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3章 ガルディア帝国 マルコ遺跡編

力の認識

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第1回パワーレベリングも終了し、現在休憩中だ。そうそう、今のうちにジンにあの武器を渡しておこう。

現在、オリハルコンに私の魔力を流し、『物質変換』でオリハルコンより硬度があり魔力伝導力が高い新金属を作製中だが、完成にはまだまだ時間がかかりそうだ。色々と実験してわかったが、『物質変換』を使用する際、元の物質より下位の物なら簡単に変換できるが、上位の物へと変換する場合、上位であればある程、その分必要魔力も多いし日数もかかるみたいだ。私の作りたい金属【?】は、オリハルコンよりかなり上位に位置する物みたい。

そこで、私は実験も兼ねて、アダマンタイトを1段階上位に変化させたらどうなるのか確認してみた。アダマンタイトは、硬度がオリハルコンより1段階低く、魔力伝導も2段階低かった。幸い、アダマンタイトの剣は2つあるので、2つに魔力を限界まで流し込み、比較対象となるオリハルコンを基にイメージを固め、また物は試しに時空魔法を付加出来るようにイメージし、『物質変換』を発動させた。3日後、剣が完成した。元々アダマンタイトの剣は黒に近い色をしていたが、新たな剣は完全に漆黒となっていた。名称も【アダマンタイト】から【ロンズデーライト】へ変換されていた。振った感じは、軽く持ち易くなっており、イメージ通りの剣が出来上がった。おまけとして、なんと【ロンズデーライト】には、時空魔法を付加させることが可能とわかった。これは、非常に嬉しい。殆ど駄目元でやったのに、まさか時空魔法を付加出来るとは予期せぬ収穫だわ。
実験の結果、漆黒の剣は

私専用の【ロンズデーライトの剣】
名称 紫電
付加 時空魔法『メテオレイン』

ジン専用の【ロンズデーライトの剣】
名称 叢雲
付加 時空魔法『グラビティー・ブレス』
     (空間魔法『グラビティ』の上位版)
このように、かなり強力な武器となってしまった。


ジンもリッカも、フィンとイリスと一緒に休憩中、昼食の余韻を楽しんでいるようだ。

「ジン、貴方に渡したい物があります。」
「私に---ですか?」

「ええ、貴方は体術を得意としているけど、これから先、体術だけでは物足りなくなるはずよ。よって、この剣を与えます。」

「この素晴らしい剣を私にですか!しかし、この剣の材質は一体?アダマンタイトでもなく、オリハルコンでもない。それでいて硬度はオリハルコンと同レベル。」

「剣の材質はロンズデーライト、アダマンタイトを『物質変換』で1段階進化させたものよ。特殊金属で、時空魔法『グラビティー・ブレス』を付加させているわ。」

「な!こんな素晴らしい剣を貰って宜しいのですか?」

「ええ、その剣の名前は叢雲。このダンジョンで剣術と時空魔法も鍛えておきなさい。リッカと手合わせするのがいいかもね。」

「サーシャ様、ありがとうございます。この剣の名に恥じぬよう精進します。」

「うう、ジン、いいな~」

「リッカには爪があるでしょう。その爪の硬度はオリハルコンと同レベル、魔法の付加は出来ないけど、貴方の技に充分応えてくれるはずよ。それに、その爪はリッカにしか扱えないし、爪が体内を傷つけないように、貴方の身体も強化してあるのよ。現状の強さはジンと同じレベルね。」(収納式にしてあるから、リッカしか使えないのよね)

「え!私、ジンと同じくらい強くなっていたんですか。おお、凄く嬉しいです!」

ふー、リッカも納得してくれたようね。

「そうそう、私達が6階層入口に到達したら、2人を一旦呼び戻すからね。」
「サーシャ様、まさかゾンビハウスに挑戦するんですか?」

「ジン、そのまさかよ。理由としては、ショートカットが大きいわね。あと、クリアボーナスもあるしね。」

「しかし、情報を聞いた限りでは、かなりの難度らしいですよ。大丈夫ですか?」

「ふふ、確かに、この世界の人達にとったら未知との遭遇だから、難度も高いでしょうね。でも、私からしたら、ある意味、もう体験してるから楽だと思うわ。ただ、不安要素がいくつかあるのよ。もし無理な場合は、女神像を見つけてリタイアすればいいでしょう。」

「わかりました。それまではリッカとストレス発散しておきます。」

フィンとイリス、リッカも納得し、休憩は終了した。


○○○


現在4階層、フロアタイプは森林である。1階層で慣れたのか、2・3階層ともに危なげなく突破する事が出来た。不意打ち攻撃による邪族に対して、しっかりと対応する事もできたようだ。そのため、この階層では、フィンとイリス2人だけで、5階層への階段を探索してもらっている。

