16 / 30
16話 カード戦士、謎の依頼を見つける
しおりを挟む
模擬戦を終えた後、俺は周囲にいる人々に、獣人フィリアナについて半分嘘を交えながら話していく。彼女が聖獣であることは内密のため、《幼い頃人間に誘拐されたこと》《三年前に脱走して、故郷へ戻る途中学園生の女に殺されかけたこと》《俺が危機的状態に陥っている彼女を救出したこと》を話すと、全員がフィリアナに同情し、彼女はスラム街の仲間入りを果たすことに成功する。
友好を深めるため三十分程話し合ってから、俺達は寝ぐらへ帰り、補助系ガチャのカードデルを行った。この固有スキル《カードガチャ》は、女神様の気まぐれで製作されたものだが、何が出てくるかは俺の運次第だ。今回、どんなカードが出てくるのだろうか?
補助系カード《極小生物辞典》
レア度:2 ★★☆☆☆☆☆☆
内容:目視できないあらゆる生物の名前や、それに関わるスキルと魔法、人体に与える身体的影響などの情報が全て網羅されている辞典。他人へのレンタルが一週間可能、その間、内容を紙に写しても可。一週間経過すると、カード戦士のもとへ強制的に返還される。
この内容を読んだ時、俺もフィリアナもハズレを引いたと思った。中身の目次部分だけを読んだ限り、この辞典には《細菌》《微生物》《ウイルス》に関わるあらゆる情報が網羅されていると記載されていたのだが、根本的にそれらの単語を聞いたことがないため、中身を読んでもちんぷんかんぷん、俺達は途中で読むのを諦めた。
これがなんの役に立つのか不明だけど、とりあえずポシェットに入れ、俺達は冒険者ギルドへと出掛けることにした。
○○○
王都ブルセイドにある冒険者ギルド本部の掲示板は、大きく分けて【一般依頼】と【指名依頼】の二つに区分されている。
【一般依頼】は、冒険者ランク一~八等星用の八区画に区分されている。
【指名依頼】は、別名【秘匿依頼】と言われており、冒険者名やパーティー名だけが一枚の紙に記載されているだけで、指名された者は受付で内容を聞くことになっている。重要度が高ければ、防音性の高いゲストルームへ移動して話を進めていくらしい。
俺は二等星のため、指名されたことは一度もない。
「フィックス、早速二等星と三等星の依頼の区画を見ようではないか」
フィリアナの耳がピコピコ動き、尻尾もぶんぶん回っており、ソワソワと三等星の区画を見ている。これから復讐しようとする女の住処に行けるかどうかが、ここで決まるわけだから落ち着けない気持ちもわかる。学園へ行けたとしても、あの女が反省してくれているなら、案外《復讐しよう》という気概も消失するかもしれない。
「二等星の区画に貼られているものの中でも、学園からの依頼は一件だけか。というか、何故名前が匿名希望なんだ?」
『緊急依頼』
掲載期間:無制限
最高報酬:金貨十枚(依頼者が納得した場合に限る)
内容:
私の職業の特性を知りたいです。スキル【善玉悪玉】について知っている方は、学園へ来てください。ランクは問いません。授業時間内であれば、いつ来ても駆けつけます。
《匿名希望》
スキル【善玉悪玉】?
聞いたことのないスキルだ。
報酬の金額が、異様に高い。
依頼者は、貴族だな。
「ぬお、この依頼は二等星の区画にもあるのか? むむ、よく見れば、一般依頼の区画全てに目立つよう貼られておるではないか」
なんだって!?
あ…フィリアナの言う通り、全ての依頼票が一般依頼の全区画、高さ170センチくらいの位置に貼られている。
「フィリアナは、このスキルのことを知っているか?」
「妾も、そんなスキルは知らん」
百年以上生きている聖獣ですら知らないのか。
「じゃが、フィックスなら知っているかもしれませんぞ?」
「え…俺!? 知るわけないだろ、こんなスキル‼︎」
何故、俺に聞く?
