邪神を喰った少女は異世界を救済します

犬社護

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2章 テルミア王国 スフィアート編

ギガントボルクとの戦い

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○○○  Aクラス ウィル・ビーンズ 視点

今、僕は大聖堂で、とんでもない光景を目にしている。アイリスが唱えた『メテオレイン』に合わせて僕達の遥か上空に突如現れた奇妙な物体、おそらく岩石だと思うが、それが突然大爆発した。僕は衝撃波に備えようと思ったが、爆発した全てのエネルギーや物体は、周辺の邪族達に降り注いだ。正直、目を疑う光景だ。こんな大規模魔法、いくら聖女アイリスでも不可能だと思い、サーシャに声を掛けようとしたが、彼女は爆発が起こった場所を1点に見つめ、この魔法を必死で制御していた。おいおい、たった1人で出来るものなのか?突然現れ、僕達に『魔力纏い』、バーンさんに炎魔法の完成形、僕に『トルネードボム』を教え、極め付けがこの大規模魔法だ。バーンさんもサーシャを見ている。僕とバーンさんは互いに頷き、同じことを思っただろう。-----彼女が味方で心底良かったと。

ただ、サーシャの発想や教え方から考えて、恐らく彼女は僕と同じ転生者組か、異世界からの召喚組のどちらかなのは間違いない。後で聞いてみよう。


そして、今僕達「疾風」のメンバー4人は、邪竜とは真逆の方向にいる2体のAクラス邪族達と戦うため向かっているところだ。僕の隣にはいつものメンバーがいる。ロイ・クロットス、ミア・スロットル、ヒミカ・クリステン、冒険者学校からの腐れ縁で、頼もしい仲間達だ。走っているところをミアが質問してきた。

相変わらず可愛いな。何より胸が大きい。

「ねえ、ウィル、サーシャさんて何者なのかな?信頼出来る人なのはわかるけど、明らかに異常な力を持っているよ。あの大規模魔法を1人で制御なんて、私じゃ絶対無理だよ」

ヒミカもこれに同意した。青い髪が腰まであり、ミア同様可愛いんだけど、ロイに恐ろしい程の好意を抱いている。はっきり言って、ストーカーだね。

「確かに、あの制御能力、『魔力纏い』、『トルネードボム』、『------』の発想能力、どれをとっても化け物ね」

これにロイは反発を示したようだ。
ロイは-----、茶色の髪が逆立っており、至って普通の男だ。断じてイケメンなどではない!く!

「おいおい、ひでえ言い様だな。まあ、言いたい事も分かるが、信頼出来る味方なのは確かだ。ウィルも、最後あたり口説いていたよな」

ミアの雰囲気が変わった。目を細め、俺をじっと見た。
ロイ、なんてことを言うんだ。断じて口説いてなどいない-----はずだ。

「あのミア、誤解しないでくれ。決して、サーシャが可愛いから口説いていたとかじゃなく、邪族を討伐する時は、今後とも宜しくと言っただけなんだよ」

----半分は口説いていた様な気もする。

「一応、そういう事にしておきましょう。さあ、門が見えてきましたよ」

最悪だ、こういう時のミアは後が怖いんだ。ロイの奴、覚えてろよ。ロイも見ると、俺から顔を背け、口笛を吹いていた。後で仕返し決定だな。つうか、なんつう心境で戦いにいかせるんだ。門に到着して邪族達を見ると、『メテオレイン』でかなり減ってはいるが、それでも数が多い。おいおい、いくら魔力纏いがあっても、これだけの数はかなり厳しい。ミアとヒミカの新型魔法に期待しよう。

突然、邪竜の怒鳴り声が聞こえ、邪族達が一斉に雄叫びを上げ、こっちに向かってきた。冒険者達が慌て始めたので、手加減した『威圧』で落ち着かせた。

「みんな、落ち着け。今からミアとヒミカで新型魔法を撃つ。かなりの広範囲で高威力だから、まだ行くんじゃない。2人とも任せたぞ!」

ミアとヒミカが和かに笑った。

「ウィル、任せて」
「ロイ、見てて驚かせてあげる」

ミアとヒミカが新型魔法に集中し出した。真剣だな、制御がかなり難しいと聞いたけど、どうやって克服したんだ?お、始まるか!ミアの右手とヒミカの左手が繋がれた。


「炎の属性」 ミアの左手から赤い炎が、
「嵐の属性」 ヒミカの右手から俺と似た丸いトルネードが現れた。

炎とトルネードが邪族達の真上に移動し、そして合体した。
そこから、混ぜ合わされた魔法はどんどん巨大化し、そして直径10m程まで圧縮された。おいおい、あの球から恐ろしい魔力を感じるぞ。一体何が始まるんだ?邪族達も動きを止め、あの球に臨戦態勢に入っている。


「「喰らいなさい、合体魔法『フレイムプロミネンス』」」


そこからは圧巻の一言だった。丸い球から巨大な紅炎の竜が現れ、邪族達を呑み込んだ。邪族達は逃げる暇もなく、紅炎の嵐に包まれた。

「----凄い----威力だ。これが新型か」

これには、ロイも驚いているな。

「えげつない威力をしてやがる!これが2人の秘策かよ」

周りの冒険者達も呆気にとられているな。当然だな。

「ヒミカ、実戦で初めて成功したよ」

「うん、予想以上の威力ね。これで、さらに数を減らしたから、戦いが少しは楽になるはず」

周りの冒険者達から歓声が上がっているよ。士気が一層高まったな。

「よし、俺達は今のうちにAクラスの所まで行くぞ!みんな、Aクラスは俺達に任せろ。必ず討ちとる。残りは任せたぞ!」


「「「おおおお~~~、任せろ~~~!!!」」」


俺達は、悶え苦しんでいる邪族達を無視し、Aクラス邪族がいる場所に突き進んだ。さすがにCクラス以上ともなると、多少傷ついても歯向かってくる奴らがかなり多いが無視した。

「ミアもヒミカも凄いな。あんな魔法を開発していたとはね」
「全くだ。あの威力は相当なものだ。魔力は大丈夫なのか?」

このロイの質問にヒミカが答えてくれた。

「ミアと2人で行使した分、大きく消耗していないから大丈夫。サーシャに感謝したい。」

「うん、サーシャには感謝だよ。1人でやる事に拘り過ぎてた。2人で行使した事で、デメリットが大きく改善されたしね」

2人で協力しあう事で発言する魔法、その名の通り、まさしく合体魔法だな。
お、Aクラスが見えてきたか。

それにしても、これらが俺達の相手か。邪竜程ではないにしろ大きいな。相手は2体、ギガントリザード、リザードマンの上位進化版。全長4m、大きな剣と盾を持ち、力もあり素早い、おまけに土と震の邪法を使ってくる厄介な奴だ。まあ、ゲームでいうと、バランス重視型だな。もう1体はギガントボルク、アイアンベアーの上位進化版。熊とドラゴンが混ざったかの様な野郎だ。全長6m、大きな棍棒を持っている。一見、攻撃力重視型に見えるが、防御力もかなり高く、灼熱のブレスも吐く厄介な奴だ。サーシャの『メテオレイン』で、ある程度のダメージを負っているな。さすがに、ここまでは『フレイムプロミネンス』は届いていないか。

よりによって、こいつらとはね。少なからず因縁のある相手だ。

「俺とミアがギガントボルクを殺る。ロイとヒミカはギガントリザードだ」
「「了解!」」

「やるぞ、ミア」
「はい!」


ギガントボルク、通常なら4人で立ち向かわないと殺られる可能性が高い。だが、今はどうかな?『魔力纏い』、魔力を身体の外で纏わせる技だ。サーシャに基本を教えてもらったが、自分用にアレンジすればいいと言っていた。だから俺は、身体に纏わせる魔力に風属性を加えた。始めは制御に手こずったが、今はこの通り楽々に出来る。さあ、試させてもらうぞ。

ギガントボルクが棍棒を振り回し、俺目掛けて振り下ろしてきた。

《ヒュッ、ドゴーーーン》

「!そんな遅い攻撃が当たるか」

ギガントボルクの怖いのは、巨大棍棒の上から下への打ち下ろしスピードだ。半端なく速い。打ってくるのがわかっていたとしても、今まで、幾度もあれで死にそうになった。直撃を喰らったら、一発退場となる。そして、最も怖いのが不意に連携で放つ灼熱のブレスだ。以前、棍棒に集中していたせいで、右手をブレスで焼かれた事があったな。それにしても、今の打ち下ろし攻撃、スピードが遅く感じた。ダメージがあるからじゃない。前見たものより、1/2くらい遅く感じた。『魔力纏い』、ここまで影響するものなのか。

「ミア!」
「はい、『アイスマシンガン』いけー」

《シュー、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン》

『魔力纏い』の効果もあって、恐ろしい速度で、弾丸が発射された。この魔法自体は、俺がミアに教えた技だ。前世の記憶が役に立ってなによりだ。だが、さすがはAクラス、貫通はしないものの、かなりのダメージを与えたか。

「グワーーーーー」

む、岩を持ち上げて、上に投げた。何をするつもりだ?棍棒を構えた。-------不味い!

「ミア!あのシールドを頼む。急げ!」
「はい、------『リフレクターシールド』」

大岩が奴の目の前にきた直後、棍棒を大きく振りかぶった。

《ドガーーーーーン》

岩が砕け、その破片が俺達に襲ってきた。これは避けられない!だが、直撃する寸前、シールドで止まった。危ない、間一髪だ。

「この破片、力を2倍にして貴方にお返しします。喰らいなさい!」

シールドに結合している全ての破片にミアの魔力が付与され、ギガントボルクに放たれた。だが、

「ぐああああーーー」

おいおい、『威圧』を放ってスピードを落としやがった。殆どダメージなしか。しかも、邪力を纏い始めたぞ。俺自身も『魔力纏い』を使える様になったからか、はっきりと見える。ミアもわかっているようだ。こいつも本気になったということか。

うん?なんだ、左腕に邪力が集中しだした。それに格闘技でいうと、正拳突きの構えになっている。あれ、なんか似たようなシチュエーションを漫画で見た事があるんですけど、まさか-----!予想通りの技が来るならこの位置はヤバイ!後方には仲間達がいる。くそ、間に合わない!俺達が食い止めるしかない。

「ミア、急だが俺と合体魔法をやるぞ!」
「ウィルと合体ですか!」

合体のニュアンスが、微妙に俺と異なる気がする。今は、そんなことを気にしている余裕はない。

「俺が嵐属性、ミアも嵐属性、魔法は『ストームトルネード』だ!合体魔法のイメージと制御は俺に任せろ。俺がミアの全てを受け止めてやる」

「ええ~~、あ、あ、はい!」

俺とミアは、学園からずっと同じクラスで同じチームだったからな。ミアの魔力の流れも充分理解している。俺は左手、ミアが右手を繋ぎ、合体魔法をイメージした。即席だが、これで充分だ!

「があああ~~~」《ドゴーーーン》

ギガントボルクが技を放ってきた。予想通り、あの技か。確か、○○痛恨撃だったかな?そこに炎属性が付与されてやがる。こっちもいくぜ!

「いくぞ、ミア!」  「はい!」
「「『トルネードクラッシャー』」」  

《ドゴーーーン》  形は奴のと似てるな。

奴の技と俺達の魔法がぶつかり合った。鼓膜が破れるかという程の轟音が鳴ってる。

ちい、即席だからか威力は互角か?いや互角じゃ駄目だ。漏れ出ている嵐のエネルギーをまとめなければ、

「漏れ出ている嵐のエネルギーは。私が制御します。ウィルはイメージに集中して下さい」

「わかった」

頼りになるぜ。合体魔法の先端をもっと鋭く突き抜けるイメージだ。

「いけ~~~!」

拮抗していたが、こちらの魔法が奴の技をが打ち破った。よし、勝ったか?魔法が奴の正面に直撃かと思った瞬間、

「があああ~~」

あの野郎、棍棒を使って軌道を逸らしやがった。だが、奴の左腕は、完全に消滅していた。

「あそこで、軌道を逸らすとは思いませんでした」
「ああ、だが確実に深いダメージは与えたぞ」

じゃあ、今度はこちらから行くぜ!俺は、奴の懐に飛び込み、でかい腹に一発、魔力を一点集中させたパンチを叩き込んだ。

《ドン》
「ぐ、ぐ、ぐ~~」

お、結構、効いてるし、片膝付きやがった。このまま----

「ぐああああーーー」

おいおい、余裕あるじゃねえか。棍棒を振り回し、距離をとりやがった。

「それじゃあ、こちらも例のアレを試させてもらうぜ」

僕が仕掛けていくのがわかったか。棍棒を巧みに振り回し、懐への侵入を阻止している。さすがにあの魔法と今のパンチは効いたんだろう。以前の僕なら、これで苦戦していたな。だが、今は振り回してくる棍棒を避けていき、ミアに援護をしてもらいつつ、容易に奴の口元に辿り着いた。その瞬間、奴の顔がにやけた。しまった、罠か!誘導された!

気付いた時には、もう遅かった。奴の口から、特大の灼熱ブレスが俺に放たれた。

「嘘、ウィル~~~~、いやああああ~~~、死なないで~~」

ミアの奴、ブレスに包まれた瞬間叫びやがった。あの時の右腕を焼かれた光景が忘れられないか。安心させてやるか。僕は、ミアの横に飛んだ。

「ミア、勝手に殺すな。この野郎、さすがに効いたぜ。咄嗟に全身防御に切り替えたおかげで、大きなダメージは喰らってない。『魔力纏い』がなかったら死んでたがな」

「ウィル、良かった~~。」
「ミア、喜ぶのは戦いが終わってからだ。」
「あ、はい!」

「おい、ギガントボルク、良いブレスをありがとう。お返しに、今度はこちらか良いものをやるよ。ほら『トルネードボム』」

僕は、ブレスで疲れている奴の肩の上に移動し、口内に『トルネードボム』を放り込んでやった。その場を急いで離れ、観察していると奴の体内から、

《ドゴーーーン》

「おー、さすがはAクラス、破裂しないか。辛うじて生きているな」

「きゃあ、なんですか、この音!たった1発だけで瀕死状態になってる。それならこれで止めです!『ライトニング・ブレイク』」

おー、俺が教えた魔法、早速使ってるよ。『ライトニング・ブレイク』は、『ライトニング・ボルト』を俺が改良した奴だ。通常、空から落ちてくる雷はいくつか枝分かれして地上に到達するまで、エネルギーを結構ロスしている。ただの雷が『ライトニング・ボルト』、雷を無駄なく集めて1 ヶ所に放つのが『ライトニング・ブレイク』だ。
空から大きな雷が落ち、ギガントボルクに直撃した。

おー、さっきのアイスライフルの水分と自分の血で、恐ろしい程に中まで感電してやがる。雷が収まると、奴は崩れ落ち生き絶えた。それにしても、さっきのブレスは本気で危なかった。ミアに心配を掛けてしまったな。

「おい、ミア、俺は大丈夫だ。心配掛けてすまなかった」
「う、本当に死んだかと思いました。もう、私の前から居なくならないで下さい」
「ああ、わかった。悪かったよ。」

ミアが凄い笑顔になったぞ。え、なんで?

「やったー!言質を取りましたからね」

え、何を取ったの?とりあえず、頷いておこう。

「あー、わかったから、まずは戦いに集中しよう。これで1体目終了だ。正直、こいつと接敵してから20分程しか経ってないな。少し前の俺達なら、4人がかりで本気でやっても30分はかかったはずだ」

「ふふふ、あ、ですよね。恐ろしいですね、『魔力纏い』。魔力が底上げされたお陰で、かなり楽に倒せました」

本当にそうだ。僕の場合は、『身体硬化』スキルもあるから、ミア以上に強化されている。なんせ、あの灼熱ブレスにも耐えたからな。この力は、完全にSクラスだ。お、ロイ達も終わったか。
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