幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜

犬社護

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21話 死を知らない亡者たち *リルル視点

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光量をかなり落としているせいで、かなり暗いですね。察知系スキルを最大限に活かして、幽霊を探さないといけません。ただ、ここで爆発事故を起こしている以上、地下の状況を少しでも把握しておきたいです。

「痛!?」
「ミサ、大丈…うお!?」
「レアナ、どうしたの?」
「上…見たらわかる」

私とミサが見上げると、ライト周辺が明るいこともあり、天井の一部が見えました。至る所にひび割れがあり、欠片が時折落下しています。ミサが慌ててライトの光を側壁へ移動させ、周囲の損傷状況を見ると、壁のヒビが激しい箇所もあれば、無傷な箇所もありと、爆発の衝撃の強さを窺えます。

この暗い中で、12名の死者を1人1人探すとなると、かなり時間を要しますから、あの子を召喚しましょう。

「ノア君の情報通りですね。ミサ、レアナ、この暗闇の中で死者を探すのは危険なので、まずはこの空間に死者がいないか、ミサがライトで確認してくれませんか?」

「わかりました」

ミサの光球がこのフロアを移動していくことで、いくつかわかったことがあります。

・この近辺には、死者がいない。
・爆発事故後、後処理を一切行なっていない。
・資料類や器材などが、至る所に散らばっている。

「酷い…事故直後のような光景だわ」
「前の家主の奴、事後処理を何もやることなく引っ越したわけ? 最悪、信じられない!」
「ミサ、レアナ、落ち着いて。前向きに考えると、ここには証拠類が大量に残っているということになります。この地下で何を作り、どんな事故を起こしたのか、調査すれば全てわかります」
「ああ、そっか!」
「今から水精霊セインを召喚します」
「「水精霊?」」

2人が疑問に思うのは、当然ですね。

「彼女は海に住んでおり、様々な歌声で船乗りたちを正しい航路へと導いてくれます。その歌の中に、魂を1箇所に集めてくれる歌があるので、それをここで使用します」

「あ、なるほど!」「リルルさんの意図がわかりました」

それは、何よりです。私たちの目的は、あくまで死者を混乱させないよう、天国へ行かせること。ここで何が起きたのかは、治安騎士団に任せましょう。

「召喚、水精霊セイン」

私の召喚と同時に、小さな魔法陣が出現し、そこから小さな女の子セインが現れます。

「やっほ~~~リルル、久しぶり~~~。誰かが、私たちを召喚させないよう小細工していたようだけど、無事に解決できてよかったね~~~」

こういった状況下でも、この子は明るいですね。

「セイン、お久しぶりなのです。早速で悪いのですが、この空間には12体の死を知らぬ亡者がいます。この近辺には死体がないので、12人の魂を眠らせたままここへ誘導させて起こしてもらえないでしょうか?」

「ああ、確かに12人の死者がいるね~。いいよ、お安い御用だ~~~」

セインの優しい歌声が、地下に響き渡ります。この子の声は一種の魅了のような効果があります。この声を聞いた者たちは思考を停止させ、歌声の持ち主の元へとやってくる。勿論、指定した対象のみが、この声の魅了に嵌ります。このフロア全体を見た限り、私たちの来た出入口以外にも、4つの道がありますから、魂となった12名がゆらりゆらりとそこからやって来ます。

「凄い…あっという間に12人が集まったわ」
「これが精霊術師の力なんだ。私とミサだけだったら、絶対にできない技だよ」

人の身体から抜け出た魂、苦手意識こそありますが、今はこの人たちを天へと案内するのが私の役目、怖がってはいけない。

「終了~~」
「セイン、ありがとなのです」
「それじゃあ、起こすよ~~~」

12人をざっと見た限り、全員が白衣を着ており、左胸ポケット付近に名札がありますね。直立不動だった皆の目がゆっくりと開いていき、静かに起き出していきます。自分たちの状況がわからないせいなのか慌てそうになりましたが、私たちをすぐに見つけたことで、その視線が全て私たちに集まります。