「さっき取得したばかりのカード、あれはスキルも載っているのじゃろ?」
さっきの…って、【極小生物辞典】のことか?
確かに、目次には極小生物に関わるスキルや魔法欄のページがあったけど?
俺はポシェットから目的のカードを取り出し、カード化を解除する。
「え~と、善玉悪玉だったよな?」
目次に記載されているスキル欄のページを開き、単語を一つずつ丁寧に見ていくと、その言葉はあった。
「本当に…あったよ。これって偶然か?」
「今は、詮索せんでよかろう。それより、早う内容を教えてくれ!」
何か心当たりがあるような言い方だけど、フィリアナ自身が別段焦っているわけでもないし、今日の夜にでも聞いておくか。
「え~と、内容は…」
スキル【善玉悪玉】
効果:
体内の各臓器に存在する善玉菌と悪玉菌の比率(1~9:一桁表示)を、自由に調整することができる。
【参考例】
腸内に存在する悪玉菌を善玉菌に変化させれば、腸内環境が清浄となり、便秘や下痢に悩む人が救われるでしょう。ただし、比率を調整しても、今すぐ起こるわけではないし、その人の健康状態によっては効果がない場合もあります。
他にもいくつか例があるな。
参考例をいくつか読んでみたが、どうやら扱いづらいスキルのようだ。
「フィックス、どんな効果なんじゃ?」
俺がこのスキルの効果を説明すると、フィリアナもおかしく感じたのか、まゆを顰める。
「よくわからんスキルじゃの? やり方次第では有効利用も出来るが、かなり絞られるの。依頼者はこの効果を知りたいがため、金貨十枚という大金を支払ってくれるのか。せっかくじゃから、この依頼を受けようではないか」
俺としても是非受けたいのだが、依頼者は全てを知ったとしても、最高報酬の金銭を支払ってくれるのだろうか? というか、依頼者本人のステータスにも、スキルの効果内容が記載されているはずだ。
魔物とかで、実験できないのか?
何か、裏があるんじゃないだろうな?
「一応受けるけど、気をつけろよ。これだけで金貨十枚は、絶対におかしいぞ」
「まあ、そうじゃろうな。じゃが、学園内だし何かされることもなかろう」
それは、一理ある。
せっかくだから、この依頼を受理してもらい、学園へ行くか。
友好を深めるため三十分程話し合ってから、俺達は寝ぐらへ帰り、補助系ガチャのカードデルを行った。この固有スキル《カードガチャ》は、女神様の気まぐれで製作されたものだが、何が出てくるかは俺の運次第だ。今回、どんなカードが出てくるのだろうか?
補助系カード《極小生物辞典》
レア度:2 ★★☆☆☆☆☆☆
内容:目視できないあらゆる生物の名前や、それに関わるスキルと魔法、人体に与える身体的影響などの情報が全て網羅されている辞典。他人へのレンタルが一週間可能、その間、内容を紙に写しても可。一週間経過すると、カード戦士のもとへ強制的に返還される。
この内容を読んだ時、俺もフィリアナもハズレを引いたと思った。中身の目次部分だけを読んだ限り、この辞典には《細菌》《微生物》《ウイルス》に関わるあらゆる情報が網羅されていると記載されていたのだが、根本的にそれらの単語を聞いたことがないため、中身を読んでもちんぷんかんぷん、俺達は途中で読むのを諦めた。
これがなんの役に立つのか不明だけど、とりあえずポシェットに入れ、俺達は冒険者ギルドへと出掛けることにした。
○○○
王都ブルセイドにある冒険者ギルド本部の掲示板は、大きく分けて【一般依頼】と【指名依頼】の二つに区分されている。
【一般依頼】は、冒険者ランク一~八等星用の八区画に区分されている。
【指名依頼】は、別名【秘匿依頼】と言われており、冒険者名やパーティー名だけが一枚の紙に記載されているだけで、指名された者は受付で内容を聞くことになっている。重要度が高ければ、防音性の高いゲストルームへ移動して話を進めていくらしい。
俺は二等星のため、指名されたことは一度もない。
「フィックス、早速二等星と三等星の依頼の区画を見ようではないか」
フィリアナの耳がピコピコ動き、尻尾もぶんぶん回っており、ソワソワと三等星の区画を見ている。これから復讐しようとする女の住処に行けるかどうかが、ここで決まるわけだから落ち着けない気持ちもわかる。学園へ行けたとしても、あの女が反省してくれているなら、案外《復讐しよう》という気概も消失するかもしれない。
「二等星の区画に貼られているものの中でも、学園からの依頼は一件だけか。というか、何故名前が匿名希望なんだ?」
『緊急依頼』
掲載期間:無制限
最高報酬:金貨十枚(依頼者が納得した場合に限る)
内容:
私の職業の特性を知りたいです。スキル【善玉悪玉】について知っている方は、学園へ来てください。ランクは問いません。授業時間内であれば、いつ来ても駆けつけます。
《匿名希望》
スキル【善玉悪玉】?
