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17話 カード戦士、学園へ行く
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俺達が掲示板を見ているうちに、どうやら注目を浴びていたようだ。
主にフィリアナが!
「鬱陶しい視線じゃの~~。全員、威圧で弛緩させるか?」
彼女の威圧は、通常のものと異なる。威圧すると、どんな強者であっても緊張が解かれてしまい、リラックス状態となる。本来の効果と、真逆なものだ。
「そんな事をしたら、余計注目を浴びるから絶対にやらないでね」
現在、周囲にいる男性冒険者の殆どが成人以上で、俺より年下の者は少数となっている。フィリアナは十三歳くらいの容姿だから、現状誰もナンパしないようだが、俺が離れた途端、年下連中に囲まれるかもしれないな。
「フィリアナ、君の冒険者カードをもう一度見せてくれないか?」
「構わんぞ」
やはり、彼女の冒険者カードには、種族《獣人》、年齢《十二歳》となっている。聖魔法に関しても、どういうわけか記載されていない。初めて見た時は素通りしたが、年齢や聖魔法の欄をどうやって修正したのだろう? 俺がそれを尋ねると意外な答えが返ってきた。
「そんなものは、スキル《クリアシート》で誤魔化せばよい」
「俺の知らないスキルだけど、どんな効果があるんだ?」
そういえば、《クリアシート》については、まだ効果を聞いていなかった。
「これはの、《透視》や《天眼》スキルと併用する事で、より強い効果を発揮するのじゃ」
俺はその効果を聞いたのだけど、内心ヒヤヒヤものだった。古来から《聖獣種を怒らせてはならない》と言われているけど、絶対これらのスキルが原因だと思う。フィリアナを誘拐した犯人達も、回復魔法だけで無く、こういったスキルを利用していたに違いない。
《クリアシート》を単独で使用した場合
自分のステータス内に、クリアテープを自由に貼ることができる。貼られた箇所は透明となり、鑑定スキルを用いても、テープの裏側までは見れない。また、ステータスを偽造しているわけでもないので、看破スキルでも見破れない。
《クリアシート》と《透視》を併用した場合
相手のステータスに、テープを貼ることができる。貼られている間、その箇所のスキルや魔法を使用できない。透視スキルならば一個人につき、テープを四箇所、天眼スキルならば十箇所貼ることができる。また、天眼スキルの場合、相手の記憶を覗けるため、全記憶そのものを意図的に一箇所という認識で隠すことも可能。その間、貼られた相手は、その記憶を思い出せなくなる。
「フィリアナ、そのスキルを使えば、あの女に復讐できるぞ?」
「何を言う‼︎ 妾の透視スキルでは、奴のステータスの一部を隠せるだけではないか‼︎そんなものが復讐になるか‼︎ 奴には、《うん…》…むぐうう~」
大声で《うんち》と叫びそうになったので、俺の右手で彼女の口を塞いでおいた。年頃の女の子が叫ぶ言葉ではない。
「わかったよ。それじゃあ冒険者登録をした後、この依頼票を受付にいるリダさんに見せて受理してもらおう」
「リダ…ほう、あの獣人か。中々の美貌じゃな」
いつまでもここに止まっていると、あいつらと出会う可能性もある。
さっさと用事を済ませよう。
○○○
「あら~フィックス~、可愛い女の子を連れているじゃな~い♡」
受付に到着した瞬間、リダさんがニマニマした笑顔で、フィリアナとの関係を聞かれた。この人は、こういう男女関係の話が好きなんだよ。その証拠に、尻尾の振りが尋常じゃない。わかりやすい人だ。
「彼女はフィリアナ、昨日西の森の中で知り合ったんです。もう聞いているかもしれませんが、《学園生による魔力暴走》、アレに巻き込まれたんですよ。俺は火傷を負い倒れている彼女を発見し治療したんです」
尻尾の振りが止まり、リダさんは真剣な表情をとる。
「アレ…か、昨日の夕方ギルドマスターから聞いたわ。幸い、謎の霧が発生したおかげで、すぐに鎮火され大事に至らなかったそうよ。そのおかげもあってか、犯人の女子生徒は停学一ヶ月という軽い処分になったわ」
停学一ヶ月、確かに軽い処分だ。
大火事に発展していたら、間違いなく退学だっただろう。
「妾はフィリアナ。あの事故にはもう一人、学園生の女が深く関わっていたはずじゃ」
《女》…自分をヒロインと言った学園生のことだな。
あの事故にも、直接関わっているのだろうか?
