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2章 テルミア王国 スフィアート編

神託とサーシャの告白

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翌朝、早速礼拝堂に向かいマウロ司祭との面談を希望したところ、今は来客中との事で、しばらく待たせてもらった。

---30分後、マウロ司祭と会う事が出来た。部屋に入り、『サイレント』をかけておいた。

「マウロ司祭、昨日、Dランクの遺跡に行き、最下層の女神像まで到達しました」

「なに!ここで話した後、すぐに向かったのか。その様子からして何かあったみたいじゃな」

マウロ司祭に、昨日の出来事を全て話した。

「なんという事じゃ、スフィア様から神託があったとは!第1封印が壊されただと!緊急事態じゃ、世界会議を開かんといかん。そうじゃ、それでその聖剣というのは?」

「これです。属性が込められていないので、唯のオリハルコンの剣です」

「そこまで、スフィア様は正体不明の敵に追い詰められておるのか。邪王だけでなく邪神まで復活となると、もう世界は終わってしまうのか?」

3人とも、気分がどん底まで沈んでいるわ。ふー、これは話した方が良さそうね。

「3人とも、絶望するのは、まだ早いです。少なくとも、あの邪神は絶対に復活しません。まあ、邪神という意味では、もう復活してますが」

「ふぇ、師匠、どういう意味ですか?邪神に会ったことがあるんですか?」
「サーシャ、お主、何か知っておるな!この際じゃ、お前さんが何者か話して欲しい」

「わかりました。今から話す内容は、他言無用でお願いします」

私は、3人に自分の事を話した。

1) 自分が異世界からの召喚者であること。
2) 女神サリアに『無能』と『フリードリーム』をもらったこと
3) 女神サリアに邪心薬を飲まされ、邪神に身体を乗っ取られそうになったこと
4) ユニークスキル『フリードリーム』を使って、邪神を喰べたこと
5) 邪神を喰べた事で、自分が邪神になってしまったこと
6) 女神サリアに存在を大きく察知される可能性があるので、本当の名前は言えないこと。
7) サーシャが異世界の召喚者である事は、絶対に誰にも言わないこと

全部話すと、3人とも呆然と私を見ていた。

「なんという奴じゃ。邪王を通り越して、邪神を討伐していたとは!」
「師匠、凄すぎです。だから、あんなに強いんですね」
「でも、お姉様、そうなると今の時点で、邪王を倒せるのでは?」

「ええ、邪王の封印場所も王宮で教えてもらっているから、やろうと思えばすぐに可能よ。ただ、そうなると、今後の展開が予想出来なくなるの。現時点で、黒幕が誰なのかわからないし、強さも未知数。女神サリアも何者かは不明だしね。下手したら一気に全員登場して、私を殺し、この異世界そのものを破壊する可能性だってありうる。今の時点での邪王討伐はありえないわ。もう少し情報が欲しい」

「確かに。そうなるとイリスを連れて、世界中の遺跡を探索し、スフィア様からのメッセージを見つけるしかないわけか」

「はい、聖剣と邪神の事を除いた神託を全世界に公開すべきです。剣については、私に任せて下さい。そもそも、スフィアが創った聖剣は弱いです。この剣を基に改造して、聖剣より強い神剣を創りたいと思います」

「神剣!お姉様、創れるんですか!」

「ええ、ただ、どのくらいの期間で出来るかわからないわ。勇者達には、邪王を再封印してもらって、少しでも時間を稼いで欲しいのよね。私の思った通りの神剣が出来れば、黒幕を倒せると思う」

「はは、師匠のおかげで、心が楽になりました」
「お姉様、私達はどう行動したらいいのでしょうか?」

「まずは、ここに攻めてくる邪族を殲滅するのよ。あと、今回は私はあくまで冒険者として行動するわ」

「ふぇ~、どうしてですか?師匠がやればすぐに終わりますよ」

「簡単な話じゃ。そんな目立つ行動をしたら、一発で黒幕に見つかる可能性があるからじゃよ。それに、これは我々スフィアートの問題じゃ。サーシャの力は借りるとは思うが、スフィアートの住民達で解決せねばな」