聞いたことのないスキルだ。
報酬の金額が、異様に高い。
依頼者は、貴族だな。
「ぬお、この依頼は二等星の区画にもあるのか? むむ、よく見れば、一般依頼の区画全てに目立つよう貼られておるではないか」
なんだって!?
あ…フィリアナの言う通り、全ての依頼票が一般依頼の全区画、高さ170センチくらいの位置に貼られている。
「フィリアナは、このスキルのことを知っているか?」
「妾も、そんなスキルは知らん」
百年以上生きている聖獣ですら知らないのか。
「じゃが、フィックスなら知っているかもしれませんぞ?」
「え…俺!? 知るわけないだろ、こんなスキル‼︎」
何故、俺に聞く?
「さっき取得したばかりのカード、あれはスキルも載っているのじゃろ?」
さっきの…って、【極小生物辞典】のことか?
確かに、目次には極小生物に関わるスキルや魔法欄のページがあったけど?
俺はポシェットから目的のカードを取り出し、カード化を解除する。
「え~と、善玉悪玉だったよな?」
目次に記載されているスキル欄のページを開き、単語を一つずつ丁寧に見ていくと、その言葉はあった。
「本当に…あったよ。これって偶然か?」
「今は、詮索せんでよかろう。それより、早う内容を教えてくれ!」
何か心当たりがあるような言い方だけど、フィリアナ自身が別段焦っているわけでもないし、今日の夜にでも聞いておくか。
「え~と、内容は…」
スキル【善玉悪玉】
効果:
体内の各臓器に存在する善玉菌と悪玉菌の比率(1~9:一桁表示)を、自由に調整することができる。
【参考例】
腸内に存在する悪玉菌を善玉菌に変化させれば、腸内環境が清浄となり、便秘や下痢に悩む人が救われるでしょう。ただし、比率を調整しても、今すぐ起こるわけではないし、その人の健康状態によっては効果がない場合もあります。
他にもいくつか例があるな。
参考例をいくつか読んでみたが、どうやら扱いづらいスキルのようだ。
「フィックス、どんな効果なんじゃ?」
俺がこのスキルの効果を説明すると、フィリアナもおかしく感じたのか、まゆを顰める。
「よくわからんスキルじゃの? やり方次第では有効利用も出来るが、かなり絞られるの。依頼者はこの効果を知りたいがため、金貨十枚という大金を支払ってくれるのか。せっかくじゃから、この依頼を受けようではないか」
俺としても是非受けたいのだが、依頼者は全てを知ったとしても、最高報酬の金銭を支払ってくれるのだろうか? というか、依頼者本人のステータスにも、スキルの効果内容が記載されているはずだ。
魔物とかで、実験できないのか?
何か、裏があるんじゃないだろうな?
「一応受けるけど、気をつけろよ。これだけで金貨十枚は、絶対におかしいぞ」
「まあ、そうじゃろうな。じゃが、学園内だし何かされることもなかろう」
それは、一理ある。
せっかくだから、この依頼を受理してもらい、学園へ行くか。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
106
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる