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1章 テルミア王国 王都編

嘲笑

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あれ、ノックだ、誰だろう?

「はい、どなたですか?」
「美香だよ~、茜開けて~」

美香か、開けてあげないとね。扉を開けると、凄い笑顔だった。ああ、余程いいスキルを女神から貰えたんだろう。美香は信頼できるから言っておいたほうがいいね。

「美香、入っていいよ」

「茜、私のステータスの称号欄に聖女があったんだよ。魔法もスキルも良いものばかりだった。茜はどうだったの?」

よかった、聖女なら安心だ。さて、どうしよう、凄く言いづらいんだけど、ああ言うしかないか。私は、美香にスキルと称号を教えた。

「何よ、それ!茜を馬鹿にしてる!無能て酷すぎるじゃん」

「実はさ、この異世界に来る直前に声が聞こえたんだ。どうも、私の事が気に入らないらしく、スキルも適当に選ばれた感じがするのよ」

「むかつく~~!あの女神、何様なのよ!話した時は、良い女神だと思ったけど、思いっきり自分勝手な奴じゃん」

うん、美香は女神に会ったの?

「ちょっと待って、美香。もしかして、女神に会った事あるの?」
「あるよ。初めに気づいた場所が女神のいる空間だったの。みんなも同じ事言ってた」

おい、私だけか、女神に会ってないの!あの女神~~!

「そうだ、あの女神、きっと茜に嫉妬したんだ」

は、嫉妬?なんで?

「あの美香、私のどこに嫉妬する要素があるの?」

美香が盛大なため息を吐いた。そして私の両肩に両手を乗せて言った。

「あのね茜、そろそろ自覚した方がいい。茜はメチャクチャ美人なの。眼鏡の所為で、不細工に見えるだけ。以前、桜木君と2人で歩いていた時、校庭で会ったでしょ。あの時、茜、眼鏡かけてなかったよね」

私が美人、そんな馬鹿な!今まで一度も言われた事ないんだけど。

「ええ、目が疲れたから少しの間外してたわ」

「あなたと別れてから、桜木君が聞いてきたんだよ。(あの可愛い女の子は誰だ)て、それで教えてあげたら、かなり驚いてた。あれ以降、茜に凄く興味持ち始めたんだよ」

嘘でしょ。あの桜木君が!そういえば、コンタクトに変えた方がいいって言ってくれたわ。なんか、凄く嬉しい。

「そ、そうなんだ」
「お、ちょっと動揺してるな。でも、許せない、あの女神」

「もう仕方ないわよ。今後の事を考えないとね。私としては、この世界の常識を教えてもらってから、城を出て行こうと思ってるわ」

「何言ってるの。ずっと私達と一緒にいた方がいいよ」
「さすがに迷惑になるわ。とりあえず、明日の王様との話し合い次第かな」


みんなと夕食を食べ、今後の相談をした結果、まず元の世界に本当に帰れるかを聞こうという事に落ち着いた。邪王の再封印をするかどうかは、その次だ。

意見がまとまったところで、みんなは部屋にこもって能力の把握に努めた。
はあ~~、いいよね。私なんか、見た瞬間把握出来たよ。

部屋に戻って、しばらくしてノックがあった。

「はい、どなたですか?」
「あ、桜木だけど、今大丈夫かな?」

え、桜木君!なんで、こんな時間に、とりあえずドアを開けよう。

「どうしたの、こんな時間に」
「いや、その島崎から、スキルの事を聞いたんだ。大丈夫かと思ってね」

美香~~、桜木君に言ったな。----まあ、桜木君ならいいか。

「あ、とりあえず部屋に入って」

入ってもらったのはいいけど、なんか気まずい。

「スキルと称号の事、聞いたんだね。だったら話は早いか。私は常識とか学んだら、城を出て行くよ。迷惑になるからね」

「それは危険だ。俺達は目立った格好をしているから、すぐに人に襲われる。城内にいた方がいい」

心配してくれてるんだ。あはは、なんか嬉しい。

「さすがにずっと城内にいるのは無理だよ。ここで、スキルは得られなくても、護身術とかは学べると思うんだ。そういうのを覚えたら出て行くよ。1人だけ城内で、ずっといるのは、みんなも納得しないだろうしね」