「ふふ、一人称は《妾》か、可愛い獣人さんね。もう一人ってどういうこと? あの事故は、一人の女子生徒が引き起こしたものよ? 目撃者も数名いるから、この情報に間違いは無いわ」
目撃者がいる以上、あの女は無関係か。
だったら、何故フィリアナの居場所を逸早く掴めたんだ?
当時、大怪我のせいで潜伏や隠蔽スキルが解除されていたとしても、あの広大な森の中、小さな聖獣を見つけ出すのは困難のはずだ。
「その子に、何かされたの?」
「人間族の女は、妾を……」
さすがに、《殺した》とは言えない。
俺が、フォローしよう。
「その女は魔力暴走で怪我を負ったフィリアナに対して、気持ち悪い笑みを浮かべながら、隷属魔導具で奴隷契約を施そうとしたんです。俺がギリギリのところで発見できたので、その行為を阻止したんですが、女はそのまま逃走しました」
実際はかなり違うのだが、主従契約を結ぼうとしたのは事実だから、ある意味、嘘は言っていない。
「完全な違法行為ね。同じ獣人として、放っておけないわ。とはいえ、未遂のようだから、ギルド側からは何も言えないのよ。ごめんなさいね」
この国には奴隷制度が存在するものの、無断で相手を拘束し奴隷にすれば、違法行為となる。奴隷が欲しいのなら、奴隷商人のもとへ訪れるしかない。
「一応、その件もあって、この匿名希望の依頼を受けようと思っています。あと、これが俺とフィリアナの冒険者カード、パーティーを結成しましたので更新をお願いします」
「わかったわ」
俺達のパーティー申請は、何の問題もなく受理された。パーティー名に関しては考えていなかったので、とりあえず空欄にしておいた。低ランクの場合、目立つパーティー名にしてしまうと、実力不足で周囲から馬鹿にされるケースも多々ある。そういった事情から空欄で申請する冒険者達も結構いるので、全く問題にならなかった。
その後、匿名希望の件に関して詳しい内容を聞きたかったのだが、これに関しては依頼者の要望で言わないよう指示されているらしく、リダさん自身も知らないようだった。仕方ないので学園の資料を貰い、行き方を教わってから、俺達は冒険者ギルドを出る。露店などへの寄り道もあって、徒歩一時間程で学園へ到着したのだが、敷地面積や建物の作りが圧倒的で、俺達は閉じられた正門前で立ち尽くすこととなる。
学園への入学年齢は十三歳、卒業年齢は十八歳。
入学に必要な学力は国内トップ、平民、貴族、王族、全てに置いて平等を謳っているため、王族ですら入れない者がいるという。しかも、王族で入れなかった場合、その時点で《王になる資格なし》とみなされ、王位継承順位が最下位になる…らしい。
「リダさんから聞いてはいたけど、凄い規模だな」
「うむ、凄いの」
俺達が立ち止まっていると、敷地内をパトロールしていた職員らしき人物が近づいてきた。三十歳くらいの男性で、身体もがっしりしていることから元冒険者かもしれない。武器を形態していないということは、フィリアナと同じタイプの武道家か? 左胸には名札が付けられており、《警備員:ハルヒト》と記載されている。
「何用かな?」
リダさんから貰った《学園入場許可証》と《匿名希望の依頼》を見せると、男性は左手で顎をさする。
「ふむ、またこの依頼による入場者か。君達で二十四組目だよ」
二十四組目!?
あれだけ高額な報酬なら、誰だって食いつくか。
「フィックスと言います。この子は、パーティーメンバーのフィリアナです」
「警備員のハルヒトだ。不躾ながら、ここで質問させてもらおう。《スキル善玉悪玉》について答えなさい。正解ならば、ここを通そう」
おいおい、それって依頼内容のことだろ?