「フィン、イリス、私も協力するけど。今回は冒険者達の補助をするわ。そしてイリスにも手伝ってもらうわ。切り札として、この魔法を修得出来れば、聖女としての格が上がるし、貴方自身も大きくレベルアップするわ」

「本当ですか、お姉様。私、頑張ります。その補助魔法を教えて下さい」

イリスなら、私が考えたあの魔法を修得出来るだろう。

「師匠、私も修得したいんですが?」

う、フィンか。この子、不器用だから、まず無理だろうな。

「えーとね、フィンは短期間での修得は無理だと思う。その代わり、遺跡とかに行って、どんどん鍛えてあげるわ。」

「ガーン、私が不器用だからですね。わかりました、どんどん強くなっていきます!」

ごめんね、フィン。この魔法は制御が難しいのよ。あと、自分が不器用なのはわかっているんだね。

「それで、サーシャ、イリスに教える魔法とは何じゃ?」

「それは、-----------という魔法です。効果は、-------です。ただし、---------というデメリットがあります」

「お姉様、凄いです。デメリットが厳しいですけど、切り札として使えますよ」
「全く大した奴じゃ。そんな魔法を創るとはな。イリスにぴったりじゃ」
「師匠、確かに、これは私には出来ません」

とりあえず、みんな落ち着いたようね。じゃあ、次に進みましょうか。

「次に、アイリス発見と神託の件を教皇にいつ知らせるかですね。この際、貴族連中が何か言ってきたら、強制的に黙らせます」

「あまり無茶はしないで欲しいの。しかし、神託も絡んでくるとなると、邪族が攻めて来る前に言った方が良いな」

「マウロ司祭、そちらの状況はどうなっていますか?」

「1人は見つけたよ。儂と同期で次期教皇とも言われておるクリンカ大司教じゃ」

確か、身分の高さは一般の聖職者、司祭、司教、大司教、教皇だったよね。確かに身分で考えると、次期教皇候補だ。

「クリンカ様が邪族に洗脳!早く、解いてあげないと」

「そう言うと思って、あと10分程でここに来るじゃろう。サーシャ、わかっておると思うが、洗脳解除後、クリンカを納得させるためにアイリス様の発見とスフィア様の神託、サーシャの件は話しておいた方がいい。あやつは、信頼出来るから大丈夫じゃ」

ここは、マウロ司祭を信じるか。


○○○

クリンカ大司教が入って来た。

「マウロ入るぞー。おーこれは可愛いお嬢さん達じゃないか。フィン王女もいるのか!話には聞いていたが、ご無事で何よりだ」

マウロ司祭が優しい温和な年配さんで、クリンカ大司教は厳格で怒ると怖い年配さんかな。元気そうに見えるが、無理をしているのは明らかだ。私達は簡単に自己紹介を済まし、早速要件に入った。

「クリンカ、すまんな、忙しい時に」

「構わん。お前から呼び出す時は、決まってアイリス様関係だからな。それで、要件は何だ?」

「まず、何も言わずサーシャの回復魔法を受けてくれ。お前さんも儂同様、疲れておるじゃろうからな」

「それは構わんが、何かあるという事か。わかった、やってくれ」

クリンカさんは目を閉じてくれた。マウロ司祭がいて良かったよ。私達だけじゃ、こんな上手くはいかないだろうな。私は、そっと回復魔法を掛けてあげた。

「『マックス・ヒール』」

回復魔法と同時に邪力の線を断ち切った。そして、線が消える前に聖魔法『ホーリーボルト』を圧縮して線に流し込んでやった。これで2体目討伐だ。その光景を見て、フィン、イリス、マウロ司祭が驚きすぎて口を開けていた。

