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3章 ガルディア帝国 マルコ遺跡編

アレイルとアイリスの関係

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ガルディア帝国に来てから、トラブルが多過ぎる。昨日と今日で3件目だ。これは、完全に【運100】が関与しているわね。一口に運と言っても様々なものがる。幸運、仕事運、恋愛運、出会い運、金運、不運、悪運など数多くある。恐らく、そういったもの全てが100なのかもしれない。だからこそ、フィン、イリス、キース、アレイルと出会って救出も出来たのだろう。あ、ブリングとキマイラに付いている籠をアイテムボックスに入れとこう。真っ先にアレイルが疑われるだろうけど、死体がなければ、しばらくの間は行方不明扱いになって、時間が稼げる。

アレイルが起きたみたいね。

「あれ、ここは?俺は確か一刀両断されたはず?なんで生きているんだ?」
「目が覚めたようね。私は、サーシャ・フォーリングというの。」

「あ、俺はアレイルと言います。ずっと奴隷だったので、名だけです。」

「話しずらいだろうから、普通に喋っていいわよ。私は貴方を一刀両断したけど、斬ったのはブリングとの関係性よ。時空魔法『ディメンションブレード』を使ったの。」

「時空魔法だって!そんな属性が存在したのか。仮面の呪いで人形のようになっていたとはいえ、本気で君を殺そうとしてしまった。まあ、君の威圧のせいで、向かった瞬間こっちが殺されると思ったよ。サーシャ、俺とキマイラをブリングの呪縛から救ってくれてありがとう。おまけに、身体が凄い軽いよ。」

「貴方の身体の中、ボロボロだったのよ。『マックス・ヒール』をかけたから、全て完治してあるわ。身体が軽いのは、そのせいね。」

「何から何までありがとう。それにフィン王女とアイリス様もいるなんて驚いたよ。」

あら、わかるんだ。

「偽装を見破れる眼を持っているんだ。」

「ああ、君には言ってもいいか。俺にはユニークスキル『精霊眼』がある。鑑定をかけなくても、魂の強さで相手の力量がわかるし、偽装や洗脳といった魔法も瞬時に見破れる能力だ。精霊との対話も容易に出来るから、魔法も通常の2倍程威力が高いんだ。便利なスキルだよ。そのせいか、君を一目見ただけで殺されると思った。精霊達も怯えて隠れてしまったからな。今は大丈夫だが。」

「詳しい説明ありがとう。こっちは、色々と事情があって説明出来ないのよ。」

「アイリス様を連れているから、余程の事情なんだろうね。アイリス様の事は言わないよ。」

へえ、ウィルさんと似たタイプだけど、軽薄そうな感じがしない。そういう意味では、信頼出来そうね。うん、イリスの様子が変ね。

「イリス、どうしたの?」

「あのアレイルさん、間違っていたらすいません。2年前、誘拐犯から私を助けてくれましたよね?」

「ああ!あの時の女の子は、やっぱりアイリス様だったのか。あの時は精霊眼を切っていたから、きちんと確認してなかったけど、やっぱり偽名を使っていたのか。」

誘拐!そんな事があったんだ。なんか、イリスが急にモジモジし出した。

「アレイルさん、あの助けて頂いてありがとうございます。や、やっとお礼を言えました。」

「2人とも、2年前に1度会ってたのね。」

「ああ、まだ仮面を付ける前だったから、きちんと覚えているよ。子供が悪人共に連れさられそうになっていてね。すぐに、倒したのはいいんだけど、迷子だったらしいから場所を聞いて連れて行ってあげたんだよ。その場所が教会だったから、もしかしてとは思ったけどね。2年振りかな、女の子らしくなったね。」

「え!そ、そのありがとうございます。」

イリスの顔が真っ赤になっている。う~ん、イリスがアレイルを異性として意識しているとはね。

「師匠、私だけ仲間ハズレなのは気のせいですか?」

フィンの事を完全に忘れていたわ。

「そんなことないわよ。それで、アレイル、これからどうする?」

「そうだな。晴れて自由の身となったけど、 ブリングが死んだ以上、俺が確実に疑われるのは明白。ガルディア帝国から、離れた方がいいな。」

「それなら、アイリスの故郷であるスフィアートに行って欲しい。戦争に勝ったけど、Sクラス冒険者が全員いなくなって、戦力が低下しているのよ。エレノア様には、私とイリスから事情を言っておくから、私達が帰ってくるまでスフィアートを守って欲しいの。」

「全然、構わないよ。命の恩人の頼みだ。必ず、スフィアートを守るよ。」
「アレイルさんが守ってくれるんですか!嬉しいです。」

その後、エレノア様と連絡を取り、事情を説明した。どうも、アレイルはSクラス冒険者として、かなり有名らしい。震の属性を極めているためか、『クエイクブレイカー』という別名があるくらいだ。アレイルがスフィアートを守ってくれる話をすると、大歓迎していた。今後の行き先が決まって安心したのか、アレイルとキマイラのお腹が大きく鳴った。