質問してくるということは、既に効果を知っているんじゃないか?
やっぱり、何か裏がありそうだ。
主にフィリアナが!
「鬱陶しい視線じゃの~~。全員、威圧で弛緩させるか?」
彼女の威圧は、通常のものと異なる。威圧すると、どんな強者であっても緊張が解かれてしまい、リラックス状態となる。本来の効果と、真逆なものだ。
「そんな事をしたら、余計注目を浴びるから絶対にやらないでね」
現在、周囲にいる男性冒険者の殆どが成人以上で、俺より年下の者は少数となっている。フィリアナは十三歳くらいの容姿だから、現状誰もナンパしないようだが、俺が離れた途端、年下連中に囲まれるかもしれないな。
「フィリアナ、君の冒険者カードをもう一度見せてくれないか?」
「構わんぞ」
やはり、彼女の冒険者カードには、種族《獣人》、年齢《十二歳》となっている。聖魔法に関しても、どういうわけか記載されていない。初めて見た時は素通りしたが、年齢や聖魔法の欄をどうやって修正したのだろう? 俺がそれを尋ねると意外な答えが返ってきた。
「そんなものは、スキル《クリアシート》で誤魔化せばよい」
「俺の知らないスキルだけど、どんな効果があるんだ?」
そういえば、《クリアシート》については、まだ効果を聞いていなかった。
「これはの、《透視》や《天眼》スキルと併用する事で、より強い効果を発揮するのじゃ」
俺はその効果を聞いたのだけど、内心ヒヤヒヤものだった。古来から《聖獣種を怒らせてはならない》と言われているけど、絶対これらのスキルが原因だと思う。フィリアナを誘拐した犯人達も、回復魔法だけで無く、こういったスキルを利用していたに違いない。
《クリアシート》を単独で使用した場合
自分のステータス内に、クリアテープを自由に貼ることができる。貼られた箇所は透明となり、鑑定スキルを用いても、テープの裏側までは見れない。また、ステータスを偽造しているわけでもないので、看破スキルでも見破れない。
《クリアシート》と《透視》を併用した場合
相手のステータスに、テープを貼ることができる。貼られている間、その箇所のスキルや魔法を使用できない。透視スキルならば一個人につき、テープを四箇所、天眼スキルならば十箇所貼ることができる。また、天眼スキルの場合、相手の記憶を覗けるため、全記憶そのものを意図的に一箇所という認識で隠すことも可能。その間、貼られた相手は、その記憶を思い出せなくなる。
「フィリアナ、そのスキルを使えば、あの女に復讐できるぞ?」
「何を言う‼︎ 妾の透視スキルでは、奴のステータスの一部を隠せるだけではないか‼︎そんなものが復讐になるか‼︎ 奴には、《うん…》…むぐうう~」
大声で《うんち》と叫びそうになったので、俺の右手で彼女の口を塞いでおいた。年頃の女の子が叫ぶ言葉ではない。
「わかったよ。それじゃあ冒険者登録をした後、この依頼票を受付にいるリダさんに見せて受理してもらおう」
「リダ…ほう、あの獣人か。中々の美貌じゃな」
いつまでもここに止まっていると、あいつらと出会う可能性もある。
さっさと用事を済ませよう。
○○○
「あら~フィックス~、可愛い女の子を連れているじゃな~い♡」
受付に到着した瞬間、リダさんがニマニマした笑顔で、フィリアナとの関係を聞かれた。この人は、こういう男女関係の話が好きなんだよ。その証拠に、尻尾の振りが尋常じゃない。わかりやすい人だ。
「彼女はフィリアナ、昨日西の森の中で知り合ったんです。もう聞いているかもしれませんが、《学園生による魔力暴走》、アレに巻き込まれたんですよ。俺は火傷を負い倒れている彼女を発見し治療したんです」
尻尾の振りが止まり、リダさんは真剣な表情をとる。
「アレ…か、昨日の夕方ギルドマスターから聞いたわ。幸い、謎の霧が発生したおかげで、すぐに鎮火され大事に至らなかったそうよ。そのおかげもあってか、犯人の女子生徒は停学一ヶ月という軽い処分になったわ」
停学一ヶ月、確かに軽い処分だ。
大火事に発展していたら、間違いなく退学だっただろう。
「妾はフィリアナ。あの事故にはもう一人、学園生の女が深く関わっていたはずじゃ」
《女》…自分をヒロインと言った学園生のことだな。
あの事故にも、直接関わっているのだろうか?