「俺が王様や姫様、ガロットさんに進言する。あの人達ならわかってくれるはずだ」

そこまで強く言われると、

「わかった。明日、王様に相談してみるわ。心配してくれてありがとう」
「え、あ、当たり前だろ、友達なんだから心配して当然だ」

桜木君が納得し、部屋を出て行った。私は、この時気づいていなかった。1人の人物が、ずっと桜木君を見張っていたことを。


------翌日、王の間に呼び出され、まず元の世界に帰還出来るかを王に聞いてみた。その結果、本当に帰還出来る手段があるらしい。ただし、最低でも異世界間の移動のため、必要な魔力も膨大で、少なくとも必要魔力を貯めるのに1年はかかるみたい。その魔法に必要な魔導具、魔力の貯蓄方法、魔法の起動方法、事細かに教えてくれた。此処まで教えてくれるのだから、帰還出来るのだろう。クラスメート全員が安心した。ただし、この異世界で死んでしまった場合は、さすがに無理みたい。どうも、私達の事を親身になって考えてくれてるみたい。うん、この人達なら信頼出来そうだ。桜木君がクラス代表して、邪王再封印の件をOKした。

  次に、ステータスの話になった。勇者は桜木君、聖女は美香、魔法剣士が竜崎君など、皆かなり優秀らしい。王宮の人達も、かなり盛り上がっていた。特に、桜木君と美香の能力値・スキル・称号がかなり優秀らしい。そんな時、急に笑い声が聞こえた。あれは、金子さんか、どうしたんだろう、なんか私を指差して大笑いしている。まさかとは思うけど、ステータスを見られたの!

「あははは、ちょっと清水さん、あなたスキル無能て何よ。一生どんなスキルも魔法も獲得できないの。それに女神から嫌われし者て何。絶対に幸せになれない。あなた完全に役立たずじゃん、厄病神よ」

これにいち早く反応したのが、ガロットさんだ。

「茜と呼んでいいかい?」
「あ、はい」
「失礼ながら、ステータスを鑑定してもいいかな?」

なるほど、鑑定というスキルで、ステータスが見れるのね。

「はい、どうぞ」

そう言って、ガロットさんは私のステータスを見て、ひどく驚いていた。

「これは---酷い。女神様も、なぜこのようなスキルと称号を?」
「召喚時、私だけ、女神--様にあっていません。そのせいかもしれません」

声だけ聞こえたあいつに、様は付けたくないんだけど仕方ない。

「そんなはずは!通常全員会えるはずなんだが、何か不備でもあったのかもしれん」

すいません、不備はないです。あいつが私の事を単に気に入らなかっただけです-----とは言えない。周りが騒がしい。桜木君には悪いけど、やはり出て行った方がいいかもしれない。

「私の今後の事なのですが、この世界の常識と護身術か何かを身に付けてから、城を出て行こうと思います。金子さんの言う通り、役立たずなんで」

これに、桜木君と美香が猛反対した。

「それは駄目だ、危険過ぎる。スキルは、一生獲得できないのだろう。城を出たら、すぐに人に襲われて死ぬ可能性が大きい。むしろ、城から出ない方がいい」

「そうだよ、茜、桜木君の言う通りだよ。私達が守ってあげるから」

うう、凄く嬉しい言葉だけどいいのかな。ガロットさんの方を向くと、

「うーむ、春人の意見に賛成だ。城から出ない方がいい。仮に出る時は、単独ではなく、複数で行った方がいいだろう」

王様はそんな様子を見て、何かを決断し、話し出した。

「こちらの不備が原因なのだ、城内にいても構わん。茜も、本当にスキルと魔法が獲得できないか試してみるといいだろう。ただし、他の者とは別行動だ。能力値に差があり過ぎる。よし、春人達は今日から、この異世界スフィアタリアの常識の勉学とスキル・魔法の訓練を行ってもらう。マーカス騎士団長、頼んだぞ」

1人の30代の男性が前に出てきた。この人がマーカス騎士団長、覚えておこう。

「は、畏まりました。春人達、茜もついて来い」

それにしても、王様といい、ガロットさんといい、優しい。私の気持ちになって考えてくれている。城内にいる間は、迷惑をかけないようにしよう。雑用ぐらいなら出来るはず。

こうして、私達の訓練が始まった。
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