「出発前に、ご馳走を作ってあげるわ。出来るまで、イリスと話でもしてあげて。2年振りの再会なんでしょ。」

「ああ、お言葉に甘えさせてもらうよ。」

アレイルとイリスが少し離れた所に行き、楽しく話し出した。フィンも寂しいからか、こちらにやって来た。グリフォンとユニコーンはキマイラと談笑中だ。なんか絵面が凄い。

「イリス、楽しそうですね。師匠も、わかっててスフィアートに誘ったんですか?」

「まあね。イリスの顔を見たら、すぐにわかったわ。イリスの事がなくても、スフィアートに誘うつもりだったけどね。」

料理は、ロックバードの唐揚げ、ゴードンカウのステーキ、サラダで充分かな。あ、そうだ、ガーリックライスも作ってあげよう。

「はあ、私もレオン王子に会いたくなってきました。」
「レーデンブルク到着は、もう少し先ね。再会したら告白したらいいんじゃない。」

「ふぇ、こ、告白!」
「婚約者とはいえ、まだ告白していないんでしょ?絶好のタイミングだと思うけど。」
「う、か、考えておきます。」

イリスとアレイルは、まだ早いよね。アレイル自身がイリスを異性として捉えてないし、これからかな。今の時点で捉えていたら、それはそれで問題だけど。

さて、これで完成だ。

「あの師匠、物凄く豪華ですね。王宮料理に見えます。」

「大袈裟ね。仮面も取れて、晴れて自由の身となったのよ。豪華にしてあげないとね。このガーリックライスが、凄くステーキと合うのよ。」

後ろを振り向くと、----全員いた。全員が《ゴク》と唾を飲んでいた。

「サーシャ、俺とキマイラだけで食べていいのか?」
「ええ、私達はさっき食べたし、お腹一杯なのよ。」

テーブルの上に料理を置き、セッティングが完了した。キマイラの分は地面に置いた。

「アレイル、なんか食べ辛いのだが。」

そりゃあ食べ辛いか。グリフォンとユニコーンがキマイラの唐揚げとステーキをジッと見ている。フィンとイリスも同じくアレイルの料理を見ていた。

「ああ、俺もだ。フィン王女もイリスも少し食べるか?」

「ふぇ、い、いえ大丈夫です。これ以上食べると、さすがに---」
「わ、私も遠慮しておきます。」

「グリフォンとユニコーンはダメよ。食べ過ぎです。」
「「はい」」《ガク》

2体とも、シュンと首をおとした。

アレイルとキマイラが一口唐揚げを食べた瞬間、そこからは勢いよく食べていった。10分程で全部なくなった。

「キマイラ、こんな美味しい料理があったなんて知らなかった。」
「ああ、グリフォンもユニコーンも、これらの料理を食べているのか。羨ましいな。」

フィンとイリスの2人は、複雑な顔でアレイルとキマイラを見ているわね。

「うー、お姉様、私も料理を覚えたいです。」
「師匠、私もです。」

「ふふ、いいわよ。将来、貴方達の結婚相手に食べさせたらいいわね。」

「「!!」」  2人とも、顔が真っ赤になった。

うーん、2人の反応が面白い。

「サーシャ、ありがとう。凄く美味しかったよ。特に、ガーリックライスだっけ。あれは最高だな。ステーキによく合う。」

「アレイルさん、スフィアートでは、既にお姉様が新作料理を披露しているので、屋台や定食屋でも食べれると思います。」

「本当か!それは楽しみだな。」

食べ過ぎて、太らないようにね。

「これは、ガーリックライスのレシピよ。貴方の気に入った定食屋の主人に渡して上げて。」

「わかった、ありがとう。」

「それと、私に関しての情報は、エレノア様から聞いておいて。貴方なら信頼出来そうだし、全部話しても大丈夫でしょう。イリスも気に入っているしね。」

「お姉様!!何を!----」

「はは、そうするよ。イリスから、ある程度の事情は聞いたし、さっき『魔力纏い』も教わったから、俺はさらに強くなれる。必ず、スフィアートを守ってみせる。イリスも安心して、旅を続けてくれ。それじゃあ、俺はそろそろ行くよ。」

「はい、アレイルさん、お気をつけて。」


アレイルとキマイラが飛び去って行った。うーん、あっという間の時間だったな。トラブルに巻き込まれはしたけど、アレイルというイリスにとっても、強力な人が味方になってくれた。スフィアートも安心でしょう。

さて、出発する前に、あれを処分しておこう。私は、ブリングとキマイラに付いていた籠をアイテムボックスから取り出した。

「うわ、師匠、それをどうするんですか?」
「こうするのよ。『フレイム』」

青い炎が2つを包み込み、跡形も無く消え去った。

「証拠は消滅させておかないとね。ブリングもアレイルも行方不明扱いになるでしょう。」
「アレイさんも、スフィアートに行くから問題ないですよね。」

「さあ、私達はビルブレムに行くわよ。」
「「はい!!」」

ビルブレムに到着するまで、何事も起こりませんように。
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