「ふふ、一人称は《妾》か、可愛い獣人さんね。もう一人ってどういうこと? あの事故は、一人の女子生徒が引き起こしたものよ? 目撃者も数名いるから、この情報に間違いは無いわ」
目撃者がいる以上、あの女は無関係か。
だったら、何故フィリアナの居場所を逸早く掴めたんだ?
当時、大怪我のせいで潜伏や隠蔽スキルが解除されていたとしても、あの広大な森の中、小さな聖獣を見つけ出すのは困難のはずだ。
「その子に、何かされたの?」
「人間族の女は、妾を……」
さすがに、《殺した》とは言えない。
俺が、フォローしよう。
「その女は魔力暴走で怪我を負ったフィリアナに対して、気持ち悪い笑みを浮かべながら、隷属魔導具で奴隷契約を施そうとしたんです。俺がギリギリのところで発見できたので、その行為を阻止したんですが、女はそのまま逃走しました」
実際はかなり違うのだが、主従契約を結ぼうとしたのは事実だから、ある意味、嘘は言っていない。
「完全な違法行為ね。同じ獣人として、放っておけないわ。とはいえ、未遂のようだから、ギルド側からは何も言えないのよ。ごめんなさいね」
この国には奴隷制度が存在するものの、無断で相手を拘束し奴隷にすれば、違法行為となる。奴隷が欲しいのなら、奴隷商人のもとへ訪れるしかない。
「一応、その件もあって、この匿名希望の依頼を受けようと思っています。あと、これが俺とフィリアナの冒険者カード、パーティーを結成しましたので更新をお願いします」
「わかったわ」
俺達のパーティー申請は、何の問題もなく受理された。パーティー名に関しては考えていなかったので、とりあえず空欄にしておいた。低ランクの場合、目立つパーティー名にしてしまうと、実力不足で周囲から馬鹿にされるケースも多々ある。そういった事情から空欄で申請する冒険者達も結構いるので、全く問題にならなかった。
その後、匿名希望の件に関して詳しい内容を聞きたかったのだが、これに関しては依頼者の要望で言わないよう指示されているらしく、リダさん自身も知らないようだった。仕方ないので学園の資料を貰い、行き方を教わってから、俺達は冒険者ギルドを出る。露店などへの寄り道もあって、徒歩一時間程で学園へ到着したのだが、敷地面積や建物の作りが圧倒的で、俺達は閉じられた正門前で立ち尽くすこととなる。
学園への入学年齢は十三歳、卒業年齢は十八歳。
入学に必要な学力は国内トップ、平民、貴族、王族、全てに置いて平等を謳っているため、王族ですら入れない者がいるという。しかも、王族で入れなかった場合、その時点で《王になる資格なし》とみなされ、王位継承順位が最下位になる…らしい。
「リダさんから聞いてはいたけど、凄い規模だな」
「うむ、凄いの」
俺達が立ち止まっていると、敷地内をパトロールしていた職員らしき人物が近づいてきた。三十歳くらいの男性で、身体もがっしりしていることから元冒険者かもしれない。武器を形態していないということは、フィリアナと同じタイプの武道家か? 左胸には名札が付けられており、《警備員:ハルヒト》と記載されている。
「何用かな?」
リダさんから貰った《学園入場許可証》と《匿名希望の依頼》を見せると、男性は左手で顎をさする。
「ふむ、またこの依頼による入場者か。君達で二十四組目だよ」
二十四組目!?
あれだけ高額な報酬なら、誰だって食いつくか。
「フィックスと言います。この子は、パーティーメンバーのフィリアナです」
「警備員のハルヒトだ。不躾ながら、ここで質問させてもらおう。《スキル善玉悪玉》について答えなさい。正解ならば、ここを通そう」
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