「チームリーダーのマサツグさん、お話ししても宜しいでしょうか?」

私から程近い場所にいる40歳くらいの男性、この人とお話ししましょう。

「は、はい。あの…ここは何処なのでしょうか?」
「まずは、そこからですよね。まずは、自己紹介しますね」

私たちが冒険者であることを告げると、全員が安心感を抱いたものの、それでも状況に不安を感じていますね。

「皆さん、ここにいるミアが、ライトの光量をこれから少しずつ強くしていきます。自分たちがどこにいるのかすぐにわかると思いますが、現場を見ても、決して混乱しないように。まずは、今の状況だけを受け止めてください。マサツグさん、宜しいですか?」

「は、はい」

問題は、ここからですね。
少なからず、混乱する者もいるでしょう。

「人間ってめんどくさいな~。私の力で、強制成…むぐ」

セインが不用意な発言をしそうだったので、私は慌てて、彼女の口を止めます。ミサがライトの光量を強くしていくことで、フロアの全貌が見えてきました。それを見た12人は予想通り、慌て出します。

「リルルさん、これは一体どう言う事ですか? ここは、間違いなく地下区画の正面フロア。だが、何か事故が起きたような…この有り様を説明してもらえますか?」

「勿論です。ただ、今から話す内容は全て真実、あなた達にとって受け入れ難いものでしょう。全員、心して聞いてください」

私はこの地下で爆発事故が起きたこと、家主が事故そのものを隠蔽するため、何の処置も施すことなく、地下区画全体を封印したこと、その後、家自体が軋み出したので、私たちが調査に出て、封印された地下室を発見したこと、ここまでの流れをわかりやすく話していきます。

「なるほど、私たちも研究者の端くれ。周囲の状況を見た限り、爆発事故が起きたことは理解できました。そして……家主でもあるグリッダー商会会頭リモンゼが、最低なゲス野郎ということも。ただ、一番肝心なことを話していませんよね?」

「あはは…やっぱり、わかります?」
「ええ、気を遣ってくれているのはわかりますが、我々研究者を舐めないで頂きたい。ここにいる全員が爆発事故に巻き込まれ死んでいるんですね?」

凄いです、皆死んでいると知っても、誰も取り乱さないのです。こういった冷静な判断、私も見習わないといけません。

「その通りです。私は12人全員の未練を取り除いてから、あなた方を成仏させないといけません」

12人全員が未練と聞き、顔を見合わせるも、それはほんの一瞬だけ、その未練がなんなのか、私でもわかります。

「みんな、俺たちの未練は一つしかないよな?」

全員が、一斉に頷きます。

「ここでの出来事を全て明るみにして、グリッダー商会会頭リモンゼを潰すことですよ。それまで成仏を待っていただけませんか?」

私が逡巡していると、ここまで黙り込んでいたセインが手を上げます。

「その願い、リルルと契約を交わせば可能だよ。あなた達はこの敷地から出られないけど、敷地内であれば自由に行動できる。あなた達の意志の力が強ければ、人や物にも触れられる。契約上、必ず期限を設けないといけないけどね。最長1年だよ」

「それはありがたい。1年もあれば、証拠集めも可能です。酷い有り様ですが、探せば無事な書類などもあるはずです」

「リルル、どうする?」

セインの助け舟に感謝なのです。

「勿論、契約します。ただ、その願いを全て聞き入れるには、協力者が必要ですね。私は、商会などの伝手を持っていません」

私は、ミサとレアナの方へ顔を向けると、ミサが手を上げてくれました。

「あのマサツグさん、奴隷商人アシェルさんとなら、私が伝手を持っていますが?」
「う~ん、奴隷商人ではなく、グリッダー商会と同じ系列の信頼できる商会の方がありがたいのですが」

研究者の方々が証拠を全て集めてくれても、それを告発してくれる心強い商人が必要ということですね。今の時点では誰も思い浮かびませんが、この人たちが動いてくれている間に、わたしたちで探すしかありませんね。ジェリドたちが戻ってくるまでの間だけなら、私も自由に動けます。この人たちのために、協力者を探しましょう。
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