今は私1人で単独行動中だ。私の場合、気配が外に少しでも出てしまうと、

「ぎゃあ~~」 《ドサ》

これである。叫び声を上げながら、気絶するか一目散に逃げるかの二択である。戦わせてくれない。まあ、私のパワーレベリングは、ゾンビハウスのクリア報酬になる予定だから、今はいいけどね。そろそろミスリルの剣の耐久が持ちそうにないから、新しく作った剣【紫電】を使ってみたい。む、前方に3体の邪族がいる。オーガナイト、アダマンオオカミ、ブラックバイパーか、試し斬りにはもってこいだ。邪族の方向には、他の冒険者もフィンやイリスもいないわね。それじゃあ、必殺技を使ってみよう。今まで私自身が、必殺技を放った事がないから、この際どの程度の威力を発揮するか見ておきたい。ただ、さすがに全力でやるわけにはいかないので、必殺技が発動する必要最低限の魔力だけ使おう。

紫電に『メテオレイン』を発動させ、天井ギリギリまで飛び、邪族がいる空間に向けて、メテオレインをエネルギーを極限までに圧縮し放った。あとは、音や衝撃を外に漏らさないよう、邪族周辺100m全ての空間を遮断した。そして、必殺技が発動した。

-------その結果、地面の土と天井が残った以外、邪族、森林といった全てが消滅した。ただ、遮断した空間部分の上下を少し突き抜けて、天井も地面もマグマのようになっており、とても近づける状態ではなかった。威力を計算すると、遮断してなかったら、このダンジョン自体消滅してたわね。改めて、私は人外、いわゆる種族通り、神の領域に入ってしまったんだ。もっと、自分の力を自在に操れるようにしないといけない。そうしないと、本当にスフィアタリアを滅ぼしてしまうかもしれない。黒幕との戦いもある。それまでに、きっと使いこなしてみせる。気を引き締めて、旅を続けていこう。

パワーレベリング用の邪族を集め、フィン、イリスと合流した。合流後、パワーレベリングを行い、私達は4階層を後にした。


5階層も同じく森林か。フィンとイリスも緊張感が大分薄れてきたみたいね。


「師匠、何かあったんですか?少しピリピリしている感じがあります。」

「わかる?4階層で、邪族3体に必殺技を使ってみたの。そしたら、空間魔法で遮断していたおかげで周りは一切被害がなかったけど、邪族のいた周囲100m程が焼け野原になったわ。空間内での威力を計算すると、空間魔法を使ってなかったらダンジョン自体が消滅していたでしょうね。」

「師匠、何やっているんですか!」
「お姉様、危険すぎますよ!」

「仕方がないわ。今まで、私自身が力を出して戦っていなかったから、現状の強さを知りたかったの。まさか、威力を最小限に抑えた必殺技でダンジョン破壊レベルと思わなかったわ。これから黒幕と戦うことにもなるだろうから、自分の技の威力を確認出来て良かったわ。」

「師匠、もう無断で絶対にやらないで下さいね。」
「そうですよ。せめて一言言って下さい。」

うーん、そこまで不安になるか。

「そうするわ。それにしても、いつもの2人に戻ってるわね。環境に適応するのが早いじゃない。」

「「師匠(お姉様)のせいです!!」」

私、何かやった?

「それにしても、この森林、罠の数は少ないけど、邪族のスキルの使い方が地上と比べると格段に上手いわね。ここで1~5階層ということは、6階層からのゾンビハウスも、攻略が難しくなりそうね。2人とも対応できるかな?」

「う、だ、大丈夫です。森林タイプには慣れてきました。今のところ、罠に引っ掛かてませんし、このくらいなら-----てひゃあ~~~~!!!ひい~~~~~!」

あ~あ、油断してるから、単純な罠に引っ掛かる。背丈の高い草で見えにくくなっているため、この罠に気付きにくい。罠自体は単純だ。罠が設置された部分に足を置くことで、隠されたダンジョン製の丈夫な蔦がフィンの足に絡みつき、上空10mへと持ち上げ、頭と足が上下反転して木に吊るされたのだ。

「油断してるからそうなるの~。スカートだったら、大変な目にあってるわよ~。ほら、邪族がフィンを狙っているわ。」

「えー、この状態で戦うんですか~?」

木に吊るされた状態で、カメレオンオウルがフィンの喉元を狙い急降下していた。フィンは、足の爪をなんとか回避したが、木に吊るされているため攻撃出来ない。

「うー、ちょこまかと鬱陶しい。それなら『ウィンドライフル』」

へー、考えたわね。カメレオンオウルが急降下したところを狙って、風魔法の『ウィンドライフル』で撃ち落とした。その隙に蔦を斬り落とし、カメレオンオウルも斬り落とした。

「フィン、冷静に対処出来るようになったじゃない。」
「なんで、2人とも冷静に見てるんですか!」

「あら、森林にはもう慣れたんでしょ。」
「なぜか、フィン姉が危険のように見えなかったです。」

「うー、半ズボン履いていて良かった。スカートであんな目にあっていたら、お嫁に行けないよ。」

まあ、そうでしょうね。

「イリスは、今の罠に気をつけたほうがいいわね。」
「え、どうしてですか?」

フィンと顔を見合わせ、イリスがわかってないようなので説明してあげた。

「今のイリスが、そのままフィンのように吊るされて、それをアレイルが目撃してるところをイメージしなさい。意味がわかるわ。」

しばらくして、イリスの顔が真っ赤になった。

「嫌です!絶対、あの状態をアレイルさんに見せたくないです!」
「だから、2人とも気をつけなさい。」

「師匠は、どうして平気なんですか?罠に気をつけてるように見えないです。」

「私の場合、常時、魔力を身体の中全てに循環させてるから、どこにどんな罠があるか、すぐにわかるわ。寝てる時でも、仮に瞬間移動で刺客が現れても対応出来るわよ。貴方達も、常に魔力を循環させておけばいい。始めは疲れるけど、次第に身体の全ての組織に魔力が貯蓄され、相手の挙動や罠なども瞬時に見極める事が出来るようになるわ。」

「つまり、お姉様は、起きている時も寝ている時も、魔力循環を行っているということですか?」

「当たり前じゃない。ここは異世界。いつ、どこで、誰が襲ってくるかもしれない状況よ。信じられる者は己自身。貴方達も、例え好きな男子が側にいたとしても油断しない方がいいわよ。街の中に、急に邪族や盗賊が出現して襲ってくるかもしれないわ。」

「ええ、師匠、それじゃあ、気が休めないじゃないですか?」
「全然、休めているわよ。今でも、リラックスしているしね。」

「お姉様、どうして、その考え方でリラックス出来るんですか?それだと、周りは敵ばかりということになって、私なら落ち着かないですよ。」

「あー、それは子供の頃から、先生に教えられたからよ。私の合気道の先生は、災難に何度かあったみたいで、その時に両親や友人を亡くしたそうなの。それで、自分の弟子達にも同じ目に遭わないように熱心に教えてくれたわ。始めは気疲れしたけど、どんどん慣れてきて、今ではリラックスした状態で、自然に周りの気配を常時観察出来るようになったのよ。」

「師匠の先生、凄いですね。その先生のおかげで、今の師匠が居るんですね。」
「お姉様、私も自然に魔力循環出来るように訓練していきます。」



-----5階層でも、敵はBランクばかりなので、パワーレベリングのおかげもあって、フィンとイリスは余裕であしらえるようになってきた。あれから罠にも引っ掛からず、いよいよ6階層への階段に辿り着いた。ここでも1階層と同じパワーレベリングを行ったが、さすがにレベルが上がりにくくなってきた。

現在のフィンのレベルは30、イリスのレベルは28。

フィンの力量はBクラスまで成長している。
イリスは魔力だけで見れば、既にAクラスだ。

ここにきて、加護が最大限に働いているわね。これなら、次の階層から挑戦するゾンビハウスにも戦えていけそうだ。

「ここから、いよいよ6階層。次は、いよいよゾンビハウスよ。」

下に降りると女神像と2つの大きな扉があった。扉の前に1つの立札があり、こう書かれていた。

【左の扉がノーマル、右の扉がゾンビハウス。ゾンビハウス、現在の挑戦者は20人。ゾンビハウスは、脱出するまで魔法の使用は禁止とする。】

「お姉様、やっぱりゾンビハウスに挑戦するんですか?」
「ええ、ゾンビハウスの方が、2人にとって良い経験になるわ。クリア報酬もあるしね。パワーレベリングの手間が省ける。」

「ですが、師匠、魔法禁止となっています。どうしましょう?」

「大丈夫。イリス、あの短剣を装備しておきなさい。敵味方への魔法は禁止だけど、武器への魔法付加は禁止されていない。貴方のミスリルの短剣は聖属性の宝石アクアマリンを埋め込んだ物、ゾンビに対して、大ダメージを与える事が出来る。フィンが持つミスリルの爪も同じよ。」

時間は、あれ18時になってる。今日は、ここまでね。ゾンビハウスの中は魔法禁止だから、完全に野宿になる。ゾンビハウス用の弁当は用意してあるけど、2人も疲れてるだろうから、ここでストップだ。


「今日の探索は、ここまでね。もう18時になってる。ゾンビハウスに入ると魔法禁止で、ゆっくり休めないだろうから、一旦ジンとリッカを呼び戻しましょう。」

ジンとリッカを召喚で呼び戻すと、イリスが質問してきた。

「あれ、お姉様?宿屋、予約してないですよね?どこで泊まるんですか?」

ふふふ、よくぞ聞いてくれました。邪神になって以降、私は密かに時空魔法で、1つの宿泊施設をコツコツ異空間に作っておいた。 宿泊施設は、日本の和風旅館の部屋だ。広いお風呂も作っておいたし、必要機材は全て準備済みだ。

「こういう時のために、時空魔法で異空間に宿泊施設を作っておいたの。今から、そこに移動して休むわ。」

時空魔法を唱えると、ダンジョンの壁に扉が出現した。

「この扉の向こうが宿泊施設よ。」

「あのサーシャ様、普通異空間に渡れませんからね。多分、渡るだけで膨大な魔力(邪力)を消費するはず。なんで、簡単に出来るんですか?」

「師匠なら、なんでもありですね。」
「お姉様は、大抵の事は出来ますからね。」
「私は、早く夕食を食べたい。」

「お前ら、それでいいのか!」

ジンは、いいツッコミ役になれるわ。
あと、なんでもは出来ないわよ。
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