うう、はい。」
ああ、フィン姉がスラストファングの態勢に入った。相手は抜刀術の構えだ。
「まあ、そうくるだろうな。高速のスラストファングに対応するなら、抜刀術が最適だ。」
「感心してる場合じゃないですよ。」
女神スフィア様、どうかフィン姉が勝ちますように!
フィン姉とゾンビが交差した。
-----そして、フィン姉から血しぶきが上がって倒れた。
「嘘、いや~~~~!フィン姉~~~!ジンさん、なんで助けなかったんですか!」
「決まっている。------フィンが勝ったからだ。」
え、あ、フィン姉が立った。なんで、あれだけの血が出たのに。
「フィンの奴、この土壇場で一段階強くなったな。」
「どういうことですか?居合で斬られたはず。」
「あー、イリスには、その先が見えなかったか。簡単に言うと、フィンは先を読んだんだ。このまま行っても、確実に斬られるのはわかっていた。だから交差する寸前、魔力を刀で斬られる部分に集中させた。だが、魔力操作が甘かったんだろう。刀の一撃を完全には防げず、皮膚の表面部を斬られた。派手に血しぶきが上がったが、大した傷じゃない。斬られた後は、左腕にあるミスリルの爪に全魔力を集中させて、相手を斬り裂いたんだ。結果、勝った。」
「よかった~~。フィン姉が死んだと思っちゃいました。」
よかった、本当によかったよ~。
これで、試合終了だよね?
まさか6人目の登場はないよね?
《ド~~~~~~~~ン》
誰か、玄関のドアを蹴破ってきた。
嘘~~~~~~、本当に6人目が出てきた~~~~~~!
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なろうの方が話数が多いです。
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大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
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