カードガチャでリスタート‼︎〜パーティーを追放されたカード戦士は導き手となって最善ルートを突き進む〜

犬社護

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2話 フィックス、時間をちょっとだけ遡る

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俺は、自分の見たものを信じられなかった。
十五枚もカードがあるというのに、何故が出るんだよ?
確率は、1/15だぞ?
裏返ったカードに記載された数字は……【15】。

『あらら~あなた、とことんついてないわね~』

15、つまり俺が十五歳になった誕生日を指すと同時に、俺が死んだ日でもある。

「ちょっと待ってください‼︎ もう一度、もう一度、やり直しを~~」

あの日の何処からスタートするのかわからないし、もう一度ロゼスト共と顔なんか合わせたくない!

まあ、奴等と関わらなければいいだけなんだが、あいつらの目的を考えると、魔纏武器欲しさに、俺を無理矢理ダンジョンへ連れていく可能性もある。せめて、十四歳の誕生日にしてほしい。

『あら~切実な訴えね~。でも、ごめんなさいね~。チャンスは一回限りなの~』
そんな~なんで、またあの最悪な一日をやり直さないといけないんだ~~。

『ただ~あまりにも悲惨だから~違反ギリギリだけど、ご褒美を与えま~す』
ご褒美!?

「それは何ですか?」
『うふふ、あなたが私の気まぐれに毎日付き合ってくれるのなら、死亡ルートへ進ませないようにしてあげるわ~』

どういう意味だ?
とにかく、たとえ職業を貰ったとしても、俺の持つ身体能力は四人の中でも一番低い。少しでも生き延びる方法を取るべきだろう。

「わかりました。意味はわかりませんが、あなたの気まぐれに付き合いますよ」
『うふふ、交渉成立~それじゃあバイバ~イ』

え、これでお別れ? 
結局、この女性が何者かもわからないし、そもそも俺はここから脱出できるのか?
な、何だ? 
周囲が、どんどん明るくなってきている。

『さ~て、独り言でも喋ろうかな~』
は、独り言?
『フィックスは、ある意味幸運よね~。あの子が死んでたった一ヶ月の間で、王都ブルセイドは学園の大騒動に巻き込まれて半壊したもの~』

学園の大騒動? 
王都が半壊しただって!?
うお、光に覆われる~!?

○○○

「フィックス、フィックス、大丈夫ですか?」

誰かが、俺の身体を揺らしている。というか、ここは何処だろう? 
俺は…

「そうだ、俺は石像に踏み潰されて死んだはずだ!」

俺が目を開けると、目の前には子供の頃からお世話になっている初老のリュナセ神父様がいた。

「何を寝ぼけたことを言っているのですか? あなたは生きていますよ。女神像に祈って以降、茫然と立ち尽くしたまま動こうとしないから心配になったのですが、本当に大丈夫なんですか?」

え、女神像?

周囲を見渡すと、目の前に女神像があり、ここが間違いなく教会の中というのがわかる。俺と同じ月日に生まれた者達六人(男:四名、女:二名)達がいて、全員が教会中央奥に設置されている女神像への祈りを終えたのか、自分達のステータスを確認している…ように思える。俺からは全くわからないが、個人個人は見えているのだろう。何もないところを見て、喜んだり悲しんだりしているのだから。

ま…さか、本当に生き返った? 
時を少しだけ遡れたのか?

「フィックス?」

「あ…は…はい。俺なら…大丈夫です。昨日楽しみすぎて眠れていないんで、少しぼ~としていました。ご心配をおかけして、申し訳ありません」

そうか、俺は生き返って十五歳の誕生日の朝に戻ってこられたんだ。

「ならいいのですが、自分の職業を確認しましたか?」

職業…あ、そうだよ‼︎ 職業担当精霊が、俺のステータスプレートだけを入力し忘れたから、あの時何も出現しなかったんだ。

今の俺は、どうなのだろう? 
ステータスよ、出ろ‼︎

種族:人間
名前:フィックス
性別:男
年齢:十五歳
魔力属性:風、土、水
職業:カード戦士《Lv1》
ノーマルスキル:なし
職業固有スキル:カード化、カードガチャ
魔法:(風)ヴェントブーメラン、(土)スパイク、(水)アクアショット、アクアヒール      

やった、ちゃんと表示されたぞ‼︎

「カード戦士…これが俺の職業なのか」

お、苦労して習得した魔法も、きちんと表示されている。
あの女性が言った気まぐれとは、何を指しているんだ?

「君の職業は、《カード戦士》なのですか?」
「あ、ええ、そのようです。俺も聞いたことがありません。神父様は知っていますか?」
そうだった、俺の目に前には、リュナセ神父様がいるんだ。
「いえ、聞いたことありませんね。なんにせよ、戦士系の職業で良かったですね」
神父様が柔かな笑顔で答えてくれると、そのまま別の冒険者の方へと向かっていく。俺も、自分のステータスの詳細を見ていこう。

……うん? 
おいおい、ちょっと待て‼︎

《職業固有スキル》が二つあるのは良いけど、剣術や身体強化といった《ノーマルスキル》が一つもない…だと?

「マジかよ…と…とりあえず、固有スキルを確認してみよう」

これは…•そうか。
【カードガチャ】こそが、あの女性の言った《気まぐれ》を指しているんだ。
二つのスキルの詳細に関しては、今は置いておこう。
とりあえずは、ロゼスト達とどう立ち向かうか、そこが目下の問題だ。

「このまま王都から去るのもありなんだが、そんな事をしたらスラム街にいる子供達が悲しむだろうし、多分ロゼスト達もそろそろ離れていく時期のはずだ」

以前、俺の職業が決まったら、スラム街を卒業しようと話し合っていた気がする。あの時、俺は子供達のことを考え、答えを保留にしていた。今考えれば、俺の職業に関係なく、俺をあのダンジョン内で殺し、新型の魔剣、魔斧、魔槍といった《魔纏武器》を入手してから卒業する腹づもりだったんだ。

「最低な屑野郎共だ。バウスは懐も深く良い奴だと思っていたのに、欲に目が眩んだのか」

俺達四人は、スラム街出身の孤児だ。小さい頃からの付き合いで、互いが互いのことをなんでも知っている間柄だ。十歳の時、冒険者登録を行い、パーティー《フェンリルの牙》を結成した。ただ、四人の中で、俺が一番生まれも遅い。だから、三人は二ヶ月も前に職業を授かり、新たに得た力で個人の冒険者ランクを早々に三等星へ上げたこともあって、ギルド内でも名を覚えられつつある。いまだに俺だけが下から二番目の二等星のため、肩身の狭い思いをしていた。

くそ!

そうなると、俺をパーティーから追放させる算段を以前から計画していたのか。ただ追放させるだけじゃあ飽き足らず、何かに利用できないか、その機会をずっと伺っていたんだ。このまま逃げてしまうと、俺は敗者同然だ。

追い出されるのなら、こっちから全てを明かしてやる!

奴等は、別に俺を憎んでいるわけじゃあない。ダンジョンに同行したら同じ未来になってしまうが、冒険者ギルド内で追放宣言されれば、なんの問題もなく、俺はソロとして活動できる。

「逃げずに立ち向かうんだ! 正々堂々、追放宣言を受けに行ってやるよ!」

俺は覚悟を決めて教会を出ていき、奴等の待つ冒険者ギルドへと歩き出す。
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