「マックス・ヒールの使い手がアイリス様以外にいるとは。それに、サーシャ、今何かやったな。一瞬だが恐ろしい魔力を感じたぞ」

「はい、順に話していきますね」

伝えることが多いから、混乱しないように1つずつ順に話して言った。

1) クリンカ大司教が邪族に洗脳されていたこと
2) 洗脳された者はマウロ司祭、クリンカ大司教以外にあと4人いること
3) 貴方達6人がアイリスを北東の大森林に転移させたこと
4) 私が大怪我をしているアイリスを助けたこと
←ここでアイリス偽装解除。意気消沈しているクリンカ大司教、大号泣
5) Dランク遺跡最下層には、聖女が女神像に触れる事で作動する隠し部屋があって、そこで女神スフィアから神託を受けたこと
←ここでクリンカ大司教、神託とその内容に驚愕
6) スフィアートでの邪族の目的は、アイリスの抹殺、聖魔法大型魔導具の破壊、スフィアートの陥落であること
7) さっきの魔力は邪力の線に圧縮した聖魔法『ホーリーボルト』を打ち込んだこと
8) 最後に、私が何者であるか、オリハルコンの剣の改造を話しておいた。あと、私が異世界の召喚者であることは、教皇様以外、誰にも言わないように厳命しておいた

話し終えると、クリンカ大司教は呆然としていた。情報が多かったものね。

「サーシャ、君が最後に言った事は真実なんだな?」
「はい、真実です」

「鑑定しても、構わないか?」
「そうですね、称号だけ、お見せしましょう」


「----そうか、邪神は既にサーシャによって討伐されていた---か、それに関しては一安心だな。だが、邪神以上の存在がいるとは」

今、ふと思ったけど、マウロ司祭、クリンカ大司教の2人は、邪神の事に触れても驚いてなかったよね?

「ひょっとして、フィン以外は邪神の存在を知っていましたか?」

「ああ、もちろん知っておるよ。クリンカはもちろんイリスも知っておる。一般公開されておらんが、スフィア様が残した資料に記載されておるからな」

スフィア教だから知ってて当然か。

「サーシャ、洗脳を判別出来る方法があるのだろう?私にも教えてくれんか?」

「もちろんです。既にフィン、イリス、マウロ司祭の3人には教えていますからね」

ここで、スキル『魔力纏い』を教えて上げた。マウロ司祭同様、1時間程でスキルレベル3になった。司祭と大司教に教えて上げたから、そのうち広まるだろう。ただ、神託の第1封印破壊の件の事を考えると、邪族が大量に押し寄せてくる可能性がある。そうなった場合、激戦になる可能性が非常に高い。これは、騎士団や冒険者達にも教えた方が良いわね。何も教えず、多くの死者が発生するのは最悪だからね。ある程度目立つけど、多分大丈夫でしょう。


「なるほど、これは良い!こんなスキルが存在していたのか!サーシャ感謝するぞ」


「さて、問題はここからですね。邪族はアイリスを抹殺したと思っていますから、今後は大型魔導具の破壊に集中すると思います。早急に、あと4人を発見しないといけません。あと、アイリスの発見と神託の件をいつ公表するかですね」

「それについては、私に任せてもらおう。今から教皇様に全てを言っておく。貴族連中がサーシャを疑うだろうが適当に誤魔化しておく。明日の朝には、教皇自らが発表する事になるだろう。サーシャ、今日20時にフィン王女とイリスを連れてここに来てくれ。教皇様だけに会ってもらう」

「はい、わかりました」

「ふふ、今から忙しくなりそうだ。マウロも大司教になればいい良いものを。私の負担が減るんだがな」

「御免被るわ。儂は、ああいう堅っ苦しいのは苦手なんじゃ。司祭で充分じゃよ」

ああ、やっぱりマウロ司祭も大司教になれる力を持っているんだね。

「では、20時にこちらにお伺いします。その間に、道具屋と鍛冶屋に行っておきます」

「師匠、食材やポーション類の補給やミスリルの爪ですね」

「ええ、あと道具屋の主人とドルクさんに見てもらいたいものがあるの」

「?はあ、わかりました」


「フィン王女もアイリス様いやイリスも、かなり力が上がっているのがわかる。サーシャ悪いが、2人の護衛をしつつ、強くさせてやってくれ。君になら任せられる。さて、マウロ、お前にも動いてもらうぞ」


「当たり前じゃ。どんどん扱き使ってくれて構わん」


よし、良い関係を築いていけそうだ。
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